第6話 ルルの特別な日
訂正:以前に場面の転換は◆◇、時間の転換は〜〜で示すと書きましたが、どちらも◆◇で統一する事にしました。
それではお楽しみ下さい!!
「君の真名はーーーー“柊”だ。」
僕は彼女にそう名付け、解き放つ。鞘から抜き切った瞬間に虹色の光彩は彼女へと収束していった。今はもう柊の刀身は艶のある鋼色になっている。よくよく見てみると草臥れてボロボロだった大部分が綺麗に戻っている。恐らく、これが彼女の本来の姿なのだろう。
「その通りでございます。主様の大変上質な魔力を頂戴致しました故、この通り私本来の力を取り戻しました。」
僕がまじまじと柊を見ていた為、彼女はそれを察して答えてくれた。柊が言うように確かに先程まであんなに傷付いていたのに今では彼女が纏う風格は名刀のそれだ。うん、決まりだ。この子しかないな。
「い、今のはなんだあ?太刀が光ったと思ったら今度は……」
「太刀が話したな。これが“叡者の魔道具”か。」
「ガラードオジさん、この子に決めたよ。」
「お、おおう?」
「この子を貰い受けます。アーク、いいよね?」
「お前がそう決めたのならいいだろう。そう言う事だ、ガラード。この太刀の代金を払おう。」
アークにそう言われるとガラードオジさんは困り顔を浮かべた。なんでも当然の事ながらこれまでインテリジェンスアイテムなんて取り扱ったことがないし、この太刀に関しては最初に言ってた通りかなり高価な代物だと予想される。更に正直に言うと売れるような物じゃないと思っていたそうだ。まぁ、お店の奥から出してきたしね。その事情を聞くとアークが、
「む。それではルルにプレゼントとして買ってやれないじゃないか。どうしたものか。」
「あん?旦那、そんなこと考えてたのか?武器なんてお嬢みたいな女にやるもんじゃないだろう。」
「だ、だから僕は女の子じゃ……」
「あーあー、皆まで言うな!分かったぜ、旦那。こいつに値段をつけてやる。」
むぅ、全然分かっていない。だが、これで滞りなく柊を引き取れそうだ。アークもガラードオジさんの言に嬉しそうに綻んだ。そんなに僕にプレゼントを買ってくれるのが嬉しいのかな?そう思うと僕も嬉しいや。
「ううん。しっかし、最初に言ったがこいつは相当価値の高い武器だ。インテリジェンスアイテムで、これは定かじゃあないが神代の創世記時代の代物。あ、そういやそいつ自身に聞きゃいいじゃあねぇか。おい、そこんとこどうなんだ?」
と、オジさんが柊に聞くが……
「………………」
彼女は反応しない。どうしたんだろ?先程はしっかりと話していたし、それにアーク達も反応していたところを見ると僕に直接語りかけていた訳でもないからオジさんの質問は聞こえているはずだけど。
「ねぇ、柊?君はいつの時代に生まれたのか分かる?」
僕がそう問い直すと、
「はいっ主様!私めが生まれたのは紛れもなく創世記でございます。そして、私の創造主は創世神様です。」
嬉々として答えた……な、なるほど僕との会話でしか話さないと。しかし、凄い事実が彼女の言葉から明らかになった。
ガラードオジさんも途中までは額に青筋が浮き出ていたが、それを聞いた途端真剣な表情を浮かべる。アークも同様だ。
「ふむ。それが真実だとするなら、この太刀は聖遺物ではないか。」
「あぁ。こいつは想像よりも更にとんでもねぇ代物だったな。まず、未だそんなに流通していない刀という事、インテリジェンスアイテムだという事、こいつ曰く創世神アリステラの聖遺物であるという事。そして、この太刀には関係ねぇ事だが今の時期も悪い。何せ、最近世を騒がせやがる魔王軍の所為で武具防具やそれらに伴う物資の物価そのものが高騰してやがる。それらを鑑みて、最低でも40万テラ……いや、50万テラは貰いたいな。」
ご、50万テラ……つまり金貨50枚。た、高い。
いや、オジさんも言っていたが妥当な線、寧ろ安い方なのか。最低でもって言ってるし。
