第14話 魔術師VS霊能力者(inテニス)
「ふぅ…」
ヤバいぞぉ…体力、魔力ともにかなり削れてきた。
そもそも、霊力は生まれながらに持ってて使えるもの。
逆にボクは魔力《マナ》の存在を知ってまだ一週間も立っていない。
完全に経験不足じゃん!勝てるわけないやん!
「っ!」
麗奈の鋭いサーブがサービスボックスに突き刺さるように飛ぶ。
「らぁっ」
そのボールを麗奈のいない方向に向かって返す。
それをその姿と割にあわない速さで麗奈は走り、余裕気に返す。
そしてそれはボクから遠く離れた場所に入り、麗奈のポイントとなる。
ムキーー!!
どうすればいいんだよ!!腹立つ!
あ、そうだ。
「タイム!ちょっち失礼」
「?」
ボクはその場を離れ、沙与に近づく。
「沙与…この先輩達をちょっと遠ざけてくれない?やりたいことがあって」
それを聞いて、沙与は何をするか悟ったのかのようにうなずいた。
「わかったわ。頑張って『女子てにすらいふ』を送ってね」
「おぇ~」
気持ちわり!!おろろろろろろ!!
沙与はその場を離れると先輩達と交渉を初め、しばらくするとこちらを向いてOKのサインをし、先輩達を引き連れてどこかへ歩いていった。
「…他の人をこの場から放して…何をする気?」
「あの人達は犬かい!?…まあ…ちょっとね」
ベンチに置いてあるリュックから魔導書を取り出す。
「ファシア!」
その瞬間、ボクは蒼から紅華へと姿を変える。
「…あなただったの。…紅い髪をした美少女がいるって聞いたけど…」
「悪かったですね!元がパッとしなくて!!ムキーー!」
なんだよ!なんで女体化したボクの方が評価が高いんだぁ!
「さぁ…さっさとやりましょ…」
「はいはい」
こいつのこのテニスにかける情熱はなんなの?
「っ!」
再び麗奈サーブ。
その鋭いサーブはまるで空気を裂くかのように、直線的に進んでいく。
「さっきのボクとは違うんだなっ!!」
それを魔力《マナ》を纏わせた右腕で打ち返す。
速いボールに対しては、あまり全力で打たなくてもいい。そのままの勢いで返って行くからだ。
しかし、力を入れなさすぎると衝撃で腕が弾かれボールに勢いがなくなりコートに入らなくなってしまう。
つまり、ほどよく力を入れる必要があるのだ。それがテニスの難しいところ。
だけど、力を入れる分にはコントロールさえ良ければ別に欠点はない。
「らぁ!」
つまり、魔力で強化した腕でボールを打つ。これすなわち最強!多分。
「…なに?」
ボクの打ったそのボールは彼女の正面に飛んだ。
普通ならそれは絶好球。確実に点を決められるような珠であることが多い。
しかし、これは違った。そのパワーとスピードで彼女はそのボールをラケットでとらえることができなかったのだ。
「これなら…」
これなら勝てる!!
そう、勝利を確信したときだった。
――ギャォォォォォォォォォォ!!!!
空気を震わすような悲鳴が、突如響き渡った。
「な!?」
「な、なんなの!?悲鳴!?」
「違う…悲鳴じゃない。…これは…鳴き声…」
「鳴き声!?」
麗奈らしくない、すっとんきょうな声を出した。
「こうしちゃいられない!」
借りたラケットを地面に置いて、リュックから縮小された杖をとり、魔導書をとり、軽く杖で地面を叩く。
「っと…」
念のため、姿をティナに変えておこう。今は良いけど誰かに見られてたら困るしね。
「なんだ…テレビでやってた少女って言うのもあなただったの。ここまでくると変態ね」
「やかまし!」
ボクはもう一度地面を杖で叩いて空を舞った。




