表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第三章 戦争編
73/127

72 聖刻の大砲

本日二話目です。(深夜の入れたら三話目)

ご注意ください。

 僕とセツが、この世界に呼ばれたときの話――――――――――。


「セツ、君はなんでそんなに冷静なの?」

「ふっ! ふっ! ……あ? 何だよいきなり」


 セツは一心不乱に木剣を振っていた。

 迷いのないその眼は、そのときの僕からすると不気味ですらあった。


「だって……急にこんな訳の分からない世界に来ちゃったのに……君はもう順応している。何をするべきか、もう分かってるように見えるよ」

「うーん……そうだなぁ」


 剣を振るう手は止めずに、セツは言う。


「何をするべきか……とりあえず強くなんないといけないんじゃねぇの? 魔物やら魔王やらいる世界らしいし。お前も死にたくはねぇだろ?」

「……僕は」


 言い難かった。

 自分が日本にいたとき、死にたいと思っていたなんて。


「よく分かんねぇけど、お前が死にたくねぇって言うなら、俺がお前を守ってやるよ」

「え?」

「同郷の仲間だしな。何かの縁だ、仲良くしようぜ」

「……いいの?」


 そんなことを言ってくれる人に、初めて出会った。

 灰色の髪に赤い目、こんな見た目をしているせいで、僕は誰からも優しい言葉をかけてもらったことがない。

 親すらも、僕を気味悪がって近づかない。

 だから、初めてだった。

 心がポカポカと温まっていくのを感じる。


「当たり前だろ、冬真」


 彼は、優しい笑顔で僕の名前を呼んでくれた。




「ユキくん……」

「おう、あいつは倒せたみたいだな、夕陽」


 見たところ夕陽には怪我もないみたいだ。

 それより――――――――。


「ずいぶん派手にやられたみたいだな、お前ら」


 倒れている連中に向けて言う。

 

「はは……面目ない」

「つえぇよこいつ……」


 グレインとロアが苦笑いしている。

 重傷者がほとんどだが、今にも死んじまうようなやつはいないな。

 ん? 何だよ、イデスたちも生きてたのか。

 とりあえずは不安要素がなくなったな。


「夕陽、リヴァイア。お前らはまだ動けるだろ、倒れてる連中の治療を頼む」

「わ、分かったわ……」

「うん……」


 二人が動き出したのを見て、俺は改めて冬真に向き合う。


「よくもまあこいつらを傷めつけてくれたなぁ……えぇ? 冬真よぉ」

「……やっぱり、前みたいに優しく名前は呼んでくれないんだね」

「当たり前だ。お前、自分が何をしたか分かってんだろうな?」


 何人もの人を傷つけた。

 その思いを踏みにじった。

 何より、俺の仲間を傷つけた。


「分かっているよ。でも、これはすべて君のためなんだ!」

「……」

「愛し合う僕と君が、一緒にいないのはおかしい! でも君は悪くない。すべては君を惑わしている魔族と獣人、そして一部の人間が悪いんだ! 君を救い出すには、必要な犠牲だよ」


 ……相変わらず狂ってやがる。

 

「って言うか……あの茶髪の女の子、セツのことをユキくんって呼んだよね?」

「あ? それがどうしたって――――――――――――」

「何慣れ慣れしく……僕のセツのことをアダ名で呼んでるわけ!?」


 冬真がエルカを治療中の夕陽に手を向ける。

 夕陽はそれに気づくが、もう遅い。


「消えろ!」


 特大の炎の玉が放たれる。

 夕陽は確か炎の魔法が得意だったはずだ。

 あいつならダメージは少ないだろうが、同じ場所にいるエルカは間違いなく死ぬ。


「させねぇよ」

 

