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初依頼

朝起きて、朝食を食べに1階に降りて行く。

「ヘレンさん、おはようございます。」


「セツナ、おはようさん。朝食はもう少しで出来るよ。」


「少し体を動かしたいのですが。裏庭を使ってもいいですか?」


「ああいいよ。ただし物は壊さないでおくれよ」


「わかりました。」

裏庭に行き、ガンツさんにもらった剣で素振りや剣術の型を一通りやっていく。

ひと段落ついたところで声をかけられた。

「見事だな。」


「ありがとうございます。」

褒められたようなので頭を下げる。


「見ない顔だな?新しく泊まってるのか?」


「はい。昨日からお世話になってます。冒険者のセツナです。」


「同業者だったか。俺は冒険者のロイだ。良ければ手合わせしないか?」


「手合わせですか?しかし私には対人の経験がないのですが、、」


「なら尚更だ。冒険者として対人の経験はあった方がいいぞ。ほれ、刃引きした剣だ。」

放って渡された剣を反射的に受け取ってしまう。


「まあ軽く打ち合うぐらいだから、そんなに難しく考えることはないさ。」


「わかりました。それではよろしくお願いします。」


「それじゃあ、この銅貨が落ちたら開始だ。」

そう言って銅貨を上に放り投げた。


決まってしまったので気持ちを切り替えて集中する。開始と同時にロイが間合いを詰め袈裟斬りを仕掛けて来たので左に受け流しつつカウンターで斬り込んでいく。ロイは受け流されるとみると横に飛びカウンターを躱しつつ間合いをとる。


「型の時も思ったがなかなかやるな。それで本当に対人経験がないのか?」


「はい。魔物とはありますが、対人はこれが初めてですよ。」


「そうか、ならもう少し上げるぞ。」

何を上げるかは言わないが、一段上の速度で間合いを詰めてくる。フェイントもかけつつ斬り込んで来るが、見極め躱しカウンターを仕掛ける。これは躱せないと判断したのか剣を割り込ませ防御をしてくるが、ロイの身体ごと少し吹き飛ばす。


「おいおいそんな細い身体のどこにそんな力があるんだ。まあいい次で終わりにするか。いくぞ!」

今まで以上の速度で近づきつつ、剣を引き込み突きを放とうとしている。胴体に放ってきたので半身になって躱す。躱された瞬間に放った突きを引き戻し更に突きを放とうとしている。2度目に放たれた突きを躱しながらロイの剣を叩きつける。


「これは俺の負けだな。」

後方に距離を取ったロイは半ばから折れた剣を見ながら負けを認めた。

「これを初見で躱しながら反撃されたのは初めてだ。」


「ありがとうございました。剣を折ってしまいすいません。」

礼をいいつつ頭を下げる。


「訓練用だし高いもんじゃないからいいさ。セツナは見ない顔だが、この街には最近来たのか?」


「いえ、冒険者になりに来ました。」


「なりに来た?じゃあFランクか?」


「はい。昨日登録して冒険者になりました。」


「そうか。まあセツナの実力ならすぐにランクは上がるだろう。」

冒険者に成り立てでも弱いわけじゃない。実力主義の冒険者ならランクや見た目で判断しないってことかな。


「じゃあ改めて、俺はAランク冒険者のロイだ。この街ならある程度顔がきくから何かあったら言ってくれ。」


「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします。」


「水を汲みに来たんだった。それじゃあまたギルドでな。」そう言ってロイは桶に水を汲んで宿に入っていった。


その後、朝食を食べギルドに向かうことにした。ギルドに向かいながら街の様子を見ていると、早朝にも関わらず屋台や露店はいくつか出ている。活動が早い冒険者がいるからだろう。街並みは中世のヨーロッパ風だが、汚いイメージがある中世ヨーロッパ風とは違い下水処理がしっかりされ、ゴミもほとんど落ちていない。過去の転生者が下水技術を教えたのかもしれない。


世界記録(アカシックレコード)を使えば、所謂内政チートはやり放題だが目をつけられることが確定するからあり得ないな。万が一、億が一建国となればある程度やってもいいと思うが、王なんて面倒くさいのはあり得ないな。権力なんて持てば持つほど面倒くさいものだ。


最終的には静かに暮らしたいからなー。どこで隠居するかだよな。死の森で結界を張ってある程度の土地を確保するってのもありだよな。魔法を駆使すれば畑やら田んぼやら出来そうだし、、、、なんかいい考えに思えてきたな。まあ他の国にも1度は行ってみたいし、色々回ってから考えるかな。


そんな考え事をしているとギルドに着いたので掲示板で、いい依頼がないか探し、薬草採取の依頼書を手に取ったところで後ろから声をかけられた。


「ようセツナ、さっそく依頼か?」

後ろを振り向くと今朝手合わせしたロイがこちらに近づいてきていた。同時に音がした方に視線を向けると酒場ではこちらを見ながら立ち上がろうとした者達がロイを見るなりまた座ったようだ。


