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第7話 少女の決意と旅立ち

GWですよ!皆様楽しんでますか?

え、僕?予定なんてありません、ハイ。


GWは読書強化週間と言うことで(今決めた)皆様、今回もお楽しみ下さいませ。


そして、レビューを頂けました!DakenQさんありがとうございますっ!!

 柊がつくった微妙な雰囲気を破ったのは意外な人物だった。


「……ヒイラギさんと仰いましたか?」


「む、貴殿の服装……女中だな。なんだ?」


「貴女は何故そんなに態度がでかいのです?」


「ふふん、私は偉大なる御方、ルシエルーー」


「それは先程聞きました。それで貴女の態度がでかくなるのはお門違いではありません?虎の威を借る狐とはこの事ですね。」


「むっ!貴様、私を愚弄するのか!!」


「何が愚弄するのか、です。貴女の方がこちらを侮っているではないですか。私などは兎に角、そちらにいらっしゃるのはルル様の親代わりであるマリア様、シルヴィア様、ガレオス様ですよ?貴女はルル様のご家族も貶めるのですか?」


「い、いや、そんなつもりは……」


「それに貴女は先程から、事あるごとにルル様の名前を出してましたが別に貴女が何かした訳ではないですよね?それとも出会って間も無い貴女はルル様に対して何か奉公をしたのですか?」


「うっ……うっ…………うわあぁぁぁぁん!!!!」


「「「!?」」」


 突如始まった彼女達の舌戦(ずっとアンリのターンだったが)に僕達は全くついていけず見守っていたのだが、遂に耐えきれなくなった柊がそれまでの傲慢な態度を一転して泣き出してしまった。


「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!ずっとずっと待っていた主様が現れて下さって……ひっぐ……主様に良い所見せたくて……ふえぇぇぇぇん!!!!」


 柊はそんなこと考えてたのか。彼女の纏う雰囲気は名刀のそのものなのだが、今は一欠片もその様に見えない。


「ひ、柊!大丈夫だよ、これから改めればさ?ね、アンリもあんまり虐めてあげないで。確かに僕も呆気にとられたけど。」


「いえ、ルル様。出過ぎた事をしてしまい、申し訳ありません。ですが敢えてもう一言言わせてもらいます。あまりヒイラギさんを調子に乗らせてはいけませんよ?その方は曲がりなりにもルル様の武器なのですから、その様子のままではルル様が命を預ける武器として相応しくありません。」


「っ!!……うぅ、申し訳ありませぬ、主様……私にはその自覚が浅かったようです。これからは主様の武器として相応しくなれるように精進致します!」


「うん、ありがとう、よろしくね?あと、アンリもありがとう。」


「勿体無いお言葉です。」


 アンリはそこまで考えて柊の言動を注意してくれたのか。本当に頭が下がる思いだ。


「それじゃ、なんか話も纏まったみたいだし、私達からもルルにお誕生日プレゼントを渡しちゃおう!」


「え!みんなからも貰っちゃって良いの!?」


「そりゃ、もちろん!私達何にするかすっごい悩んだんだからね!」


 聞いたところによると、僕へのプレゼントが誕生日の今日まで決まらなかったから、朝にアーク以外のみんなが出掛けに行ったのだそうだ。そんなにまで悩んで選んでくれたものだったら、どんな物でも嬉しいな。


「それじゃあ、先行はこのオレ様だぞ!!オレがルルに贈るのはこの手甲だ!!」


 そう言って、ガレオスがくれたのは銀色に輝くボディに紫紺の意匠が施されている流線的なフォルムの手甲、“魔法の制裁(マギス・サンクティオ)”。

 この手甲のボディには魔法親和性が高いミスリルが使われている。ミスリル単体では物理防御力が低い為、その上にはアダマンタイトで薄く加工されている。ーーアダマンタイトは物理防御力が物凄く高く、優秀な鉱石であるが故にその加工には魔法を用いる必要があり、その技術……魔法鉱物学に精通している鍛治師は一握りである事からこの手甲がどれだけ高価なものか想像に難く無いーーミスリルを主体に作られている事からその重量は驚く程に軽く、アダマンタイトで加工しているので防御力にも期待できる。そして一番僕が興味を持ったのが、ミスリルの魔法伝達率を利用した魔拳法まけんほうという戦い方だ。


 通常は拳、いや身体に魔力を纏い自身の筋力を向上させると言う身体強化魔法は魔力が人並み以上に持っている者の常識であり、それ以上どうする事も出来ない。例えば拳に魔力を行き渡らせ、火魔法を扱い、拳に火を纏わせるという事は出来ないのである。何故なら、自身の魔力だからと言って一度事象として攻撃の意思を持って魔力を放出すれば、自分の身を焼き焦がしてしまうのだ。しかし、この手甲を媒介に魔法を発動させればミスリル自身の魔法防御力で発動者の身を守りつつ、近接攻撃に魔法という手段を付加させて戦うことが可能になると言ったことができるのだ。