この世界アネスフィアの通貨は五代大陸共通であり、下の価値から銅貨、銀貨、金貨、王金貨がある。更に単位は“テラ”で統一されている。銅貨1枚=1テラ、銀貨1枚=100テラ、金貨1枚=10000テラ、王金貨1枚=100万テラである。この国での主食に当たる黒パンは5テラ、つまり銅貨5枚。もう少し贅沢するなら、白パンは15テラ、銅貨15枚。宿屋一泊朝食付きで考えると約150テラ、銀貨1枚に銅貨50枚だ。だけど、この辺りの価格は周囲の状況によって上下する。何故なら、先程最近は魔王軍の活動がよく見られると話していたように周辺の治安が危ぶまれると、その宿屋がある街、又は国に行商人などが寄り付きにくくなる。単純に言えば物流が滞り、物価が高騰するのだ。行商人が来なければ宿屋を利用する者も減るし、食事を提供するにも行商人が来なければ食材を確保できないという具合である。
武器に関しても周辺の治安が悪くなれば、国も治安維持の為保安隊の編成で武器の需要も高くなるし、ましてや魔王軍が活発に成れば魔物も増加し冒険者も武器を求める。高くなる需要に供給が追いつかなくなり、武器の価格も上がる……という悪循環が成立してしまう。
オーソドックスなロングソードの価格が銀貨10枚、1000テラであるのを鑑みれば、どれだけ高いか分かるだろう。
更に言うなら、普通の庶民の1年で稼げる平均的な額は良くて金貨2枚に銀貨数十枚だ。金貨50枚の価値がどれだけのものか想像できると言うものだ。
「むぅ。金貨50枚か、流石に今は手持ちが無いな。」
「ハハハハッ!さすがS級冒険者様だな払えない訳じゃあないのか!だが、安心しなオレは貰いたいっつたろ。旦那が今、持ってる分でいいぜ。」
「いいのか?先程お前が言っていた事情も分かっているつもりだが。」
「ハハハハハッ!いいんだ、いいんだ。旦那、お嬢の誕生日のプレゼントにしてやるつもりだろ?ならさっきも言ったがお嬢はオレの子供みたいなもんだ、俺からもお祝いとしてそいつを安く売ってやるぜ。それにその太刀も相当お嬢を気に入ったらしい。武器はいい使い手の下にあってこそだからな!」
そう言ってガラードオジさんはニカッと豪快に笑った。なんて漢気に満ち溢れた人なんだガラードオジさん。やはりガレオスに通ずる所があるね。
その後、アークはガラードに金貨30枚を渡して僕を連れて店を出た。そして、一度冒険者ギルドに戻ってお金をある程度下ろしーー冒険者ギルドは前世の知識で言う銀行の役割を担っているのだーーそのまま宿屋への帰路についた。
「アーク、今日は本当にありがとう!冒険者登録も出来たし、何より柊に出逢えたし!」
「ふふ、気にするな。今朝も言ったが今日はお前の誕生日なのだからな。」
「主様、同意するのは癪ですがそこの竜人の言う通りです。これは運命なのですから!えぇ、私めと主様には運命の赤い糸が」
「ははは……柊は僕以外には基本そんな感じなのかなぁ?一応、アークは僕の恩人で師匠で家族なんだけどな。」
と、早速腰に下げていた柊の言葉を遮るように言うと
「な、なんと!この御仁が主様のご家族!それは失礼した、アーク殿。しかし、主様と貴殿は種族が違いますがそれはどういう?」
「あ、あぁ。実はだな……」
なんと言う掌返し。基本的に僕に関すること以外はこんな感じなのだろうか?アークも珍しく戸惑ってるよ。
しかし、柊は何故こんなさっき出会ったばかりの僕を慕ってくれているのだろうか?確かに僕も彼女を見た瞬間に『この子だ』って感じたんだけど、これはまた何か違う気がするしなぁ。
と僕が考えている間にアークが柊に僕の事情や、僕と『四神の加護』の馴れ初めを説明をし、そして僕がこの都市に来てから6年間お世話になっている宿屋『迷い猫の尻尾亭』に着いた。
「あ、そういえばみんなもう戻ってるかな?夕飯頃に戻るって言ってたけど。」
「ああ、お前が帰ってくるのを待ちに待っているじゃないか?」
「??」
「まぁ、入れ入れ。」
僕がアークの言に首を傾げると彼は背中を、ぐいぐいと押して宿屋に入れた。すると、
「「「「「誕生日おめでとー(だぞ)!!!」」」」
「!?」
突然の大音量で僕は思わず飛び上がってしまいそうになった。そこにはマリアやシルヴィ、ガレオスの『四時の加護』メンバーに宿屋の主人ルドールさんに女将のティティさん、そして2人の娘のアンリエラが僕を迎えていた。僕は目を白黒させて暫く硬直してしまった。
「あははは、ルルったら吃驚して固まっちゃった!」
「ガハハハ!!サプライズは成功だなっ!!!」
「えぇ、この日の為に何週間も前に計画して来た甲斐がありましたね!」
