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第8話 戦闘狂の鬼退治

 迷宮都市ファタールを早朝に出立し、あれから半日程馬車に揺られている。今通っている道は迷宮都市の北門から出た馬車道だ。以前、アーク達と修行を行なっていた場所に行くときは西門から出ていたので、此方側の風景は迷宮都市に6年間住んでいても初めて見る風景でもある。

 といっても、見渡す限り草原しかないんだけどね。


「すれ違うのは商隊の馬車ばかり、魔物の一体も出てこねぇ。これは暇な旅路になりそうだなぁ。」


「まぁ、この道は海洋都市オーセヌスに続く道だからな。定期的に冒険者に依頼を出して魔物を間引いているのだろう。安全に馬車で移動できるのは良い事だ、戦闘狂には苦痛になるかもしれんがな。」


「んだとぉっ!!誰が戦闘狂だっ!!」


 馬車の御者をしているアークと身体を動かせなくて不満気なガレオスが言う。


「まだ、馬車に乗って1日も経ってないよ、ガレオス。でも、確かに草原が続いてるのを馬車に揺られてずっと見てるのも疲れてきたな。」


「それではそろそろお昼くらいにもなりましたし、皆様、一度馬車を止めて母さんが持たせてくれたお弁当を食べませんか?」


「アンリちゃんの意見にさんせーい!私、お腹ぺこぺこだもん!」


「ピクニックみたいでいいですね、私も賛成です。」


 アンリの提案にみんなが賛成したのでお昼を食べる事になった。馬車をもう少し走らせると、過ごしやすそうな木陰を作っている大きな木があったのでその脇に馬車を止め、僕たちは敷物を広げた。


「んー、やっぱティティさんの料理は美味しいなぁ。」


「おっ!このサンドイッチに挟まってる肉はドードーダックか、美味ぇな!!」


「このタマゴサンドの卵ってもしかして、火花鳥イースクラムバードの卵?こんな高級食材、母さん何処で……?」


「なんか、口の中でパチパチして不思議な食感だけどおいしいね!」


 みんなで弁当箱に入っていた様々なサンドイッチに舌鼓を打つ(アンリだけは、何故かサンドイッチを見てブツブツと呟いていたけど)。そんなふうに、和気藹々と過ごしていると僕の気配察知に何かが引っ掛かった。


「ねぇ、アーク。」


「分かっている、古代森林の方向からだな。魔物か?」


 その方向を見ると大量の魔物の群れが此方に向かって来ていた。数は十、いや二十以上の群れだ。ちらほらとE級以下のゴブリンやスライム等の魔物もいるようだが、多くはD級のオーガだ。それに良く見るとオーガの上位種でC級のオーガウォリアーやオーガシャーマンも混じっているみたいだ。


「うっしゃあ!なら、戦闘開始だな!!」


「いや、待て。」


「あぁん?なんだよ。」


「ルル、お前一人で行くんだ。」


「えぇ!アーク、それは少し危険過ぎませんか!?」


 ガレオスが魔物の群れに突撃しようするのを止め、そう提案すると今度はマリアが声を荒げた。


「マリア、過保護もいいが俺たちがこの6年間育てたルルはこの程度の魔物に遅れは取らない筈だ。それに新たな装備の性能を確認したいだろう、ルル?」


「うん、僕にやらせて欲しいな、みんな良いかな?」


 そう言うと、ガレオスは不貞腐れ、マリアとアンリは不安気に、シルヴィはワクワクと目を輝かせ、アークは僕を信頼してくれている目で静かに頷いてくれた。

 僕はもう一度魔物の群れに目をやり、身体を巡る血が沸き立ち火照ってくるのを感じる。そして、腰に下がっている柊に手を掛けて問いかける。


「僕達で片付けるよ。準備は出来てる?」


「勿論です、主様。何故ならわたくしは別にご飯を食べて和気藹々と談笑する必要がありませんでしたから。えぇ、いつでも準備は出来てますとも。」


「…………放ったらかしにしてて、ごめんね?だから機嫌なおして柊ぃ……」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 魔物の群れへ駆け出すルルを、いやルルとヒイラギを見送る。駆け出す前に何か話していたようだが何だったのだろう。