 これを使う事で戦いの応用がかなり効く。僕自身、一応アークやガレオスから師事されて、かなり刀や肉弾戦などの近接戦も戦えるが実は魔法の方が得意、つまり魔術師タイプだ。魔術師は基本的には近接の攻撃手段が身体強化くらいしか無いので(僕はそんな事ない)、戦う術が増える事はいい事だ。


「それでは私からはこれを。」


 次にマリアがくれたのは、金に周りを彩られ中心に神秘的に煌めく透き通るような淡い緑が特徴の翠玉エメラルドが嵌め込まれている“地母神の抱擁”という名のネックレスだ。

 翠玉には魔術的効果が元々備わっており、装備者に自然回復力や瞑想、つまり集中力上昇等の効果があり魔術師には必須と言って良いぐらいだ。それに加え、このネックレスは全ての状態異常への耐性の強化に、周囲の魔力を蓄えて術者が魔法を発動する時の消費魔力をほんの少しだが肩代わりし軽減してくれる効果も付与エンチャントされている。これも付与するには専門職の付与師エンチャンターという上級職が行わないと出来ないので、なかなか手に入るものではないだろう。


「じゃあ、今度は私達・・ね!」


「僭越ながら、私も選ばさせて頂きました。」


 なんとシルヴィとアンリの二人が選んでくれたらしい。そういうのなんか嬉しいな。そして、二人が見せてくれたのは……


「………………」


「じゃーん!アンリと一緒に何週間も悩んで買ったんだ!ビジュアルだけでなく、機能面でも熟孝したんだからちゃんと着てよね!」


「私もルル様がこれを着ているところを見たいです!」


 二人が興奮しながら僕に突き付けたのは服一式であった。“宵月神の冥護”というシリーズがあり、それらを全て買って来たとのこと。何処でそんな物を売っているんだ。

 黒を主体とした色づかいで所々を赤で彩られている上着にはベルト等の装飾が見られるが、特に機能性を害しているわけではない。

 下は前世で言う所のショートパンツの様なものであった。そしてご丁寧な事にニーソックスの様なものまである。靴はブーツで、最後に全身を覆える程のコートが用意されていた……うん、これはどっちかって言うと女の子が着る様なデザインなのではないのか……いやさ?詳しく聞くと、この服一式で物理・魔法防御の上昇に、全属性耐性、隠密性能や寒暖耐性、通気性抜群。機能性は文句どころか、素晴らしいの一言なのです。たださぁ……うぅん、微妙に男の子が着ても似合いそうではあるのがちょっと気にくわない。これがユニセックスというやつか。

 まぁ、あれかな。これまで無理矢理着せられてた女性ものの服、ドレスやらワンピースよりは断然マシか。それに折角二人が一生懸命選んでくれたプレゼントだし、有り難く着させてもらいます、ハイ。


「みんな、本当にありがとう!」


「ふふふ、見事に皆さんルル様の装備を買って来てしまいましたね。」


「うん、でもいいんだ。僕はみんなを守れる位に強くなりたいから、これは僕にとって最高のプレゼントだよ。」


「なら、冒険者登録をし、新たな装備を得たのだ。次の段階ステップに向かうとするか。」


「どうゆうこと、アーク?」


「迷宮へ挑む。その中でも高難易度の“始まりの神殿”だ。」


 “始まりの神殿”とはその名の通り創世期の神代の時代、創世神アリステラが破壊と魔の女神ティスタロイアと最初に造ったと言われる神殿である。この迷宮は、多くの迷宮に囲まれ、それに挑戦する冒険者によって齎される莫大な利潤を得ている五大大陸随一の迷宮都市と呼ばれるファタールの周囲にある迷宮の1つであり、冒険者ランクと同様に格付けされている等級はA級相当の難易度。女神達が創造した大地には多くの魔力が立ち込め、瘴気となり魔神となったティスタロイアによる呪いのせいで強力な魔物が蔓延る危険な地下迷宮と化してしまっていて、並みの冒険者では太刀打ちできないのだ。


「力試し……と言うことでもあるのだが、一番の理由は彼処には《創世神アリステラの加護》が成されている場所でもあるからだ。」


 そう、先程述べた様に“始まりの神殿”は魔神の呪いで凶悪な迷宮となってしまっているが、その奥底ーー“祭壇”と呼ばれる場所だけは創世神アリステラの加護の影響を受けて魔物が寄り付こうものならば、魔物がその身に内包する負の魔力が一瞬で正の魔力へと浄化される為一切魔物がいない、ある種の聖域となっている。更にそこまで辿り着き、アリステラへ祈りを捧げることである者はステータスが強化された、またある者は新たなアビリティを取得した……等の恩恵を得られると言われている。只、多くの者はそこに辿り着くまでに至る例は少ない為、これは噂程度ではある。しかし、


