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戦いの終わり。 カオスと茶番、夢の競演

いったんこれである(非)日常の一コマは完結です。次話から外伝としてテルトの物語が始まります。


ポイント増える気配がありません・・・(´;ω;`)ウッ…

しかしここは確認せずにはおられまい、ユーリアは意を決して尋ねる。


「・・・えーとテルトさんや、もう一度聞いていいかい?・・・なんだって?」


「 正確には、ティーガーI を一両。そう言った。」


「・・・え~、再びごめんね。ちょっと意味が分かんないんだけど?説明してもらってもいいかな?」


「?鋼鉄の虎。栄光ある第三帝国の主力戦車だが?」


・・・ユーリアはここで諦めることにした。


「うん、ミニマムな説明をありがとう。意味は分かったけど、そしてやっぱり意味が分からないけど・・・。ちょっと。いまは処理しきれないからスルーするわ。」


ユーリアはほんの少し事情が分かり、魔人が可哀想になってきた。


だが取りあえず今はその巨大な突っ込みどころについてはそっとしておくことに決めた。


・・・テルトはもとより全く気にしていないようだが。


テルトは自らの答えに思い悩むユーリアを数舜の間不思議そうに小首をかしげて眺めていたが、質問が終わったと判断したのか淡々と魔人に命じる。


「エフリートよ、あまり時間がない。彼の剣にもお前の加護を。」


「・・・よいだろう。おい!そこの男よ!汝の剣をかざすがよい!!・・・言っておくがな人間よ!我は泣いてなどいない!エルフの小娘に泣かされる上位精霊など居てたまるかっ!」


折れそうな精神を何とか繋ぎ止めたのか、過去のトラウマを振り払うかのように精霊は吠えるとユーリアの前で威厳を保つように腕を組んで堂々と告げる。


残念ながら魔人の威厳の基本値は現在絶賛ゼロ状態であり、そこに何を盛ってもゼロであるが。


「そーですよね。うん、・・・大事なことなので二回言ったんですね。」


スルーすると見せかけて、明らかに余計なことを言いつつも、ユーリアが自らの剣を掲げると青い炎が纏わり、刃に安定する。


「おぉ! さすが! 腐っても上位精r・・・あっ!本当に何でもないです。ありがとうございましたっ!」


せっかく立ち直ろうとしていた上位精霊の心をまた折にかかっている自分の発言にようやく気づいて慌ててユーリアは言葉を飲みこんだ。


精霊の哀しげな瞳が痛いが、取りあえず人としてお礼だけはいっておくことにした。


魔人は更に此方を攻撃しようと駆けてくる死霊騎士たちに向き直り、吠える。


「仮初にこの世に戻りし者共よ!我が二色ノ炎で世の理へと還るがよい!!お主等のせいで我は!!我は!!くらえええいっ!」


そうキレ気味に聞こえる声で言い放つと、精霊は消え、代わりに死霊騎士たちのただ中に過剰なんではないかと思える、まばゆい白い浄化の炎の渦が巻き起こった。



八つ当たりではない、多分。


その炎の渦広がりながら瞬く間に死霊騎士たちを飲み込んでゆく。レギナさんをもれなく被害半径に入れる勢いで。


・・・八つ当たりかもしれない・・・


「ま、マズいぞ!テルト!」


「っ!水よ!護りのかいなとなりて彼を護れ!」


荒れ狂う炎がレギナを飲み込む半歩前に辛うじて水の壁が彼を取り囲むように現れその身を護る。


どうやら無事に------


「ぐうあああああっ!アツゥイ!!(ビクンビクン)」


「「・・・あっ・・・」」


・・・は済まなかったようだ。


火こそついてはいないが、すさまじい熱気が襲っているらしく、レギナさんは身をよじり悶え、地面を転げまわっている。


いくら魔法による水の壁があるとはいえ、そりゃそうか。まぁ死にはしないだろうけど。


・・・大丈夫だよね・・・?