 だから俺は炎と夕陽たちの間に割り込み、黒丸でその炎を両断した。


「っ! 邪魔しないでよ!」

「余計なことをしたのはお前だ。お前は俺とだけ戦ってりゃいいんだよ」


 ぶった切った炎は空中で霧散して消える。

 とりあえず二人に被害はないようだ。


「このままここで戦えば、巻き込んじまうな……おい、冬真、場所を変えるぞ」

「……なんでわざわざそっちの有利になるようにしないといけないの?」

「言うこと聞けねぇなら……無理やりだ」


 俺は地を蹴り、一瞬で距離を詰める。

 そのまま黒丸を振り下ろし、冬真の胴体を狙った。


「くっ!」


 冬真は黒ローブの中に隠していた片手剣を抜き、それを受け止めた。

 俺の加減のない一撃で、地面が陥没する。


「やっぱりパワーは俺の方が上だな」

「相変わらずの……っ、馬鹿力……!」

「さっさと場所変えるぞ! オラァ!」


 黒丸を受け止めるのに夢中になっているこいつを、足で蹴り上げる。

 隙を作った一撃で、冬真は天高く打ち上げられた。

 俺もその後を追い、飛び上がる。


「「〈空歩(エアウォーク)〉」」


 俺たちは同時に空中に着地した。

 地面が遥か下に見える。


「ほんと……容赦ないね」

「容赦してもらえる立場じゃねぇだろ、お前」

「ま、そうだけど……ねッ! 〈聖なる槍(セイントランス)〉!」


 冬真は、手の上に極大の光る槍を作り出す。

 光魔法の中堅ほどの魔法だが、冬真が使えばその桁が数倍になる。


「君を僕だけのものにするには、一度倒す必要がありそうだ!」

「ちっくしょ……」


 俺は黒丸で槍を受け止める。

 光魔法で生み出された槍は、聖なる光を凝縮したエネルギーの塊。

 そう簡単に受け止められるものじゃない。


「うぎぎ……ラァ!」


 何とかそれを真上に弾く。

 真上に飛んで行った槍は、ある程度の高さまで飛んだ後、空中でエネルギーを撒き散らすように爆散した。


「……ウォーミングアップは済んだか?」

「そっちこそ」


 そう答えると、冬真は虚空に手を向ける。


「来い――――――――――〈切り開く剣(エクスカリバー)〉」


 空間が割れ、剣の柄が姿を現す。


「君と戦うには、これがないと話しにならないもんね」


 光真の聖剣とは違い、真っ黒な刃を持つ剣が、やつの手に握られる。

 初めは、光り輝く剣だったのにな……。


「君の剣が、使い勝手悪いことは知っている。悪いけど、セツがそれを抜く前に終わらせてもらうよ」

「やれるもんなら……やってみろよ!」


 俺は空中を蹴り、冬真に接近する。


「はぁぁぁぁ!」


 同じく冬真も空中を蹴り、俺に向かって急接近してきた。

 黒丸と聖剣がぶつかり合い、辺り一帯に衝撃波を撒き散らす。




「空が……割れた……」


 治療を終えたデザストルは、上空を見ながらつぶやいた。

 空で剣を打ち合う二人、その度に、空を覆っていた分厚い雨雲が消し飛んでいく。

 

「まったく……次元が違うわね」


 横に並んだリヴァイアが、呆れたように言う。

 この場にいる誰もが、彼らとの力の差を思い知らされた。


「ユキくん……」




「がっ……」

「パワーで俺に勝てるかよ!」


 真上から黒丸を振り下ろす。

 冬真は聖剣を腕ごと弾かれガードが間に合わず、その肩に命中させることができた。

 真下に叩き落とされた冬真は、〈空歩〉で足場を作り、再び俺と同じ高さまで戻ってくる。


「やっぱり〈聖剣の鎧(ソードディフェンサ)〉があるとろくにダメージ入らねぇな」

「地味に痛いけどね!」

「おっと!」


 冬真の周りに無数の光の槍が現れる。

 最初に撃たれたものと同じ規模のものが、パット見で40本ほど。


「逃げ場はないよ!」


 一斉に放たれたそれを、黒丸で斬り、時に受け止め、逸らす。

 しかし――――――――――。

 

