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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第三章 戦争編
75/127

74 希望と絶望

本日二話目です。お気をつけ下さい。

「何!? あの男が魔族軍に!?」


 王様の声が響いた。

 僕はそれを呆然と聞いていた。

 なぜ、どうしてと頭が混乱する。


「セツ……君は……」


 裏切ったの……?

 何で敵側にいるの?

 僕はまだこの国にいるのに……。

 何で?


「魔族の……せい?」


 やつらが君を誑かしたんだね。

 じゃなきゃ、僕を守ってくれるって言った君が、敵になるはずないもん。

 魔族が……悪い。

 全部、あいつらが。


「殺すよ」


 王様たちが見てくる。

 このときの僕は、どんな眼で見られていたのだろう。


「僕が、みんな殺す」


 セツを助けなきゃ――――――――――。





「やった、かな」


 冬真は少し息を切らしながら、つぶやく。

 銃口は煙を吐いており、砲身は熱を持っていた。

 

(こうなるとしばらく撃てない……これで決められてよかったよ)


 地面には巨大なクレーターができており、土煙を吐いている。

 中心は土煙が特に濃く、中心地にいるはずのセツの姿が確認できない。

 しかし、もうセツの魔力は感じられなかった。

 死んではいないだろう。

 ただ、少なくとも魔力はもうないはずだ。

 冬真の魔力ももう尽きかけだが、戦えないわけではない。

 これでは、冬真の勝利は明確だ。


(……とりあえず確認が先だね)


 冬真はゆっくり地面に降りて行く。

 砦と化した彼の動きは鈍い。

 念のため、地面からは足を離して移動し、クレーターの中心近くまでたどり着いた。

 そのとき――――――――。


「――――――――――ようやく、射程内に来てくれたな」

「っ! セツ!?」


 土煙が晴れる。

 クレーターの中心に、セツはしっかりと立っていた。

 その足で、地面を踏みしめていた。


「まずいっ!」

「もっとでけぇ口開けろォ! 大食い!」


 セツが〈空腹の牙(ハングリーファング)〉を地面に突き立てる。

 すると刃が口を開いた。

 そして地面も――――――――口を開く。




 ようやく、このときが来た。

 大食いにこれ以上食わせないように、わざとビームを食らったせいで魔力ほとんど持って行かれたが、こうなればこっちのもんだ。


「見たところしばらく撃てねぇみたいだし、もうこれを避けるすべはねぇだろ!」


 大食いを使った、渾身の一撃。

 地面にヒビが入っていき、それが大地を割く。

 冬真の作り出したクレーターよりも大きく、そのヒビは広がった。


「〈すべてを喰らうもの(アースイーター)〉」

「な、なにこれ!?」


 地面が、大きな口のように広がり始める。

 徐々に大地が黒く染まり始め、やがて牙が生えた。

 これが大食いならではの、すべてを喰らい尽くす大技だ。


「くっ!」


 冬真は逃げようと〈空歩〉で空中を駆け上がるが、その巨体を背負っているせいで遅い。

 地面にできた巨大な口は盛り上がり、ドーム状に口を閉じていく。

 

「逃がすわけねぇだろ!」


 口の大きさが更に広がる。

 

「待って! セツ! 許してよ!」

「残念だが、許す理由はねぇよ」

「あ――――――――――――――――」


 口が完全に閉じる。

 もう、冬真の声は聞こえない。


「俺の勝ちだ、バカ野郎」


 



「何で……そっち側にいるんだよ、セツ」

「冬真……」

 

 この日も、雨が振っていた。

 僕とセツは剣を持って向かい合う。

 戦場の中心で、両国の仲間たちが見守る中で。


「お前こそ、何で魔族や獣人を殺すことに参加してた。こいつらだって悪いやつらじゃ――――――――」

「君を誑かしたじゃないか! 十分に悪いやつだよ!」


 僕は怒鳴る。

 セツは何も分かっていない。

 きっとあいつらに洗脳されてるんだ。


「セツは僕を愛してくれているじゃないか! なのに敵になるはずがないんだ!」

「……は?」


 まだ分かってくれない。

 

「セツ、好きだよ。僕の全部をあげてもいいくらい好き。だから一緒に帰ろ? 二人で誰にも見つからない場所を探して、一つになろ? 僕たちなら幸せになれるさ! だって、一生僕を守ってくれるって言ったもんね!」


 セツは僕のものだ。

 誰にも渡さない。

 邪魔するあいつらは皆殺しにしてやる。

 もう、僕たちの中は引き裂かせない!


