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夢は国家公務員!?~異世界なのに転生者に優しくないこの世界~  作者: ETRANZE
厨二の僕が審査官になるまで
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フラッシュバックは突然に~ハンバーガーから始まる転生人生~

目にとめていただき、ありがとうございます!


作者初投稿なので色々と粗が目立つのはご容赦ください。

ゆる~くこの世界観を楽しんでいただければ幸いです。

「よっ!」


パッカーン!


小気味よい音がして切り株の上に乗せられた木材は綺麗に半分に割れた。


斧を握っているのは額に汗を浮かべたまだ幼さの残る少年だ。


王都から馬車で一週間ほど離れた田舎町。


そのとある田舎町の更に端の辺り。


11歳になったユーリアは家業の鍛冶工房で使う薪割りに精を出していた。


兄のジェイガンに薪割りを任されるようになってもう一年ほど。


ずいぶん要領はよくなったが、まだまだ体格も小さく、重労働には変わりがない。


そして何より日が真上から照り付ける時間になって、いよいよお腹がすいてきた。


もうすぐ昼食の時間だと思いながら、無性に感じる空腹感に思わず無意識に口をついていた、


「あーあ、お腹すいたぁ。久々にマ○クのハンバーガー食べたいなぁ。って・・・は?なんだそれ?」


自然に口に出た言葉なのに、自分で何を言ったのか理解できない。


混乱する頭の中に今まで見たことも聞いたこともないような色々な物のイメージが、まるで『見てきたように』、『聞いてきたように』次々浮かんでは消えてゆく。


「・・・○ックって?ハンバーガってなんだよ俺?え?なんだこの記憶は?俺は、いや僕は、鍛冶師ジュトスの次男で今年11歳になる18歳の高校生ユーリア。あれ? あれれっ?」


