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夢は国家公務員!?~異世界なのに転生者に優しくないこの世界~  作者: ETRANZE
遊撃隊編Ⅱ 魔道戦車交戦!
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死の巨人対魔道戦車(前編)

テルト達が異変に気付いたのは、偶然にもビゴワの鳴らした鐘の音をフルーの鋭敏な耳が拾ったからであった。


この稜線を超えればリジュンが見えるという距離にまで来たときにフルーが突如ヘッドセット越しに叫ぶ。


「おい! テルトちゃん、いったん停車してくれ!何か聞こえる!」


広いとは言ってもやはりガタイの良い彼にとっては車内は息苦しいらしく、窮屈な無線手席を出て、フルーはその日もティーガーの上に誇乗していたのが思わず良い方向に働いたようだ。


その声に反応してテルトは即座に指示を下す。


「了解! 操縦手、エンジン停止!」


「操縦手了解、エンジン停止します。」


その声を受け、白金ミスリルティーガーが歩みを止める。


土煙と轟音が止み、辺りに静寂が訪れた。


元々魔力を燃料とする魔道エンジンはガソリンエンジンでない分、静粛性には優れている。

全力運転でなければ普通車のエンジン音とそう変わらないくらいには。


そのおかげもあってフルーは異変を察知することが出来たのだろうが、流石に索敵するには煩すぎる。


しかし騒音に慣れた二人の耳が逆に違和感を訴えるほどに周囲は静かになったが、テルトには異変は感じられない。


『こういう時は』頼りになる同僚に、テルトは車長として指示を出す、


「装填手は索敵を開始、結果を報告せよ。」


「オッケイ!」


フルーがそう返した途端、喰い気味にややトゲのある車長の言葉が回線に響く。


「操縦手、敵性用語は禁止だ! 我々は栄光ある第三帝国の戦車兵なのだぞ!」


「あっ、はい・・・。え、えーと、ヤボール!」


気合を入れたつもりがテルトの『設定』に対するこだわりの強さが災いして、逆に気を殺がれてしまったが、気を取り直すと軽い身のこなしで戦車から飛び降り、獣人化して耳を澄ませる。


そして鼻をヒクヒクと動かすと不快そうな表情になり、テルトへ報告する。


「やっぱり聞こえるぞ、鐘の音だ。 王都の演習でやってたような非常事態を告げる鐘だ。 それに匂い、微かにだけど鼻の曲がりそうな匂いがするぞ! やっぱりマクスのいう通り、リジュンに来たんじゃねーか?!」


「けど、ウブンの軍勢がリジュンに攻めてくるのって一日くらい余裕があるんじゃないのか?」


ユーリアがいぶかしげな声を上げるが、フルーはやや憮然としていう。


「そんなこと言っても聞こえるんだよユーリア、間違いないって!」


テルトはしばし考え、状況を整理する。


確かに王都で計算したペースであればまだ随分ウブンの侵攻までは猶予があるはずだった。


しかし・・・、そこでハタと気付いた。


「そうか!? ユーリア、フルー、わかったぞ。私が迂闊だった! リジュンまでのルートの町や村の人々が避難してしまい、進撃ルートが空白地帯になっているんだ。」



フルーは自らの見通しの甘さを反省する。


とうぜん住民とともに物資も引き上げらてしまい、ウブンの軍勢は当初の進撃ペースでは糧食を維持できなくなってきたために進撃のペースを早めたのだろう。


図らずも住民の避難が焦土戦術の一種のように作用してしまい、ウブンの兵站事情を圧迫したのだ。


ただそこでウブンが取った行動は、退却ではなく、物資の一大集積地でもある要塞都市リジュンを攻略するという選択肢だったが。


テルトは唇をかみながら内心の動揺を押し隠して告げる。


「・・・、フルーの索敵が正しいことを前提に行動する。装填手フルー、戦車へ戻ってくれ。 ここから先は最前線となる可能性が高い。いつでも装填と照準の操作ができるように車内で待機!」


