第26話 近距離いけちゃうライフルはぶっちゃけチート
「くっ!」
いつの間にか少年が懐から取り出したサバイバルナイフの軌道を杖で反らし、反撃を目論む。
「おっと…危ない危ない」
杖を逆手で持って突きを放つも、少年は体を捻っていとも余裕そうな回避をする。
この状況、初めはボクの方が有利だと思っていた。ライフルは近距離で使うことに適していない。ならばワンちゃんあるんじゃね?
と、思っていたのだが。その素早い行動にしっかりとあったサバイバルナイフの使い方。一瞬たりとも気を緩ませない戦闘経験。なかなか厄介な相手だ。
こりゃ一筋縄じゃいかんわ。
「らっ!」
「あれ?逃げるの?」
「なわけ!バーン・リアソマリス!」
一度後ろに飛び、空中から爆撃を行う。もちろん逃げているわけではなく、魔法を使う時に必要な時間を確保するためである。
「ふうん、なかなか面白い魔法を使うね」
迫り来る火球を目の前にしても少年は表情一つ変えずにサイトを除き込んで引き金を引いた。
バシュンっ!と音を立てて火球は銃弾によって相殺されてしまう。
「んなのあり!?」
慌てて同じように小さめの火球を三つほど飛ばすも、再び全てが消滅し最後に残るのは3つの空薬莢がほとんど同時に地面に当たる音だった。
「まず…」
さらに、銃口は火球を狙い終えた後にこちらに標的を移す。それを見て慌てて体を捻って回避を試みるが、到底間に合うはずもなく銃弾はボクの肩を貫いた。
「あがっ!」
空中でバランスを崩し、鮮血を振り撒きながら地面に叩き落ちる。
「あれ?ヘッショ狙ったんだけどなぁ…」
「そう簡単にお陀仏してたまるかっつーの!」
急いで起き上がり、体制を立て直す。どうやら少年はこちらが圧倒的不利な状況の時には撃ってこないらしい。
おそらく正々堂々とした戦いを望んでいるのだろう。今も軽く鼻歌を歌いながらリロードをしている。
「あれ?回復魔法《ヒーリング》しないの?不思議な魔法使いだなぁ」
「いや?ボクは回復魔法《ヒーリング》を使わないんじゃない。使えないんだ!」
傷む肩を押さえ、歯を食い縛りながら精一杯にやける。相手にこちらが一杯一杯だと言うことを悟らせないために。
「でも…次はそう簡単に狙撃《スナイプ》されないよ?」
「ふ~ん?何か策でもあるのかい?」
「あるよ?ンバ・フラッシュ!」
その魔法は対象の視力を一定時間強力な光で奪うものだ。
この魔導書書いた人。絶対モン○ーニュとかプ○ッツとか使ってそう。
「っ!」
魔法を浴びた少年はその場で目をつむる。ンバ・フラッシュには視覚だけでなくまるでモスキートーンを強くしたような音も対象に聞こえるため、足音を聞いて撃つなどといったチート行動はできないのである。
「波掌!!」
そして少年に向けて、魔力で身体能力を向上させた体で近接攻撃を叩き込む。
「がふっ!?」
その拳は少年の体を見事に捉え、体をくの字にした状態で吹き飛ばした。
「いっつ…」
だが、当然こちらにもダメージは入る。普段は杖で殴ったり、魔法で吹き飛ばしたりしているから、肉弾戦はあまり得意ではない。確実に攻撃を入れるくらいにしか使わない。
日常での練習はオブラートにお仕置きをするくらいだし。
「げほっ、なかなかやるね。狙撃主《スナイパー》の弱点をついてくるとは…」
「だてにグ○ズ相手に戦いまくってる訳じゃないからね」
一撃の威力が高いグ○ズを相手に戦うのに、何時間して研究を極めたことか…
いや、もうこの話題はやめておこう。
そう、スナイパーはフラッシュに弱いのだ。視覚を頼りとして狙いを決め、近くの敵には聴覚を頼りに戦う。
しかし、この謎魔法を前にしてその感覚は皆無となる。
「ちっ、間合いは捕まれたな…」
そう言って少年は立ち上がり、後ろに大きく弧を描くようにして跳んだ。
「さて、間合いを詰められないようにしないとな」
少年は軽く舌なめずりをし、再びスコープを覗き込む。
「この距離だったら…ここだな」
レクティルを頭よりも少し上に持ち上げて引き金を引く。
「消えたっ!?」
しかし、少年が狙っていたはずの少女はスコープに映る世界からは消えていた。
「そ、そんな馬鹿なことが!!」
慌ててスコープ越しに少女の姿を探すもその紅い髪の一本も視界にはとどまらなった。
「ならば!マーキング機能で…」
少年のスコープは特別設計。ターゲットをマーキングし、おまけにサーマル機能もついている。(サーマルは熱源を感知することのできる物。赤外線カメラをご想像ください)
「は?ゼロ距離?」
少女のマークは自分の位置と重なっていた。しかし、実戦経験の多い彼でもその気配には気づくことはできまかった。なぜなら…
「いやいや、多機能性のスコープとか聞いてないんですけど…」
真上にいたのだから。
「なっ!?」
「そお簡単には攻撃させないよ?」
少年はとっさにライフルを構えるが、先に行動した蒼の方が早くそのまま少年を抑え込んだ。もちろん、反撃をさせぬように腕や足は押さえつけてある。
「くっそぉぉぉ!」
「さて、話してもらおうか?なぜボクらを狙ったのか」
そう問い詰めていると、後ろから聞きなれた声が耳に伝わった。
「あら、もうおわったの?」
「来るのが遅いわ!マイペースか!」
「そ、でもそう簡単に終わらせないわよ?」
その麗奈の声は深く冷徹なものに変化した。
「は?何を言ってっつ!?がふっ!!!」
突如、予期せぬ方向から蹴り飛ばされ少年の拘束が解けてしまう。
「麗奈?一体何を?」
「あら?親友がやられそうなのを見てほっておくような卑劣な人間だとでも思った?」
裏切りの開始である。




