表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君となら  作者: 中原やや
26/67

平和都市<チューリ城> 3

「おいしぃ〜〜!」

 ティナは2本目の串焼きを頬張る。

 ロードは「よかった」と言いビールをあおった。

 今、二人は街の北の外れにある屋台<くし36>にいた。店主はよぼよぼの老人だったが、おいしそうな匂いと客が一人もいないという理由から、ティナが「ここにしましょ」と決めたのだ。ロードはティナからもらった新しいシャツに袖を通し、ティナもショールを取っている。

 屋台の赤い屋根には明るいオレンジのランプが二つともっていた。

「すっごいおいしい!こんなの食べたの初めてっ!」

「・・・そうなのか?」

「ええ!」

 言うと3本目にかじりつく。その豪快な食べっぷりに、ロードは少々驚いた。

「あのさ、ティナ・・・」

「なぁに?」

 口に一杯頬張り、振り向くティナ。ロードは苦笑する。

「・・・お前、男みてぇだな」

 ひくりとティナの身体が強張こわばるのが、ロードには分かった。ティナは口の中のものをゆっくりと胃に流し込んだ後、

「ごめんなさい」

 と、媚びる。うるんだ瞳で見つめられ、ロードは「・・いいよ、別に」と彼女から顔を背けた。

(こんな至近距離で見つめるなっつーの。・・・マジで暴走しちまうぞ・・・)

 店主はゆっくりとした動作で串焼きを焼き続けている。煙がティナやロードのほうに来るが、彼女は全く気にしていないようだった。嬉しそうに串焼きを食べている。

「なぁ」

 ロードはビールを空にしてから隣の彼女に口を開いた。

「出身はどこなの?」

「え?」

 果実酒を飲んでいた彼女は、少し驚いた顔をしてロードを見た。

「出身?」

「そ。どこ?」

「・・・<キルズ国>だけど・・・」

「そこのどこ?」

「・・・<ターチス>ってところ」

「ふぅん」

 二杯目のジョッキがロードの前に置かれる。ロードはそれに手を伸ばし、一口含んだ。

「んじゃあ、趣味は?」

「趣味?んもう、さっきからなぁに?質問ばっかりして」

 やや頬を膨らます彼女に、ロードは笑顔で言う。

「そりゃ、好きなの情報くらい知っとかないと。やっぱダメだろ?」

 ストレートなロードの言葉に、ティナはみるみるうちに真っ赤になった。プイとロードに背を向ける。さらりと、ブロンドの髪が闇に舞った。

「なんだよ。照れてんのか?」

「知らないっ!」

 楽しそうにいうロードに対して、ティナはそのままの体勢でやや語気を強めて言った。

「いつもそうやって女の子を口説くんでしょ。私はひっかからないんだからっ!」

 そして左手を伸ばし、焼きたての串焼きを口に持っていく。

 ロードは笑ってしまった。

「ティナ、違うんだって。ごめん。ほら、こっち向いて」

 くるりと椅子ごと回転させ、ロードはティナをカウンターに向けた。青い瞳は怒っていたが、串焼きは半分ほどなくなっている。

 ロードは微笑んで言った。

「俺はお前だから、いろいろ知りたいし、聞きたいんだ。・・・ダメ?」

「ダメ」

「・・・秘密ってことかよ?」

「そう。秘密」

 言うと、食べ終わった串を口に持っていく。

 このとき再び、ロードの脳裏にある場面がよみがえった。

 クリスとの旅が始まったとき、<ピース>に向かっている理由を尋ねると、彼は「秘密」と返した。

 初めてクリスが<魔法>を使った夜、焚き火を『火炎魔法フレイム』でやったのか、と訊くと、彼は「秘密」と笑って答えた。

(・・・言い方が似てるんだよなぁ・・・やっぱ・・・)

 ロードが考えながら飲んでいると、ティナが顔を覗き込んできた。

「・・どうしたの?食べないの?」

「ん?ああ・・・食べるよ」

 笑顔を作り、串焼きを一口。ティナが「おいしい」と連呼するだけあり、なかなか美味かった。

「よぉ。ここ空いてるかい?」

「へい。いらっしゃぁ〜い」

 商人らしい二人組みがティナの隣に座ってくる。

 彼らはティナを一目見るなり感嘆の声を漏らした。

「へぇ〜!こんなとこでべっぴんさんに逢えるなんて!オレたちゃ運がいいな!」

「ちょっとしゃくをしてくれねぇかなぁ?」

 へらへらと笑う二人組みに、ロードは椅子を蹴倒して立ち上がった。慌てて、ティナが彼を止める。

「大丈夫よ。お酌くらいなら・・・」

「でも、お前・・・何かされたら・・・」

「そのときは、また守ってね」

 はにかむ彼女にロードのもやもやは全て吹き飛んでしまう。ティナは「大丈夫だから」と頷くいて見せると、隣の男たちに酒を注ぎ始めた。


ロードとティナの串焼きデートはもう少し続きます。

っていうか、ロード・・・そろそろ気付かない?

恋は盲目ですね(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