82 出発・前編
体調を崩しておりました。
皆様大変お待たせしました、今回は文字数が少ないですが、次回からは更新頻度、速度ともに上げていくので、お待たせすることは少なくなると思われます。
「もう一度説明すると、フェリブスはクレアシルが創りだした聖剣じゃ。やつの他にも何本もの剣がいるが、ワシですら正確な数は知らん。やつらの特徴といえば、人に対して殺傷能力が高いことじゃの」
「はーん……」
フェリブスを倒してから少したち、俺たちは宿へと戻っていた。
村人たちの体調はすっかり回復し、今は失った体力の回復を図っている。
フェリブスの影響を至近距離で受けた男たちは、意識は戻らないものの、命に別状はなさそうだ。
何だかんだで村を救った英雄として感謝された俺は、村に拘束されて色々めんどくさくなりそうだったから、食料とある程度の金をもらって早々にこの村を出ることにした。
と言っても、今日はこの宿に泊まって、出発は明日になる。
「つまりなんだ、聖剣はクレアシルのバカが人を殺すために創った殺戮兵器ってことだろ? んでやつが封印されたと同時に身を隠してたのが、復活したせいで聖剣たちも蘇ったと」
「何じゃ、お主結構物分りがいいのう」
「……もともと頭は悪いほうじゃねぇんだよ」
動揺するとその通りではなくなるがな。
「まあお主の話はいいのじゃ。問題なのは――――――」
「あの化物どもが、世界中で暴れまわってるかもしれないってか?」
「……セリフ取るなよ」
あれだけの強さを持つ連中に暴れ回られたら、さすがにゾットするな。
今回フェリブスを倒せてよかった。
やつは長期的に見てかなり厄介そうだったし、病をばら撒きながら移動でもされていたら、それこそ大災害だ。
「いや、待てよ? なんでフェリブスはここから動かなかった?」
あれだけ力があれば、この村なんてあっという間に汚染し尽くして別の……そう、大きな街にでも侵入すれば、すぐにでも人間なんて根絶やしに――――――――――。
「……他の聖剣どもに干渉したくなかったんじゃろ。やつの神力的に考えて、実力は聖剣の中でも中の下じゃ。下手に他の聖剣の管轄区域の人間に手を出せば、怒りを買う可能性がある。そうすれば折れるのはフェリブスの方だからの」
「……聖剣は自分の管轄区域の人間を、ある意味守ってんのか」
「自らの手で殺すためにな」
そりゃずいぶんと質が悪い連中だ。
ていうか、やつですら中の下かよ……。
「ま、強さの定義は単純な戦闘能力でワシが勝手に言ってるだけじゃからな。フェリブスは能力が厄介な聖剣じゃったし、本領さえ発揮できればもう少し上じゃろうて」
「だとしても……まだ上がいんのか」
「……〈七聖剣〉と呼ばれている連中がいる。お主ら人間がやつらを相手にするなら……まず命はないと思ったほうがいい。クレアシルの最高傑作たちじゃからな、別格じゃよ」
七聖剣……ねぇ。
少なくとも、魔力のない今の俺じゃ話にならないだろう。
出会ったら、まず死ぬ。
――――――死ねねぇよな、まだ。死ぬわけにはいかねぇ。
「聖剣を壊して回るのは当面の目標として……おい、ストロー」
「なんじゃ、改まって」
「お前、神力を俺に分けたり出来ねぇの?」
「……ふむ」
あれ? わりと冗談気味に言ったんだけどな。
結構真剣に悩んでいるストローを見て、俺の中で僅かに期待が膨らむ。
「……神力を分け与えるのは……無理じゃろうな」
「なんだよー期待させんなよ」
俺は思わず項垂れる。
「そもそも、今のワシの神力は雀の涙ほどしかない。渡せるほどありはせんのじゃ。ただ……」
「ただ?」
「……お主に、神力を目覚めさせることができるやもしれぬ」
「……は?」
あまりに唐突な提案で、俺の思考は一瞬止まった。
「い、いや……神力を目覚めさせるって……無理だろ。俺は神でも何でもねぇぞ?」
「万が一があるじゃろ。それに、人の身でも神力を扱うことはできる。その証拠に、お主たちは少量とはいえ神力を宿した聖剣を扱っているのじゃからな」
「……大食いやエクスカリバーにも、神力があるってのか?」
「もちろんじゃ。今はお主らを持ち主と認め力を貸しておるが、元はすべてクレアシルの手によって作られたもの。やつの神力が練り込まれておる」
なるほどな、聖剣持ちが桁違いの強さを手に入れられる理由は、神の仕業だったってことか。
……ムカつくぜ、あの野郎。
なんだよ、俺たちはあいつのおかげで強くなってたのかよ。
何が勇者だ、みっともねぇ。
いや、それよりみっともねぇのは、自分の力で強くなった気でいたことだ。
「……とは言ったものの、訓練したとしても何も起こらぬ可能性は十分あるし、時間だけを無駄に浪費するかもしれん。それでもやるか?」
「当たり前だ」
「おうおう、即答かい」
可能性がゼロなら、考える余地もなく却下だ。
だが少しでも可能性があるなら、やる勝ちは十分ある。
やれることはやるって決めたんだ、ここで挑戦しなきゃ嘘になっちまうからな。
「分かったのじゃ。お主も本気のようじゃし、ワシも本気でお主に神力を目覚めさせよう」
「頼むぜ、ストロー」
「せめて師匠と呼ばんかい!」
◆◆◆
「……」
「ふん……気持ちよさそうに寝おって……」
夜、デストロイアはベッドに腰掛け、寝ているセツを見下ろしていた。
目付きが悪く、口も悪い彼だが、寝ている時だけは見た目相応の顔になる。
「……人間ごときが、神の力を扱えるようになるわけないじゃろ」
その未成熟の顔を見ながら、彼女はポツリと言葉を漏らす。
それは、先ほど彼女が言った発言を、すべて否定するような一言だった。
「神力を扱えるものは、神の血を引くものだけじゃ」
デストロイアはベッドから降り、部屋の窓から星空を見上げる。
「セツは……どうせお主の子じゃろう?」
吸い込まれそうな黒色をした空だ。
星や月がいくら光を放とうとも、その黒さは薄れない。
デストロイアは、空に問いかける。
「のう――――――――――――――――――死神よ」




