初めての3賢お宅訪問 ナスネル家の場合
(^^)/祝10万字!(^^)/皆さんのおかげです!
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静寂に包まれた中で、一人少年だけが緊張感のない声で続ける、
「あ、あれー、反応が薄い? あ!ナスネルの名前をもしかしてご存じない・・・とか?」
「そんな訳があるかっ!!」
先ほどまで勝ち誇っていたラムードは明らかに狼狽しながらも肩で息をしながら律儀につっこんでいる。
「あー、多分だけどさ、簀巻きの金髪少年に言われても信じられねぇんじゃねぇか?・・・まぁ、俺もまだ信じられねぇけど?」
フルーは、ラムードを含めた全員の気持ちを代弁していった。
「なるほどね!そういうことか! あ、じゃあ補佐官さん、僕の首にかかってる紐を引っ張り上げてもらえますか?」
「?これか?うし、よっ・・・げっ!マジかっ!!」
マクスの首から下げられていた首飾りを目にするとそういって仰け反り、危うく簀巻きを落としかける。
「ちょっと、僕を落とさないでくださいよー!」
「わりぃわりぃ、ちょっとユーリアに渡してやってもいいか?」
「いいですよー。あ、でもちゃんと返してくださいね?」
「ったりまえだ、こんなもん怖くて持っていられねぇよ。ほれっ!」
そういいつつも、無造作にユーリアに放る。
・・・フルーよ、投げるのはアリなのか。
「うおっ!っと!」
投げられた首飾りを緊張で両手で受け止めるユーリア。
その掌をそっと開くとそこには竜がいた。
「・・・これは・・・マジだったのか・・・。」
金色に輝き、目に嵌められた宝石が輝く、五本爪の竜が・・・。
目の前のユーリアの掌にある首飾りを見て、ラムードは顔面を蒼白にして文字通り固まっていた。
負けるはずのない賭けに負け、呆然とした勝負師のごとく・・・。
「すーはー、すーはー。・・・よしっ。」
周囲が注目する中、気持ちを落ち着けるように幾度かの深呼吸をしてからユーリアはいつもの仕事モードでいった。
「ごほんっ。えー、そういうわけで、こちらがナスネル家のマクス殿下という、ラムードさんの貴族様よりも強いバックを得ましたので。
これから捜査を開始します。先ほども提示しましたがこれが審査官の身分証です。
ラムードさん、宜しいですか?」
「好きにしろ・・・。どうせ、もう何もかもおしまいだ・・・。おしまいだっ・・・。」
呟くとラムードは全てを諦めたのか、崩れるように椅子に座り込んでしまった。
(頭が切れる人は物分りが良くて助かるなぁ。)
などど内心で思いながら、ユーリアはテキパキと捜査を進めるのであった。
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「いやぁーつかれたなぁー。」
そして時刻が真夜中に迫ろうというころ、そう両腕を大きく伸ばしながら伸びをするユーリアたち。
3人はナスネル家のマクス少年を送り届けるべく一般市民の居住エリアから、騎士階級以上が住む邸宅街へと歩いていた。
「いやぁ、ユーリア審査官の仕事ぶりすごかったですね!あの手際の良さはびっくりしたなー。」
「早く帰りたいですからね!」
「そういうとこ、ブレないよなーオマエ。」
「そこがユーリア審査官の強み、優秀な指揮官は無駄を厭うもの・・・。」
一行はリラックスした表情で進んでいた。
マクスはもちろんもう簀巻きに肌着の姿ではなく、借金のカタに取られていた衣類一式を取り戻し、裕福な商家のお坊ちゃんという格好で一緒に歩いている。
ついでに言うと捜査結果は少年の言ったとおり真っ黒であった。
通常一定の格式以上の賭場は、一般向けの賭博スペースと特権階級向けに分かれている。
「赤い荒馬」も例外ではなく、2階が主に富裕層向けのいわばVIPルームとして用いられていた。
不正の温床であったのはこのVIPスペースではなく一階の一般向けの賭場の方であった。
ラムード曰く、特権階級の金持ちは金払いもよく、プライドも高いため、あまり勝負の勝ち負けにはこだわらない。
上流階級同士の交流の場でもあるため、勝とうが負けようが、『お行儀良く遊ぶ』のがルールなのだ。