「さあ、一緒に行こ?」

「――――――――――狂ってるよ、お前」


 セツが聖剣を取り出す。

 どうやら言葉では、あいつらの洗脳は解けないようだ。

 なら、大人しくさせるしかないよね。

 乱暴なことはしたくなかった。

 でも、君を手に入れるためなら――――――――。


「僕は君でも傷つけられるよ」

「上等だ、このド畜生が!」


 そうだ……僕たちは、こうして戦いを始めたんだ。





「…………ここは……?」

「起きたかよ」


 地面に寝かせておいた冬真が、ようやく起きる。

 ちなみに地面は元通りに戻っており……てかクレーターはそのままだけど、その中心に俺たちはいた。


「なんで……僕生きて――――――――」

「大食いに食わせたのは、てめぇの魔力と一時の意識だけだ。大地を丸ごと飲み込むせいで、大食いの腹はほとんど膨れちまう。もうそれ以上食う余裕はねぇよ」


 事実だ。

 これ以上大食いは何も食べようとしない。

 うっかり冬真を殺しちまうなんてことはなくて、本当に良かった。


「それよりだ。てめぇ、なんで〈呪術魔法(カーストマジック)〉使わなかった?」

「……」


 あれを使われていれば、俺はもしかしたら負けていたかもしれない。

 俺の動きを止める呪いでもかけられてしまえば、あのビームをもろに浴びて消滅していただろう。


「……使わなかったんじゃなくて、使えなかったんだ」


 冬真はそう言って、懐を漁る。

 そして取り出したのは、一つの宝石。

 こぶし大の、綺麗な白い宝石だった。


「これは僕の目的の最重要アイテム。この一個の宝石に、僕は全身全霊の呪いをかけた。この宝石に、デザストル、リヴァイア、そしてガイアの血が吸い込まれ、これが砕けたあとに現れる存在を使役するためのね」

「……なんでデザスとリヴァイアの名前が出てくんだよ。その宝石はなんだ?」

「これは……創造神が封印されている宝石、この世の「人」を滅ぼしてくれる、希望の神様さ」


 冬真は苦笑いしながらそう言った。

 話はよく分からないが、黒ローブどもがデザスやリヴァイアを狙った理由は、この宝石が原因みたいだな。

 創造神ってなんだろうか?


「まあ……もう負けちゃったし、これはもういらないものだね」

 

 宝石を投げ捨てる。

 少し離れたところにおちた宝石は、ごとりと音を立てた。


「もういいよ。君に殺されるなら満足だ。結局君は僕のものにはなってくれないみたいだしね」

「当たり前だ。俺は男と愛し合う気はねぇ。あと……お前を殺す気もねぇ」


 俺は頭を掻きながら言った。

 てか、殺すすべもないしな。


「ねぇ、一つ聞きたいんだ。セツはなんで人を殺さないの?」

「……よく分かんねぇ。でも、殺しちゃいけないんだ。一人よりも多くはな」


 冬真は納得のいかない顔をしているが、仕方がない。

 俺ですらよく分かっていないんだから。


「だからお前も殺さねぇ……せいぜい、魔族たち見張る檻の中で罪を償うんだな」

「……ははっ、手厳しいなぁ」


 冬真は笑った。

 久々に見た、純粋なこいつの笑みだ。

 

「はぁ……いい空だ」


 確かに。

 俺たちの戦いのせいで空は晴れ、きれいな青空が広がっていた。

 勝利の空もいいもんだな。


「ユキくーん!」

「おー夕陽、それにお前らも」


 遠くの方から、俺の仲間たちがやってくる。

 怪我も治り、とりあえずは一安心だ。


「無事でよかったぁ!」

「おっと、急に飛びつくなって」


 胸に飛び込んできた夕陽を抱き抱える。

 すると少し怒り顔のエルカとティアも、横から俺にしがみついてきた。

 

「むぅ、セツ様、少しは私も可愛がってください!」

「膝の上に乗りたい」

「あー分かった、分かったから」


 そう言って三人を振りほどく。

 するとお次は――――――――。

 

