いざ僻地へ! 遠足気分の二人と、引率1名
祝30話目突入♪ 皆様のおかげです!
地味な回でごめんなさい(^^;
8時投稿でのアクセス数が固定してきたように思いますので、暫く7時投稿に変えてみようかと思います。
投稿時間に関するご意見などございましたらお寄せ下さいませ。
・・・翌朝
いつものようにユーリアたちが街門で審査官の業務を行っていると、ピグリル男爵が一直線にこちらへ向けて駆けてきた。
「おおっ!ユーリア君、聞いたぞナスネル家からゲラント領へ調査官として派遣されるらしいではないか!」
鼻息は荒く、バシバシと肩を叩いてくる。
「えっ、ええ。そうなんです、突然の事なので・・・やはりご迷惑ですよね?ねっ?」
(もしかして、もしかしてっ!引き留めに来てくれたのかもしれないぞ!)
などというユーリアの微かな希望は速攻で砕かれた。
「何が迷惑なものかね、バカなことを! ナスネル家直々に命を賜るなど大変に名誉なことだ! 私も上官として鼻が高い! 審査官の職務は心配しなくてよい、調査官として存分に頑張ってきてくれたまえ!」
「い、いやぁ~そうですよね~! ホントに名誉なことで。 男爵ありがとうございます!」
若干震える声で答えるマルク、
「いやいや構わんよ! ・・・どうしたのかね、ユーリア君泣いているのか?」
「えぇ、名誉なこと過ぎてつい目から水が・・・。」
「はははっ! 君もようやく私の気持ちがわかるようになってきたようだね。けっこうけっこう! では、留守中の職務を引き継ぐ審査官と後で引き合わせるから、申し送りを済ませておくように。」
「はい、ありがとうございます・・・。」
告げると満足したのかニコニコ顔でピグリル男爵は去っていった。
3人は出発まで夜の警邏を免除される事になった。
申し送りを済ませ、世事に疎いところのあるフルーとテルトを含めた3人分の旅装一式をユーリアが買い揃え、準備をする。
3人とも王都に来て以来長旅をするのは初めてだ。
ゲラント自治領は王都を遠く離れた辺境。
目的地に近づくほどに、宿場町や休憩所なども整備されておらず、しっかりと野営の準備をしておく必要があった。
買い物リストを作り、堅実な彼らしく値段と機能と財布の中身を睨みながら、真剣に準備をしていた。
(今回はナスネル家が支度金を準備してくれたから、『必要経費は会社もち』なのがラッキーだな。この中世的世界じゃ、上司の命令とかいうと持ち出しや、手弁当(=自腹)が当たり前なんだよなぁ。)
そう、ユーリアはもはやこの任務からは逃げられないと悟り、物事の良い部分を見ることにしていた。
いつまでもくよくよしていてはメンタル的にもよろしくない。
テルトは何か用事があるらしく、毎日仕事終わりに毎日マグヌスの工房を訪れては遅くまで打ち合わせをする日々。
どうやら今回の出張に持って行きたいものがあるようで、その魔道具についても打ち合わせをしているようだった。
(また物騒なものじゃないといいんだけど・・・。)
まぁ、その辺は大丈夫だろうと思いつつ、後ろに続くフルーに声をかける。
「おーい、よそ見せずにちゃっちゃと行くぞー。 テルトが野営用のテントを作ってくれるらしいから、その材料も買っとかないと。」
「まだ行くのかよぉ~。」
フルーの背中には背負子にもう沢山の荷物があった。3人分ともなればそれなりの量である。
「つべこべ言わんとゴロゴロしてた分働けよなっ!」
「うへぇーい。」
お察しのとおり、フルーは忙しく動き回る二人を尻目に、これ幸いとばかりに一人ゴロゴロとしていた。
その現場をユーリアに見つかってしまい、シバかれて食糧確保の担当になった。
だが、明らかに過剰な量と、どう考えても日持ちしない、自分の食いたいものばかり買い込んで再びユーリアにシバかれ、
「もうお前は何もするなっ!!ハウスっ!!」
と言われてションボリとし、その後はわりと真面目に荷物持ちとしてユーリアの買い出しを手伝った。
しかし、
「そもそもフルーを食料担当にするなど人選がおかしい。狼(この場合はハスキー、いや文字通り獣人だが)に羊の番をさせるようなものだ。」
テルトの言葉ももっともであり、ユーリアは自分の上司としての管理能力の無さにも若干反省している。
そんなこんなでマグヌス氏の依頼を受けてから、準備の一週間は慌しく過ぎた。
いよいよ3人は辺境のゲラント自治領へ魔鉱石途絶の原因を究明すべく、王都を発ったのであった。
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そして今、ユーリアたちは王都からの街道を2頭立ての馬車でゆっくりと進んでいる。
王都から出てはや4日。
王都周辺の比較的洗練された町並みは消え、この辺りは王都の穀倉地帯だ。
一面のどかな田園風景が広がっていた。
単騎の馬で行くとスピードは出るし、身軽だが、荷物は大して積めない。
長旅にも向かないし、整備された宿場町のある範囲ならともかく、ゲラント自治領周辺の、辺境に入ってからは替えの馬のアテもない。