それゆえ万一の信用の失墜を考えると、黙っていても大金を落としてくれる彼らに、イカサマをするメリットはあまりない。
しかし、一般のギャンブルに興じる客たちはそうではない。
最初のうちだけ気分良く勝たせてやれば、あとは身を持ち崩しても賭けに大金をつぎ込むようになる。
そうなればこっちのもの、親切なフリをして高利の借金の斡旋をしてやってもよいし、借金のカタに家財を捨て値で買い叩いてやってもよい。
そして妻や恋人がいれば色町に売り飛ばす。
最後には本人を鉱山労働者として半ば奴隷のような形で送り込む。
という何ともまぁ、前世のヤ○ザ顔負けの手口で私腹を肥やしていた。
イカサマはそんな負のループに人々を陥れるための言わば入り口のようなものというわけだ。
もちろん「赤き荒馬」を摘発したからと言って、そういった組織全てを処断することは、ユーリアの職権では勿論、ナスネルの家名と権威をもってしても叶わない。
今は取り合えず、そんな普通の人々が不幸になる入り口を一つつぶしたという結果に満足するしかない。
そんな事を考えながら、ふとユーリアは気持ちに余裕ができて浮かんだ疑問をマクスにぶつけてみた。
「殿下、一つ伺いたいのですが。」
「えーっ。その殿下って言うのをやめてくれたら答えてもいいけど?」
「・・・えーでは・・・マクス・・・さん。なぜあなたはそもそもあのような場所に?」
「・・・えーと、たまたま?」
「・・・えっと、正直にお答えいただけませんか殿下?」
「い、いやぁ。どうしても欲しい古文書があったんだけど、それがなんと金貨500枚だっていうから、流石にね。それで元手を増やしてやろうと思ってあの賭場に入ったんだ。
以前お忍びで他の賭場を冷やかしたときに、眺めていたらカードの手札は推測することができるようになったし、ルーレットやダイスの確立が偏るタイミングなんかも分かるようになってきたからねー。」
「へぇー。すげぇなぁ。マクスは。頭いいんじゃねぇの?」
そう適当な相槌を打つフルー、・・・こいつは絶対マクス君のすごさが分かっていない。
「いや!すごいとかそういうレベルじゃないから!」
(手札がわかるって・・・それって前世の映画でやってたカードカウンティングとかいうやつじゃ・・・。とんでもないなマクス君・・・。)
テルトもウンウンと頷いている。
「天才・・・。」
「そしたらさー。いくら賭けても外れるからおかしいなって思って、今度は手元や道具の方を見てたら・・・ってわけさ。」
とんでもない貴族様である。
「因みにその古文書って言うのは?」
「あぁ、何でもこの世界に昔別の世界から流れ着いたという人物が残した伝承の数々が記された本だよ。
僕はそんな他の世界から漂着したという人物についての文献や事跡について調べてるんだ。」
「?!そんなものが?」
「?ああ、まだ手に入れたわけじゃないから中身は良く分かんないけどね。
ただその古物商の説明では、その漂流者は自分のことを『ジショウアニオタ』と呼んでいて、少女の神話や、物語が多く記されているらしいですよ。」
「マクスさん、それ・・・。いや、なんでもないです。」
『そんなコミケの薄い本みたいなものに金貨500枚とか正気ですか?』
という言葉をユーリアはかろうじて飲み込んだ・・・。
「? あ、そろそろみえてきた、あれがウチの屋敷だよ。」
マクスの先には城と大豪邸の中間のような建造物が立っていた。
「うひゃー!マクスんちすげぇな!さすが弓のナスネルってカンジ?!」
「む、要塞としても機能するよう良く練られた設計だ。」
それぞれ違うところへ感心しながらいうフルーとテルトを尻目に、マクスは微妙に館の正面から逸れてゆく。
「あれ?マクスさんどこへ」
「あ~うん、一応お忍びでぬけだしてるから。裏へ回りましょう。」
「?ええ、わかりました。」
なぜか歯切れの悪いマクスの言葉に首をかしげながらもユーリアは言われた通り仲間と共に、館を迂回するように横切ると、裏へと回る。
そして裏門と言っても中くらいの金持ちの屋敷の正門くらいはある大きさの立派な扉の前までくると、マクスは扉を叩いた。
「ただいまー。」
「・・・どなたですか?このような夜更けに。」
まるでその呼びかけを予期していたかのように丁寧だが平坦な声が扉の向こうから響いてきた。
