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獣人フルーの『やきう道』(中篇)

3部、4部加筆修正してみました。

拙作のポイントがようやく100を超えました、みなさんのおかげですm(__)m

ブックマークもすこーしずつ増えていて、ただ感謝感謝です。



そんな衛士たちの変わりぶり同じ王都の安全を預かる近衛騎士団は不思議を通り越して『不審』に思っていた。


今まで出くわすと、気まずそうに隠れるか、こちらに気付かずにダラダラとしている衛士ばかりが目立っていたが最近は近衛騎士団を見つけると。


「ッス! オツカレーッス!」


という謎の挨拶と共に、ビシッと敬礼をしてくるものも珍しくない。


「衛士達が背筋を伸ばして敬礼をしてくるなど気味の悪い・・・。絶対に何か裏があるはずだ」


と、 当然この突然の変わりように疑問を持った近衛騎士団は原因を探り始める。


・・・ひどい話だが、衛士の今までのへっぽこぶりにも問題があったのは確かである。


すると、今までたまの演習で近衛兵や騎士団しか使っていなかった城外の練兵場が衛士の連中に毎日占有されているらしいという情報を掴み、密かに城外の練兵場へとその秘密を探りにいった。


そして彼らは息をのむことになる。


「1!」


「「「ソーレ!」」」


「 2!」


「「「ソーレ!」」」


「3」


「「「ソーレ」」」


「4!」


「「「ソーレ」」」


「「「イーチ! ニー! サーン! シー!」」」


フルーを先頭に衛士たちは練兵場を駆けていた。


掛け声を合わせ、はつらつとした顔で。


「な、なんだこの光景は・・・。」


そこで彼らを待ち受けていたのは剣や弓矢の稽古ではなく、ストレッチやランニングなどの基礎練習からキャッチボールやノックまで野球の練習にひたむきに汗を流す衛士の充実した表情だった。


「けしからん! 一体奴らは武人の心得を何だと思っているんだ!」


当然、近衛騎士団の面々は抗議をするべくフルー監督率いる衛士たちのもとへと向かったが、向かった一人はフルーに肩を叩かれながら戸惑いながらもキャッチボールに加わり、次第に顔がほころんでゆく。


「ばかな!? 何をやってるのだアイツは?!」


まんまと取り込まれた同輩の姿にしびれを切らし向かったもう一人も、バットを持たされスイングを褒められると、得意げに頭を掻きながらノック打ちを始める始末。


要するに近衛騎士団の潜入組はことわざ通り、『ミイラ取りがミイラになった』のである。


そして見事、野球菌の感染したミイラ達は、近衛騎士団の詰め所に戻ってから上司たちにアツく野球の魅力について語り、野球熱が近衛騎士団に伝染するのにそれほどの時間はかからなかった・・・。



けっきょく近衛騎士団の連中も、


「騎士団の結束と、騎士道精神の涵養、身体能力の向上と、基礎体力の強化。」


とかいうもっともらしい理屈をこじつけて、衛士顔負けに野球の練習に熱中するようになる。


そしてある日、両チーム対抗で練習試合をやろうということになり、胸を貸してやるつもりの衛士チーム対近衛チームという、表面上はごく友好的な雰囲気で練習試合が始まった。


だが序盤、自分たちに無根拠な自信を持っていた衛士のウルブスチームは、意外に近衛騎士のドラゴンズチームに苦戦することになる。


ボッフェン家の次男カンプは皮肉気に、


「おやおや、所詮衛士どものチームなどその程度のなのかな?」


などと言い不必要に衛士チームを煽ってみせる。


「ぐぬぬぬ!」


「まぁ、多少のキャリアの違いなど、センスと戦略の違いでどうにでもなるということだね。ハハハハハッ!」


そもそも近衛騎士団にはフルーの指導方法は余り受け入れられず、ルールや練習法を一通り学んだ彼らは隊長クラスの上官を中心に独自の練習カリキュラムで体系的に練習を始めた。


騎士階級の彼らは剣術も流派や型、技巧を重んじるのと同じように、野球の練習も自分たちなりに体系化し、剣術や槍術の指南書のように練習や戦略をマニュアル化し、頭脳派チームとして自分たちなりのプレイスタイルを確立しようとしていたのである。