「少量でも良いので一刻も早く魔鉱石を」というマグヌスさんの要請もある。
結局、ユーリアは足はさほど速くないが、力のある馬を二頭融通してもらい、二頭立ての馬車を仕立てて出発したのである。
そもそも論として、父ジュトスに仕込まれたユーリア以外は騎乗の経験はない。
フルーもテルトも乗馬など出来ないので最初から選択の余地はなかったのだが。
因みに、この世界では多くの人にとっては馬とは直接鞍を置いて乗るものではない。
馬というのは畑を耕したり、荷物を運んでもらったりするための高価な家畜なので、馬に乗れないフルーやテルト等のほうがむしろ普通だ。
もちろん、前世のマイカーの様に『一家に一台』ならぬ『一家に一頭』みたいな感覚では勿論ない。
共同で飼うか、有力者や小作人は地主の馬を借りるかするのが普通だ。
傭兵(実入りが良い一部)でも騎士でもないのに馬に乗れるユーリアのほうが珍しいマイノリティなのだといえた。
そんなわけで、馬車も主にユーリアが御者台に座って操っている。
一応フルーやテルトにも教えてはいる。
教えてはいるが、テルトはともかくフルーは全く覚える気がないのでまだ当分ユーリアは御者台から離れられそうにない。
テルトは
「おおっ! ポーランドの騎兵部隊のようだな!」
とワケのわからないことを言いながら目を輝かせていたから、上達の見込みはありそうではある。
そんなことを考えつつ手綱を取っていると、後ろの荷台からフルーがひょっこりと現れて、大きく伸びをしながら欠伸をしていった。
「うーん暇だなぁ。なぁ、ユーリア・・・なんか暇だと腹減ってこない?」
「減ってこないよ・・・。何だよその謎理論は。」
そう真面目に手綱を操りながらユーリアに淡々とつっこまれるフルー。
その脇からテルトも顔を出した。
同じく小さな体で大きく伸びをしながらぽつりと言う。
「フルー、さっき隠れて干し肉食べてた。」
テルトの言葉に素早く反応して眉を吊り上げてフルーを見るユーリア。
「ちょっ!テルトちゃ~ん。それは無いっすよ~。」
「フルー!お前またっ!!」
「いやいやいや、最後の宿場町はまだまだ先だし、次の宿場町で買えばいいじゃん! ねっ?」
そう言いながらご機嫌を取るようにユーリアに近づくフルー。
だが保存を効かせるために香辛料をたっぷり効かせた干し肉のにおいをプンプンさせた獣人からご機嫌を取られても嬉しくもなんともない。
つまみ食いは旅程4日目にして既に6度目・・・、いい加減に、お説教タイムである。
「宿場町はな! ホテルの自販機みたいな、スキー場みたいな、サービスエリアのホットスナック自販機みたいな割増料金なんだよっ! ・・・決めた。お前の給料から天引きな。」
3人だけであるが故の気安さからか、異世界前世を引き合いに出しつつ、そう冷たい視線で突き放すように言うユーリア。
「そんな殺生な! タダメシと思うから美味いんじゃないか! 自腹なら我慢するぞ、ちゃんと理性の働く獣人なんだぞオレは!」
堂々というフルー、何故その図々しさ100%の発言で胸を張っているのかユーリアには全く理解できない。
だが、残念なことに本人に聞いても恐らく分からないだろう。
「だからその恥ずかしい謎理論をやめい!」
「フルー。自業自得。」
テルトも援護射撃をしてくれるが、心強い限りだ。
(テルトちゃん、ええ子や・・・。)
だが、テルトの口元にあるものを発見し、ユーリアは更に顔を引きつらせた。
「をぃ・・・テルトさんや、そういうテルトさんは何で口の周りに粉砂糖がついてるんですかねぇ?」
「・・・知らない。」
いいながら、隠す様子もなく堂々と思いっきり口を拭うテルト。
肝が据わっていると褒めてあげるべきだろうか。
いや、断じてそんなはずはない、このエルフはただの甘味泥棒である。
テルトは堂々と証拠を拭い去ったあと、何事もなかったかのように前方を見つめている。
要するに二人はジャンル違えど、同じカルマを背負った問題児らしい。
「ハァ~。 全く二人とも・・・。 2人のおかげでもうすでに計算と全然食料が合わなくなってきたぞ・・・。」
手元の台帳に記した食料品のリストに新たに×を書き加えてゆく。
先ほど自分で言った通り、計算の1.5倍のペースでで食料は減っていた・・・。
「ユーリア、そんなため息ばっかりついてると体に良くないぞ、なんか食えば?」
「暖機運転も多少の燃料を必要とするぞ? 甘味こそ我が燃料!」
口々に自分勝手な主張をのたまう二人。
「ええい!だまらっしゃい! もういいから荷馬車の中で大人しくしてなさいっ!」
そんなにぎやかな3人を乗せて馬車はゆっくりと、のどかな田園地帯を進んでいた。
あと数刻で日は傾く。
昨日宿場町を出て、次の宿場町まではまだ遠い。
今日は野営を野営をすることになりそうだ・・・。
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