第28話 は?いや、なんで二人いんの?ボクの目がおかしいの?
「うそぉ!!」
「…私の体を使って…あなたは何がしたいの?」
「ぐ…」
彼女の体から多大な霊力が放出され、その重圧に思わず顔をしかめる。
そのまま麗奈はこちらに歩み寄り、治療術を肩にかけてくれた。
「あ、そっか」
「…?」
敵の麗奈は本物の麗奈と、何かが違うと思ってたんだ。ようやくわかった。その全身から溢れる霊力とその特徴的すぎる喋り方だ。
「…こんなやつと私を間違えるなんて…あなたどんな性格してんの?」
「いづっ!?う、うるさい!ってか性格どうこう関係ないやろ!」
麗奈はそれに対して少し怒りを覚えたのか思いっきり治療中の肩を握りしめた。
決して目の端から光るものが流れたりしてない。多分。
「…はい。完全にとはいかないけどある程度くっ付けといた。……でも無理に動かすとまた折れるかもしれないから…その時は接着剤でも」
「うん、ボクって作品展に展示される前の作品かな?」
誰か一人は寸前に破損させて、総出で修復にかかるあれである。
「そんなにお喋りしてて大丈夫かい!?」
二人で笑いあっていると、もう一人の麗奈、これからは麗奈Bと呼ぼう。麗奈Bが猛だっしゅで近づいてきていた。
正面から見るとその光景はホラー。麗奈も肌に鳥肌を浮かべていた。
「…気持ち悪い。…近寄らないで…波弾」
麗奈は指を指鉄砲の形にすると人差し指の先端から赤い球体を放った。
しゅるしゅると間抜けな音を出して飛んでいくそれを麗奈Bは裏拳で弾き飛ばそうとした。
が、
「のわっ!?」
その球体は裏拳で弾くことを許さず、麗奈Bをそのまま吹き飛ばした。
「がふっ!!」
そして、ぐわしゃ!と音を立てて近くの木に着弾していた。
「おうふ…」
この人には…喧嘩を売らない方が良さそうだ。
「…私は偽物の私を殺ってくるから…あなたはあのガキを殺って来て」
「怖いわ!!恐ろしいわ!!そんなやつが隣にいるだけで鳥肌が立つわ!!」
麗奈は懐から赤色のお札を取り出し、印を刻み始めた。
ボクも負けじと剣を振り、魔方陣を描く。
魔方陣展開式魔法は連続して使うとどんどん威力がへっていくのだ。
この魔法は自分の潜在魔力の半分を使っていく。始めは二分の一、二回目は四分の一、三回目は八分の一、といった用に魔力自体も減っていくし、どんどん魔法も弱くなっていく。
せいぜい魔方陣展開式魔法は三回が限界だろう。
「紅夜!!」
そして、魔方陣の中心に魔力を注ぎ込むとその中心から血のように真っ赤な霧が立ち込める。
「らぁっ!!」
さらに魔方陣を蹴り飛ばすと、その霧は勢いを増して少年をを包み込んだ。
「な、なんだ!?これ!!がふっ!がぱっ!」
「いくぞぉ!!」
この魔法、「紅夜」には視界を奪い酸素を奪う作用がある。酸素が薄いので呼吸ができなくなるというまさに悪魔のような魔法である。
「フェイト・スルトゥーティカ!」
ミカナ・ライルを少年に向けて唱える。すると、その剣は縮小を始め一丁のリボルバー型の銃が産み出された。
ミカナ・ライルから変わっただけあって装飾はほとんど同じ。瑠璃と金で造られてあってアホみたいにキラキラしている。
「こんな装飾、なんのタクティカルアドバンテージも産まない…なんてね」
軽くジョークを挟んだ後、リボルバーを両手て持ち赤い霧に向けて構える。
「エイムアシストがあったらいいのに…」
エイムアシストとは…個人で調べてくださいお願いします。
「うがっ!」
しばらくして、タイミングよく少年は霧の中から飛び出してきた。
「…」
アイアンサイトを除き込み、少年に狙いを定めて引き金を引いた。
―――ガァァァァン
と乾いた発砲音が虚空に響き、少年はその場で地面に伏した。
「敵に慈悲はない…」
これは、ボクが今まで戦ってきた中で見いだした考え方だ。戦いで命を奪うことを躊躇してはならない。もしも、そのことにためらいを感じたのなら、死ぬのはボクだ。
「そっちも終わった?」「…えぇ、なんとかね…これ、私の姿に化けていたのね」
「ほんとだ、中身叔母ぁちゃんやったんや」
麗奈に破れた麗奈Bはすぐそばで仰向けに倒れていた。
しかし、麗奈Bは今は麗奈の姿をしておらず、よぼよぼの叔母ぁちゃんの姿をしていた。
「死ぬときは、本当の姿で死にたいってことかね」
「…さあ?」
麗奈は肩をちょいとすくめて苦笑を浮かべた。
「さて、あの少年のことだけどまだとどめはさしてないし、今なら尋問できるかも」
「…わかった」
ボクと麗奈は互いに目をあわせて頷いた。
「がふっ!がふっ!」
案の定、少年は死んでいなかったもののその苦しみは膨大なようでなおも額に脂汗を浮かべ、口から血を吹き出していた。
「さて、ボクらを襲った理由は?」
少年は視線をこちらにあわせて、再び反らした。
「僕…は、生まれながら…病弱だった…、ずっと…、苦しかった…、でも…、あの方は…、お前を殺せば…、病気を…、治してくれるっていった…、…そこのお前に化けていたのは…、僕の…、母だ…、ずっと…、僕をおもってくれ、ていた。…お前は…あの方に殺される運命だ」
そう、日本語がぐちゃぐちゃの繋ぎ繋ぎの言葉を残して少年は目を閉じた。
すると、少年の足から徐々に砂と化していき、地面に染み込んだ。叔母ぁちゃんも同様に。
「病気…か」
病気は、その者の肉体を傷つけるだけでなく、周りからの非難を浴びたりと精神も傷つけられる。
そんな苦しみから、少年は解放されたかったのだろう。
少年の親も病気から解放され、笑顔を振り撒く少年の姿を目に焼き付けたかったのかもしれない。




