第19話 魔力の結晶体
「固いっ…」
やはり、この程度じゃびくともしないか…。
しかも、さっきよりも皮が固くなってる気がする。
「ちっ」
舌打ちしながら、魔導書を開く。そして風属性魔法のページを流し読む。
「これだ、サーミシャル・フレスト!」
魔法を唱えて、左手をビヴォーサの皮につける。
「らっ!!」
その瞬間、風が鎌のように集まり手のついている場所を斬りつけ始めた。
なお、ボクの手にはダメージはないらしい。
「これがほんとの【鎌】いたちってか?」
もちろん一回だけではその鋼のような皮はびくともしない。だが、正確に。なんども同じ場所を斬りつければ…
「ギャ?」
だんだんと皮に亀裂が入り始める。
「メテオ・インパクト!」
そして、亀裂の入った場所に杖を思いっきり叩きつける。
バキンという音と共に、一部分だが、皮が剥がれた。
「ギャァァァァァ!?」
鳴き声とは違う、悲鳴をビヴォーサが上げる。
「よっし…」
「お前の敵は何も一人とは言ってないんだよなぁ」
「っ…がっ!」
一瞬気を緩めた隙に、レインが背後に回っていた。
あわてて、その場を離脱しようとするもこちらが強烈な横蹴りを食らってしまう。
「あぐふっ!」
そのまま吹き飛び、ビヴォーサの背中から転落する。
「なんだぁ、ターシャ。こんな雑魚を私と戦わせようってかぃ?君の勘も随分と濁ったようだねぇ」
「弱くて悪かったですねっ」
そもそも、ボクに武術の経験はない。見よう見まねで全てやっている。あとはゲームとかの動きを参考にしたりしている。
戦闘経験なんてないし、そもそもどう立ち回ればいいのかすらわからない。
あるのは死んだことだけ。
「痛かったなぁ…ビヴォーサぁ…その痛みをあいつにぶつけてやれぇ?」
「ギャっ!」
レインの言葉に答えるようにヴィオーサはこちらに猛突進してきた。
「くっ!」
いそいでその場から横にダイブ。
間一髪でプレスハムになるのを回避した。
「はぁ…はぁ…」
「なんだぁ…?もう体力切れかぁ?」
ずきりとお腹に鋭い痛みが走った、
嫌な予感がし、そちらに目を向けると案の定、ふさいだ傷が開いていた。
「う…」
それを知った瞬間から、全身から血の気が引いていった。
今まではアドレナリンとかいうやつが出ていたのだろうか?
「よしぃ!今がチャンスだぁ!やれぇ!」
それの背中に乗ったレインがこちらに指差して声を張り上げる。
「ギャっ!」
そして再び突進を仕掛けてくるヴィオーサ。
しかし、さっきのようにまっすぐこちらに突っ込んでくるなではなく急に90度回転して横っ腹を見せてきた。
「らっ!ウォーター・サルマリア!」
そして、レインがこちらに向かって水色の球体を放つ。
「っ」
それを片手で持った杖で叩きおとし、魔導書を急いで捲る。
「なにか…ないかっ!?」
この窮地を脱出する方法。そして、この目の前にいる化け物とその主を倒す。そんな魔法が…
「これは!?」
たまたま、目に止まった魔法を読んでみる。
召喚魔法の項目だ。
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【ランダム召喚魔法】…ミラネス・カウシン
欲しい物のジャンルを言えば、そのジャンルの物が出てくるよ~ん♪
あ、でも絶対に欲しい物が出てくるとは限らないからね~(笑)
君の物欲センサーによってか・わ・る・か・も(笑々)
(°д°;;)
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うざい。
何が♪とか(笑)だ!命の危険がある場所だぞ!?しかも(°д°;;)ってなんだよ!!
ふざけんな!!
「さぁやれぇ!!」
レインが声を張り上げた。
そうして再び、その化け物はこちらに一歩一歩近づいてきた。
「今度こそ…無理。死亡確定系ストーリーですわ」
そう、全てを諦めかけたときだった。
「…って!」
「?なんだ?いまの」
「頑張って!お姉ちゃん!!」
幼い少女の声が絶望の闇の中に一筋の光を産み出した。
「がんばれ!」
「よくわからんけど!がんばれ!」
ざわざわと少し離れた場所から応援の声が聞こえ始める。
「空は飛んで、術みたいなの使って最初は俺達を殺そうとでもしてるのかと思った。だけど!このチビッ子を守った!だから今度は俺達が守らないといけないんだ!」
低い大人の声が響き渡る。その後、ワァァァ!と歓声が巻き起こる。
そして、誰もが想像想像しなかった常識を越えることが起きた。
歓声に集まる人々から金色の光がこぼれ始めたのだ。
「!?」
『なんじゃ!?』
「なにそれぇ」
「ギャァァ?」
「「「うおぉ!?」」」
ボクも、黙りこくっていたターシャも、光を出している等の本人達も、レインもヴィオーサも驚愕の声を出した。
その光は一斉に移動を始めた。その行き先は
夏波 蒼。もとい、冬山紅華。
「くっ」
その眩しさにボクは目を瞑った。
――きて
――つよく…生きて…
『そんな…馬鹿な!!こんなことあり得るはずが!』
「?」
ターシャの声で意識が明白になった。
それと同時に杖を持っていた手に木のごつごつとした手触りとは違う、もっと滑らかな物があった。
ゆっくりと瞼を持ち上げるとそこにはほのかな蒼白に輝く刃に魔方陣が刻まれ、金色の柄に瑠璃で装飾が施された剣…
ミカナ・ライルがあた。
「そっ、その剣はぁ!?」
レインは驚きのあまりヴィオーサの背中から落ちそうになっていた。
「レイン…」
ミカナ・ライルの握り具合を確かめる。
「まだ…勝敗は、わからないよ?」




