第2話 魔法と女体化って関係あんの!?
「う…まぶし…」
多分…ボクはもとの世界に戻ったのかな?
ゆっくりと瞼を持ち上げると…そこは最後にいた場所。よかった。戻ってこられたんだ!
「え?」
いや待って…最後にいた?殺された…
「!!!」
あの蛇の化け物!誰かをまた襲っているかもしれない!
「おい!ターシャ!あの蛇の化け物は!?」
『お~お~そんなに大声を出さぬともわらわにはちゃんと聞こえておるぞ?あの蛇はお主の…たしか高等学校とか言う方に向かっていったぞ?』
「な!?」
だとしたら…沙与が殺されるかもしれない!早く行かないと!
「なぁターシャ!さっきボクに魔法の才能があるって言ったよね!?それで空飛んだりできないの!?」
『ままぁ…あるにはあるのじゃが…かなり鍛練が必要でな…最低でも二年はかかる…』
「はぁ!?まてまてまてまて!?二年!?二年も待てるわけないだろ!?なんとかならないのか!?」
滑舌の悪いことが売りなボクだけど今回はペラペラとしゃべろたよ。あ、噛んだ。
『まぁちゃんとそこのところは考えておる。安心せい。しかし…本当にいいのか?』
「あ~も!何でもいいから早くしてよ!!!」
『仕方のないやつじゃ…。ファシア!!!』
「っ」
ターシャがそう唱えると辺りは再び光に包まれていた。
しかしそれはさっきの光とは違いなんとも温かく、柔らかな光だった。
だが、光が収まったところで何かとてつもないオーラが体から溢れてるなどと言うことはなかった。
「なんだ…何にもって!えぇ!?」
まてまてまてまて!今ボクは「なんだ…何にもって!えぇ!?」と言ったはず。
だけどその言葉はボクの声ではなく明らかに高い。そう、まるでそれは女の子のような声だった。
「まさか!?」
声が高くなっただけなはずない。ボクはあわてて体の後ろに目をやった。
「緑のロングゥゥゥゥ!?」
この髪の毛、肩ほどまであるではないか!!しかも緑に色が変色してるし!?
「だとすると…」
ボクは恐る恐る胸元に手を近づけた。
※自主規制…しばらくお待ちくださいまし…
「マヂじゃん。ボク…女の子になってるじゃん…あっの!馬鹿神ぃぃぃ!ターシャぁぁぁぁ!!!」
『誰が馬鹿じゃ。神を気安く馬鹿と言うな。…はぁ…だから言ったであろう?どうなっても知らんと』
「聴いてないわぁぁぁ!!!何でボクが女の子にならなきゃいけねぇんだぁ!?」
ボクはたびたび名前のせいで女の子と勘違いされている。それすら嫌なのに、ましてや女の子になるなんて。もっての他だ。
『まぁ聴け。この世の中、実はおなごの方が魔法を使いこなすものが多くてな。気になって調べて見た。そうしたら、おなごの方が魔力《マナ》を循環させるのが早いのじゃ。つまり、魔法を使う才能のあっても経験不足のお主でも、魔法が使えると言うわけじゃ。魔法が使える。使えない。は魔力《マナ》の量といかに効率よく、素早く循環できるかの2つじゃからな』
「ぐぅぅぅぅ…」
つまり、魔力《マナ》の循環能力がなかったボクが女の子になることによって循環機能が発達し、魔法が使える。そういうわけだろう。
『む…今はこんなことを話している場合ではなかったな。お前の高等学校とやらにさっきの蛇がたどり着こうとしておるぞ。早く行くのじゃ!』
「わかった!でもどうやって…?」
〔ターシャ様からお届け物です〕
「わっ!?」
いきなり目の前に現れたキューピッドのような物に驚き後ろに体が反り返った。
そのキューピッドらしき物は手になにやら大きな木製の杖と分厚い本を持っていた。
それをキューピッドから受けとるとそれは弾けるようにして消えてしまった。
「ターシャ?なにこれ?」
『それは魔導書と杖じゃ。まず魔導書を開き…』
ボクは言われたように魔導書を開く。そこには見たこともない記号やら文字がびっしりと敷き詰められていて…こんなもの読めるか!そう怒鳴ってやろうと思ったのだが…
「嘘だ…読める?」
『それがお主の力でもある。魔法使いは基本、一般人には読めぬように細工をする。しかし魔法の才能があるものはそれが読めてしまうというわけじゃな。さぁ、早速唱えてみよ!』
「え、え~と…スパリアム!」
━導時刻、沙与は…
「なに…あれ…」
夏波とはぐれてしまったので、校門の前でじっと待っていたのだが…まるで人間を蛇にしたかのような物が学校付近を辺りを見回すようにして、うろついていた。
「む?」
「ひっ!?」
だが、不運なことにその蛇男と視線があってしまった。
しまった。そう思った時にはもう遅く、それは私の目と鼻の先ほどの距離までに近寄っていた。
「ほう…さっきのやつと似たようなやつだな…」
蛇男は私を見て舌なめずりをした。早く逃げなければ!そう思っていても体がすくんでしまって動けなかった。
「たす、助けてっ!」
「さて…」
もう…駄目だ…。
このまま私は殺される。そうして死んで行く。
ああ…せめて高校に入学して、夏波と一緒に話したかった。笑いたかった。
さよなら
頬を涙が伝わっていった。
「メテオォォォォ!インパクトォォォォォ!!!」
「!?」
もう全てに諦めかけたその時、蒼くすみわたった空から一筋の声が響き渡った。
━少し前…
「は?」
あれ?おかしいな?足が地面につかない。
「ふぇ?」
ふと、足元に目を向ける。そこには…
「あれ?やっぱり地面が…地面が…ない!?」
まてぇぇぇぇ!!落下してる!落下してるからぁぁぁ!
「ターシャぁぁぁ!!おい!てめぇぇ!どうしてこうなったぁぁぁ!!」
『わらわのせいではない!お主が正確に目的地をきめていなかったからじゃ!』
「それを早く言えってぇぇぇ!」
『安心せい。今はY軸がずれただけじゃ。X軸とZ軸は偶然にもぴったりじゃ。つまり、今のお前の真下には蛇の化け物がいるじゃろうなぁ』
「本当か?よし…ならば…」
下から上に吹く風に逆らいながら、なんとか魔導書を開きページをめくっていく。
「これだっ!メテオォォォ!インパクトォォォォォ!」