「アーク様、本当にルル様は大丈夫でしょうか?」


 そう心配そうに聞いてきたのは今はまだ自称だがルルのメイドをしているアンリエラだ。


「うむ、アンリがそう思うのは無理もないな。まだルルが戦う姿を見たことがなかったものな。」


「はい、ルル様がとてもお強いのはあの方の雰囲気やアーク様達、他の冒険者達の接し方等で頭ではわかっているのですが……やはりいざ戦闘に向かうのを見るとルル様の可愛らしい容姿からとても戦えないのではと……」


 その考えは分からなくもないが、それはルルのあの顔(・・・)を見れば納得できる、と説明しようとすると意外な所から説明される。


「ふふ、それは大丈夫だと思いますよ、アンリ。」


「マリア様?でも、マリア様も先程ルル様の身を案じていましたよね?」


「えぇ、ですがそれはルルが戦えるかどうかではなく、あの数の敵に無茶をしないか、ですよ。」


「え?それはどう言う……」


「それはね、ルルのあの顔を見てごらん?」


 マリアとシルヴィナの解答にアンリは首を傾げながらも、戦闘に身を投じようとしているルルの顔を見た。


 ーールルは笑っていたのだ。


「え、これから魔物との戦闘なのに何でルル様は笑っておいでなのですか?物凄く魅力的な笑みですけども。」


「端的に言うなら、ルルは戦闘狂ーーバトルジャンキーなのだ。誰かさんに影響されてな。」


「ガハハハ!俺様が指導したんだ、漢として闘いに血が沸き立たないなんて事はありえん!!」


「はぁ、闘う姿はかっこいいし、笑う顔は可愛いのは良いんだけど、影響を受けたのがこの戦闘筋肉馬鹿なのは本当にルルが可哀想……」


「戦闘の熱に浮かされて、無茶な行動をしなければ良いんですが……ルルが怪我をしたらどうしましょう……」


「本当にマリアは過保護だな。とりあえず、ルルを見守ってやることだな、アンリも見ていれば不安もなくなるだろう。」


 ガレオス達の反応を見て暫し呆気にとられていたアンリは、俺の言葉で戦闘の様子を静観することにした様だ。


 さて、この数の敵に対してルルはどう闘う?それにヒイラギの性能も気になる所だな。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 僕は草原を疾駆する。その先には魔物の集団。一切気配を消さず目立つ様に駆ける僕を、魔物達は容易に僕を発見できた様だ。

 獲物を見つけて魔物は目を血走らせる。何だかゴブリン達が特に興奮してる様に見える、何故だ?

 ……もしかして、僕を女と思ったのだろうか?うわっ、ゴブリンにそういう目で見られたの!?

 背筋が凍る様な思いをする。流石に気味が悪過ぎて、戦意が萎える。


「うわぁ、魔物との戦闘も久し振りだけど、色んな意味で大丈夫かなぁ?」


「お言葉ですが、主様。その心配は無用だと思います。」


「え、なんで?」


「今、主様は笑っておいでです。」


 柊にそう指摘され思わず手を頰にやってしまう。確かに薄くだが笑ってしまっているようだ。うーん、これではガレオスの事は何も言えないなぁ。ゴブリンは気持ち悪くて、薄ら寒い思いをしたけど、身体の内を巡る血は火照ったままだ。


「まぁ、とりあえずお掃除しちゃおう。柊、力貸してね!」


「お任せください!!」


 そう言うとともに、僕は姿勢を低くし更に加速する。

 魔物の群れの一番手前に出ていたゴブリンに一瞬で接敵する。

 ゴブリンは反応出来ず、突然目の前に現れた僕を見て目を見開く。

 既に抜刀の姿勢を取っていた僕は一息に柊を解き放つ。解き放たれた彼女の刃にゴブリンは成す術もなく、その斬撃を受ける。

 そしてすれ違い、数瞬の間が訪れる。ゴブリンは未だに痛みを感じない事に戸惑った様子を見せるが所詮動物の知能に毛が生えた程度の思考ではすぐにその事を放棄したようで僕に再び襲い掛かろうとする。この一連の動作について行けずに只、周囲を固めていた魔物達もそれに倣おうとするが、


