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君となら  作者: 中原やや
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出会い 2

 宿屋<アトラス>のすぐ目の前に広場がある。

 ここ、港町<リリィ>には東西南北一つ一つに広場があり、港がある西の広場が一番広かった。ついで、南、東、北の順に狭く、小さくなっていく。港町というものの、漁船がほとんどで、旅客船は週に一度、西の島<ティアン>にしかでてはいない。

 <ティアン>は小さな孤島で、人口3万人。その島で採れるオレンジに似た<オラップ>という果物の名産地でもある。<ティアン>はロードの故郷でもあったのだが、彼に言わせると「あそこは退屈たいくつで、刺激も何も無い」ところだそうだが。

 今、ロードがいるのは<北の広場>であった。野次馬たちでひしめき合っているその中央には噴水が置かれており、朝の日差しに反射して小さな虹を作っている。その前に、問題の彼らはいた。

「おいっ!その女をこっちへよこせ!」

 体格の良い男が手にナイフを持ち威嚇いかくしている。その後ろにも同じような大男が4人、手にナイフやこん棒を持ってニヤニヤと笑っている。

 彼らと対峙たいじしているのは、ブロンドの長髪を後ろに一つに結んだライト・アーマーの青年。彼の背に隠れるようにして、手にかごを持った少女が身を震わせていた。

「さっきから言ってるだろ!このは嫌がってる。そっちへ渡すわけにはいかない!」

 りんとした声が響く。それにつられるように

「そうだ!そうだ!その女の人はそっちにはあげないよ〜〜だ」

 先程の少年の声。噴水の周りのレンガ塀の上に立ち、ぴょんぴょん跳ねている。それがかえって男たちを憤慨ふんがいさせた。

「ガキども、いい気になるなよっ!」

 ジリっと迫ってくる大男たち。ブロンドの青年は低く構えると、少年に言葉を投げた。

「レッド。このと離れてて」

「わかった!」

 二人が噴水から離れたその時、大男が動いた。逃げた少年と少女を追おうと走り出す―が、それをブロンドの青年が止めに入った。いつの間に抜いたのか、ライトソードが陽に反射して輝いている。その切っ先を男の太い喉下のどもとに突きつけ、言った。

「どこに行く気だ?」

「・・・くそ」

 喉元のどもとに剣を突きつけられ、身動きが取れなくなった大男。彼に代わり、後ろにいた4人の男が一斉に青年に踊りかかった。

「おらぁ!」

 手にこん棒持った男が青年に向かい走る。青年は突きつけていた剣を持ち帰ると、走り来る男に向き直った。空気をうならせ、こん棒が青年の頭上を過ぎる。その低い大勢のまま、青年は男の腹を剣のつかで突いた。ゆっくりと両膝を着く大男。

 一瞬ひるむ男たち。しかし、数で勝っているという自信が彼らの判断を鈍らせていた。各々(おのおの)手に武器を持ち、尚も青年に挑みかかる。

「・・やれやれ」

ため息をつき、立ち上がりかけた青年めがけ、ナイフが飛んでくる。が、それを難なくかわし、ナイフを投げた男に一気に詰め寄る。

「なっ・・!!!」

 驚くいとまもあればこそ。その男も同じように腹を突かれ、前のめりに倒れていく。そこに、別の男がナイフを手にして迫る。

ガキンッ

 青年は頭上に振り下ろされたナイフを剣で弾き飛ばした。一瞬ひるんだ男の隙をついて、青年は体を反転させ、剣のつかで男のみぞおちに一発。「ぐっ・・」と呻き、崩れ落ちていく。

 と、突然

「あ・・・」

 少女が声を上げた。逃げている途中でかごを落としてしまったらしい。中に入っていたと思われる小さな花束が、無残にも地にばらばらまかれていた。

 ほんの一瞬、青年の注意がそれた。

「いまだっ!」

 叫び、男二人が青年に襲い掛かる。あわてて青年は、男たちに視線を移すが、彼らはもうすぐ目の前まで来ていた。

キンッ

 胸に繰り出されたダガーをかろうじて剣で受け止める。しかし、回り込んだもう一人の男が、青年めがけ、こん棒を大きく振り下ろした。

「クリスッ!!」

 青年の耳に、聞きなれた少年の声と、そして何か重たいものが倒れる音が、続けて二度聞こえてきた。反射的に閉じていた目をゆっくり開けると、そこには一人の若い青年が口の端を上げて立っていた。




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