マホウ 1
久しぶりの戦いです!
頑張れっ!ロード&クリス!!
パチパチと火のはぜる音が、とっぷりと沈んだ闇に響く。焚き火を取り囲むように、三人は川辺に腰を下ろしていた。
「うっめ〜!!」
レッドは二匹目の魚に噛り付いていた。よほど腹が減っていたのか、「うまい」以外は声に出さない。ロードは三匹目の魚を左手に持ちつつ、
「なぁ、クリス。どうやって、火、つけたんだ?」
赤々と燃える炎を見つめ、ロードは首を傾げる。クリスは先程、森の中で見つけた果物を口に運び、
「ん?火打石だけど?何でだ?」
「いや・・・。なんか、やけに早く燃えた気がして・・・さ」
言うと、魚に喰らい付く。レッドが口の周りに食べかすを付けたまま、チラリとクリスを見ると、クリスは無言でうなづきを返した。それに安心してか、レッドが果物へ手を伸ばしかけたその時、何かが動いた。
「?!」
咄嗟に身構えるロードとクリス。レッドは彼ら二人の反応に、どう対処していいのか、手を伸ばしたまま固まっていた。三人を取り囲むように、殺気は徐々に近づいてきていた。
「・・・ゴブリン・・・か?」
右の腰の剣をスラリと抜き放つロード。クリスも足元に置いていた剣を手に持つ。
木々の間から、赤い炎に照らされて、人間よりも一回り小さく、醜い生き物がゆっくりと現れた。その奥からは、人間の倍程の体を持った生き物がのそりと顔を出す。
「オークもいるようだな」
ギリッと奥歯をかみ締めるクリス。総数、およそ20体。
ロードはゴブリンらから視線を外さぬまま、クリスに小声で問う。
「こいつら、宝石は?」
「オークの方がな」
背中を合わせるように立ち上がり、会話をする二人。先に動いたのはロードだった。
「んじゃ、行くぞっ!」
吠え、ロードは手前にいるゴブリンを無視し、オークめがけて走り出す。途中、ゴブリンが手にしているダガーを振り下ろしたが、ロードはそれを盾で受け流し、
「てめーは金になんねぇんだよっ!」
言い捨て、その体を二分した。
残り19体。
「てやっ!!」
声を発し、クリスはレッドに近づいて来たゴブリンに切りかかった。
ゾンッ!という鈍い手ごたえが剣を通じて伝わってくる。それを乗り越え、オークが迫る。
「レッド、離れてっ!」
彼の声に反応し、レッドは素早く、近くの木にするすると登っていった。それを視界の隅で確認するクリス。オークはレッドの存在なぞ気にもとめていない様子で、クリスの頭上にこん棒を振り下ろそうとしていた。しかし、クリスはその手首ごと切断することで回避をし、ひるんだ隙を突いて、腹を薙ぐ。
その時、背後に殺気が生まれた。反射的に右に飛ぶと、先程クリスが立っていた地面に深々とナイフが刺さっている。
(危なかった・・・)
左足を軸に体をひねり、それと共に剣を振る。背後にいたゴブリンの首は鮮血と共に地に落ちていた。
次々とやってくるゴブリンたち。その数の多さにクリスは毒付く。
「くそっ!」
もう何体切っただろう。クリスたちがおいしく魚を食べていた場所は、今やゴブリンやオークやらの血で、黒々とした染みが辺り一面に広がっていた。
クリスの表情には疲労の色が見え始めていた。頭一つ分ほど高く、体もがっしりとしているロードに比べて、華奢な体のクリスは、体力的にもロードのそれより劣っていた。ロードはというと、まだ息も切らしてはいない。
(まだまだいる・・・)
一体のゴブリンのダガーを左にかわし、足をひっかけて転ばす。そのまま、クリスは突き進み、二体目のゴブリンの腹を突き、振り向きざまに未だ倒れているそれに止めを刺す。
小さく息を吐き、クリスはロードを見た。彼は嬉しそうにオークを切り倒している。その彼の行動が裏目に出てしまった。
ロードを手強いと悟ったゴブリンたちは、一斉に矛先をクリスに向けた。その数、8体。それらは、半ば駆け足でクリスに向かってくる。―と、その1体がダガーを投げた。
キンッ
それを剣で弾き飛ばしたクリスだったが、続けざまのオークの攻撃に、体制が崩れた。
「クリスっ!!」
木の上からレッドが叫ぶ。その声に、ロードはやっと事態を飲み込んだ。目の前のオーク2体をすばやく倒すと、あわててクリスの下へ駆ける。
オークがこん棒を振り上げた。狙うは、ゴブリンと剣を交えているクリスの頭。
「クリスっ!」
ロードが叫ぶ。クリスはゴブリンの首をはねると、オークに向き直った。そこに、風と共に振り下ろされる巨大なこん棒。―刹那
「『火炎魔法』」
赤い壁が出現した。炎の壁はクリスを中心にゆっくりと円を広げ、周りにいたモンスター7体を黒い灰と化していく。
焦げ臭さだけを残し、炎は無へと還っていった。