記憶は次々に流れてきて、段々と繋がってくる部分も出てくる。


けれどユーリアが今まで11年間生きてきたはずの世界とは全くリンクする要素がない。


「待て待て待て、なんなんだこれ、どういうことなんだ・・・・?!」


ユーリアの頭は処理できない情報に埋め尽くされ、頭から煙が立ちそうなほど彼は混乱していた。


・・・そして夕方、日暮れ時。


いつまでも薪割りから戻ってこない弟を心配した兄ジェイガンがユーリアを迎えに来る。


この世界では辺境ではたまにではあるが魔物も出る。


「うぉーい!ユーリア―っ!だいじょーぶかぁーっ?」


だが幸い、弟は無事なようだいつもの定位置でひたすら手を動かしているのが見えた、どうやら弟は魔物に襲われることもなく無事なようだ。


ジュトスはほっとしながらも、その様子を不審に思いながら近づいて行った。


「・・・ユーリア?」


「丸太を切り株のセンターに置いて・・・振り下ろす。丸太を切り株のセンターに置いて・・・振り下ろす。丸太を・・・」


弟はぶつぶつ独り言を言いながら虚ろな目でひたすら薪割りを続けていた。


周りにはこんもりした薪の小山ができている。


「うぉっ!何だこりゃ。おーい、ユーリア。おい?おいってば?」


そう言いながら目の前でブンブンと手を振って見せるがユーリア無反応だ。


「いい加減に・・・しろっ! ふんっ!」


【ボカッ!】


「イダッ!うぐくくくっ!会心の一撃!会心の一撃?ドラ○エ?RPG?・・・ここはRPGの世界?と言う事は始まりの村?君は村人Aかい?あれ?ジェイガン兄さん?」


「はぁ?何言ってんだ、帰るぞ。もう日が落ちるんだからな、いつまで薪割ってんだよ。」


呼びかけても呆けたままあっちの世界から弟が戻らない。


そこで分かりやすい性格のジェイガンは4歳年上の兄の権限でゲンコツを落としたというわけだ。


決して無視された悔しさが故の鉄拳制裁ではない、ジェイガンは優しい兄なのだ、多分。


まだ呆けたままのユーリアを半分引きずってもはや夕食時となったわが家へ連れて帰った。


呆けたままの表情でもそもそと黒パンと、豆のスープを口に運ぶユーリアを心配して、ジェイガンと母のユナは何くれとなくユーリアに話しかける。


「ユーリアおいしい?」


「うん」


「おかわりは?」


「うん」


「お前やっぱちょっと変だぞ?」


「うん」


「「・・・・(大丈夫か(かしら)?)」」


家に戻ってからも夕食を食べながらユーリアは心ここにあらずといった感じでだった。


中空を見つめながら黒パンとスープを機械的に口に運んでいる。


そんなユーリアの様子に優しい母のユナとジェイガンは心配するのだが、体調が悪いわけでもなさそうだ。


「・・・ごちそうさま、おやすみなさい・・・」


「あ、あぁ・・・。」


「えぇ、おやすみなさい。」


そう一応は言って夢遊病者のように席を離れたユーリアを二人は戸惑いながらも見送るしかなかった。


「ただいまーっと!」


そう言いつつ村の集会から戻ってきた父のジュトスに二人は口々にユーリアの様子を訴えたのだが、


「そんなに心配する事もないだろ。まぁ、なんだ、ちょっと様子を見てやれよ。」


と言う何事もアバウトな父、ジュトスのアバウトなアドバイス(?)により、ひとまずは様子を見ることになった。


そして次の日・・・、


「おはよう!母さん、兄さん!今日もいい朝だね!」


「お、おう・・。お前大丈夫なのか?」


「あら、ユーリアもう体調は平気なの?」


気遣わし気に尋ねる二人にユーリアは11歳の少年らしく元気な笑顔で答える。


「うん、心配かけてごめんね。父さんは?」


尋ねていると、ユナがユーリアの木皿と木製のボウルに朝食の黒パンとスープを出してくれる。


朝食はいつもこれが定番だ、村ではごく当たり前の食事。


「母さんありがとう、いただきまぁす!」


そう言いながら口をつける。


夕食にはこれに煮豆や、たまに干し肉が付く。チーズや村の猟師から鹿や猪などの肉のお裾わけがあったときはご馳走レベルなのだ。


味付けは塩と、香草があれば良いほう、というレベルである。


「美味しい?」


「・・・うんっ!美味しいよ〜!お母さんの料理はいつも美味しいよっ!」


(まぁ、ハンバーガーと比べるのは酷だよね・・・)


前世を思い出したユーリアは正直少し物足りなさを感じていた。だがお腹は空いているし、好き嫌いを言ったところで食べるものはこれきりである。


『ちょっとコンビニ言ってくるわ!』


という世界ではないのである。


コンビニどころか隣家まで数百メートル、下手をすれば数キロの世界だ。


(それに、今はそれよりももっと大切なことがある!父さんにすぐこのことを伝えなくちゃ!)


