表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢は国家公務員!?~異世界なのに転生者に優しくないこの世界~  作者: ETRANZE
遊撃隊編 魔道戦車出撃!
57/87

物騒なお茶会(Ⅰ)

ユーリアも驚きながらも慌てて礼を返し、何事かと用件を尋ねる。


「いえっ!こちらこそ。しかしどうされたんですか? こんなところまで。」


「はい、誠に恐縮なのですが、今より拙宅の中庭にてお会いしたいとマクス様が申しております。急ぎの用件がございます、御同道いただけますでしょうか?」


『いただけますでしょうか?』などと疑問形で結ばれてはいるが、もちろんしがない中級官吏andなんちゃって騎士のユーリアに拒否権はない。


『いやぁ~、ちょっとめんどくさそうなんで今回はパスしていいっスか?』


などと三賢の頼みを断れるはずもないのだ。


「分かりました。ではすぐに・・・? どうしたテルト?」


言いかけたユーリアの服の裾がくいくいとテルトによって引っ張られている。

・・・何か言いたげな目だ。


「?どうしたんだ?」


その声に応えたのはテルトでなくフルーだった。


「なぁー。ちょっと待ってから行こうぜ! そうだな、あとオレの体内時計で20分くらい?」


「?」


ヒックスさんは二人の想定外のリアクションにきょとんとした表情を浮かべている。


ユーリアも始めはその意味が分からなかったが、厨房から再び漂ってきた香りですべてを理解した。


この二人は・・・二枚目をちゃっかりしっかり食べてから悠々マイペースでナスネル家を訪問しようというのだ。


大胆というか、食い意地が張っているというか、怖いもの知らずというべきか、とにかく王国中探しても三賢の召喚に、


『ピザ食ってからね。』


などというチャレンジャーすぎる断り方が出来る者はほかにはいるまい。


「お前らいいかげ・・・」


ユーリアがさすがにお説教をしようと口を開きかけたとき、来客の鈴に気づいて厨房から顔を出していたレシアさんが仁王立ちで吼える、


「アンタたちいい加減になさいな! 焼きあがったらお屋敷まで届けてあげるからさっさと行ってきなさいっ! うちのマネージャーとナスネル家の執事さんを困らせるんじゃないわよっ!」


「「はいっ!」」

 

その声に反射的に背筋を伸ばし、直立不動の姿勢をとる二人。


「当家でも簡単な茶の用意をいたしますのでテルト様、フルー様にはひもじい思いをさせないと思いますが・・・。」


「行こう!すぐ行こう!」


「ナズネル家に忠義を尽くす忠臣。行かいでかっ!」


「お前ら・・・。」


呆れるユーリアとレシアさんとは対照的にヒックスさんの眼差しは、たまに会う孫を見るかのように優しい。


それともマクス殿下の無茶っぷりに比べればマシだとでもいうのだろうか、それもありそうだから困る・・・。


「では御三方参りましょう。 レシア様、お手数なのですが当家の者に申し付けておきますのでよろしくお願いします。 マクス殿下も『ぴざ』とか申すユーリア殿の新しい料理を楽しみにしておりましたから。」


