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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第四章 人間大陸にて
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78 不可能はない

短めです。ワンクッション的な。

「我はしばし姿を隠す。再度、我が貴様らの前に姿を表したとき、それが「人」の終わりのときだろう」


 そう言ってクレアシルが姿を消してから、どれくらい僕は放心していただろう。

 気づくと、セツが消えた場所に、夕陽と呼ばれていた女が蹲って泣いていた。

 彼に近づく女はみんな憎いけれど、なぜか今だけは何も感じなくて、不思議と同情心が湧いた。

 セツの魔力は、もうどこにも感じない


 消えた、消えてしまった。


 涙が出ない。なぜか体の芯から冷め切っていて、頭がやけに冷静だ。

 

 彼の死を、「そういうもの」と受け入れられてしまうくらいには――――――。



◆◆◆

 冬真、セツとクレアシルの戦いから、半刻ほどの時間が過ぎ去った。

 援軍として獣人たちが到着し、人間の兵は軒並み拘束され、魔族大陸での決戦は連合軍の勝利で終わった。

 しかし、相応の犠牲も出ており、何より一人の男が姿を消したことが、誰も人間国に攻め込もうと言い出さない理由である。

 セツという男の影響力は、国を動かすほどに大きい。

 いい意味でも、悪い意味でも。


 その、世界の中心人物が、今何をしているのかと言うと――――――――――。


「おい、服をよこせ」

「はぃぃぃぃ!」


 盗賊たちを、片手で締め上げていた。


◆◆◆

「これに懲りたら二度と悪さすんなよ」

「わっかりやしたぁ! 旦那ぁ!」

「よし、じゃあ行け」

「うっす! 行くぞお前ら!」


 小さな商人の馬車を襲っていた盗賊どもから、上半身の服をいただいた。

 しばらくは森の中を歩いていたんだが、上裸だったんだよ、俺。

 たまたまこいつらがいたからよかったものの、このまま街の一つでも入れば一瞬で犯罪者だ。あぶねぇあぶねぇ。

 

「怪我はねぇか、おっさん」

「あ、ああ……助かったよ。何か礼をしなくては――――――――」

「あー、いいって。それより、ここから一番近い街を教えてくれねぇか?」

「街?」


 襲われていた商人のおっさんは、俺の質問にしばらく頭を捻らせ、いくつかの候補を出してくれた。


「ここを南に行けば都市がある。迷宮なんかで大変賑わっているそうだ。しかしここからだと一日はかかるだろう。数時間で行けるところもあるが……」

「何だよ。もったいぶんねぇでくれ」

「……北に、村がある。大きめの村だ。宿もあるし、生活には困らない」

「お、いいじゃんそこ」


 とりあえずは落ち着ける場所がほしい。

 魔力がなくなってしまったせいで、魔法袋が使えなくなったのがでかい。

 折れた黒丸も、紐で背中に括りつけている始末だ。

 荷物袋がほしい、着替えだってあった方がいいだろう。

 そうなると、俺の足なら数十分でつけるであろうその村に行く以外の選択肢がない。

 あ、魔力は使えねぇけど、身体能力だけで今のところなんとかなってたりする。


「ただ……俺もそこから出てきた身なんだが、あそこは今病が流行っててな……」

「病?」

「ああ。原因は分からないが、身体がどんどん衰弱していく病らしい。主に子どもたちや年寄りが発症している。……俺の娘も発症しててね、今から都市に腕の良い医者を呼びに行くところだったのさ」


 病……病気か。

 知識として、この世界の病気とかも一応いくつか知っているが、思い当たる名称はない。

 子どもやジジババがかかるってことは、身体が弱い連中の天敵ってことになるんだろうが……まあ、俺には関係ないか。


「へぇ……」

「我が身が可愛けりゃ行かないほうがいい。すでに何人か……死人が出ている」

「……結構まずそうだな」


 死人が出てるとなると、話が変わってくるな。

 魔力がない今の状態だと、少々不安だ。

 このおっさんたちが元気そうなところを見ると、短期滞在なら大丈夫か?


『……セツ、その村へ行くのじゃ』

「……?」


 俺の横にいるストローが、突然口を開いた。

 ちなみに神であるこいつは、意図的に姿形を見せようとしないかぎり、一般人の視界に入ることはないらしい。

 声も聞こえないそうだ。ほぼ幽霊じゃねぇかな、これ。


『ワシは、その病の正体に心当たりがある。それが合っていれば……少なくともワシら神に関わっている事件じゃろう』

「ッ! ……よし」


 話は決まった。

 てか、目の前で困ってるやつがいるのに、じゃ頑張ってねーで終わらせるのは心苦しい。

 神が関わってんなら、なおさら首突っ込まねぇわけにはいかねぇな。

 

「ちょっくらその村に行ってくるぜ、おっさん」

「お、おい! だから危険だと――――――――」

「俺が、何とかしてやるさ」

「……!」


 俺はそう言い残し、振り返らずに北へ走る。

 おっさんの姿が見えなくなった頃、横を平然と並走しているストローが、なぜか俺の顔を覗き込んでいた。


「……お主は不思議な男じゃ」

「あ? 何が」

「なぜか言葉に安心感がある。お主がそう言えば、実際にそうなってしまうような……」


 よく分かんねぇことを言いやがる。

 俺からすればいつものことだ。


「俺が何とかするって言ったら何とかするんだよ。クレアシルだってな、俺がぶん殴るって決めてんだ。だから、絶対ぶん殴る」

 

 その気になりゃ、不可能なんてないさ。

 世界は、そういう風に出来てるんだから。

 

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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