人身御供?! ミリオタエルフと技術屋ドワーフの出会いの行方は?
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ゴーレムがテルトの出現させた最後の石壁を破壊し、ゆっくりと乗り越える。
煩わしげに、大きな手を器用に動かすと易々とフルーが放ったダガーを引き抜き、こちらへ迫ってきた。
覚悟を決めてユーリアは叫ぶ、
「いくぞ!」
「おう!」
「了解」
ユーリアがジュトスの鍛えたナイフを抜き放ち、ゴーレムに向かって突進する。
「礫よ!穿て!」
迎撃しようとするゴーレムを牽制するように、テルトが拳大の弾を連続して飛ばす。
-【バ、バゴッ!バゴッ!】-
ゴーレムが無造作にかざした掌に遮られて虚しく砕け散る礫弾。
しかしその間に距離を詰めたユーリアは迎撃に伸びるゴーレムの腕をかいくぐり、後ろへ抜ける。
振り向きざま跳躍すると両腕でナイフを構え、先ほどと同じ腕と胴体の境目を狙って深々と突き立てた。
「フルー!やれっ!」
「あいよっ!」
【ウオォーンッ!!】
雄たけびと共に警邏の時とは違い、完全に獣人化したフルーは先ほどまでとは比べ物にならない速度でゴーレムに向かって疾走する。
ゴーレムがその行く手を阻もうと腕を伸ばした瞬間、人間ではありえない速度でフェイントのステップを踏むと、ゴーレムの頭上へ向け跳躍、
「テルトっ!」
それを見計らって鋭く叫んだユーリアの声に呼応するようにテルトの詠唱が重なる。
「礫よ!硬きその身もて、鋼をも砕け!」
そうして形成された先ほどの礫弾よりも硬質なレンガ大の礫弾がゴーレム向かって射出される。
いや、正確にはゴーレムの肩を超えてゆくような角度で。
「よっしゃ!」
「ナイスキャッチ!」
フルーが空中で掴み取ると、ゴーレムの肩へ馬乗りになる。
「おらぁっ!いい加減砕けろーっ!」
叫びながら、両腕を大きく振りかぶり、獣人化した膂力で楔のように食い込んだユーリアのナイフに硬質化したテルト特製礫弾を打ち込んだ。
ー【ズドォッ!!】【チャリーン】ー
有史以前の猿人のように、獣人が馬乗りになってレンガでゴーレムを殴打するというシュールな絵面。
だが、効果はてきめんだった。
打ち込まれた楔と獣人の膂力に耐え切れず、ゴーレムの腕はぽっきりと折れ、切り出した石のようなきれいな断面で地響きを立てて落ちる。
同時にユーリアのナイフも支えを失い、地面に落下して甲高い音を立てた。
「よっしゃあ!やってやったぜ!」
「だーかーら!油断するなって!もう一度行くぞ!」
ガッツポーズでドヤるフルーにそう言いながら、ユーリアは素早くナイフを回収すると、刀身に異常が無いのを確かめる。
刀身は刃こぼれ一つ無く、かすかに白く光りながらユーリアを映していた。
(フルーの馬鹿力でも何ともないとはね。こりゃ父さんに感謝しないとだな。)
そう心の中で感謝しつつ、再びゴーレムへ楔を打ち込むべく身構えかけたその時、
『そこまでっ!』
工房に響くような声がして3人は動きを止める。
ハッとして見ると片腕を失ったゴーレムも既に目の光を失い、活動を停止していた。
『やれやれ、これ以上ゴーレムを壊されてはかなわんわい!』
再び声がこだまし、ゴーレムの後方に忽然と人影が現れた。
身長は150ガドほど。 年は50ほどに見える。
立派な顎髭に太い眉。ごつごつした顔の奥のつぶらな茶色い瞳。
テルトと同じくらいだが、横幅は広く厚みもある。
だが太っているというわけではなく、その分厚い体をシャツとベスト、スラックスのようなパンツに包んでいる。
厚みのある眼鏡をかけた、鍛冶屋というよりは時計職人のような風貌。
その特徴の通り、マグヌス氏はドワーフだった。
「うおっ!いきなりなんかおっさん出た!」
「えーと、忍術?」
「!?魔道具を用いた光学迷彩か?!」
お馬鹿な二人の珍回答を尻目に、興奮気味にテルトが言う。
リアクションに気を良くしたのか、マグヌスさんの声は自慢げだ。
「ハッハッハッ、これをなんと呼ぶかはまだ決めておらんが、そちらのお嬢さんはこの魔道具の価値がよぉわかっているようじゃのう。若いのに感心感心。」
そう言いながらこちらへ歩いてくると、ユーリアのナスネルの弓の徽章を目ざとく見つけ、手を差し出しながら言う。
「お主が審査官のユーリアか。わしはこの工房の責任者のマグヌスじゃ。」
「ご挨拶が遅れました。私は一等審査官のユーリアです。こちらは私の部下で補佐官のフルーとテルトと申します。」
そう挨拶し、手を握り返した。
「驚かせてすまんかったな。戦闘用の新型ゴーレムを試作したんじゃが。この平和な王都では、なかなか性能を試す機会も無くてなぁ。」
言いながらも大してすまなそうにしていないマグヌス。
まぁ、本当に済まないと思うような人物なら性能試験とは言え、いきなり戦闘ゴーレムをけしかけたりはしないだろうが・・・。