だが扉が開く気配はないようだ。
「えーと、マクス・ナスネルです。ナスネル家の3男の。」
「はて? マクス様は本日はもうお早い時間にお休みになられておりますが?」
「い、いやぁ~。お忍びでさ?じいや、意地悪な事言わないで、あけてよー。」
「そういわれましても。さて・・・困りましたな。当家は簀巻きで路地に転がされているところを審査官様に助けて頂くような恥ずかしい方と面識はないのですが・・・。」
「ハ、ハハハハ耳が早いね、じいや・・・。」
(((全部ばれてるな・・・)))
マクスが言葉に詰まり、ユーリアたちがナスネル家の情報収集能力に脱帽していると、前触れなくゆっくりと扉が開いた。
中から50を半ばも過ぎたあたりだろうか、均整の取れた体格の白髪の執事が現れて、ユーリアたちを認めると恭しく頭を下げる。
思わずつられて礼を返す3人。
「このような場所で、失礼致します。私は当家の執事長を仰せつかっておりますヒックスと申します。このたびは、当家の3男マクス様が、ユーリア審査官様をはじめ補佐官の皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。」
そう口上を述べ改めて礼を施すヒックスさんに恐縮するユーリア。
「いえいえ!そのように頭を下げられては困ります!」
慌ててやめてもらうようにお願いする。
執事とはいえ、三賢の家に使えるとなれば下手な貴族よりも恐ろしい。
冷汗をかくユーリアをよそにヒックスはさらに深々と頭を下げた。
「とんでもございません。旦那様は公務により不在ですが、必ずユーリア様の尽力につきましてもご報告させていただきます。」
それはマズイ、非常にマズイ。
別にユーリアは目立ちたいわけでも、騎士に憧れているわけではない。
あの頃ならいざ知らず、今は。
貴族とのコネクションなど、ただひたすら面倒な予感しかしなかった。
「いやっ!本当に、そのような気遣いは無用に願います。」
必死に否定するユーリアをヒックスは好ましいものを見るような表情をかすかに浮かべて観察している。
「なるほど・・・、ユーリア様はやはり変わったお方のようですね。マクス様が肩入れされた、あの店を作られただけはありますな。」
「えっ?」
「いえ、実はユーリア様の『はんばーがー』事業の後援を言い出されたのがマクス様なのです。・・・失礼ながらナスネル家が関わるにあたりユーリア様の事もある程度お調べさせていただきましたので。」
「なるほど・・・。」
(まぁ家名に泥を塗るような人物を後援することははできないだろうし、信用調査ってやつか。実際面と向かって『あなたの事は全部調べましたよ』って言われちゃうと怖いけどな・・・。)
そう一人で納得していると、ヒックスは現れたときの同じような優雅な礼をして言う。
「ではこのような時間でもございますし、また改めて席を設けることといたしまして、これで失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」
「え?ええ、もちろんです。」
(改まった席も遠慮したいけど、断れないんだろうなぁ・・・。)
内心で思いつつ、ユーリアは頷いた。
「ありがとうございます。ではこれにて本日は失礼いたします。フルー様も、テルト様も本日はまことにありがとうございました。」
再び完璧な礼を施すと、マクスの襟首を掴み、年に似合わぬ力で有無をいわせず引きずっていった。
「いやね?反省してるんだ、反省してるんだよ?じい。ねぇ?きこえてる?あっ!ユーリアさん達、またねー今日は楽しかったよぉ~」
【ギイィー・・・、ガチャン!】
そう引きずられながらいうマクスの声を残して扉は重々しく閉じられた。
「うーん。あれはお説教コースだなー」
「反省文とか書かされるんじゃねーの?」
「あの執事、身のこなしからして特殊な訓練を受けている・・・。」
3者3様の感想を残してこの日の幕は下りたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
まぁ、どこでも基本悪党のやることは変わらないわけで。
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