「ロイさん。はい、最初なので薬草採取をしようかと。」


「セツナの実力なら討伐系でも十分こなせるだろう?さっさと狩ってランクを上げたらどうだ?」


「依頼は一通り経験したいので。」


「なら、森に行った時についでにゴブリンぐらい狩ってくれば討伐の常時依頼として処理してくれるから見かけたら狩ってくるといいぞ。」


「はい。ありがとうございます。」

会話が一区切りついたところでロイの後ろにいた3人のうち2人の女性が話しに入ってきた。


「ちょっとロイいつになったら私達を紹介してくれるのよ?」

「その子が今朝言ってたロイに手合わせで勝ったセツナ君?」


「今から紹介してやるからそんなに怒るなよ。」


「セツナ、こいつらは俺のパーティーメンバーで、ダガーを使うミリーと、回復系の魔法を使うセラと、後ろにいるのが盾使いのエリックだ。」

ショートヘアの女性がミリー、ロングヘアーの女性がセラ、後ろにいる男性がエリックというようだ。


「昨日冒険者になったFランクのセツナです。よろしくお願いします。」


ロイに勝ったという言葉で周りが少しうるさくなる。

「おい、疾風迅雷に勝ったとか言わなかったか?」「けど昨日登録したやつだろ?」「絡みに行かなくて良かったな。」とか色々聞こえてくるが、疾風迅雷?と不思議に思っていると、ミリーが答えてくれた。


「ロイは風と雷の魔法を使って身体強化をするから疾風迅雷って二つ名で呼ばれてるのよ。ミリーよ、こちらこそよろしく。」

「よろしくねー。」「よろしく。」

ミリーが元気な感じ、マリーがおっとりした感じ、エリックが寡黙な感じかな。


「俺たちは別の依頼を受けるが、セツナも頑張れよ。セツナなら大丈夫だと思うが薬草採取だからって油断するなよ。」


「はい。ありがとうございます。」

ロイ達と別れて受付に向かい、依頼書を受付のエリーに渡す。


「セツナ様、おはようございます。」


「エリーさん、おはようございます。この依頼を受けたいのですが、、」

挨拶をして依頼書を渡す。


「依頼の受注ですね。確認致しますのでしばらくお待ち下さい。」

「タイリ草の採取ですね。5本ワンセットで3セットの採取で銀貨1枚大銅貨5枚、期限は3日となっております。タイリ草は形は分かりますか?」


「大丈夫です。分かります。」

タイリ草は回復薬の材料となる薬草で、直接食べたり、すり潰して傷口に塗っても多少の効果のある冒険者に必須の薬草と言ってもいい。


「東門から出て街道沿いにある右手の森にありますので、お気をつけて下さい。」


「はい。では行ってきます。」


エリーに別れを告げ、ギルドを出て東門に向かう。東門には昨日お世話になったザールさんがいた。

「ザールさん、おはようございます。」


「おっセツナ、おはよう。冒険者にはなれたかい?」


「はい。これから薬草採取に行ってきます。」

そう言ってギルドカードを渡す。


「確かに。じゃあちょっと待っててくれ。預かってた大銀貨を取ってくるからよ。」

ザールは詰所に戻るとすぐに戻ってきた。


「ほら、預かってた大銀貨だ。じゃあ気をつけて行ってこいよ。日が落ちると門が閉まって入るのに面倒な手続きがいるからそれまでには帰ってこいよ。」


「分かりました。それでは行ってきます。」

門を抜け街道を進んで行くと右手に森が見えてきた。ここが依頼のタイリ草のある森だな。


タイリ草を探しながら森を進んで行くと、タイリ草はすぐに見つかり、依頼の分の数は揃ったので自分用に何本か取っておき、もう少し探索を続けることにする。


森を奥に進んで行くと、いくつかの魔物の反応がある。せっかく剣を手に入れたので剣で討伐しようと思う。

Fランクのゴブリンが3体が太めの木の枝を持って歩いている。ゴブリンは緑色の背の小さな一般的な成人男性が一対一で勝てる最弱の魔物だ。


後ろから近づきすれ違いざまに剣を2回振るい2体のゴブリンの首を斬りとばす。

仲間がやられたのに怒ったのか叫びながら突撃してきたゴブリンの木の枝による攻撃を躱し、最後の1体の首も斬りとばす。


倒したゴブリンの討伐証明である右耳を切り落とし麻の袋に入れストレージにしまう。

他の死体は後で処理するためにストレージに入れておく。


更にタイリ草以外の薬草もいくつか採取しながらゴブリンも何体か討伐した。

念の為、少し開けた場所で土魔法で穴を作りゴブリンの死体を入れ、周りに結界を張ってから火魔法で焼く。


魔物の死体は大量に討伐しない限りアンデット化は稀で、放置しても大きな問題にはならないが、他の魔物の餌になる可能性がある為、基本的には焼くことが推奨される。火魔法を使えないパーティーでは油と火打ち石や火の魔道具を使って焼くことが多い。


帰りはゴブリンに遭遇することもなく森を抜け、街にも夕方前には帰って来ることが出来た。


そのまま真っ直ぐ冒険者ギルドに向かい、依頼の報告を行う。

「エリーさん、依頼の報告に来ました。」


「お疲れ様です。では依頼のタイリ草をお願いします。」

依頼のタイリ草15本を渡すと状態の確認を始めた。

「確かに15本、状態も問題ありません。」


「後ゴブリンを討伐したのですが、討伐証明はここでいいのでしょうか?」


「はい。ゴブリンならここで大丈夫ですよ。」

ストレージから袋を出しそのまま渡す。

「ゴブリン8体ですね。1体大銅貨3枚なので合わせて銀貨3枚、大銅貨9枚になります。」

報酬を受け取り、ギルドを後にする。


宿屋に戻り夕食を食べた後、時間があったので少し調べ物をすることにする。

部屋に鍵をかけ、世界記録(アカシックレコード)を起動する。まずは風呂に入り汚れを落としてから読むことにする。


調べるのは冒険者ギルドとフィラーの街についてだ。


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