そう決意して問いかける、


「ねぇ、父さんは?鍛冶場なの?」


「それがね、今日は立て込んでるとかで朝から仕事場よ。」


そう母は後片付けをしながらこたえた。


ユーリアはスープを勢いよく飲み干しながらながら今度は兄に勢いよく告げる。


「そっか!ねぇ兄さん、ちょっと父さんのところ行ってきていい?ちょっと父さんと話したいことがあるんだ。」


弟のいきなりの発言に兄は少し不思議そうな顔をしながらも答える。


「ん?あぁ、別に構わねーけど・・・でも仕事の邪魔すんなよ?」


「うん、わかった!薪割りはあとでやるからー!」


スープを飲み干し、黒パンを咥えると、そういうなり外へ駆けだした。


「お、おい! いやいや、・・・薪割りはもう十分だろ・・・。」


勢いに押されて弁当をことづけそびれた兄ジェイガンの突っ込みを置き去りにして。


口の水分を容赦なく奪っていく黒パンを齧りながらたどり着いたのは、家から五分もかからない村外れの一角。


ここは父ジュトスの仕事場である鍛冶屋である。


「カン!カン!」


規則正しい槌音が次第に近づいてきた。


武器や農機具を一から鍛えるならジェイガンや村のものが手伝いをするのだが、本格的な農繁期の前に多いのは農機具の修理が主になる。 


手間はかかるが、ジュトス一人でも十分な仕事だ。


「お父さんは…、あっいたいた。」


入るとすぐすべてが見渡せるような工房で、ジュトスは今まさに村人から依頼された鍬の修理を行っているところだった。


傭兵時代から変わらない、その引き締まった精悍な顔に熱気を浴びながら此方には気づかずただ黙々と仕事に打ち込んでいる。


そこへ飛び込むなりユーリアは叫ぶ、


「お父様!!」


「?! うおっ?!」


【ゴインッ!!!】


いきなり大声で呼びかけられて手元が狂い、ジュトスのハンマーは金床に打ちつけられて、鈍い音が工房に響く。


「あぶなっ!ユーリアか!? いきなり話しかけるなよお前!あやうく指詰めるところだったぞ!?大体どうしたんだその「お父様!」ってのは。やっぱ昨日なんか変な草でも食っちまったのか?」


「お父様聞いてください、実はご相談が!!」


そう呼びかける父親をユーリアは完全にスルーしている、ワザとではなさそうだが・・・。


「う~ん、お前は俺に話を聞いてほしいみてえだが、お前は俺の話を聞く気はねえようだな。・・・ハァ~まぁいいや、その辺で待ってろ。これ仕上げたら構ってやるから、な?」


「わかりました!まってますねお父様!」


そうキラキラした目で答えるユーリアに、それ以上お説教する気もなくなったのか気を取り直して作業を続けるジュトス。



そして少しの時間が流れ、作業が一段落したところでジュトスはようやくハンマーを握る手を止めて手拭いで汗を拭いつつ、息子に向かって向き直った。


「で、何なんだ話って?父さんに言ってみろ。お、もしかしてあれか?近所のエスタちゃんの事か?」


木のカップに注いだ水を二つ、一つはユーリアに差し出してやる。


いかつい無精鬚と、戦傷の刻まれた顔に人好きする笑顔を浮かべてジュトスは息子と、工房の中の小さな机で向かい合った。


年頃の少年特有の高潮した頬と、きらきらした瞳を見ながら自分の小さかった頃を思い出す。


(好きな女の子でも出来たのだろうか?この気持ち悪い口調も舞い上がっているせいなのか?

しかし俺に話なんぞ珍しいな?)


などと人並な父親らしく、少しませてきた息子のほほえましい話題を想像していたジュトスの想像は完全に裏切られた。


「お父様!僕、魔法が使えると思うんです!いや、使えるに決まってます! 驚かないでくださいよっ?! フフッ!僕は選ばれし勇者なんですっ! 」


「ぶっほっ!! げほっ!げほっ!・・・はぁああ~~~???」


呑みかけた水を吹き出し、器官に入ってしまったのか盛大に咳こんだあと、続けて父親の素っ頓狂な声が工房に響き渡たる。 しかし、ジュトスを見つめるユーリア少年のキラキラした瞳は全く動揺していない。


朝、ユーリアの様子は普段どおりに戻っているように見えた。


いや、寧ろ普段よりも目が輝いて元気そうにさえ見えた。


心配していた家族たちは一安心したようだが、それは大きな間違いであった。


確かに現在進行形でユーリアの目は輝いている。


しかしその目の輝きの源は家族の予想とは全く違っていた、というか予想できるはずがない。


ユーリアの記憶にある世界の住人ならその目の輝きの原因を残念さを込めた響きでこう呼ぶであろう、



『厨二病』


と。

多少の書きためを消化しつつ、こまめに更新していきます。


感想、レビュー寄せていただければ死ぬほど喜ぶと思います。

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