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君となら  作者: 中原やや
10/67

マホウ 1

久しぶりの戦いです!

頑張れっ!ロード&クリス!!

 パチパチと火のはぜる音が、とっぷりと沈んだ闇に響く。焚き火を取り囲むように、三人は川辺に腰を下ろしていた。

「うっめ〜!!」

 レッドは二匹目の魚にかじり付いていた。よほど腹が減っていたのか、「うまい」以外は声に出さない。ロードは三匹目の魚を左手に持ちつつ、

「なぁ、クリス。どうやって、火、つけたんだ?」

 赤々と燃える炎を見つめ、ロードは首をかしげる。クリスは先程、森の中で見つけた果物を口に運び、

「ん?火打石ひうちいしだけど?何でだ?」

「いや・・・。なんか、やけに早く燃えた気がして・・・さ」

 言うと、魚に喰らい付く。レッドが口の周りに食べかすを付けたまま、チラリとクリスを見ると、クリスは無言でうなづきを返した。それに安心してか、レッドが果物へ手を伸ばしかけたその時、何かが動いた。

「?!」

 咄嗟とっさに身構えるロードとクリス。レッドは彼ら二人の反応に、どう対処していいのか、手を伸ばしたまま固まっていた。三人を取り囲むように、殺気は徐々に近づいてきていた。

「・・・ゴブリン・・・か?」

 右の腰の剣をスラリと抜き放つロード。クリスも足元に置いていた剣を手に持つ。

 木々の間から、赤い炎に照らされて、人間よりも一回り小さく、醜い生き物がゆっくりと現れた。その奥からは、人間の倍程の体を持った生き物がのそりと顔を出す。

「オークもいるようだな」

 ギリッと奥歯をかみ締めるクリス。総数、およそ20体。

 ロードはゴブリンらから視線をはずさぬまま、クリスに小声で問う。

「こいつら、宝石は?」

「オークの方がな」

 背中を合わせるように立ち上がり、会話をする二人。先に動いたのはロードだった。

「んじゃ、行くぞっ!」

 え、ロードは手前にいるゴブリンを無視し、オークめがけて走り出す。途中、ゴブリンが手にしているダガーを振り下ろしたが、ロードはそれを盾で受け流し、

「てめーは金になんねぇんだよっ!」

 言い捨て、その体を二分した。

 残り19体。




「てやっ!!」

 声を発し、クリスはレッドに近づいて来たゴブリンに切りかかった。

ゾンッ!という鈍い手ごたえが剣を通じて伝わってくる。それを乗り越え、オークが迫る。

「レッド、離れてっ!」

 彼の声に反応し、レッドは素早く、近くの木にするすると登っていった。それを視界の隅で確認するクリス。オークはレッドの存在なぞ気にもとめていない様子で、クリスの頭上にこん棒を振り下ろそうとしていた。しかし、クリスはその手首ごと切断することで回避をし、ひるんだ隙を突いて、腹をぐ。

 その時、背後に殺気が生まれた。反射的に右に飛ぶと、先程クリスが立っていた地面に深々とナイフが刺さっている。

(危なかった・・・)

 左足を軸に体をひねり、それと共に剣を振る。背後にいたゴブリンの首は鮮血と共に地に落ちていた。

 


 次々とやってくるゴブリンたち。その数の多さにクリスは毒付く。

「くそっ!」

 もう何体切っただろう。クリスたちがおいしく魚を食べていた場所は、今やゴブリンやオークやらの血で、黒々とした染みが辺り一面に広がっていた。

 クリスの表情には疲労の色が見え始めていた。頭一つ分ほど高く、体もがっしりとしているロードに比べて、華奢きゃしゃな体のクリスは、体力的にもロードのそれより劣っていた。ロードはというと、まだ息も切らしてはいない。

(まだまだいる・・・)

 一体のゴブリンのダガーを左にかわし、足をひっかけて転ばす。そのまま、クリスは突き進み、二体目のゴブリンの腹を突き、振り向きざまに未だ倒れているそれにとどめを刺す。

 小さく息を吐き、クリスはロードを見た。彼は嬉しそうにオークを切り倒している。その彼の行動が裏目に出てしまった。

 ロードを手強いと悟ったゴブリンたちは、一斉に矛先をクリスに向けた。その数、8体。それらは、半ば駆け足でクリスに向かってくる。―と、その1体がダガーを投げた。

キンッ

 それを剣で弾き飛ばしたクリスだったが、続けざまのオークの攻撃に、体制が崩れた。

「クリスっ!!」

 木の上からレッドが叫ぶ。その声に、ロードはやっと事態を飲み込んだ。目の前のオーク2体をすばやく倒すと、あわててクリスの下へ駆ける。

 オークがこん棒を振り上げた。狙うは、ゴブリンと剣を交えているクリスの頭。

「クリスっ!」

 ロードが叫ぶ。クリスはゴブリンの首をはねると、オークに向き直った。そこに、風と共に振り下ろされる巨大なこん棒。―刹那せつな

「『火炎魔法フレイム』」

 赤い壁が出現した。炎の壁はクリスを中心にゆっくりと円を広げ、周りにいたモンスター7体を黒い灰と化していく。

 焦げ臭さだけを残し、炎は無へとかえっていった。

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