旅立ち 2
程なくいくと、街道沿いに看板が立てられていた。
『ここより東 ピースの街』
看板を前に立ち止まる三人。
「レッド、どっち?」
「森を突っ切ったほうが近道だよ」
地図を広げ、相談する二人に、いささか心配げなロード。
「おい・・・お前らダイジョーブか?」
思わず尋ねると、ロードの思っていた通りの答えが返ってきた。
「ロードはおいらたちについてくればいーの!」
森の中は、昼間にも関わらず、うす暗くじめじめしていた。今まで見えていた青空も、分厚い木々の葉に覆われてしまっている。
街道から逸れて、近道を選んだ三人だったが、クリスにはこの道が本当に正しいのか疑問だった。先程から同じような場所をぐるぐると回っているだけのような気がしてならないのだ。
「レッド。ここで本当に合ってるのか?」
「うん。そうだよ」
元気に、倒れた木の幹をジャンプしながらレッドは言う。
「この森を抜けると<アスター川>があるから、それに沿って東に行くんだ」
「なるほどな。そりゃ、街道より近いな」
うなずくロードに、クリスは目を丸くする。ロードは笑って答えた。
「これでも一応剣士なんだぜ?この国の地理くらいわかってねーと。それに、護衛やらモンスター退治やらで行ったり来たりしてたしな」
「・・・そうだよな・・」
うなづくクリスだったが、ふとひっかかりを感じた。
「ってことは・・・お前、モンスター退治してたくせに、宝石のこと知らなかったのかっ?!」
「うっ・・!・・・それは・・・だなぁ・・・」
言葉につまりつつも、ロードはなんとか続ける。
「なんつーか、急いで仕事してたってのもあるし。ま、やっつけ仕事ってやつ?俺らが倒してたモン、いちいち確認してたらキリないぜ。1日何百体とかあるんだしよ」
「護衛じゃ、それもそうだな」
「まだ、宝石を落とすモンスターに遭ってないだけかもよ?」
クリスとレッドに励まされるが、返って自分のバカさ加減を再認識することになり、ロードは段々と落ち込んでいく。
(そういや、昔、仲間がモンスターの周りでわいわい騒いでたっけ・・。あれって、今思ったら宝石が落ちてたからだったんだな〜・・・。なにやってたんだ、俺・・・。)
ため息をつくロードの肩を、クリスがポンと叩いた。
「これから稼げばいいじゃないか。それより暗くならないうちに川まで行こう。<アセター>だっけ?」
『<アスター川>!』
ロードとレッドの二人に同時に訂正され、クリスは耳まで真っ赤になった。それを見て、二人が大笑いしたのは言うまでもない。
「ねぇ、クリス〜。おいら腹減った〜」
レッドがこんなことを言い始めたのは、太陽が少し西に傾いた頃だった。ロードとクリスは顔を見合わせる。そういえば、朝食以外、まだ何も口に入れていなかった。
「そうだな。そろそろ休憩にするか」
「<アスター川>も見えてきたしな」
ロードの言葉に喜んだレッドが走り出す。肩の荷物を放り出し、一目散に川のそばに行き、川を覗く。
「クリスっ!魚がいるよっ!」
嬉しそうに手招きをする。ほほえましい姿にクリスは笑って答えた。川の中で、バシャバシャと水しぶきを上げている少年を見て、ロードは、
「なぁ。あいつ一体いくつだ?」
「レッド?8つって言ってたと思うけど?」
「なんでぇ〜。まだまだガキじゃねぇか」
川のそばにある切り株に腰を下ろすクリス。投げ出された荷物を拾い、フフッと笑うと
「本人の前ではそれは禁句だよ」
すぅっと人差し指を口に持っていく。ロードは口の端を上げた。
「わぁ〜ってるって。でも、あいつ、からかうとおもしれぇんだよな」
独り言のように言い、クックと笑う。そのとき、レッドの声が二人の下へ飛んできた。
「おいっ!ロード!!ちょっとは手伝えよっ!クリスも、火、付けといてよっ!」
「はぁ〜い」
「ったく。ガキが・・・」
笑いを含み、返事をするクリスと、仕方なく川へ赴くロード。荷物をクリスに預け、腰から長剣を抜くと、そのまま川の中へと入っていく。
(剣をモリ代わりに使うのか・・・)
クリスの思惑通り、しばらくすると、レッドの歓喜の声が川から上がった。どうやら一匹捕れたらしい。
「さて、と。こっちも準備するか」
誰にともなくつぶやくと、クリスは枝を集めにその場を離れた。