「くっ……そ!」


 数が多すぎる。

 ガードをすり抜けた槍が、俺の腹部へと到達した。


「それ、着弾」


 そうしてできた隙に、ここぞとばかりに他の槍が襲い来る。

 槍は次々と俺に着弾し、爆音を上げた。


「っ……いってぇなァ!」


 俺は腕を一振りし、爆風をなぎ払う。

 視界が晴れたが、そこはもう冬真はいなかった。


「上だよ、セツ――――――――――〈飛剣・絶〉!」

「なっ!」


 冬真は俺の真上にいた。

 やつが聖剣を一振りすると、切れ味を極めた〈飛剣〉が放たれる。


(だめだ……黒丸で防げば黒丸が両断されちまう……!)


 俺はとっさに魔法袋に手をつっこみ、いつだったか手に入れた業物の剣を取り出し、受け止める。

 当然のごとく、魔力で強化したとは言え、その剣は簡単に切断され、俺の身すら切れ込みを入れた。


「いっつ……」


 肩からポタポタと血を流しながら、俺は空中で体勢を立て直す。

 聖剣持ちには、もう一つの能力、と言うか特性がある。

 それは、聖剣で聖剣持ちを攻撃したとき、〈聖剣の鎧(ソードディフェンサ)〉を無効化する特性。

 これがあるから、聖剣持ちは聖剣持ちでなければ実質倒せないのだ。


「あれ? 腕が鈍ったんじゃないの?」

「はっ! ほざきやがれ!」

「っ!」


 俺は切断された剣を投げ捨て、改めて黒丸を握り直す。

 空中を蹴って冬真に接近すると、俺は迷わず黒丸を振り下ろした。


「〈ツバメ返し〉!」

「その程度……!」


 振り下ろし、斬り上げる技である〈ツバメ返し〉を放つが、ことごとく聖剣で防がれてしまう。

 しかし、斬り上げる際に、冬真の剣を真上に弾くことに成功した。


「しまった!」

「〈連打(ラッシュ)〉!」


 俺は上に黒丸を放り投げ、渾身の拳を何十発と冬真に叩き込んだ。

聖剣の鎧(ソードディフェンサ)〉は打撃への体勢が微妙に低い。

 聖剣が軽々しく抜けない以上、こうして攻めていくしかない。

 

「がっ……く……痛いじゃないか!」


 タコ殴りにされた冬真はしびれを切らし、至近距離から魔法を放とうとする。

 それを察知した俺はすばやく下がり、落ちてきた黒丸をキャッチした。

 冬真も少しだけ移動し、落ちてきた聖剣を掴む。


「へっ、いい顔になったじゃないか」

「つぅ……酷いなぁボコボコにするなんて」


 冬真の顔は少しだけ腫れていた。

 すぐに自然治癒能力で治ったが、ダメージを与えたことは確かなはず。

 対して俺の肩の傷も治っているから、今のところは互角か。


「仕方ない……僕はちんたら戦うのは好きじゃないし……少しペースアップしよっか」

「あ?」


 冬真が、俺に聖剣を向ける。

 魔力が聖剣に注がれ始めており、黒いオーラを撒き散らしていた。


「〈形態変化(フォームチェンジ)・聖刻の大砲〉――――――――――――」

「……なんだよ、それ」


 聖剣、〈切り開く剣(エクスカリバー)〉の形が変わる。

 まず巨大に、そして長く。

 冬真はその巨大な銃(・・・・)を脇に抱えるようにして持ち、銃口を俺に向けてきた。


「〈聖剣〉の新たな可能性だよ、セツ。さて、第二ステージだ!」


 横の持ち手につけられた引き金が、引かれる――――――――――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