「は、はぁ、そうなんですか?」
ユーリアも微妙な表情でそう答えるしかない。
「そうなんじゃよ!最初は衛士や傭兵連中を募ってやっておったんじゃが、最近はどういうわけかとんと集まらん!ちょっと怪我をしたからといって情けない連中じゃ。」
そう大げさにため息をつく。
「は、はぁ。」
(ぜったい「ちょっと」じゃないだろ・・・)
マグヌスさんは心外な風に言っているがマグヌス氏に都合の悪い部分は隠されている、ユーリアはそう確信した。
しかし、マグヌスさんの熱弁は止まらない、
「ナバトとシュタルフも『そんな人身御供は契約外ですから。謹んでお断りいたします。』などと言って絶対に引き受けようとせぬしなぁ、困ったもんじゃ、最近の若い連中は。」
話は見えた、とりあえずこう言わせてもらおう。
「で?私たちを犠牲の羊に?」
ジト目で言ったつもりだが、マグヌスさんは毛筋一本ほども気にしていないようだ。
ニコニコとして手をひらひらさせながら悪びれた様子はない。
「これこれ、そう悪く捉えんでも良かろう? 街門での騒動も一部始終聞いておったからな。お主達なら適任だと思ったのじゃよ。まさか腕を切断されるとは思わなんだがな! ガッハッハッハッハ!」
「・・・そうですか・・・。お役に立てたのなら光栄です。」
(もう二度と勘弁してほしいですけど・・・)
ユーリアはあくまでもいい年をして無邪気なドワーフのおっさんにそう返すのがやっとであった。
「おっとすまん、話が逸れてしもうた。ナスネルんとこの面白いガキから話はきいとる。なんでも魔道具についてワシに頼みがあるとか?」
そんなマルクにマグヌスさんはサラッと御三家の三男をガキ呼ばわりしておいて、話を切り替えてきた。
ユーリアたちとしてもそちらが本来の目的なので、ドワーフの不適切発言は大人のマナーとしててスルー。
ナスネル家からの紹介状を取り出す。
「ええ、こちらこそお渡しするのが遅れて申し訳ありません。 これがナスネル家からの紹介状です。」
マグネルは受け取ると無造作に封緘を破り、文章に目を通していく。
「フム、フム・・・、ほぅ・・・、たしかに。 して、その用件とは?」
マグヌスが羊皮紙から目を上げて問うと、テルトがユーリアの背後から一歩進み出て跪いた。
その所作は優雅なものだ。
「お初にお目にかかります。ユーリア審査官の下で補佐官に従事しております、テルトと申します。この度は私の無理な願いを聞き届けていただき、ナスネル家及びマグヌス様には感謝の言葉もございません。」
「これ、そのような形式は無用じゃ。立つがよいお嬢さん。む、・・・お主人間ではないな?」
「!?・・・」
言われ微かにテルトの肩が震える。
「おおかた大森林のエルフであろう、どうかな?」
先ほどまでと変わらぬ口調で問いかけるマグネル。
少しだけ沈黙した後テルトおもむろにフードを脱ぐとエルフ特有の尖った耳を露わにし、素直に告げた。
「・・・はい、お察しのとおりです。」
「ふむ、ではエルフとドワーフが犬猿の仲であることは当然知っておろう。 それでもなおワシを訪ねてきたというのかな?」
「・・・はい。」
「フム、理由を聞いても良いかな、お嬢さん?」
尋ねるマグネルの表情はあくまで穏やかだ。
「私はドワーフ、エルフ共に特別優れた種族などとは思っておりません。また、種族同士の諍いは里を追放された私には最早関係の無いことです。」
里を追われたと聞いて、マグネルは微かに眉を動かしたが口に出しては何も言わず、滔々と続くテルトの言葉を聞いている。
「そして、己の求める道に長じた先達がいらっしゃるとなれば、その方に助力を仰ぐのに種族や年齢などは一切関係ないと、そう考えるのみです。」
答え終わってすっくと立ちあがったテルトが真っすぐにマグヌスを見つめる。
するとマグネル氏は満面の笑みを浮かべてテルトの肩を叩きつつ言った。
「ふむ、気に入った! ではワシらは似たもの同士ということじゃ!」
「?そうなのですか、マグヌス様?」
「あぁ、そうじゃ。ワシもドワーフの古いしきたりにうんざりして王国を飛び出したクチじゃからの!
『あれはいかん、これはいかん、しきたりだ、前例がない!』
などとつまらん奴ばかりでな。 そんなわけでわしは正直エルフだドワーフだなどという話はどうでも良い! 面白いヤツならエルフでも悪魔でも大歓迎じゃ! さっそく話を聞かせてもらおうか?」
そう言いうと手を広げ3人を工房にある巨大な円卓へ案内する。
こうしてテルトの執念により、遂にこの世界の天才は知ることになる。
異世界の『鋼鉄の虎』を。
お読みいただきありがとうございます。
まさにパワープレイ(笑 な回でした。
技術屋はリベラル、というか自分が面白ければ何でもいいんですよね、多分。
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