脳筋獣人でもわかる! 野営クッキング教室♪ 講師:ユーリア先生
ブクマ20件キター! と一人で喜んでいたら、起きたら18件まで減る悲しみ・・・。
そうですか・・・、もっと頑張れと・・・。神(読者)様、厳しいっす・・・。
そして夜・・・。
昨日は宿場町で一泊し、今日は2度目の野営である。
パチパチと焚火のはぜる音が静かな夜に響く。
火の上でクツクツと大きめの鍋が煮えている。
中身をかき混ぜているのはユーリアだ。
木のお玉に少しだけスープを掬うと息を吹きかけながら味見をする。
「うん、われながらよくできてるな、スープはこれでよしっと。」
鍋を火から遠ざけると、作業台にした切り株の上で前世よりもさらに固く焼しめられたバケットを餞別のナイフで切り分ける。
手際よく三つの木皿にチーズと共に盛りつけていく。
さすがにこの世界にファーストフードをもたらしただけあって料理の腕は一流・・・というわけでは全然ないが、3人の中ではやはりダントツに上手かった。
というかマクダーナル開店までの準備の半年は、ユーリア自身も半分料理修行のような日々であり、嫌でも料理の腕が磨かれて当然だ。
因みに調理のイロハを教えたのはレシアさんである。
ついでに言うとフルーは肉食寄りの食べる専門、テルトは甘味寄りの食べる専門・・・要するに二人とも食べる係である。
「おぉ~いい匂いだな~。」
そこへ大きめのタライを抱え、首にタオルをかけたフルーが湯で体を拭いて馬車から戻ってきた。
幸いこの「出張」ではテルトのおかげで水や湯には不自由しない。
魔法とはまったくありがたい存在だと言う事をフルーもユーリアもこの出張の旅で実感していた。
「おっ、戻ったな。 そろそろメシだぞ。」
ユーリアの言葉に即座に反応し目を輝かせるフルー。
「先生ステキっ! 今日のメニューは何かしら!」
「今日はポトフだぞー。フルーが肉好きだから具沢山にしといた。 あ、ちょっとそこのお皿取ってー。」
「あいよっ!」
フルーが差し出してきた木の深皿にポトフを取り分けながらテルトを呼ぶ、
「おーい! テルトもメシだぞ~」
「む、ぅん・・・了解・・・」
声が聞こえたのは木の木陰に設置されたテントだった。
テルトは野営の場所の選定とテントの設置を自ら買って出ていた。
因みにこれも工房に出入りしている仕立屋の職人に言って作らせた特注品。
完全にテルトの道楽だ。
初日の野営の時に、
「おぉ、立派なテントだね!」
とユーリアが言うと
「フ、ただのテントではない。これはツェルトバーンでできているのだ!
テントにも、夜具にも、担架にもなる優れものだぞっ!」
とこんな時だけ饒舌になり、ドヤ顔で言っていたのでテントにも何かテルトなりの拘りがあるようだ。
因みにそのテントは大小一つずつ、二張が設置されている。
テルトはそのツェールトバーンとかいう布で作ったテントがお気に入りらしく、設置が終わってからさっさと馬車で身繕いを済ませてしまい、あとはずっとテントでモソモソと過ごしている。
ユーリアの声で、顔に寝あとをつけたまま、ツェルトバーンを一枚小脇に抱えて、またモソモソと這い出してきた。
テルトがちょこんと座り、全員が揃ったのを見届けて、フルーが木のスプーンをマイクのように持ち、待ちかねたように言う。
「はい、ではユーリア先生、お願いします!」
「はいはい・・・。 手を合わせましょう。 いただきます!」
「「「いただきます(!)」」」
言うが早いかガツガツと具だくさんのスープをかきこむフルー。
「ッ!ンまああ~いっ! このポトフを作ったのは誰だぁっ! シェフを呼びたまえっ!」
「目の前にいるよ・・・。食事の時くらい静かに食わせてくれ。」
言葉とは裏腹にユーリアも笑顔である。
大げさでも褒められて嫌なはずがない、そして何よりフルーはいつもユーリアの作った料理をとても美味しそうに料理を食べる。
そして、いつも食べすぎる。
「美味しい。肉と野菜の旨味がよく出ているわ・・・。」
その隣でそう料理研究家のようなことを言うテルトも満足げにスープを口に運んでいる。
「いやー野菜とかをこれだけ持ち運べるのはテルトが作ってもらってたクーラーボックスのおかげだよ。ありがとなー。」
「そうそう、あれがないと干し肉とチーズと堅パンとか本当につまんねー料理になっちゃうからなぁ。」
口々に感謝する二人。
そう、この日のポトフには日持ちするベーコンや、干し肉に加えて、ジャガイモや玉ねぎ、そして日持ちしずらいキャベツやキノコなどの野菜もふんだんに使われている。
『魔道式クーラーボックス』もフルーが魔道具工房でワガママを言って作ってもらったものの一つだ。
熱を遮断する内貼りを施した木箱の中に冷気の魔法の力を蓄える魔道具が入っている。
これに一日2度ほど魔法使いが冷気を込めてやれば簡易的な冷蔵庫になるという寸法だ。
因みにこれもテルトという魔法の使い手がいなければただの嵩張る木箱であり、ユーリアとフルーだけでは宝の持ち腐れである。