「うーん、やっぱすごい切れ味だね、柊は。何の抵抗もなく肉どころか骨まで切れた。でも、多対一の時は気を付けないと今みたいに切られた後動かれると少し面倒だ。」


「ふふ、それ程主様の魔力純度が高いと言う事です。私の刃は使用者の魔力純度に応じて切れ味が増します。それに多少、動いても然程問題ではないでしょう、何かされる前に全て殲滅すれば良いのですから。そして、主様にはそれが出来るほどの力がありますし。」


 その言葉と共に僕を囲んでいた五体程のゴブリンから血が噴き出し、地に伏せる。アークの真似をして見たんだけど、流石に一度にたくさんの敵を細切れにするのは今は無理かな。


「ゴガァッ!ボゥットスルナッ、ソノメスヲゴロゼッ!!」


「め、メスって……というか、喋れるのかあのオーガ。只のオーガウォリアーかと思ったら、違ったみたい。でもB級には届かないかな、C+ってとこ?ま、オーガキングではないならそんな変わらないかな。」


「主様、主様。私、只切れ味が良いだけではありません、主様のその純真無垢で透き通る様な魔力に色をーー属性を乗せてみてくださいませ。」


 柊の言う通りに、自身の魔力に火をイメージする。魔法を発動するのに必要なのは魔力と使い手の想像力。強く想像出来ないものは暴走して発動が不完全なものになるのだ。

 だから、僕は想像イメージする。前世の科学の授業で習ったあの超高温度の蒼い炎を。

 すると、彼女の刃の周りに陽炎が揺らめき、刀身は蒼炎の如く煌めく。


「これは!?」


「私の特性は使用者の魔力に共鳴すること。私は主様の魔力によって想い通りに変化することが可能です。この時代に使い手がいるかは知りませんが、これは『魔法剣』程度のスキルとは一線を画す程の威力を持ちますよ。あれは刀身に魔法を乗せるだけですが、私は刀身が(・・・)魔法になるのです!」


 柊と僕はそのままの意味に繋がっている様なものだから、威力も想い通りになるし、一番驚いたのは魔力的にリンクしているから只、魔力の質を自身の中で変化させるだけで彼女の刀身が変えられるから、魔力の消費が殆ど起きない。まぁ、これは僕の魔力総量が多いのであまり関係ないかもしれないけども。


 僕は周囲に目を配り、彼女を上段に構え直す。そしてこちらに襲い掛かるゴブリンとスライムを迎え撃つ。

 正面のゴブリンが手に持つ粗末な棍棒を僕に向かって振り下ろす。それを僕は真正面から刀で対抗する。知能の低いゴブリンは見た目が非力な僕に腕力で負ける筈無いと判断した様だ。しかし、結果は棍棒と刀が拮抗することなく、棍棒を両断する。僕はその勢いを殺さずそのまま、ゴブリンの首を刎ねる。ゴブリンの顔は何が起こったかわからない様子で地面を転がり、蒼炎に包まれる。身体も同様だ。


「さて、柊の切れ味とこの魔法剣、いや『魔刃刀まじんとう』の性能も分かったことだし、雑魚は一掃しましょうか。」


 そこそこ知能が高いオーガ達は僕の戦闘能力を把握し、こちらを見て明からさまに動揺してるが、ゴブリン達は同胞がやられていきり立っている様だ。

 その様子を見て、僕は一旦柊を鞘に納め手を前へ突き出し、魔力を高める。

 そして、イメージするーー激しく鋭く、全てを等しく切り裂く風の乱舞(自然の脅威)を。


「上級風魔法テンペストゥムルス」


 その瞬間、顕現する風の暴威。僕が視認した全てが風の刃によって切り刻まれる。一見、初級風魔法ウインドカットを無数に生み出している様に見えるが、一つ一つの威力が桁違いに違う。

