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悪夢の事後処理と、とある日常

日常編新章スタートです♪

あの事件の後・・・。


結局レギナ氏はエルフ祭りから解放されたテルトが最低限の治癒魔法をかけてあげることにした。


バルタス氏はとばっちりを受けて必要以上に小突かれ、レギナ氏共々おっとり刀で駆けつけた近衛騎士団がしょっ引いていった。


二人は違法奴隷の密輸に加えて、王都でアンデッドモンスターを召還するというぶっちぎりアウトな事案を引き起こしてしまったので、最悪召喚した魔物を用いた騒乱罪と受けとられる可能性があった。


一応、バルタス氏はレギナ氏を止めようとしていた事、レギナ氏は錯乱状態であったことなどをユーリアは申し添えておいたが・・・。


「ふぅ~。何とか無事片付いたか・・・。しかし、二人とも縛り首とかになっちゃうと寝覚めが悪いなぁ・・・。」


後ろ頭を掻きつつぼやくユーリアに、背後からチョイチョイ、と肩に触れる者がいる、


「おぉ、戻ったか!ビビリアンハスキー(ニッコリ)」


「うぅ、否定できないのが辛い・・・。」


即興で考えた名で笑顔で呼びかけるとフルーは心底嫌そうな顔をしながらも報告し始めた、


「え~と、取りあえず違法奴隷の子達はまだ幼いから、当分は孤児院で保護するってさ。


請け負った王宮のお役人さんいわく、『リタ王国の大使に照会して、少数部族の出に間違いが無ければいずれは両国の責任で国へ送還されるでしょう』、だってよ。」


「そうかー、なら一安心かなー」


のほほんモードになりかけるユーリアにフルーはうんざりした顔をしつつもう一度肩を叩きながら言った、


「審査官殿・・・。オレの背後をみてくれ・・・こいつをどう思う?」



「うぇ?あっ、あぁあ~!!!そうだよな~、こうなるよな~。ひゃっほ~い!やったね、みんな!仕事が増えるよ!」


半ば白目になりフラつきながら言うユーリア。


「あ、ユーリアが壊れた。」


「・・・、速やかに損害状況の把握、任務遂行に向けて行動を開始する事を提案する。」


「相変わらず、テルトちゃんは冷静だねぇ~。おぉーい、行くぞー、審査官。」


「おーぅ。シクシクシク・・・。」


二人はユーリアを引きずりながら職務へと戻っていくのであった。



この大立ち回りのあと、待っていたのは更なる事後処理の山、山、そして山であった。


まず死霊騎士たちと『戦った』、という『実績』を作ろうとしている色々と残念な衛士たちを追い散し、エルフ祭りのジ―さんバーさんを握手会と護符という名のサイン色紙で手を打ち、解散させる。