「よー分からんけど、とにかく敵が来てるんだよな! 了解!」


「ユーリア、フルーが戻り次第発進する。やや起伏のある道だ、履帯が痛まない程度の最大限のスピードで前進! ・・・すまない、私の状況判断ミスだ。 許してくれ。」


「了解!・・・戦車の整備を考えたらそんな無茶は出来ないだろ? 『一両しかない戦車が壊れてしまったら元も子もなくす。』そうだろ?」


「・・・そうだな、今は反省は後にして最善を尽くすとしよう。 よし、出撃だ!」


「「ヤボール!!」」


フルーが戦車に駆け寄ると、装填手の上部ハッチを開き、するりと器用にその体を潜り込ませる。


【グォオオオオオンッ!!】


それとほぼ同時にティーガーに搭載された魔道エンジンが再び唸りをあげ、戦車はリジュンに向けて前進を開始した。


動き出した戦車の上で先ほどまでに倍する騒音となった魔道エンジンの騒音に負けないように、咽頭マイクを密着させつつさらに指示を飛ばす。


「ユーリア、このまま進んでいくと、敵の正面から会敵する可能性が高い。 街道を若干逸れて、やや南から回り込むようなルートで行くぞ!」


「分かった! 任せてくれ。」


そう言いつつ運転席のハッチから顔を出してステアリングを操作するユーリア。


戦車は真っすぐにリジュンの裏門へと続く街道のルートを迂回しながら前進し、背丈の低い草木のかき分けながら進む。


「ユーリア減速を、微速前進だ。」


やがて稜線の向こうに都市を臨む位置まで来ると、テルトはユーリアに指示を出し、にじり寄る様に稜線へと車体を登らせていく。


既にリジュン方面からこちらに響いてくる喧騒はかなり大きい。


だがここから先は発見される可能性を考え一旦砲塔だけを稜線から突出させ、視界を確保し、突入前の情報を整理する。


やがて頭一つ抜けたテルトの視界に、リジュンの前に展開される戦場の風景が見えてきた。


戦車を停止させ、ガリレオ式の双眼鏡のフタを外すと、テルトの左手側、北東方面に見える戦場の情景を観察する。


「・・・? 怪獣、いやゴーレムのような人型タイプの巨人か?」


それは異様な光景だった。


普通この中世的世界で想像される戦場の風景は基本的に前世の中世とあまり変わらない。


そのため、テルトの脳内イメージではモンゴル軍(にしては少数だが)対ヨーロッパ連合軍のような絵面をなんとなくイメージしていたのだが、眼前に広がる光景はその想像を見事に裏切っていた。


「まるで怪獣映画だな・・・。」


そう呟いて冗談とでも思いたくなるような光景、防壁の上に陣取る兵士たちが、その防壁よりも頭一つ高い巨人に向かって必死の防衛戦を展開している。


後方にウブンの軽騎馬兵が待機しているが、テルト達の見立て通り攻城兵器の類はないらしく、やや距離を取った場所に待機している。


巨人が防壁を破り次第、突入を敢行するつもりなのは明らかだった。


「よく聞いてくれ! 敵は人型の巨人一体と、ウブンの騎兵部隊約500騎だ! リジュンの守備兵力が防戦を行っているが不利な戦況が予想される。 側面から奇襲をかける、このまま低速で前進だ。」


「了解!」


「フルーは榴弾を装填。砲をやや左に指向しておいてくれ。」


「了解!」


「二人とも、これ以降のハッチの利用を禁止する。それぞれ操縦手席、砲手席にあるスリットで視界を確保してくれ。対策はしてあるが、そこが正面の中で弱点になりやすい、十分に注意してくれ。」