「はぁ……吃驚して固まるルル様も可愛らしいです……」
「おいアンリ、その言い方は変態そのものだからやめなさいって言ってるだろ。母ちゃんから言ってやってよ。」
「あははは、あんたそれはいつもの事じゃないの!諦めな。」
前半の3人の言葉で理解する。これは僕の誕生日パーティなのだ。これまでの6年間は修行一辺倒でそういう催しをしたことがなかっただけに、物凄く感動して涙が出そうになったが、後半の会話で涙が引っ込んで笑いが込み上げそうになった。
さらさらと流れ、澄み渡る青空の様な空色の長髪を後ろでポニーテールに結び、僕を見てその髪と同系色の双眸を潤ませ頬を赤らめている残念系美少女は、この宿屋『迷い猫の尻尾亭』の主人ルドールさんとその妻で宿の料理の全てを担当する女将のティティさんの一人娘のアンリエラで、愛称はアンリである。この子は僕がこの宿屋にお世話になった初日から既に知り合っていた。いや、この子との初対面はとても印象に残っている。
あの時、僕が目を覚ましてそのまま修行に出向いた。クタクタになって宿屋に帰ってきた時にばったり会ったのだ。そして初対面の僕にはなった言葉が、
「……女神がいる」
誰がじゃい!!!って言いたかったけど、僕はさっきも言ったように修行でボロボロだった。4歳児の身体は当然それまで修行なんかしたこともなかったし、極限まで疲れ果てていたのだ。だが、彼女はそんなこと御構い無しに僕の手を引っ張り宿内にあるテーブルに座らせられ、彼女も当然のように隣に座り僕に怒涛の質問攻めをしてきた。「おなまえはなんていうの?」「どこからきたの?」「なんでそんなにきずだらけなの?」「なんでそんなにかわいいの?」兎に角根掘り葉掘り聞いてきた。もうその時僕は疲れで凄い眠気に襲われ船を漕いでいたこともあって、全部に正直に答えてしまっていた。
本当だったら、アーク達とも相談して僕の家名フォンダリアに関しては要らぬ厄介事を招きかねないので極力話さないようにと決めていたのにだーーこの時、アーク達も僕とアンリの様子を微笑ましそうに見ていただけだったーーそして、彼女は僕の家名を知っていたのだ。これは当然と言えた。何故なら“フォンダリア”と言えば迷宮都市で絵本にもなって、知らぬものはいないだろうと言うほどの『大賢者』の異名がある救国の英雄だからだ。その家名を聞いた彼女は、その舌ったらずの口調で僕に聞いてきた。
「ルルくん(先程の質問の中で性別を聞いた)は、えいゆうさまのかけいなの?」
「……ぅん…ぼくのおじいさまがね……えぃゆうさま……だよ。」
船を漕ぎながらも僕はなんの疑問も持たずに答えてしまっていた。まあ、そこまで頑なに隠す必要もないのかもしれないが。
するとアンリは、
「そっか、ルルくんはすごいおいえのこなんだね。……じゃあ、おいえにいっぱいしようにんさん、いた?」
「……んにゅ?…んー、いっぱいいたよ……」
「かわいい……じゃなくて。やっぱりいたんだ、ふーん。」
暫く彼女はその小さな手を顎に持っていき考える仕草をしていると、突然顔を上げてそれまで近くのテーブルでアーク達と雑談に興じながらこちらの様子を眺めていたアンリの親、ルーブルさんとティティさんに向かって、
「パパ!ママ!わたしきめたよ、ルルくんのメイドになる!!」
「ええっ!?」
「あらまぁ。」
そこからの行動力がアンリは凄かった。
まず、その日に反対する両親(主に父、ルーブルさん)を説得し、翌日にはメイドギルドーーその名の通りメイドを育成する機関。この世界には代々貴族の家に仕える家系などもあることから、幼少時から育成させるというのは珍しくなかったーーに登録しに行った。この時、アンリは僕と同い年の4歳だ。僕と違って前世の記憶なんてものは無い筈なのに、彼女の行動力には舌を巻いた。そしてその後はどんどん外堀を埋められて、現在僕が羽織っていた上着を当然の様に受け取り大事そうに抱え込み顔を恍惚とさせている彼女に至る。
何が彼女をここまでさせたのか、僕にはさっぱり分からないがなんだかんだでこの状況に慣れてしまっている僕が確かにいるのは事実だった。
「み、みんな、ありがとう。こんなの何年振りだろう。」
「今日はルルにとって特別な日だからな。ルーブルやティティにも頼んで、何週間も前から調整して貰ったんだ。」
