弱点 1
「それで、<チューリ城>になったわけか」
暖かな風にマントをなびかせ、クリスは先頭を行くロードに言葉を投げた。
「でも、彼女・・・来てくれるのか?」
「たぶん、な」
振り返り、ロードはそのまま後ろ向きで歩く。
今日は快晴。雲一つとして見当たらなかった。
三人は今、<チューリ城>を目指し、南下していた。「お前の探してるヤツもそこにいるかもしれないぜ?」と、説き伏せられたクリスが渋々承諾したためであった。また、ロードがそこへ行きたい理由も、先程歩きながら聞いていたので、クリスとレッドの二人は「仕方ないな」と、諦めていた。
「ティナ〜〜〜!!もうすぐまた逢えるぞ〜〜!!!」
広い大空に向かい、叫ぶロード。クリスは苦笑した。
(あの浮かれよう・・・。まるで子供だな)
ロードは彼女の名を呼びながら、草原の海をスキップしている。レッドはそんなロードを怪訝そうに見つめながら、隣を歩くクリスのマントを引っ張った。
「ねぇ、クリス。ロード・・・壊れたよ?」
「いいんだよ。そっとしておいてあげよう。今はね」
温かく見守るクリスとは対照的に、レッドは冷ややかな視線を彼に投げつける。と、ロードの足元、左足のふくらはぎの位置に、何やら赤い小さなモノがくっついていることに気がついた。
「ロードぉ!なんか足にくっついてるよ?」
「ん?どれ?」
スキップを止め、ロードは自分の左足を見た。そして――
「・・・・・・・トカゲ?」
口に出したとたん、さっと血の気が引いていく。一気に嫌な汗が噴き出してくるのが、ロード自身にも、そして、遠巻きに見ていたクリスとレッドの二人にも分かった。
「どうしたんだ?早く取れよ」
クリスの言葉に、しかしロードは涙目で彼を見ることしか出来ないでいる。本当に今にも泣き出しそうなほど、ロードはおびえきっていた。
「・・・もしかしてさ」
レッドは意地の悪い笑みを広げつつ彼に近づくと、ロードの足についたトカゲをひょいとつまんだ。
「もしかしなくても・・・トカゲ嫌い?」
言うと同時、手にした赤いトカゲをロードの顔に投げつけた。
「うっぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!」
大絶叫が広い草原に響き渡り、ロードは身体をめちゃくちゃに振り回しながら、西の森へと逃げて行く。
しばらくの間、クリスとレッドはそれをあっけに取られて見ていた。
ロードが西の森の中に消えた後、彼らは同時に顔を見合わせ、同時に噴き出した。
「クック・・・。何あれ?あんな男、見たことない」
「大の男が泣き喚くなんて・・。ギャー八ハッハ。もうおかしすぎっ!」
腹を抱えて笑うレッド。ひとしきり笑うと、クリスは涙を拭い、小さな相棒に言った。
「んじゃ、そろそろロードを探しに行くか」
「なんか、余計な仕事が増えてるよね」
「全くだ」
言い、再び笑いが起こる。
二人は急いで、ロードの消えた森の中に入って行った。
あ〜〜あ。ロード逃げちゃった・・・
ダメじゃん(笑)
リザードマンとか出てきたらどうなるんでしょうね(笑)?