第15話 でかぁぃ!!なんじゃこりゃ
「はて…」
鳴き声の主はどこだろう…。見回した限り、学校の側の公園にかなり尖った岩?が飛び出ているけど…。
「まさか…透明人間か!?」
もしかしたら今、真後ろにいるかもしれない!
しかし、あわてて振り替えるもそこには何もなかった。むしろ空中で急な方向転換をしたため、思いっきりバランスが崩れた。
「とと…」
しばらく周りを見て回っても、それらしき姿はなかった。
「まさか、鳴き声だけだして逃げた?なんと気弱な…」
ははっ!笑っちゃうの!
まぁ、一応この岩だけどうにかしとくか…。邪魔だろうし、ちっちゃい子がこの上座って痛い思いするのも気が引けるし。
「岩くらい片付けてけって…もぉ」
なんかイラっときたから、憂さ晴らしに岩を蹴飛ばしてみる。
「ギャァァァァァァァァァァ!!」
「ほわいっ!?」
蹴った瞬間にまたあの鳴き声が聞こえた。
うん…なんか嫌な予感がする。
「よし…も一回…えいっ」
「ギャァァァァァァァァァァ!!!」
「……まぢ?」
これ、岩が化け物やん。
「なら、教われる前に壊す!!メテオ・インパクト!!」
軽くジャンプして、杖を岩に向かって叩きつける。
「らぁっ!!………………」
電気を流したような痛みが全身に走る。
「いってぇぇぇぇ!!!」
かったぁぁぁぁぁぁぁ!!
「地面にも当たっても痛みは届かないのにぃ…」
岩が砕ける前にこっちの腕が粉砕しそうだ…。いででで…。
「ギャァァァァァァァァァァ!!!」
「おっ?」
今までも大きな声が空気を振動させた。
そして地面にいくつもの地割れが出来上がる。
「これは…まずい!」
本能がここにいてはいけないと告げる。
急いで杖で地を叩き空に舞う。
「こ、これは…」
公園を壊しながら、姿を表したのは体を真っ赤に染めた化け物。
しかも…
「でかぁぃ!!」
多分、学校の校舎分くらいあるよこれ!どうすんのこれ!
「まてまてまて!!!!真面目にやばない!?これ!!」
いや、まてよ。この化け物が必ずしも悪者とは限らない。ちゃんと話し合って見ないと。
「あの~♪すみません~♪アナタワルイカンジデスカ?イイヤツナラドッカイッテ。ワルいヤツナラドッカイッテ」
化け物の正面に言って確認してみる。この化け物ぶさいくやな。
「ギャァァァァァァァァァァ!!」
刹那、返されるのは返事ではなく前足。鋭い爪が空を掠める。
「危な!何すんじゃいデカブツ!ライト・レーザー!」
魔導書をめくり、唱える。その名の通り光線である。
それは見事に化け物の顔面に命中。爆発し、砂埃がまるで雲のように化け物を覆う。
「なんにもしてないのに襲うから…」
ボクは悪くないぞ!これは正当防衛だ!
「ぐ…」
「おろ?」
「ギャァァァァァァァァァァ!!!」
砂埃が飛び散り、そこから真っ赤な化け物がぬっと顔を出す。
「まだ耐えるんかい。まあ一筋縄で行くとは思っていなかったけどね」
ふぅ…と一呼吸おいて突撃しようと思ったその時。
あたりが急にざわめき始めた。
――ざわざわざわ…
「?なんだろ?」
ボクは魔導書をぺらぺらと流し読み、唱えた。
「ミアナラ・サントラ」
ミアナラ・サントラ…これは自身の聴力、視力を自在に操ることができ聞きたいもの。見たいものに意識を傾けることでその効果が発動する…と魔導書には書いてある。
「?」
少しだけ視力を上げてみると、地上には沢山の人が集まっていた。
「なに?マスコミってやつ?」
視力を元に戻し、それに耳を傾ける。
――なに?あれ…でかぃ…
――映画の撮影?
――こんな学校の側でやるか?それより上を見てみろ。最近テレビでよく流されてる女の子だぞ?
――本当だ。ってかあれ空とんでない?
「ボクか?ってかなんでこんな巨大な化け物がいるのに皆寄ってくるんだよ!」
ひっとすると、人間の思い込みによる力なのかもしれない。あまりにも自分の思っている『常識』とはかけ離れすぎていた場合、それを誰かによる悪戯。または幻覚と勘違いしてしまうのかも知れない。
だが、この場合周りにいる人が同じ幻覚を見ているはずがない。という思い込みから特撮映画などと思っているらしい。
「マジなんだよなぁ!くそぉ~!」
ぼけっとしてたら振るわれるパンチ?を避けながら悪態をつく。
――おい、あれこっち来てね?
――なにやってるんだよ!あのガキは
「誰がガキじゃぁぁ!いっそお前んとこいかせてやろうかぁぁ!」
って言っちゃったけど、そんなことできるわけないよ。ボクの良心が痛むし。
「なんとかしてこいつを止めないとなっ!バーンアソマリスっ!」
物事の全ての原因でボクを殺したシャ~ラを一発で倒した魔法だ。
あの時は一発で魔力が尽きたが、少しずつ練習しかなりの回数を連続して出せるようになった。
ターシャによると、魔力《マナ》は使えば使うほど循環機能がよくなるらしい。
結局は努力なんだよなぁ。
杖先から放たれた火球は化け物の顔面に命中。
命中してから火を放つこの魔法は化け物の顔に火を着けた。
「ギャォォォォ!」
「おっと?これは効果ありげだにぃ」
鳴き声ではなく悲鳴に近い声を上げた。
しかし、化け物は地面に顔を押し付け消火した。
「あ…消された」
まてまてまて!!勝ち目ないやん!こんなの!どうせいっちゅうね!
そして、ボクが放った魔法に怒り化け物は地上に群がる人々に突進を始めた。
「っ!まずい!」
下に人がいること忘れてた!
ボクは慌てて地上に降下する。
いきなり怪物が自分たちに突進をしてきたからか。皆逃げ出した。
「ほっ…よかっ…」
ほっと安堵の息を着こうとした時、視界にちらりと小さな影が2つ移った。
「よかねぇじゃん!」
降下のスピードを上げ、それに近づく。幼稚園児と思われる少女とその親であろう。
少女は落とした人形を拾おうとし、親はそれを止めている。
「っ」
化け物は刻一刻と距離を積めてきている。このままだと、彼女らは殺されてしまう。
「させるかぁぁ!シネリアル・シスト!」
加速魔法を使って一気に近づく。
化け物の方にちらりと目をやると、それは腕を振り上げていた。
潰す気か、それともその鋭利な爪で叩き切るつもりか。
「間に合ぇぇぇ!」
二人を左腕で抱えて勢いに乗って運ぼうとする。が…
――ベギン
――ザシュ
嫌に生々しい音が聞こえ、辺りに鮮血が飛び散った。




