お使いクエスト? ユーリア、初めての出張へ。
前話の事になりますが、
「こんな安易に戦車欲しがる前世日本人なんて信じられんっ!最低な悪女や!」と言う趣旨の感想を頂きました。
えー、ご安心ください。この異世界が血で血を洗う世界大戦になる事はありませんw
うちの子はそこまでバカではありません・・・戦車バカですがw
気になる方は感想ページをどうぞw
「ああん?こまけぇこたぁ良いんだよ!」って方はそう言うわけですから安心してそのままお読みください 笑
皆さんも意見や感想などお寄せ下さいね。
この話から読み出す方もいるかと思い、2話に渡り、前書きに書かせて頂きまそた。
『戦車はモノになる!』
そう力強く告げられた、テルトは喜びを爆発させている。
「?!ありがとうございます!」
「おぉ~良かったじゃんテルトちゃん!さすがおっさ『すみませんフルーが失礼な口を』-ぶっ!」
目を輝かせ感謝の言葉を告げるテルトと、余計なことを言いかけたフルーを長年の経験により阻止するユーリア。
幸いマグヌス氏の耳には届いていなかったようで、テルトの喜びようを見て嬉しそうに話を続ける。
「まず車体を構成する素材じゃがミスリルと鋼を主体とした合金じゃ、コストはかかるが強度は確保できるし、何より車体が軽くなる。魔道エンジンへの負担も軽減されるからな。」
サンプルだろう、テルトの前に金属板を差し出すマグヌス。
「軽い・・・ジェラルミンのようだわ。」
「そうじゃろう! これを車体の構造材に採用することで、嬢ちゃんがいた世界の物より格段に軽量化ができるはずじゃ。
次に魔道エンジンじゃが、出力は異世界の内燃機関よりどうしても低くなってしまう。
だがその分今渡したミスリル合金で軽量化できるので問題なかろう。
それでも火魔術と、お主の精霊ヴァイリーを掛け合わせることによってかなりの『馬力』ならぬ『精霊力』が確保できるはずじゃ。」
広げて見せられた図面はシリンダー、バルブ、カムシャフト、ピストンなどの数が少ない代わりに魔法陣と古代文字が何枚にもわたって書き連ねられていた。
「問題は、燃料じゃ。これだけの精霊力消費に見合うだけの・・・
『それに関しては、以前申し上げたように私に腹案がありますのでご心配なく。』
おう、そうじゃったの。嬢ちゃんがそう言うならここは任せよう。」
言いかけたマグヌス氏をなぜか遮るように言葉を挟んだテルト。
(いつもはマグヌス氏を立てているのにな・・・?)
ユーリアはその強引な様子に違和感を感じたが、会話はそのまま流れてゆく。
「足回りに関しても問題ない。懸架方式のバネだけが厄介じゃが、重量も減ることじゃし、嬢ちゃんから入手した情報もある。何とかモノにして見せよう。
あとは主砲じゃが砲身はミスリル合金で十分に強度は出せる。
ライフリングを刻む代わりに風魔法の術式を職人が彫り込んで、弾体を加速させる予定じゃ。
砲弾は火魔術を薬室に注入し、ごく小粒の魔石を信管代わりにする事で同じような物は作れよう。」
言いながらこちらも幾枚にも分かれた図面を広げていく。
それを真剣な顔で見ながらテルトがいう、
「徹甲弾はどうなりましたか?」
「徹甲弾は弾芯にアダマンタイトを微量に含んだミスリル合金を使用することでいこうと思っておる。
勿論一発で目玉の飛び出るような金額じゃがな! はははっ!