そして見事に先制点を決めた近衛チーム。


とまぁ、そのままの流れであれば衛士チームと近衛師団チームは良きライバルとして切磋琢磨しながらお互いに高めあう良きライバルとなれるはずだった。


だが、衛士チームは大人げなかった・・・というかフルーが大人げなかった。


「みてろよぉ! 絶対に騎士団連中には負けねーっ!」


「「「オォーッ!」」」


そう焚き付けられて、衛士たちも今までの関係が『優等生』と『問題児』だっただけに、とにかく勝つことにこだわり、暴走し始める。


『戦争には負けても喧嘩には負けない!』というこれぞまさにイタリア軍的精神構造。


「おいお~い! 近衛の坊ちゃんよぉ?!素振りは家でしようやー!」


「おらおらー! ハエが止まるぞそんな球じゃ! 本気出していいんだよー?」


衛士たちの小学生のような低次元のヤジが飛び、近衛騎士団側の繊細なエリート集団の心を波立たせ、エラーが目立ち始める。


「秘技ウルフストリーム!!」


【ビュッ!】


【ズパァアンッ!!】


「な、ななななな・・・。」


「痛ってぇ! フルー監督もう少し手加減してくれ! 手がグローブみたいに腫れちまうよっ!」


そしてピンチになるとフルーがいきなり獣人化する始末、近衛チームは口を開けたまま微動だに出来ず、自軍のキャッチャーは泣きべそをかくレベルである。


そんな文字通りキャッチャー泣かせの剛速球で次々とストライクを量産し、ドヤ顔のガッツポーズで相手のメンタルに更に追撃を加える。


打ってはせこせことバント指示ででランナーを溜めておいてから監督兼ピッチャー兼バッターという立場を利用し、代打で登場。


打ってはフォーム無視、内角外角無視、ストライク、ボール玉無視というパワー系獣人の膂力に100%依存したフルスイングで、球が練兵場の彼方へに消えるほどの文字通り怪物級のホームランを放ってえげつない打点を量産した。


試合が終わってみれば、結果は1-24という弱い者いじめのような大人げない試合。


更に不幸なことに、


「近衛騎士団が衛士達に『野球』とかいう『試合』で負けたらしい。」


という話は衛士チームの自慢話がきっかけで噂として、瞬く間に広がってしまい近衛騎士団のエリート集団としてのプライドは深く傷つけられたのである。


世間は『ヤキュウ』のことなど全く理解していなかったが、とにかく『あの』衛士達に『あの』近衛たちが負けたという噂だけが急速に拡散していったのである。(ちなみにこの場合の『あの』には全く正反対の意味合いが伴う。)


衛士チームが笑いあいながら、勝利を肴にすべく夜の街へ繰りだした後も近衛チームは敗北感に打ちひしがれていた。


カンプはこぶしを握り締め、獣人さながら、犬歯をむき出しにしてほえるように宣言する。


「衛士の連中め! これはボッフェンの家名に泥を塗られたも同じことだ! いや、ボッフェンだけではない、我ら近衛騎士団の名誉の問題なのだ! お前たち!決してこの屈辱は忘れんぞ! 」


「「「オオッ!!」」」


カンプの号令のもとそう誓いあい、近衛騎士団のチームはそれ以来臥薪嘗胆の日々を送り、ひたすら復讐戦に備え準備を重ねてきた。


そして一週間前屈辱の敗北から丁度二ヵ月後のこの日を指定して、近衛騎士団チームによって衛士チームに挑戦状が叩き付けられたのである。


***************************


かくて、両者は再びこの練兵場の特設球場で激突した。


両チームの関係者だけではなく、お祭り騒ぎを聞きつけた、平和な王都の日々に飽きた人々が刺激を求めて押しかけてきている。


普段は静かな練兵場には大勢のギャラリーとそれを当て込んだ食い物や飲み物の屋台や物売りの姿もあったりして完全に祭り状態である。


そんなギャラリーの視線を集める両チームは、それぞれ今日の晴れ舞台に合わせて揃いのユニフォームを仕立ててきていた。


ベースボールキャップにベースボールシャツ、パンツスタイルにゲートルを巻いた足にはレザースニーカーという戦前の野球界のようなややレトロな雰囲気ではあるが、なかなかサマになっている。


衛士チームは青を基調とした布地の胸にフルーの獣人の横顔を意匠化した刺繍が施され、近衛チームは白を基調とした布地に自らの誇りとする近衛騎士団の紋章である竜の意匠が上品に配置されている。


そして肩の部分にはスポンサーであるナスネルの弓と、ボッフェンの槍の紋章がそれぞれ刺繍されていた。


(こりゃ、さながら代理戦争だな・・・。)


心の中でボヤきつつ、いまさら辞退することもできないので主審としてユーリアは声を張り上げた。


「プレイボール!」


こうして因縁の対決の幕が切って落とされた.


お読みく下さりありがとうございます。

こういう『部活文化』って日本独特なんでしょうねぇ。

感想などお寄せ下さい。 応援よろしくお願いしますm(__)m

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