少し同情しながら、ユーリアは魔人の攻撃によって文字通り炎上した死霊騎士たちへと意識を戻す。


出現した死霊騎士はと見れば7体のうち5体は一瞬で剣と盾もろとも燃え上がり、炭化して地面に転がっていた。


しかし黒と赤のマントを纏った騎士長らしき二体はダメージこそ受けているようだが他の騎士達ををうまく盾にしたようだ。


焼け焦げながらも明らかな殺意を宿した瞳をこちらに向かって猛然と向かってくる。


「・・・捕虜を巻き込んで、二体も殲滅し損ねた。度し難い無能精霊・・・。」


その結果を見て、絶対零度の声色で冷たく断罪するテルト。


「テルトさん、怖いです・・・。」


ユーリアは今回さらに上司からマイナス査定を受けた新入社員のようなエフリートへの同情を禁じえなかった。


だが、自らの失態に戦慄したのか、もはやエフリートは影も形も見えない。


撤収が鮮やかすぎる、どんだけ怖いんだ。


取りあえず今は全てを棚上げし、自分も目の前の生き残り2体に対処することにした。


「早いところ終わらせよう。テルト、足を止めてくれ!」


「大地よ・・・。我に仇為す愚かな者の枷となり、その行く手を阻め。」


「ギオッ?!」


突然足元がぬかるみ、死霊騎士が声を上げる。そして先頭の一体は駆けてきた勢いそのままに・・・派手にすっころんだ。


かなりシュールな絵面だが、騎士長といえども上位精霊の攻撃に、やはりかなりのダメージを受けていたようだ。


「全く!残業代も出ないってのに!それどころか危険手当も出ないんだぞぉ!もううっ!」


ユーリアはすかさず距離を詰め、袈裟懸けに一気に切り下げるとさらに刃を返して逆袈裟にV字を描くように力任せに切り上げる。


加護を受けた剣は何の抵抗もないかのようにその体を食い破っていく。


その衝撃にガクガクと痙攣する死霊騎士の頭を切り抜けた刃で上段から唐竹割に両断する。


崩れ落ちたその死霊騎士長から盾を奪うと胸のあたりで構え、そのまま猛然と残る一体へと突進する。


「リアルなんて、ドロップも素材剥ぎ取りも出来ないんだから、出で来るだけ迷惑なんですけど!ねっ!」


接近してきた彼を迎撃しようと死霊騎士が振り降ろした一撃をバックステップで難なく空を切らせる。


「悪霊退散!」


シールドバッシュというより、盾を押し出したタックルで死霊騎士長の体を吹き飛ばし、踏み止まろうとする隙をついて一気に頭骨を切り飛ばすと、胴を両断する。


「ギォアアア!!」


耳障りな断末魔を残して光を失ない、地面に転がった死霊騎士長に念入りに止めを刺してようやくユーリアは剣を収める。


勿論、お金やアイテムがドロップされる事は無い、される訳が無い。


防具は勿論、焼け焦げた剣も楯もエフリートの攻撃で半ば溶けておりもはや売り物にはならないだろう・・・。


ゲームとは違い、世知辛い世の中である。


「よーし。何とかこれで片が付いた。・・・レギナさんも・・・う、うん・・・無事だね。無事といって差し支えないよね?生きてるって素晴らしいもん。」


取りあえず身を焦がす熱さとアドレナリンで興奮状態の、若干こんがりしているレギナを軽く締めて意識を落とす。


縄をかけようとしたが、意識が戻っても、満身創痍でそれどころではないだろう。


すぐに近衛兵なり衛士が駆けつけるだろうと考え、もはや虐めになりそうなので止めることにした。


そのまま背後に残してきた一番の功労者に声をかけようとしたのだが、


「テルト、お疲れさま。いやー久々に見るとやっぱりテルトの魔法はすごいn・・・な、なんかすごいことになってる・・・。」


テルト一人が佇んでいたいたはずの景色。


そこには忽然と現れた大量のじ~さんば~さんのスクラムに囲まれたテルトがいた。


珍しく狼狽えている。


さっきの一連の騒ぎのせいで、テルトがエルフであることが入国を群衆や王都内から集まってきた野次馬の中のじ~さんば~さんにバレてしまった。


そして今、この王都で時折ゲリラ的に始まる第何回かの臨時エルフ祭りが絶賛開催されているのだ。



「エルフ様じゃあ~!皆の衆、ここにエルフ様がおるぞぉ~!!」


「ありがたやー、ハァーありがたや~。これで長生きできますじゃ。」


「いや、わたしゃ~、もういつお迎えが来ても悔いはないよぉ。」


「なんと神々しいお姿なんじゃぁ~。これが森の賢者と讃えられるエルフ様のお姿とは、おぉ!持病の腰痛が治った気がするぞぉい!そぉい!(グキッ)はうっ!」


「エルフ様、わしゃー最近目がショボショボしてのう・・・。」


「ワシは手の震えが・・・」


「ば~さんや、飯はまだかのう?」


群がる興奮した亡者・・・失礼、人生の先輩にテルトはタジタジである。


テルトはユーリアと同じ18歳、じ~さんば~さんから見れば孫、エルフからみれば「ようじょ」のレベルである。


「ひゃい!・・・ご、ご飯はさっき食べたでしょう?」


違うぞテルト、いや、お約束としては合っているが・・・。対処としては0点である。


「人里に降る」とエルフたちがやや侮蔑的に言うように、普通人と混じり合って暮らすことはあまりない。


ユーリアの補佐官となってから、テルトは王都ではそこそこ知られる存在になったので、王都の中ではもうあまり騒がれる事はなくなったが、王都以外で暮らす人々にとってはエルフはUMA(未確認生物)レベルで珍しい。


それが分かっているので崇拝や、騒ぎの対象にならないよう、普段テルトにはフードを目深に被せていた。


魔術師という人種は胡散臭い格好の風体が多いのであまり目立つこともなかったので。


だがこのように、ふとしたことでばれてしまうと、主にじ~さんば~さんによるエルフ祭りが始まって、業務どころではなくなってしまうのだ…。


「う~ん、これどう収拾つけよう・・・。」


じーさんばーさんはエルフが長寿を授けるという事実無根な(テルトに確認済み)迷信を本気で信じているらしく、食べ物をお供えする者、賽銭を投じる者、体に触れてご利益を得ようと言うもの。などなど各自思い思いに祈りを捧げていた。


ご本尊と化したテルトにプルプル、カクカク群がるアンデッd・・・じーさんばーさん。


完全にカオスである。


そしてもう一つのカオスがその反対側で展開されていた。


「おのれ!おぞましい死霊共め!!わが正義の剣の裁きを受けよ!!ちぇすと!ちぇすとぉ!」



「この一騎当千の兵、ビタスが来たからにはお前らの勝手にはさせん!!ビタスキックウウ!!ビタスパァンチ!」


「ホーリランス突き!ホーリーランス切り!ホーリランスどつき!ホーリランス・・・、てぃっ!ていっ!」


・・・、カオス?


否、茶番であった・・・。


「ハハハ・・・。誰か助けてくれ~。」


半眼で解脱したように微笑みながら発したユーリアの心の叫びは、しかしカルマが深すぎた為か、いつの間にか声帯を震わせ、かなり盛大に街門前に響いていた・・・。

いつも読んで下さりありがとうございます。

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