微笑を浮かべながらそう言うヒックスさんに、なぜかレシアさんが気恥ずかし気だ。 仁王立ちしていた自分の姿勢が恥ずかしくなったのか足を閉じ、手を軽く合わせる。


「え?ええ、ええ。構わないわよ・・・。そう言っていただけて光栄なくらいよ。」


「そう言っていただけると助かります、レシア様。今回は折角の試食会を邪魔だてしてしまい本当に申し訳ありませんでした。それでは失礼させていただきます。」


来た時同じく優雅な礼を施して先頭に立って歩き出すヒックス達はすぐに扉の向こうへを消えていった。


「何よ・・・、いい男じゃない。旦那とは全然違うタイプだけど、悪くないわ・・・。」


レシアは一人、ヒックス達の消えた扉へ顔を向け、火照って赤みがさそた頬にたくましく大きな両手を添えるとそう呟いたのだった・・・。


******************


ナスネル家の立派な館の門をくぐると既にマクス殿下は中庭でユーリアたちを待ち構えていた。


大量のお茶うけとともに。


そしてユーリアが見ると反射的に不安を感じてしまう満面の笑みを見せて3人を歓迎する。


「やぁー来たね♪ まぁ掛けてよ。 それで? どうだったんだい、『ぴざ』の出来は?」


「いやーもう完璧だね!肉シリーズ早く出ないかなぁ!」


「ふむ、やはり私はビスマルクは外せないな。」


「ほえ? なんだそれ?」 


「目玉焼きを載せたピザの事だ。ベーコンやチーズなどをトッピングにすることが多い。」


「なるほどぉ!そいつはいいねぇ!」


「いやーおいしそーだなー。ぼくも食べたいなー♪」


勝手に盛り上がりだした二人にいつの間にかマクスも参加して、ピザ談議に花が咲きそうだ。


「フルー、テルト、もうピザの話はそれくらいでいいから。 あの、ヒックスさんから急ぎの用件と聞いて来たんですが?・・・ピザの話・・・ではないですよね?」


「イヤー違う違う、爺やからついついユーリアさんたちが新しい商品の開発試食会をやってたって聞いたら気になっちゃって。」


「は、はぁ・・・。」


「も―そんなに呆れないでよー。 まぁちょっとこれを見てよ。」


マクスは使用人に合図すると、卓上に大きな地図を広げた。


それと同時に、ヒックスさんに指示を出し、使用人たちを中庭から遠ざける。


「おぉ、デカい。」


フルーが見たまんま、何のひねりもないコメントを呟く。


確かに150ガド四方の地図は普段中々目にする事はない、と言うか地図がまずこの世界では珍しい。


真ん中にガリア王国を中心として描かれた地図。


東には上から『ドールア帝国』、『ウブン部族国家』、『リタ王国』が国境を接している。


西には『ネージ』、『チャス』、ダーノなどの小国家群。


さらに北方では帝国は『狼牙山脈』で隔てられたフルーの故郷である獣人の里、ゲラント自治領もこの北方沿いの帝国との境、山脈のふもと辺りに存在している。


乾燥地帯のウブンの奥にはテルトの故郷である鬱蒼とした大森林が広がっており、ガリアは直接大森林とは国境を接していない。


テルトはそれゆえ環境が過酷で、治安も良くないウブンを横断することは最初から選択肢に入れておらず、過去はリタを経由して王国に辿り着いていた。 


小国家群の奥地は未だ竜が多数生息すると言われる『竜骨ドラゴンボーン山脈』を挟んでドワーフの王国であるアスフラタ王国が古より栄えていた。


排他的な種族であるドワーフがわざわざドラゴンのみならず、モンスターも多く生息する危険地帯を冒して山脈を超えてくると言う事はまずなく、マグヌスさんがどれだけイレギュラーな存在であるかがよくわかる。


一説にはドワーフのみが知る安全なルートがあるとされる。だが、マグヌスさんもそれに関してはナスネル家に対してさえ口をつぐんでいるようだ。


因みにリタ王国の奥地にはバルタスさんとレギナさんが連れてきた違法奴隷達の故郷であるトライバが広がり、さらに海を隔てたところにはポリネーなどの南方の国家の存在も知られている。


だが今回は世界地図、というわけではなく、ガリアを中心とした周辺諸国が拡大され、それ以外は捨象した地図が用意されていた。



「どうだろう? テルトさんの意見を参考にして書き方を改めてみたんだけど?」


「モグ・・・しばしお待ちを・・・」


そう尋ねられたエルフの少女は、来て早々に別のテーブルに避難させられた可哀想な菓子達を労うべく大皿に盛りつけたそれの中からドーナツのような生地の菓子を咀嚼していたらしい。


流石に食べながらではよろしくないという判断をしたらしく、数瞬の猶予を質問者に求めると、手に持っていた菓子の残りを


『ハグッ、モグモグ』


と口の中で咀嚼すると音を立てずに高級な紅茶で流し込むというマナーが良いようで全然よろしくない行為ののち口を開いた。


「確かに、以前拝見した地図よりはかなり関係性が明確で客観的な状況判断が可能だと思います。」


「そう言われてみれば確かに、前回よりも見やすいような。」


「ふーん。」


興味のなさそうな相槌を打った獣人には誰も触れずに話題は進む、


「今まで目にした地図はネスネル家所蔵のものに限らず非常に抽象的だったのです。 都市や町、村の名前が列挙されていてなんとなくの位置関係は分かりますが距離感がつかめなかった・・・。」


そう、この世界の地図は大抵、すごろくのように王都の次はどの町や村へつながり、それがどう枝分かれしているか、というレベルでしかなかった。


そして例外なく王都など大きな都市や城は絵画的な表現で描かれていて、縮尺はめちゃくちゃだ。


「まぁそれに比べると都市の大小に関係なく、同じ縮尺で記号化してあるし。測量は残念だけど何年先になるかわかんないねぇ・・・。」


「それは仕方ないかと・・・測量には莫大な費用と時間がかかりますから。それに国内はともかく、他国の領内を勝手に測量して回るわけにもいかないでしょうから。」


マクスが今広げて見せた地図は都市や城塞などの区別は丸や四角の記号で表されており、距離感もすごろく式のルート分岐のような描き方ではない。


複数の場所から互いがどの位置関係にあるか、そして徒歩や馬で何時間かかかるかと、高低差もある程度勘案した大まかな距離を想定した距離感で配置され、その距離辺りの長さがおよそ何バークなのかが示されている。


さらには大まかな高低差も地図では色分けされていた。


・・・因みに単位としては100ガドが1ノーブ、1000ノーブが1バークと言う、センチメートル法に対応した単位が普及しているためにユーリアたちは大いに助かっていた。


「いや、話がそれちゃったね。 実は最近我が王国の周りが若干騒がしくなってきている。」


テルトの言葉にうんうんと頷いていたマクスははっと我に返ったようで、馬上鞭を手にするとおもむろに説明を始めた。


「? と言いますと?」


まだ話が見えず、続きを促すユーリアの言葉にマクスは鞭で帝国の帝都オッデスをぴたりと指す。


「・・・帝国が、ドルーア帝国がガリア王国侵攻の兆しを見せている。」


マクスの声は大きくなかったが場に静寂をもたらし、ユーリアたちに衝撃を与えるのには十分だった。


「うまっ! このサンドイッチウマっ! やめられないとまらないっ! 肉か! 肉なのかっ!俺を虜にするのはっ!」


・・・ただ一人食欲に支配された残念獣人を除いて。



お読みくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