混乱した現場をようやく収集した後で残されたのは全く捌けていない大量の入都希望者の群れ。


巻き添えを食って踏み荒らされた荷車、荷馬車。そこへ積まれていた農作物や、物品の損害の訴えも同時にきいてゆく。


普段は閉門の合図となる日没の時間を過ぎても、かがり火を頼りに延々ユーリアを含む審査官は職務をこなすべく馬車馬の如く働き続けたのであった。


*****************


 途中、あまりの激務に


「補給を要請す、る・・・、か、甘味の補給が無ければこれ以上の作戦行動はふ、か、の、ぅ。・・・グー。」


「こらぁ!テルトー!立ったまま寝るとか器用な真似をするんじゃない!寝るなぁ~っ!」


「むにゃむにゃ、敗北ではない、これは戦略てきてっ、た、い・・・。グー。」


「駄目だぁ!撤退は許可せんぞ~!この職場という名の戦場で、最後まで戦うんだー!」


「いやー、もうそうなったらテルトちゃんは起きないっしょー。」


一人夢の世界へ戦略的撤退を始める、テルト。


雪山で遭難した兵士を叱咤するようにその肩をガクガクと揺さぶりながら揺り起こそうとするユーリア。


二人をあきらめ気味に眺めるフルー。


などという本人達はごくまじめな幕間劇を挟みつつ・・・。


*******************


更に数日後、あの事件の後始末も大方が終わりつつあった。


損害の補償はどうやらバルタス達が持ち込んだ毛織物を処分した売却益を充てる事で幸い目処がつきそうであるらしい。


単なる偽装ではなく、本気でまっとうな商売「も」するつもりだったらしく、積み荷は高級品ばかりだったのが幸いした。


不幸にも違法奴隷として密輸された奴隷の二人も無事照会が終わり、身元が明らかになった。

リタ王国との折衝の結果、近くトライバの故郷へ王国から、リタの官吏へと引き継がれて送還されることが決まっていた。


バルタス氏とレギナ氏はまだキリキリと厳しい取り調べの真っ最中のようだが、寝覚めの悪い結果にならないことを祈るばかりである。


そんなユーリアたちにも日常が戻り始めたこの日、3人は警邏けいらとして城下町に繰り出していた。


警邏とは最近審査官の職務として新たに課せられた仕事である。


審査官は皆、街門での審査官としての仕事が終わると、週に2、3度は他の審査官同様こうして王都内の見回りをすることになっているのだ。


「審査官という優秀なリソースを無駄にすることなく使おう!閉門後は暇じゃないか!俺って天才じゃん!」


と言ったかどうかは定かはないが、王都の官吏の発案で数年前からこの制度が始まり、王都の治安維持の向上に少なからず貢献していた。


勿論審査官たちの負担は増える。


手当が出るとはいえ、定時上がりを至高とするユーリアにとってはいい迷惑であった。


しかし、中にはこの警邏の順番が回ってくるのを心待ちにしている審査官たちも少なくない。いわゆる貴族や騎士階級の次男三男坊達である。


そのカラクリはこうだ。


規定によって、審査官は「必要であれば」普段から巡察の任務に就いている衛士を伴った警邏をすることが許可されていた。


この「お付きの衛士たち」こそが、彼らにとっては「警邏」の仕事のたまらない魅力なのである。


貴族や騎士身分として彼らは人にかしずかれるのが当たり前の身分に生まれた。


けれど次男3男であるがゆえに、それは普段叶わない。


彼らにとって衛士をぞろぞろと引き連れて、肩で風を切りながら警邏を行うことは自尊心をくすぐるまたとない「役得」だったのである。


運用を始めたころは審査官サイドから不満が出るかと思われたが、意外にこの制度がうまくいっているのは、審査官達のこうした出自と特権階級出の心理を巧みに利用した、いわば「ご褒美」をチラつかせた官吏の作戦勝ちだといえるだろう。


えげつない・・・。


こんな悪魔の仕掛けを作った役人の顔が見てみたいものである。そう常々ユーリアは思っていた。


勿論彼ははめんどくさいのでそんな仰々しいことはしない。今日もいつも通りフルートテルトの3人で警邏へと出かけるつもりだ。


ただ、警邏の前には必ず衛士の詰め所に立ち寄り、一言声をかけておくことは忘れない。


詰所の扉を開けると気さくに片手を上げながら言う。


「どうもー。衛士の皆さんお役目ご苦労さまです。では今から警邏に行ってきますので、お酒だけは飲まないようにしておいてくださいねー。」


ユーリアの声を聞きつけて衛士長が顔を出す、


「ご苦労様です、ユーリア審査官。先日はお手柄でしたなぁ。いやぁ、あなたのような変わり者の審査官ばかりが審査官だと我々も気が楽なのですが。」


衛士長は自分の幸運を喜んでいるようだ。


審査官に連れ出されなければ、審査官付として割り振られた隊は詰所に待機となる。


給料をもらいながら、のんびりまったりできるというユーリアが憧れる至福のポジションである。


「いやー、ホントにすんごいめんどくさ・・・、いやいや大変でしたよぉ、ハハハ。ではまた後ほど。」


「いやいや、その通りですな、ご苦労様です!」


軽く敬礼をすると衛士長もユーリアの心境を察したらしく、笑顔で答礼しつつ見送ってくれた。


「よーし、じゃあ先に夕飯を済ませてしまうか?二人ともどうかな?」


「じゃあさ、今日はマクダに行こうぜ!」


元気に言うフルー


「異議なし。」


静かに賛意を示すテルト・・・、しかし腹の虫は誰よりも大きく鳴っている。


「そうだなー、ちょっと高いけど、久々に食いたくなったなー」


その言葉を聞き、頭にそのイメージが浮かんだユーリアの心もすっかり決まってしまったようだ。


3人は詰所のある官庁街の外れから、盛り場のほうへと足を向ける。今日の晩御飯のお目当て、「マクダ―ナルと、赤鼻道化師の店」を目指して。

お読みくださりありがとうございます。

テルトに甘味は欠かせません 笑

一人でも多くの方にお読みいただけるよう、ブクマ評価お願いしますm(__)m

そしてより良い小説のために感想をお寄せください。

皆様からの応援が唯一の栄養ですっ!

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