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君となら  作者: 中原やや
29/67

不安 2

「クリスぅ〜!クリスぅ〜!」

 木から降りてきたレッドがクリスの身体を揺すっている。

 ロードは剣を腰のさやに戻すと、彼らのもとに駆け寄った。

「どうしたんだ?!」

「戦ってる途中で、いきなり倒れたんだ!今朝からなんか変だったみたいだし・・・」

 ロードは皮の手袋を取ると彼の額に手を当てた。うっすらと目を開けるクリス。

「・・・大丈夫か?」

「・・うん。なんとか・・・」

「んなわけ無ぇだろ」

 ロードはため息をついた。

「お前、熱あるぜ?」

「・・・ほんと?」

 コクリとうなずくロード。レッドも小さい手をクリスの額に当て「ほんとだっ!」と叫んでいる。

 ロードはクリスを抱き起こした。

「立てるか?って・・・やっぱ無理か・・」

 ぼんやりとした目で見つめられ、ロードは苦笑した。そして、レッドを見る。

「ちょっと重いけど、クリスの剣、持てるか?」

「うん。いいけど・・どうするの?」

 レッドの問いに、ロードは口の端を上げると、雨具を脱ぎ肩の荷物を下ろした。そして、クリスの腰の鞘をレッドに渡すと、

「よいしょっと」

 掛け声と共にクリスを背負う。カツンと鎧の重なる音が雨の森に響いた。

「いいよ・・・ロード」

 熱い息と共に耳元で囁かれ、ロードの全身は総毛立つが、何とか平静を保つと明るく言った。

「無理すんなって。次のところまで連れてってやるから。それまで、休んどけ。いいな?」

「・・・うん。じゃあ、そうする」

 鎧越しでもクリスの体温が伝わりそうで、ロードは少し口元をほころばせた。

(まったく・・・無理しやがって・・・)

 小さくかぶりを振り自分の荷物を手に取ると、心配そうに見上げているレッドと目が合った。ロードは彼の頭に手を置く。

「心配すんなって。お前は剣と荷物、しっかり守ってくれよ。頼んだぜ!」

 ロードの言葉に少年は力強くうなづいた。




 昼近くになり雨は上がったものの、空にはまだ分厚い雲が広がっていた。

 ロードたちは行き先を<オレット>から<アイリス>に変更していた。というのも、丸2日の野宿は今のクリスには耐えられないと判断したためであった。クリスの熱は下がるどころか、逆に容態は悪化している。<アイリス>ならば今夜にでも着ける距離にあるので、ロードたちはそこへ行くことに決めていたのだが・・・。

「うぜーんだよ!」

 ロードは飛び交うキラー・ビーに剣を振り上げた。

「こっちは急いでるんだって!」

 誰にともなく叫ぶと、ロードは剣を持ったまま身体を回転させた。そこに突っ込んでくるキラー・ビー。勝手に体を分断され、二匹はまだ乾いていない草地にぽとりと落ちる。

 回転を止めたロードはすぐさま右手の盾を振り上げる。

がんっ

 鈍い音。盾に当たり、足元でのたうつキラー・ビーにロードは止めを刺すと、空に向かって叫んだ。

「まとめて来やがれっ!」

 レッドとクリスの二人は、ロードが戦っている場所から少し離れた茂みの中に隠れていた。さすがに、クリスを負ぶっての戦闘は、いくらロードといえども無理な話である。

 キラー・ビーはロードの気持ちを知ってか知らずか、嫌な羽音をたてながら飛び交っている。

(こんなときに、<マホウ>が使えたらな・・・)

 ちらりと魔法を使える彼を見ると、ぐったりとしてレッドに寄りかかっていた。

「くそっ!」

 ロードをからかうように飛んでいたキラー・ビーだったが、彼を敵わないとでも悟ったのか、しばらくロードの頭上を旋回したあと、厚い雲の中へと姿を消した。

 ほっと胸をなでおろし、ロードは剣を鞘に収める。

「そっちは無事か?」

「うん。おいらたちはダイジョーブだけど・・・」

 言うと心配げにクリスを見る。前髪が額の汗で濡れていた。クリスは熱で潤んだ瞳でロードをぼんやりと見上げる。

「・・・俺なら・・・大丈夫だよ」

「・・・・んなわけ無ぇだろ」

 ため息とも苦笑ともとれる口調でロードは答えると、再びクリスを背負った。

「少し急ぐけど・・・ついてこれるか?」

 隣でクリスを見上げる少年にロードは問いかける。

「うん。おいらなら平気だよ」

「よし。よく言った」

 ニッと口の端を上げると、レッドもニカッと笑みを広げる。

 ロードとレッドの二人は、やや小走りで灰色の空の下を再び進み始めた。


クリスは楽してます(笑)

頑張れ!ロード!!

次回、<アイリス>に到着します。


※段々恋愛色が濃くなってきました・・

 苦手な方、ごめんなさい・・・(泣)

 後半はおそらく戦ってばっかりだと思うので、もうち ょっと(かなり)・・・・お待ちください。

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