95 始まりと終わりの言葉
長らくお待たせしました、新章開始です。
三大大陸の中心の島。
そこは数日前から、誰も入れない絶海の孤島となっていた。
――いや、正確に言えば、入ることは出来る。
ただし、死体という、置物となって。
島の中心には、巨大な建造物があった。
神殿のような造りで、石の一つひとつが異様に大きい。
中にはいくつかの階層があり、最上階には、海の向こうまでを見渡せそうなほどの、大きな窓があった。
その窓から、創造神クレアシルは世界を見下ろす。
「……お加減はいかがでしょうか、クレアシル様」
「悪くない。ようやく手の上に世界が乗った気分だ」
クレアシルが手を伸ばす。
その手の上には、すでに世界が握られていた。
「世界は我が手の上にある。いつでも、壊してしまえる」
「我々〈七聖剣〉も、すでに用意は出来ております」
手を握りしめる彼女の後ろで頭を垂れるのは、七人の人影。
「手始めだ。街の一つでも潰してこい。殺戮の狼煙を上げるぞ」
「ギヒャヒャ! それなら俺が行くぜ!」
立ち上がったのは、尖った赤い髪が特徴の高身長の男。
鋭い視線をクレアシルにぶつけながら、下品な笑い声を上げる。
「オレはよぉ、一番手も美味しいところも何もかも欲しいんだわ! いいだろ? クレアシル様ァ!」
「マモンか……いいだろう。貴様が行け」
「ギヒャ! やりぃ!」
マモンと呼ばれたその男は、そのまま最上階から外に飛び降り、小さくなって消えていった。
「……あの男に行かせてよろしいのでしょうか?」
七聖剣の一人が、マモンを見送って口を開く。
「構わん。やつの特攻の精神は扱いやすい。放っておけば、人の長の首をいくつか取ってくるだろう」
クレアシルは振り向き、己の後ろに玉座を作り出す。
無骨で無駄な装飾のないそれに座り、彼女は始まりの言葉を口にした。
「さあ――――人の世の終わりだ」
◆◆◆
「クレアシルめ……動き出したか」
デストロイアは、クレアシルのいる孤島の方へ向きながら、呟いた。
「こっちはまだ時間がかかりそうだというのに――」
彼女の後ろにある、森の中の祠。
その奥、ボロボロの台座の上に、腕を鎖で繋がれ、膝をついてうなだれているセツの姿があった。
眼を閉じ、意識はないようだ。
「いざとなれば儂が――――いや、こやつを信じるか」
デストロイアは、祠の中に入る。
セツの「仕上がり」を見て、彼女は満足気に目を細めた。
「人の世は終わらせんぞ――――クレアシル」