「さて、じゃあもうひと手間、だな。」
ユーリアは一足先に食べ終わると用意しておいたボウルから小麦を練った弾力のある生地を取り出す。
軽く枝を払い、表面の皮などを始末した枯れ枝に薄く巻き付けて焚火の側に突き刺していく。
同時に手際よくスープ鍋をかけていた鉄棒にヤカンをかけると湯を沸かし始めた。
「「もう食べてもいい(か)?」」
あたりに小麦の焼ける香ばしいにおいが漂うと同時に言う二人、どんだけ気が早いのか。
すかさず口と手の両方で制するユーリア。
「まーだ! ステイ!」
2人をけん制しつつ、焼き具合を見ながら火にかざす面を変えて焼いていく。
同時にシュンシュンと音を立てて湯が沸き始めた。
「おっ、こっちはもういいかな。」
王都で買っておいた紅茶にそっくりな茶葉をサッと木匙ですくい入れ、火からおろしたヤカンの中で煮出していく。
踊る茶葉が落ち着いたころ合いを見計らい、静かに3つのカップに注いで二人に渡していく。
「「・・・」」
2人はカップを条件反射で受け取りながらも目は目の前の串にくぎ付けである。
「ハイハイ! 今やりますよ! 」
ユーリアは呆れたようにそう言いながら、串を取ると小さな壺を開け、中から琥珀色のはちみつを掬い焼きあがった生地にかける。
最後にシナモンのように甘く香るスパイスを振って二人へ渡していく。
残りの焼きあがった串を火から遠ざけながらユーリアは待ちかねた二人に気を利かせるつもりで声をかけた。
「お先に「「いただきます(!)」」・・・どうぞ・・・。」
言われるよりも二呼吸くらい早く、二人は湯気を上げる出来立てのユーリア特製のデザートをほおばっていた。
「ッ!ンまああ~いっ! このデザートを『それはもういいから。』・・・はい。」」
特製と言っても、牛乳無しのパンケーキのレシピみたいなものなので難しくもなんともないのだがそこは野営の雰囲気と、焚火で串焼きで作るというユーリアのアイデアの勝利だといえよう。
もきゅもきゅと串焼き状のパンケーキを頬張りながらテルトが自分のカップをユーリアに差し出してくる。
「ハチミツ、お茶にも入れて欲しい・・・。」
「テルトさんや、キミの体は甘味で出来ているのかね・・・。」
呆れたように言いながら、結局はちみつをお茶にもたらしてやるユーリア。
「!・・・甘い。ありがと、ユーリア。」
微かにはにかんで嬉しそうに目を細めて口をつけるテルト。
『甘いのはお前だぞ!ユーリア!』
などと野暮は言うまい。
中身はともかく外観は可憐なエルフの少女におねだりされて拒否できる鉄の意志の持ち主など男女問わずそうそういるハズがないのだ、多分。
まぁ、ポトフの時もフルーには肉を多めによそって出してやったりする辺り、何やかんや言ってユーリアは部下に甘々な上司であった。
「う~ん、食った食った!」
「空腹でも眠い、満腹でも眠いとはこれ如何に・・・」
結局、「別腹」という名の異次元にどう考えても過剰だったはずの分量の串焼きパンケーキは全て吸い込まれていった・・・。
「いやいや、明らかに食べすぎだから。 ほらほら二人とも、片づけて寝るぞー。」
ユーリアは腹をさする獣人と、夜具にもなるらしいツェルトバーンにくるまり、早くもうつらうつらし始めているエルフを突っつく。
のろのろと動く二人のそばでてきぱきと片づけを始める。
おなかがくちくなった3人は満腹からくる睡魔と戦いながら片づけを済ませ男女それぞれのテントで2対1で眠りについた。
はずだったが・・・
「その時・・・私は見たのだ・・・王都の墓地に横たえられ埋葬を待つばかりの棺がゆっくりと横へずれ、中から半分肉が削げ落ちた手がゆっくりと・・・」
「んあああああ~~~~! きこえない~!きこえないぞぉ~! テルトちゃん、マジで! マジでやめて! そう言うのホント無理! ねむれなくなるじゃん!」
すぐ隣のテントから聞こえるくぐもった低い声に反応して、真夜中の野外に獣人の悲痛な声が響く。
「ちょっ! フルーしがみつくな、暑苦しい! いい加減にしなさい、二人とも! 明日も早いんだからもう寝なさい!」
寝付きかけたところを思いっきり羽交い絞めにされたユーリアのお説教により、ションボリする二人。
「「・・・はい・・・。」」
「・・・」
「・・・ユーリア。」
「・・・なんだよ?」
「・・・トイレ、行きたくない?」
「一人で行きなさいっ!」
・・・、結局3人が眠りについたのはそれから少し後の事であった。
こうしてある野営の夜の一日は。今日も平穏のうちに更けていく。
お読みくださりありがとうございます。
日常系とか言いつつ、思えば純粋な日常回ってあまりないなーと思って書いてみました 笑 普段とは違う3人の一面を感じて頂ければ幸いです。
感想、評価、ブクマなど執筆のモチベーションにお寄せいただければ3国一の幸せ者です m(__)m




