弱点 3
「クリスっ!もうやめろっ!」
大蜘蛛退治はほどなく終わったが、クリスはまだ暴走していた。
何もない空間に向かい両手をかざす。その手の先にいたレッドは慌てて逃げていった。
「もうダイジョーブだって!」
クリスの両腕を掴み、彼の前に回りこむ。見ると、彼の青い瞳からは大粒の涙が零れ落ちていた。
「おいっ!クリス、しっかりしろ!」
ロードの言葉が届いたのか、クリスの焦点が次第に合っていき、目の前にいる長身の男の上で止まった。心配げにクリスを見下ろしている。
「あ・・・ごめん・・・その・・・」
自分がしてしまったことが恥ずかしいのか、クリスはやや頬を染めてうつむいた。その仕草にロードの心臓が一瞬跳ね上がる。
(ティナに・・・似てる・・・)
もう一度、顔を見ようとロードはクリスの顔を覗き込んだ。クリスも涙を拭うと、顔を上げ――
そのまま二人は固まってしまった。
すぐ目の前にお互いの顔があった。
ロードは涙で輝く海のように深く青い瞳に釘付けになっていた。
クリスも心配げに見つめている優しい瞳に吸い寄せられていた。
(何だ・・・この感じ・・。相手はクリスだってのに・・・)
頭では分かっていても、行動に出てしまう。ロードは知らず知らずのうちに、クリスを引き寄せていた。そして、彼の唇に視線を移した、その時
「・・・男同士で気持ち悪いんですけど?」
『?!』
レッドの冷ややかな言葉に、ロードはクリスからパッと離れた。クリスのほうも我に返ったようで、恥ずかしそうに下を向いている。
ロードは髪をかき上げた。
「あぶねー!もうちょっとで、野郎とキスするトコだったぜ!」
内心の動揺を悟られないように、わざと大声で話すロード。そして、レッドに「さんきゅーな」と、彼の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
「ほら、行くぞ」
クリスのほうには見向きもせず、ロードはそのまま<チューリ城>のある南東へと歩を進めて行った。
髪を整えたレッドは恐る恐るクリスを見上げた。未だに彼の顔は赤い。
「・・・大丈夫?クリス?」
「・・・うん・・・。危なかった・・・」
片手で火照った頬を押さえ、クリスは自分が燃やしてしまった木々を見やる。未だに炎が燃え上がっているものもあった。それらに向かって両手を突き出す。
「『水流魔法』」
クリスの足元から徐々に水が湧き上がり、それはやがて波となる。大波となったそれは、木々の炎を飲み込んだ。
「俺たちも行こうか」
「うん」
炎に変わり、一筋の白煙を上げている木々を確認すると、クリスとレッドは遥か前を行くロードの後をゆっくりと追って行った。
ロードとクリスの二人が怪しい関係になりつつあります(笑)
・・・まぁそれも分からなくもないんだけど・・。
まともなのはレッドだけかな??