「あぁ。アークさん達はこの迷宮都市に来る度にここを利用してくれていたし、ルシエル君に至っては6年もの付き合いだからね。なんとか調整して今日は君達以外利用客はいないから貸切だよ。」
「今日は思う存分楽しみな!あたいも料理に腕を掛けて作ったからね!!」
「はい。父さんと母さんの言う通りです。今日はルル様がこの世に生誕なさって下さった記念日なのです。こんな特別な日を祝わないなんてことはありません。」
3人はそう言って僕を真ん中の大きなテーブルの所謂誕生日席に案内してくれた。そして、そのテーブルになるのは所狭しと並べられた豪勢な料理だ。
「まず目の前にあるのは、ミノタウルスの肩ロースステーキだよ。」
ミノタウルスは単体でB級魔物指定されているとても危険な魔物だ。人間を優に超える4メートルの身長にその身体を覆う鋼のような肉体を持ち、見た目通りの筋力から生まれる膂力を生かして拳を繰り出して来る。上位個体にもなると冒険者などから奪い取った大戦斧で暴威を振るう。一見、筋肉張って先も述べたように鋼のように固くて食べれなさそうに見えるが、オニオと言う前世の知識で言う所の玉ねぎに当たる野菜をみじん切り、又はすりおろしてミノタウルスの肉に3時間つける下準備を行えば、その身はナイフがいらなくなるほどの柔らかさになる。更にミノタウルスの肉は余分な脂がなく、ボリューミーな癖してヘルシーなので以外にも女性人気も高い。
ティティさんの説明曰く、ミノタウルスの肉で一番美味しいとされる肩ロースをふんだんに使い、ミディアムに焼いたそうだ。そして、その上から特製の特濃デミグラスソースをかけたそうだ。
「それじゃあ、早速いただきます!」
僕はステーキをナイフで分けようと、肉に突き立て驚く。全く感触がしないのだ。滑るようにナイフは肉の上を走り切り分けられていく。そして、いよいよ僕はステーキを口に運ぶ。
「っ!?……おいひぃ〜〜!!」
口の中に入れた途端にステーキは肉汁として溶けたのだ。前世でもよくテレビの食レポで『蕩けるような〜』と表現する事があったが、これはこう言う事だったのか。ただ溶けただけではない、肉のボリュームのある存在感そのままでしっかりとお腹を満たしてくれている。更に特製の特濃デミグラスソースも相まって絶妙にこちらの食欲を刺激して、ステーキを口に運ぶ手が止まらない。
その他にも多くの料理があり、僕が手を伸ばす度にティティさんから説明を受けながら僕は普段出ることのない豪勢な食事に顔をこれ以上ない程に頰を緩ませていた。
そんな僕を見ながら皆んなも席に着き、料理に舌鼓を打った。しかし、シルヴィとアンリだけは暫く僕が顔をだらしなくしながら食べているところを見て、
「やっぱり、幸せそうにいっぱい食べるルルはかぁわいいなぁ〜」
「はぅ……私はルル様が幸せそうに食べているお姿を見るだけで食事を何回でもおかわり出来そうですぅ。」
顔に手を当てながら、身体をくねくねさせて身悶えていたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「はふぅ……ご馳走様でした。」
僕は手を合わせて言う。あぁ、こんなに満ち足りた気分になったのは久しぶりだよぉ。終始、顔が緩みに緩みきっていた気がする。多分、今もだけど。
「やっぱりルルはたくさん食べるねぇ。それにそんだけ幸せそうに食べられちゃあ、あたいとしても作った甲斐があったてものよ!」
「いやぁ、でも一人で10人前位食べるんだもんなぁ。ルシエル君のお腹どうなってるんだろう?」
「ガハハハハッ!!ルルは獣人族の成人男性並みに食べるな!!だが、まだまだオレ様には及ばんな!!!」
「そりゃそうでしょ、あんたの腹の中の異次元と可愛い可愛いルルのお腹を一緒にされたらたまんないわよ!」
「ルルも大分異次元だと思うんだが。」
「ふふふ、それだけティティさんの料理が美味しかったって事ですよ。ね?ルル。」
「ルル様、ルル様。こちらに食後のデザートがございます。如何ですか?」
などと、雑談をしながら僕とアークが今日あったことを話した。
その時、モブさんの話をした所ガレオスが反応した。
「ん?モブルってあの『伝説の傭兵』か?あいつ、引退してから試験官なんかやってのか?」