「なら私もなでなでしろー!」

「私をなでるです」

「ちょっと! 姉さんたちはしゃぎ過ぎですよ!」


 ネコ娘二人が飛び込んできた。

 俺はそれを華麗にいなすと、地面に横たわらせて、二人の腹を同時になでる。


「うひっ! ちょ! セツ! やめっ! あははははは!」

「うー! セツやめる……です! くふっ!」

「お前らはこれで満足しとけ」


 渾身のくすぐり攻撃だ。

 これでしばらく動けまい。


「ね、姉さん……。ごめんなさいセツさん、うちの姉がまた迷惑を……」

「……お前は本当にいい子だなぁ」

「へ!? そ、そうですかね……?」


 褒められて照れてるところも可愛いぞ、ミネコ。

 今お前のカブは急上昇だ。


「ははは、すごいことになってますね、セツさん」

「よ、グレイン。お前らも無事でよかったな」


 グレインに、ブラッド、そしてイデスとリリー。

 全員無事だ。

 ん? そういやあの二人は――――――――。




「冬真よ、お前、覚悟はできているか?」


 デザストルは、横たわった冬真に向けて聞く。


「うん。自分のやったことは理解してる。でも、セツに振られた今、もう何もかもどうでもよくなっちゃった。罪を償えって言うならいくらでも償うよ。死ぬのは……ちょっと無理だけど」

「例え殺せても、死なせてなどやらんさ。お前は一生我が国の牢で反省していろ、自分がどれほどの悪事を働いてきたかを、しっかりと見直せ」

「……」


 そこまで言って、デザストルは下がる。

 続いて、リヴァイアが前に出て、冬真に声をかけた。


「私はあなたに恨みはそこまでないけど、一つ聞きたいことがあるわ。答えなさい」

「……いいよ」

「あの〈封印の石〉、どこで手に入れたの?」


 リヴァイアは、冬真の捨てた宝石を指して言う。


「ああ、冒険者がどこかの遺跡で見つけたってことで、骨董品屋に売られていたところを買ったんだ。ほんとに冒険者が見つけてきたのかってのは謎だけど、とりあえず僕の視点ではそんな感じだったよ。その後解析して、歴史を調べて、創造神にたどり着いたんだ」

「なるほど……ね」


 リヴァイアは、頭を悩ませる。

 あまりにも都合のいい偶然。

 そもそも、あの〈封印の石〉は、人間では行けないところに存在するもの。

 一体誰が、そんなところからそれを持ち出してきたのか――――――――――――。


「とりあえず、あの宝石を回収しないと――――――――――って、あれ?」


 リヴァイアは、今までそこにあったはずの〈封印の石〉がなくなっていることに気づく。

 

「どうした?」


 そんな彼女の様子が気になり、横にデザストルが並んだ。


 その瞬間である。


「……あれ?」

「が……あ……」


 リヴァイアとデザストルの腹部から、ナイフが飛び出す。

 彼女たちの後ろには、土まみれのガイアが立っていた。


「き、貴様……!」

「あは……あははは! 冬真様! ボクやったよ!」

「いづっ」


 刺されたナイフが引き抜かれる。

 二つのナイフから滴る血が、いつの間にかガイアの足元にある〈封印の石〉に垂らされた。


「えへへ、これで冬真様の願いが叶うね!」

「やめろ……ガイア。僕たちは負けたんだ……」

「私の命、大事に使ってね!」

「やめなさい……ガイアッ!」


 冬真とリヴァイアの必死の声も届かず、ガイアは、自分の首にナイフを押し当てた。


「これで……復活だね、私たちの絶望(希望)が!」


 ガイアの首から、血が吹き出す。

 笑顔のまま倒れた彼女の血は、バシャバシャと〈封印の石〉に振りかかる。

 すると、〈封印の石〉に異変が起こった。


「だ、だめ……創造神が……復活する!」


〈封印の石〉が浮かび上がり、地面に落ちた血を一滴残らず吸い込んでいく。

 やがて、その身が真っ赤になるまで吸い込みきった石は、眩い光を放ち始めた。

 異変に気づき、駆け寄ってきたセツたちの目も眩ませるほどの発光。

 やがて光が収まると、そこにいたのは――――――――――


「ふむ……我の天敵である「人」の匂いがするのぉ」


 女性の身体を持つ、「人」ではない「何か」であった。


これにて三章終了です。

諸事情により、猛スピードでの更新になりましたが、そのせいもあり少し雑な面が見られるかと思います。そういう点は指摘してくださればすぐに直しますので、よろしくお願い致します。

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