しかし、こんなものまで開発して、お主ドラゴンとでも戦うつもりか?」
面白げに問うマグヌスさんに少しはにかみながらテルトは
「いえ、作るなら限りなくオリジナルに近いものを作りたいですから。」
と応じる。
既に欠伸をして興味なさげに昼寝モードに入りつつあるフルーの横でユーリア一人が、
(マグヌスさん!お願いですから余計なフラグを立てないでください・・・。)
心の中で叫んでいたが、勿論二人に伝わるはずがなかった・・・。
「・・・というわけで技術的な問題は時間さえあればおおよそ克服できるじゃろう。 嬢ちゃんの持ち込んだ知識と、情報もあるしな。 しかし、一つ問題がある。」
なぜかユーリアのほうに向きなおるマグヌスさん。
(なぜだろう・・・とても嫌な予感がする・・・。)
思いながらもユーリアは取り敢えずマグヌスさんの話を聞く事にした。
「外観はともかく、魔道エンジンの動力を伝える部分や、バネ部分、砲塔の旋回部などの機械部分は残念ながら今のワシらの工作技術ではとてもあそこまで高度な物は作れん。
今まで自慢げに語っておいて何じゃが、この異世界の代物の技術レベルはとんでもなく高いからのぅ。」
「えっ?それじゃあ見た目だけのハリボテ、と言う事ですか?」
意外な話の転がり方に戸惑うユーリア、作れると言ったり作れないと言ったりどういうことなのか?
「まぁまぁ、そう結論を急くな。 そう言うわけでそれを補うために重要な機構部分に魔鉱石を使用する必要がある。」
「魔鉱石?」
「そうじゃ、平たく言えば魔力の伝達効率を上げる特殊な鉱石じゃ。
それを用いれば今のワシらの技術でも十分に実用に耐えるモノが出来よう。」
そう言いながら懐から小さな石を取り出すマグヌス氏。
石は全体は黒ずんでいるが、その中に僅かに淡く紫に光る部分があり、どうやらそれが魔鉱石のようだった。
「はぁ、それなら万事解決なのでは?」
首を傾げながら問うユーリアにマグヌスさんは困り顔だ。
「ユーリア君、それがな、今この魔鉱石が手に入らんのじゃよ。」
「えっ?そうなんですか?」
「王国周辺にこの珍しい鉱石を産出する鉱山はゲラント自治領の一か所しかない。しかしここ一月あまり、その鉱山地帯との連絡が最近途絶えておってな。」
(・・・)
「帝国領で最近魔鉱石が見つかったという噂があって少しずつは鉱石も事実入ってきておるが、いかんせん値段が高い。あんなもんはこっちが商売になりゃせんわ!」
「えーと・・・?」
「そ、こ、で、じゃ。ユーリア殿!」
「えーと、まさか?」
「カンが良いのうお主! その通り!調査官としておぬしら3人に鉱山地帯へ出向いてもらいたいのじゃ。 わしの工房の上得意の顧客の品にもこの魔鉱石は欠かせん。頼む!この通りじゃ!」
円卓に手を付き頭を下げるマグヌス氏、どうやら最初からこれを見越してユーリアを呼びつけたようだ。
用意周到なドワーフのおっさんである・・・。
一方ユーリアは、この待った無しでめんどくさそうな依頼を断る口実を全力で考えていた。
(考えろ! 考えるんだ! 角が立たず、それでいて良心も傷まない、誰も傷付かない大人な理由をっ! )
ユーリアの脳は一生懸命考えたが、結局無難な答えしか出てこなかった。
(いや、これでも十分理由になるはずだ! ベタこそ王道なのだよっ!自信を持て自分っ!)
