マホウ 2
クリスの魔法が炸裂!!
ゴブリンたちは全滅ですが・・・
「何だ・・・?今の・・・」
剣を腰の鞘に収め、ロードは渇いた口で言葉をつむぐ。クリスはしかし、視線を落としたまま黙している。
「黙ってちゃ・・・わかんねーだろうが」
腰に手を当て、ロードはクリスに近づくと、そっと顔を覗き込んだ。そして、もう一度問う。
「アレが何だったのか、説明しろ」
「・・・・<マホウ>ってやつだよ」
クリスはため息と共に言葉を吐き出した。<マホウ>という言葉に、ロードの体が一瞬強張る。ロードは、未だうつむいて立っているクリスを見た。クリスの周りには、草が一本も生えてはいなかった。その所々に宝石が落ちている。
「・・・・これが・・・<マホウ>・・・」
かすれる声でつぶやくロード。しかし、その重苦しい沈黙を破ったのは、ロード本人でもあった。
「なるほどな。国が『魔法禁止』にしてるのも、分かる気がしてきたぜ」
言うと、「よっ」という掛け声とともに、近くの倒木に腰を下ろす。
「この<サラン国>じゃな、<マホウ>はご法度なんだよ。知ってたか?」
「・・・いや」
「だろうな」
ロードは肩をすくめた。
<サラン国>は<エフロア大陸>の南部に位置している。この国には、ロードの故郷である<ティアン>を始め、<リリィ>や<オレット>などといった街や村がおよそ6つある。それを治めているのが、<サラン国>の中心にある<セージ城>であった。
ロードたちが今いる<アスター川>は、<サラン国>と隣接する<平和都市・チューリ>とのおよそ境目にある。次の目的地<ピース>はその<平和都市>の中にあった。
『魔法禁止令』はこの<サラン国>と<平和都市>に布かれていた。
「・・・驚かないのか?」
「驚く?そりゃ・・驚いたけどよ。俺、<マホウ>なんて初めて見たし」
言い、足元に転がっていた宝石をつまみ上げた。レッドはというと、いつの間に木から降りたのか、ロードたちが倒したオークの宝石を集めて回っているようだった。手に持っている袋が、少し膨らんでいる。
ロードは腰を上げた。
「ま、さ。そんな細い体で、『剣士』って言うから、何かあるな、とは思ってたんだ。『魔導師』だったんだな。盾が必要ないのも、納得だぜ」
クリスは何か言おうと口を開くが、言葉にならず、再び地面を見つめる。
「はい。クリス。宝石拾ってきたよ」
「あ・・ああ。ありがと」
クリスのマントを少し引っ張り、レッドが見上げる。そのあどけない笑顔に、クリスの表情にも笑みが戻った。ロードは、伸びをしながら、レッドに近づき、赤い頭に手を置いた。
「お前ってさ。クリスが魔導師って知ってたんだよな?ああん?」
「う・・・うん。なんだよぉ?」
頭をぐりぐりと触られ、やや嫌な顔をするレッドに、ロードは意地の悪い笑みを広げた。
「他にもなんか隠してるんじゃねーか?」
「し・・知らないやいっ!知ってても、お前になんか言うもんかっ!」
「ほぅ。そうかそうか。んじゃ、これでどーだ?」
言うとロードはレッドをくすぐり始めた。「ギャッハッハ」と大笑いを始めるレッド。
「ほら、ほら。言ったら楽になるぞ〜」
「クリスっ・・!助け・・・ギャーーハッハ」
二人のやり取りに、クリスはフッと笑うと、未だ右手に持っていた剣を鞘に収め、言った。
「宝石、半分やらないぞ」
その言葉にロードはくすぐるのを止めたのだが、当分の間はレッドに敵対視されるのだった。