「ルルには創世神アリステラ様から直々に加護を受けている。先も言ったが腕試しが主な目的だが、行ってみて損はないだろう。」


「うん!僕も行ってみたい。それに、なんとなくだけど行かなくちゃいけないような気もするんだ。」


 勘ではあるけれど、アークの言う通り行って損は無い、そう思う。そうやって、今後の予定について話していると、


「ルル様。」


「え、何?アンリ。」


「私もお供させて下さい。」


「えぇ!?」


 最後に驚きの声を上げたのはルドールさんだ。

 突然の申し出でルドールさんだけではなく僕達は驚いてた。しかし、シルヴィはやっぱりねと言う顔をしていた。


「あ、アンリ!聞いていただろう?ルシエル君達が行くのは高難易度迷宮の“始まりの神殿”だ、このファタールに住んでる者で知らない者はいない程の危険度の迷宮なんだ!ルシエル君や『四神の加護(アークさん達)』は強いからきっと攻略出来ると思える、でもアンリはそうじゃないだろう!?」


「いいえ、父さん。確かに私では攻略は出来ないかもしれない。だけど、決して足手纏いにはならない筈……そうですよね、ルル様?」


 そうなのだ。きっとアンリならば足手纏いなんかには絶対にならない……何故ならば、



 《ステータス》

 アンリエラ(10歳)

 Lv61

 種族:人族

 称号:


 アビリティ

 ・隠形:隠密活動に大補正、暗殺行動に大補正

 ・愛に生きる者:恋愛対象の為になる行動に大補正、対象の為に行動中のみ全ステータスにプラス10%の補正(筋力、敏捷力、知力、判断力、魅力)

 ・一属性魔術:水属性系統魔法の取得可能


 スキル

 ・剣術(Lv4/10)

・短剣術(Lv5/10)

 ・体術(Lv4/10)

 ・暗殺術(Lv5/10)

 ・生活魔法

 ・水魔法 (Lv3/10)

 ・無詠唱

 ・礼儀作法

 ・隠密

 ・料理



 天慧眼で覗き見た彼女のステータスである。アンリはそこらの冒険者よりも断然強いのだ。何故、そんなに強くなったか聞いたことがあったのだが、その時の解答が、「メイドですので、このくらい当然です。」の一点張りだった……僕の知ってるメイドと違う。メイドギルドは一体どう言うことを教えていたんだろう。


「うん。アンリのステータスなら足手纏いにはならないよ。」


「良かったです。ほらね、父さん平気だったでしょ?」


「うぅ、だがなぁ……」


「もう、諦めなあんた。こうなったらアンリは頑固なのは知ってるだろ?それに昔からアンリはもう、ルシエル君に着いて行くって決めてたんだろ?」


「はい。」


「なら、しっかりとルシエル君を支えて上げなさいね。」


 こうして、アンリエラは僕達の仲間として認められたのだった。


「出立は明々後日だ。幾ら迷宮都市だと言っても“始まりの神殿”に着くには馬車で一週間以上は掛かる。更に迷宮に入り込んでからが本番だ。特に今回の迷宮はかなりの規模の地下迷宮だから攻略には確実に数日かかる為、準備は入念に行う。明日からはその準備に取り掛かろう。」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 そして、いよいよ出立の日の朝。必要な荷物ーー大半が食料だがーーも既に馬車に詰め終わり、馬車の前には複数の人影があった。


「おう、坊主。アーク達もいるし、おめぇなら大丈夫だと思うが、まぁ気をつけてな。」


「迷宮攻略にかかる日数は多くても一週間ですが、貴方方でしたらきっと最短で戻ってこれますよ。」


 モブさんとリデルさんも見送りに来てくれた。グラハムさんは騎士団の仕事があったそうなのでここには来ていない。と言うかリデルさんはギルマスの仕事いいのだろうか?


「ルシエル君、娘を頼んだよ。」


「お弁当作ったからお昼にでも食べておくれ。アンリ、ルシエル君のメイドならしっかりとお世話してあげるんだよ。」


 もちろん、ルドールさんにティティさんも来てくれた。みんなの言葉を聞きながら僕達は馬車に乗り込む。


「それじゃあ、行ってきます!また、すぐに戻ってきます!!」


 そう言い、6年間で初めての長期間の旅に出発したのであった。

文章を書くと言うことはかくも難しいものよ……

いやぁ、苦戦しました。前回までは会話が少なめ地の文の説明が多くなってしまっていたので、今回は会話を頑張ってみたつもりです、如何だったでしょうか?


そして又も書きたい所まで書ききらなかったと言う……勿論、今回のシーンも書きたい部分ですよ。まぁ、一杯書きたいと言うことで一つ。


それでは感想、ご指摘、ご指南お待ちしているのでよろしくです(*⁰▿⁰*)


追記:2017年5月18日にアンリエラのステータスを修正しました。

迷宮都市から始まりの神殿までの距離を馬車で一週間以上に変更しました。

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