「ああ、俺も最初見た時驚いたが寧ろよかったよ。ルルが俺たち以外の強者に触れ合う機会ができたのだからな。そうだな、ルル?」
「う、うん。それは勿論。でも一つ気になるんだけど、モブさんってB級冒険者じゃなくて傭兵さんなの?」
そう聞くと、アークがモブさんの昔話について話してくれた。
これはギルドマスターのリブルさんに聞いた話らしいが、なんでもモブさんは初めは傭兵をしていて、各地を回り時に用心棒、更には魔王軍との戦争で国から雇われることもあったぐらいの有名な傭兵だったそうで、連戦連勝でモブさんを雇った陣営が勝つとまで言われその時についた称号が『伝説の傭兵』だそうだ。
そして、各地を旅していた時にまだ現役でS級冒険者だったリブルさんに出会って、リブルさんの強引な勧誘(なんでも「私が勝ったら、私のパーティに入ってください。」と決闘を申し込んだらしい)でコテンパンにされたらしい。ーーリブルさんって元S級冒険者だったんだ、そこにも驚いたーーそこからなし崩しに冒険者になって、パーティを組んでいた。その後は順調に冒険者ランクを上げていっていたある時である。モブさんに一つの依頼が来たのだーーそれは活発になった魔王軍との戦いの参加。
そう言う依頼はこれまで何度も来ていたので特に気にせず受けたモブさんが次にリブルさんの元に戻った時には今の重傷を負った後のことだったそうだ。モブさんが言うには魔王軍の魔人族の将軍にやられたらしい。この時、モブさんの実力は既にA級相当で後はクエストをこなしてA級に上がるだけだった。つまり、相手はそんなモブさんを撃破する程の実力、S級相当あると言うことだそうだ。
それから元からギルドマスターにならないかと前ギルマスから勧誘を受けていたリブルさんがモブさんと一緒に引退して、ギルマスの座に着いたと同時にあの試験制度を作り、モブさんを試験官にした……という話だった。
「なるほど、そんな事があったんだね。」
「ああ。それから各国は魔王軍にはそれ程の強者がいる事を警戒してここ最近はあまり刺激をしないようにしているようだがな。」
そのような事があっただなんて……これまで修行に集中していたから世界情勢に気が回せていなかった。そんなに強い者がいるのだったら、早急に強くなる必要がある。そうだ、もうあの時の様に何も出来ないまま、理不尽に負けない為にも……
「……そうだ!ルルたちはその後ガラードの武具屋に行って、アークがルルに武器を買って上げて、それが今ルルが腰に下げてる刀なんだよね?どういうのを買ったのか教えてくれない?」
「あ……う、うん!」
きっとシルヴィは僕があの時のことを思い出していると気が付いてくれて、話題を切り替えてくれたんだ。シルヴィは本当に僕のそういう所をわかってくれている。
そして僕はガラードオジさんのお店での柊との出逢いを語った……そういえばパーティが始まってから全く柊が喋ってないや。うーん、せっかくだしここは一つ、柊から自己紹介してもらおう。
「ーーと、言う訳でこの太刀、柊はインテリジェンスアイテムで話せるんだ。柊、皆んなに自己紹介してくれるかな?」
「はっ、承諾いたしました、主様。」
僕が彼女を腰から抜き、目の前に掲げ言うと、彼女は答えそして僕の目の前で浮いた。誰もがが息を呑むのが分かる。
皆、一様に柊が纏う空気に当てられ固唾を飲んでその光景を見ている。そして、正に“叡者の魔道具”の名に相応しい風格を漂わせる彼女が放った言葉はーー
「ふふん!者共感謝せよ、主様が私に授けて下さった真名を貴殿らに聞かせる許可を与えてくださったぞ!全神経を耳に集中して聞く様に!ーーそう、偉大なるルシエル・フォンダリア様から授かった私の真名は“柊”だ!貴殿らの魂によく刻み込んでおくように!!」
得意げに胸を張っている光景を幻視させるぐらい高らかに名乗った。
ーーーーあ、やばいこの子思ったよりもお馬鹿かもしれない。
今回は飯テロ注意です(遅い)
しっかり書けていたでしょうか?
皆さんの胃袋を鷲掴みできる様な文章が書けていれば幸いです(ゲス顔)
感想、ご指摘等ありましたら遠慮無くどうぞ!
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