第11話 正体、ばれる
「それにしても…蒼、お前そこまでの魔法をよく使えるな」
「え?いや…、うん。いろいろとあって……ふぁっ!?」
までまでまでまで!!今蒼って言った!?ななななななななななななんで!?
「まさか、我が気がついていないとでも?我だって闇魔法《ダークマジック》の使い手だ。同じ魔力《マナ》が流れていることなどすぐにわかる。蒼と紅華とやらもな」
「おふぅ…」
まぢかよぉ…恥ずかしい…。ぷぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!
ガクッ(←地面に伏した音)
「それより、ここから去った方が良さそうだな」
「ふぇ?…ひゃには?(え?なにが?)」
「多大な霊力がこちらに向かってきている。この強さだと…人の子だな」
そうオブラートが言い終わった後、なにやらドタドタとたくさんの足音が重複したものが響いた。
「「「キャァァァァ!前テレビに出ていた人だわぁぁぁぁぁ!」」」
「「「うおぉぉぉぉ!可愛いんごごぃぃぃ!!」」」
そして重なる汚ならしい声。
これは…不味い…。
数えきれないほどの我が校の生徒が学年を取らず、我先にとこちらに向かって全力疾走をしている。
「死ぬっ!!!」
今、直感的に生命の危険性を感じた。このままではまた圧死する!
もう圧死はご勘弁!
ボクは杖を頼りに立ち上がり、逃げようとする。
が、
「あふっ!」
また体に力が入らなくなった。そのままなす術なく地面に倒れる。
「オブラートぉぉぉぉぉ!なんとかしろぉぉぉぉ!」
「がんばれ」
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
オブラート!!お前一生恨んでやるからなぁぁぁ!覚悟しろよぉぉ!
そうしてボクは生徒の波に飲み込まれたのだった。
「あふぅ…」
生徒達の中でもみくちゃにされている時になんとか『冬山 紅華』に姿を変えて難を免れた。が、その圧力のあまりボクの体は限界に達し今ここで死にかけているわけだ。
あいつら…蜜蜂かよ…
「ふ、不覚…」
そして、ボクのそばでもう一人死にかけている人物がいた。
「お前も巻き込まれたんかい!!」
すんでいることで魔力《マナ》切れしたボクを見捨てたオブラートだった。
「ここまで幅が長いとは…」
多分、オブラートはボクだけに襲いかかってくると思っていたのだろう。
しかし、思った通りにいかないのが現実。
その生徒が廊下を埋め尽くしてしまいそばにいたオブラートも飲まれてしまったのだ。
「残念だったなぁ~…、ボクを素直に逃がしていれば巻き込まれずに済んだのに…」
「お前こそ…人気者は辛いな…」
そうしてボクらはその後の授業に出ることができなかった。
――放課後
「にしてもお前はもう少し魔力《マナ》の使う量を制御せねばならんな…」
オブラートに肩を貸してもらって家に向かっている途中、オブラートがポツリと呟いた。
「しょうがないだろ…、昨日初めて使ったんだから…」
「そうか…、なら仕方な…。ふぁっ!!まぢかよ!?」
おー、おー。オブラートが取り乱してる。おもしろ。
「うん、ま、まぢ」
「………」
その瞬間、オブラートは白目を向いて天を仰いだ。
「我は…長年かかって魔法を練習して…習得したと言うのに…」
「ボクは初日で使えてしまったと」
「およよよよよよよよよぉ…」
オブラートの瞳から滝のように涙が溢れ出した。
なんか…悪いことしたかもなぁ…。