 基本、初級魔法はF〜E級の魔物ならばトドメを刺す程の威力だが、それ以上になると致命傷どころか深手にすらならない。中級魔法は初級を強化した程度のもので攻撃魔法そのものにはあまり変化がない、しかし補助魔法という種類が増える。

 例えば中級風魔法ソニックブーツ、これは対象の敏捷力を強化する魔法だ。だが、これは所詮中級魔法、D〜C級の魔物には有効打になるかもしれないがそれまで。けれど上級や帝級魔法の補助魔法は一線を画す。一例として帝級風魔法ウェンディオスラピは神速の如き速度を対象者に与える。

 ……話が脱線してしまったが、つまり上級魔法以上になると初級や中級とは比べ物にならない威力、恩恵があるのだ。しかし、上級魔法は兎も角、帝級や神級魔法になるとその威力は広範囲にして高威力、前世で言う戦略兵器に匹敵する。通常は複数人の魔術師によって発動させるものなのだ。

 だがしかし、例外は存在する……シルヴィの様なS級冒険者になるとそれを易々と操るし、その上範囲を絞るなんて芸当をやってみせるから、戦略兵器並みの威力が敵一体に向けられ塵すら残らない、なんてことはざらな様だ。やはり、英雄ばけものは次元が違う。

 だけど、その内僕もそこまで上り詰めなくてはならない。みんなを守れる様になるにはそのレベルの者達とも渡り合えなくてはいけないと言うことなのだから。


「おお、流石は主様、既に上級魔法を習得しておいでとは!この柊、感服致しました!」


「いや、一応帝級までは一通り覚えて入るんだけど、威力の調整がまだ出来てなくて、使ったら多分ここら一帯更地になっちゃうから使わなかったんだよね。」


「な、なんと、帝級魔法も扱えるとは……凄過ぎです!!」


 なんとなく柊から目を輝かせながら尻尾が千切れん程に振っている子犬を幻視しながら、眼前にゴブリンやらスライム、オーガの体液でそこら中が汚れ、地面にたくさんの鋭い亀裂が走っている惨状を見渡し、獲物を探す。


「ゴブリンとかの集団を狙ったんだけど……あ、いた。」


 そこには眼前で起こった殺戮に唖然とした様子のオーガウォリアー等の上位種、数体。その中で全長がおよそ四メトル程の一際大きく、先程話した個体が元々赤い体表を更に赤くし叫ぶ。


「グゥッ、オデノタイグンヲ、ヨグモッ、ヨグモォォォォッ!!グオォォォオッ!!!」


 どうやら、自身の群れを一瞬でやられた事に怒り心頭の様だ。恐らく、オーガなら分かる号令なのだろう、最後の咆哮を機に周りのオーガらがこちらに突進してくる。


「よし、受けて立つ!」


 僕は自身に上級風魔法アイレラピドゥスで敏捷力を、同じく上級雷魔法エレクトロネルムスクで筋力を上昇させる。

 盾役であろう冒険者を返り討ちにし手に入れたのだろうか粗末ではあるが鉄の大楯を持つオーガシールダーに接敵する。シールダーは突撃をかます僕にシールドバッシュの様な動作をしようとする。この時点で中々の知能があるのがうかがえるが、遅い。

 僕は走る体勢を維持したまま更に姿勢を低くし、シールダーの死角に入り右に抜ける。奴は大楯に来るはずの衝撃がない事に動揺していたが、既に終わっている。右に駆け抜けると同時に柊を下から右上へと抜刀していた。

 オーガシールダーが地面と接吻する頃には背後で魔法を唱えようとしていたオーガシャーマンに返す刀で両断する。先程は蒼炎と化していたが、今度は紫電をイメージした魔刃刀でシャーマンを灰塵に還した。本来なら相手をスタンでもさせていたのかもしれないが、これでは炎と変わらないかもしれない。


 その後は、時間もかけず大した苦戦もせず親玉オーガを残し、他は殲滅した。


「グッ、グガアァァァァッ!!!!」


「作戦も何もない突撃か、折角話せる程の知能があるのに勿体無いな。」


 僕はまた柊を鞘に収め、コートの袖を捲る。そこにあるのはガレオスから貰った手甲、『魔法の制裁(マギス・サンクティオ)』が銀と紫紺に煌めく。

 さて、魔拳法まけんほうの実験といきますか。僕は腕、手甲に魔力を集中させる。今回は炎、風、雷と来たから……水、かな?

