表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君となら  作者: 中原やや
21/67

弱点 2

「おーい!ロード〜!」

「ロードぉ〜!どこぉ〜?」

 クリスとレッドは口々に彼の名前を叫び、森の中を散策する。森の中は先程の草原とは違いじめじめとしていた。生暖かい風が吹きつける。

「ロード!・・・あっ・・・」

 彼はいた。大きな木の下に小さく丸まっている。その姿は母親に叱られた子供のようだった。

「こんなところにいたのか。・・・もう大丈夫か?」

「・・・悪ぃ」

 ロードの声は小さかった。クリスは肩をすくめて見せる。

「別にいいさ。弱点があったほうが人間らしいし。ほら、レッドも謝って」

 クリスにうながされ、レッドは笑いをかみ殺しつつ、

「ご・・ごめんなさい。・・・クククっ」

 しかし、最後で笑いが漏れる。

 ロードはすくっと立ち上がると、レッドを上から睨んだ。

「お前なぁ!フツー苦手なヤツに苦手なモン投げるか?!しかも顔面にっ!」

「だ・・だって、そこまで苦手だとは思ってなかったんだいっ!」

「クリスだったら、お前、そんなことしねぇだろーが!」

「当たり前だっ!クリスはおいらの命の恩人なんだっ!」

 叫び、レッドは「しまった」という顔をした。クリスを覗き見ると、やや険しい顔つきでレッドを見つめている。ロードは戸惑った。

「・・・どういうことだ?」

 目の前の少年に問う。しかし、レッドは目を背け何も答えようとはしない。

 ロードは矛先をブロンドの青年に向けた。

「どういうことだよ?!クリス」

「・・・さあな」

 短く答えると、クリスは方向転換をした。草原へ戻ろうと身をひるがえす。

 その彼の肩―といっても、ショルダーガードだが―をロードは掴んだ。

「おいっ!待てって!そろそろ何か教えてくれてもいいんじゃねぇか?」

「・・・お前には関係ない」

 ロードの手を振りほどき、クリスは一歩前進した。

 そこへ、スルスルと木の枝から人の顔ほどの大きさの蜘蛛くもが降りてきた。

 丁度、クリスの目の前に。

「ん?・・・・クモ?」

「あっ・・・やべっ・・!」

 ロードのつぶやきと、レッドのそれが見事に重なったそのとき、

「いやぁぁぁーーーーー!!!」

 叫び声が上がった。

 クリスの口から。

 そして、次の瞬間――

「『火炎魔法フレイム』」

 一条の炎がそれを包み込み、過ぎる。ジュッという焦げる音、そして、メラメラと木々が燃える音―――

「クリスっ?!」

「ああっ!!ロード、止めなきゃ!クリスはクモが大嫌いなんだよっ!」

 ロードの呼びかけにも、クリスはとどまることを知らない。もう一匹現れた大蜘蛛めがけ、手をかざす。

「『氷結魔法フロウズ』」

 巨大な氷のかたまりはみるみるうちに、巨大な一本のやりと化す。そして、それはものの見事に大蜘蛛を串刺しにした。

「クリスっ!やべーって!!」

 後ろからクリスの肩を揺らすも、彼は止まらない。大蜘蛛は仲間のかたきをとるため、次から次へと木から降りてきていた。

「くそっ!まずは、クモを片付けるか・・」

 右腰から長剣を抜き放つと、ロードはおろおろしている少年に自分の盾を渡した。

「これ、使え。・・・わかるよな?」

「任せてよ」

 ニカッと笑う少年。ロードも頷き、

「手っ取り早くいくぞ!」

 言うと、クリスの真後ろに出現していた大蜘蛛を分断する。緑色の体液を散らし、それは地に落ちた。

「『氷結魔法フロウズ』」

 澄んだ声とともに、ロードは反射的に右に飛んだ。

 小さな氷のつぶてが、ロードの近くいた蜘蛛3匹に命中する。

(あぶねぇ〜・・あいつ、見境みさかいないな)

 嫌な汗が背中を流れる。戦いのさなか、味方にやられたのでは洒落しゃれにもならない。

ゾンッ

 ロードの長剣は大蜘蛛の身体を上下ばらばらにしていた。




 レッドはロードから借りた盾を振り回していた。

 いつもはロードの右腕についているのだが、レッドが持つと顔どころか、上半身の全てが隠れてしまうほど大きい。

「うりゃっ!」

 変な掛け声とともに、レッドは手にした盾を地面と水平にしたまま振った。狙いは、丁度目の前に下りてきていた蜘蛛。

ばこん

 鈍い音がした。そして――

「『火炎魔法フレイム』」

「どわっ!危ねぇ!!」

 クリスの魔法とロードの悲鳴。

 おそらく、飛んできた蜘蛛にクリスが反射的に魔法を放ったのだろう。

「レッド!てめぇ、こっちに投げてよこすなっ!!」

「ご・・ごめんっ!ダイジョーブ?!」

 口では謝ったものの、レッドは笑いたいのを必死でこらえる。

(なんか・・・・これっておもしろいかも・・)

 ロードはクリスの周りの蜘蛛をひたすら切っている。クリスはというと、無感情でひたすら魔法を唱えている。

(あっちには・・・飛ばさないほうがいいんだよね)

 クリスのほうに飛ばしたいのは山々だが、あとが恐ろしい。レッドは身体の向きを変えた。

「こっちなら、いいんだよねっ!」

 ばこん

 遥か彼方に飛んでいく大蜘蛛を、レッドは無邪気に笑ってみていた。

クリスの弱点も出てきました。


実はレッドが一番強かったりして(笑)


コメント・感想などありましたら、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