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君となら  作者: 中原やや
28/67

不安 1

 明け方からの雨で街は煙っていた。

 昨夜、ロードが仰ぎ見た三日月は嘘のように、空は分厚い灰色の雲に覆われている。

 <チューリ城>から次の目的地<オレット>までは、丸二日ほどの距離であった。<オレット>は城から南西に位置しており、商業都市として発展している。また、地酒<リトルロック>が有名で、これを目当てにはるばるやって来る酒好きも多い。

 前を行くクリスとレッド。小雨のために、ロードたちはフード付きの雨具を着ていた。後ろからではクリスの表情は分からないが、今朝から様子がおかしいのは確かであった。

(やっぱ、俺にバレたと思ってんのかな?さっきだって・・・)

 思い、朝食での会話を思い出す。

 クリスに「次の目的地は<オレット>だ」と言われ、ロードがその理由を聞いたところ、「なんとなく」という答えが返って来た。ロードとレッドのツッコミにも、彼はどこか上の空で、うやむやにしたままだった。

(・・何にしたって、あいつの口から聞かなきゃいけねぇしな・・・)

 森の入り口に差し掛かった。まだ<オレット>までは4分の1ほどしか進んでいないことになる。深い森のおかげで、さほど雨は感じずにすむが、逆に視界は悪くなる。

 三人がフードを取ったその時、森がざわついた。

「クリスっ!」

「分かってる!」 

 スラリと腰の剣を抜き放つ。視線の先には木々の間からわらわらと出てくるリーフ・マンティス8匹。背の高さはクリスより低いが、両手には鎌のような鋭い爪を持っている。『リーフ』の名の通り、体全体がギザギザの緑の葉にそっくりだった。



シュン

 動いたのは相手だった。1匹が右手の鎌を振り下ろす。それを剣で受けたクリスは、左手をその顔面にかざした。

「『火炎魔法フレイム』」

ごぉぉぉ

 顔を灰と化し、崩れ行くその脇から新たな敵が現れる。両の鎌を持ち上げ、クリスに振り下ろそうとしたところを、ロードの剣がきらめく。両手を地に落とし、奇妙な声を発しているそれにとどめの一発。ロードの剣はそれの腹を難なく貫いていた。



「『氷結魔法フロウズ』」

 レッドが木の上に逃げたのを確認し、クリスは魔法を放った。リーフ・マンティス2匹の足を地面に氷で固定する。

ギギ・・・

 抵抗しようともがくそれに向かい、クリスは一気に間合いを詰め、

ざんっ 

 振り上げた鎌と共に、それの胴体をぐ。返す刀でもう1匹。濡れた地面に青い血が広がっていった。

(・・・あと4匹・・・)

 肩で息をし、クリスは額の汗を手の甲で拭った。暑くは無い。むしろ寒いのに汗が出る。

(・・おかしい・・。昨日の号外を見てから・・・?)

 気力を振り絞り、クリスは迫りくるリーフ・マンティスに手をかざす。

「『氷結魔法フロウズ』」

 無数の氷のつぶてがそれに向かい降り注ぐ。氷の彫像となり、動かなくなったのを見届けると、クリスは熱い息を吐き額に手を当てた。

(やばい・・・かも・・・)

 思った瞬間、目の前が暗転した。



ゾンッ

 ロードはリーフ・マンティスの首を跳ね飛ばした。クリスが<魔法>を使っているのを確認する。氷のつぶてがその1匹に降り注いでいた。

「残りはお前らだけってよ!」

 言うと、目の前の2匹に向かい駆ける。

ギンッ

 鎌を受け流し、そのままのスピードで1匹の腹に切りつけると、足払いをかける。倒れたものを無視し、振り向きざまに一振り。鈍い感触が剣を通して伝わり、それが終わらぬ内に倒れているものに目を向ける。

「悪ぃな」

 小さくつぶやき、ロードはそれの首に剣を突き立てた。

 その時、何かがドサリと倒れる音がロードの耳に入ってきた。ゆっくりとロードは音のしたほうを振り返る。そして、気付いた。

 リーフ・マンティスに交じり、クリスがそこに倒れていた。

クリスが倒れちゃいました!

ロードたちはどうするのでしょうか?


感想・コメントなどよろしくお願いいたします。


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