 意識を研ぎ澄ませ、イメージする。地響きを立てて滝壺へと、字の如く“竜”の様に流れ落ちる自然の奔流。

 そして、疾駆する。一瞬でオーガリーダー(仮)の懐に潜り込む。オーガは目を剥くが遅い。


「『魔拳・飛泉轟瀏ひせんごうりゅう』!!」


 手甲に纏わせた清流の様な魔力を右の掌に集中させ、勢いを乗せ下から上に突き上げる。地面を抉りながら突き上げられたそれはオーガの胸に当たると同時に魔力を爆発させ、まるで天にある滝壺へ向かう滝の様な水の奔流がオーガを襲う。

 オーガは大質量の水に揉みくちゃにされながら天に放り出される。やがて、周囲一帯に雨を降らせながらもオーガも落ちて来た。

 ……しっかり倒せてるね。なんか所々曲がっちゃいけない方に曲がってるし、これで生きてたら寧ろ怖い。


「うん、殲滅完了!」


「お疲れ様でした、主様!」


「うむ、お疲れ様だ、ルル。」


「あ、アーク、それにみんなも。」


 いつの間にか、みんなこっちに来ていた様だ。


「ルル様……」


「そういえばアンリは僕が戦う所は初めて見たんだよね?どう、僕こう見えても少しはやれるんだよ!」


「か……」


「か?」


「かっこよかったです!!」


「わわっ!?」


 そう言うと、アンリは僕に飛びついて抱き締める。そうするとアンリのそこそこに大きいたわわが当たって……って、僕は何を考えてるんだっ!?

 そんな感じで僕が僕の中の何かと戦っている間に更に後ろから衝撃がくる。


「やっぱ、ルルはカッコ可愛いなぁ〜。それにその“宵月神の冥護”を着て戦う姿は良かったよ、鼻血出そうになったもん!」


「とりあえず、怪我がなくて良かったです。」


 後ろから抱き着き、僕の肩から顔を出し言うシルヴィとホッと安堵した様子のマリア。


「うむ、今回の戦闘は多対一を想定した良い経験が出来たな、ルル。」


「ガッハハハ!最後に俺様が渡した手甲による拳で倒したから、俺様は満足だ!!」


 アークの今回の戦闘の批評とガレオスの賞賛の声。

 久しぶりの魔物との戦闘だったけど、なんとかなった。それに新装備の性能も申し分ないし、問題なく扱える。これで“始まりの神殿”でも戦える。


 僕は現時点の自分の力を把握し、心を新たに迷宮を目指す事に再確認できた。

 その日の内は他に魔物との戦闘は無く馬車を走らせ、日が落ちる前に野営の準備を始めたのだった。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ーーそれは、五日目の野営の準備をしている時だった。


 グオォォォォオッ!


「うわぁぁあっ!!」


 古代森林から聞こえる野太く木々を揺らす程の獣の咆哮。そして、対照的に恐怖に打ち震えるかの様な悲壮な男の叫び声。


 僕達は作業の手を止め、視線を交差させる。動くのは戦闘の出来る僕とガレオス、怪我人の治癒が出来るマリア。アーク達も戦闘はできるが野営地の保護に残って貰う。


 そうと決まれば、行動は速い。僕達、三人は声が聞こえた古代森林へと駆け出した。




更新に少し間が空いてしまい申し訳ありませんでした。

次回は頑張りますので、許してくだしゃい(´・ェ・`)


お知らせ:これまで出ていた人物のステータスを修正しましたのでご報告をば。アーク達の強さが分かりにくいと思ったので。


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