努めて社交的な笑顔を作ると、ユーリアはいかにも申し訳なさそうに切り出す。
「いやぁーマグヌス様。ご期待にお答えしたいのは山々なのですが、あいにく私達は審査官として国家に奉公する身。
ゲラント自治領ともなれば旅程だけでも半月はかかります。
というわけで残念ながら今回は・・・、
『なんじゃ、そんなことか! それなら全く問題ないぞ!』
・・・へ? 今なんと?」
一刻も早くお暇しようと腰を浮かせかけたユーリアに向かって、マグヌス氏は満面の笑みで歩み寄る。
そして、バシバシ肩を叩きながら宣言した。
「そんな事は何も心配せずとも良い! さすがはお子様と言えどナスネル家の男じゃなぁ。 こうなることを予想しておったかのように紹介状に添え書きがされておるじゃないか! 」
「「「・・・」」」
「・・・ん?おぬしらは知らんのか? 」
ユーリアたちの反応が鈍いので最後は少しユーリア達を伺うような顔で問いかけるマグヌス。
「・・・何も知らないんですけど・・・。」
「なんじゃ、何もいっとらんのか、片手落ちな奴め。そのあたりは子供じゃなぁ。 ちょっと待っておれよ。」
どすどすと壁際にある書棚まで歩み寄ると、引き出しを開け、目当ての物を見つけて戻ってきた。
その手には先日ユーリアが持参した封緘を切られた紹介状があった。
マグヌスはおもむろにそれを広げると、その『添え書き』部分を読み上げ始めた。
「え~と、おお!ここじゃここじゃ!
『なお、マグヌス氏に何らかの懸案事項がある場合、私の信頼するユーリア審査官にご相談ください。
ナスネル家の権限によって彼らを氏のお役に立てるよう手配いたします。
私共の「弓の一矢」として必ずやお力になるでありましょう。』
とあるんじゃが?」
文字を追っていた顔を上げたマグヌスの目の前ではユーリアは円卓に突っ伏して嘆き、フルーは地団駄を踏みながら文句を垂れていた。
「やっぱり・・・、あの時無理矢理でも『ナスネルの矢』なんていう称号は辞退しておくんだった。
知らない間にガッツリ権力に取り込まれてるじゃないか・・・。
せっかく真面目に地味に今まで生きてきたのに、どうしてこうなるんだよぉ・・・。」
「くっそー! あの金髪の簀巻き野郎め! 俺たちをパシリに使おうってか! いい根性してるじゃねぇか!」
そう、コレはどう考えてもマクス殿下の確信犯であった。
「ワッハッハ! あ主らまんまと一杯食わされたな! 無論ワシもタダとは言わん。
気の毒なユーリア殿と嬢ちゃんの熱意に免じて材料費のみ嬢ちゃんの負担と言う事で製作費はワシの工房が負担しよう。
どうかね? 無論、それでもとんでもない金がかかるとは思うが・・・。」
言い終わらぬうちにテルトがユーリアとマグヌス氏の間に滑り込むように跪く。
そして流麗な礼と共に厳かに告げた、
「マグヌス様のご厚情には感謝の言葉もございません。 ユーリア審査官共々、速やかにゲラント自治領に赴き、魔鉱石供給途絶の原因について調査してまいります。 吉報をお待ちください。」
まさに「黄の間」の悪夢再び。
勿論このエルフも確信犯だ。
「・・・テルトさんや・・・オレ、一応、上司・・・。」
「あ~あ、こうなったらテルトちゃんは止められねぇよなぁ。 諦めろユーリア、転生した者同士、一蓮托生ってヤツ?」
そう言って【ポムポム♪】とフルーに肩を叩かれ、ユーリアも遂にがっくりとうなだれ、観念したのであった。
「マグヌス様。 ユーリア一等審査官は要請に応じ、臨時の調査官としてゲラント自治領に赴き、魔鉱石供給途絶の原因について調査してまいります・・・。うううっ・・・。」
「そうか! いやぁ、ありがたい! まかせておけ、ナスネルのところへはワシから話を通しておくからの!」
ユーリアはあきらめた、いや諦めるしかなかった。
しょせん、ここを訪れたときにこの結果は決まっていたのだ。
すでに外堀は埋められていたのだから仕方ない・・・。
自分に言い聞かせて。
お読みくださりありがとうございます。
働きがいがあっても給料は増えないという、なかなかブラックな状況になってまいりました 笑
皆様の応援よろしくお願いします。
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