「「ヤボール!」」


そう、二人の視界は初期型のティーガーと同じく、スライド式の装甲板のついたスリットである。


テルトが参考にした初期型のモデルがこの方式だったこともあるが、偶然だがコレはこの世界の技術レベルの実情に合っていると言えた。


ペリスコープを作成できるような光学技術など、ガリレオ式の双眼鏡に甘んじざるを得ないこの世界に望めるはずもなく、強化ガラスもどきのモノにミスリル合金のスリットを付けるという選択肢が一番現実的だったのだ。


しかし、そのスリットにはめ込むガラス一つとっても透明度と強度を確保するのに苦労した。


ガラス職人には断られた。


積層ガラスに出来るような平面、硬さ、透明度を確保出来るようなモノはとても作れないと言われてしまったのだ。


王都中のガラス工房に追い返され、マグヌスさんと方々の技術者に打診した結果、錬金術の工房からその回答が寄せられる。


錬金術の一種に、クズ水晶や、不透明な水晶を錬成し、より透明度の高い水晶を生成する魔術がある。


本来は魔導具などに使用する魔力の伝達効率に優れた水晶を確保するための技術だが、それを応用することで何とか硬度と透明度を確保したのだった。


工程から言えば、コレはもはや『防弾ガラス』ではなく、『防弾水晶』だが・・・。


もちろん、前世同様に視界は狭く、ここが正面装甲の弱点になることは変わりない。


魔道戦車が前進を続ける間にも、戦況は刻々と変化してゆく。


テルトは一人車長席のハッチから半身を露出させたまま戦況を観察し続ける。


ゆっくりとリジュンの防壁に迫る巨人に対し、雨のごとく矢が浴びせられ、投石器から石弾が打ち出される。


たまに突き刺さる矢を煩わしげに引き抜き、石弾をものともせずに、確実にリジュン要塞への距離を縮めていく巨人。


炎属性や、風属性の低、中級の魔法が幾度か炸裂し、続けて石弾も幾度か巨人の体を直撃するが効果があるようには認められない。


遂に距離は当初の半分にまで近づき、クロスボウの矢が飛翔するが効果はない。


巨人はもはやリジュンの至近と言ってよい距離にまで迫っていた。


(くそっ!思ったより早い。間に合うか?)


テルトが全速運転を指示しようとしたその時、暗雲の立ち込める曇り空にパッと閃光が奔ったかと思うと、空から光の束がまばゆいばかりの光量で降り注ぎ巨人に照射される。


そこで始めて巨人の口からおぞましい苦悶の声が響き、その巨体が苦痛に身じろぎする。


「これは・・・、神聖属性の魔法。 と言う事は死霊系の魔物の一種・・・なのか?!」


「えっ?! 死霊系⁈ 死霊系ってことはお化け? お化けじゃないよね?」


「・・・違うぞ、おちつけ! いいか、あれはな・・・えっと・・・うん。そう、ゴーレムの変異体だ! あんな死霊系のモンスターなんていないだろう? 聞いたことあるか? 」


テルトはその光景を見ながら呟くと、マイクが拾ったのか、フルーの気弱な声が聞こえるが、かなり無理のある躱し方をするテルト。


「お、おう・・・そうだな。たしかにっ! いやーテルトちゃんが死霊系とかいうからびっくりしたぜー。」



((脳筋で良かった・・・。))


テルトとユーリアが内心で獣人のパニックを未然に防いだことに胸をなで下ろしていると、まばゆかった光も消えたようだった。


だが、巨人は消えていなかった。


「効果は・・・殆どなし。 いかん、初撃はあちらの方が早いか!」


そして巨人の長大なバルディッシュの一撃が遂に要塞に叩き込まれる。


飛散する石材と、吹き飛ばされる、兵士達。


要塞の防壁が瞬時に半ば以上を削り取られるのを目の当たりにして、テルトは指示を出す。


「フルー、榴弾装填準備! 目標『巨大ゴーレム』!」




お読みくださりありがとうございます。m(__)m

一応記述が矛盾しないよう、ティーガーや、戦車の構造や設定などは調べて目を通しているつもりですが、ご指摘などあればツッコミお願いしますw 

これからも応援よろしくお願いします♪

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