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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第三章 戦争編
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65 魂に刻まれたこと

お騒がせしました、投稿を再開します。

『節、私はお前に伝えなきゃいけないことがある』


 真っ白い空間に、まだ幼い男の子と、その母親らしききれいな女がいた。

 俺は浮いていて、二人を上から見下ろしている。

 ここはどこなのだろうか?

 二人を見ていると、不思議と頭が痛む。

 まるで、無理やり記憶を掘り起こされているような――――――――。

 

 ――――――そうか、これは……俺が、セツでも、雪でもなかった時の記憶。

 

 大食いに食わせてしまった、俺の前世。


『と言っても、今伝えたところで忘れちまうだろうからな……そうだ、魂に刻んどいてやるよ』

 

 母親は、幼い俺の胸に手を置いて話しだした。


『……お前は私の息子だ。そのせいで、これからいくつもの苦難にぶつかると思う。選択が必要なときもあるだろうし、命を奪わなきゃいけないときも来るだろう。でも、お前は自分のしたいことをしろ』


 母親の声が染みこんでくる。

 自分を造っている(・・・・・)パーツを、ひとつひとつ確認させられているような気がした。


『ぶっ飛ばしたいやつをぶっ飛ばして、守りたいやつを守れ。お前はそれができるくらい強くなる』


 気持ちのいいくらいの悪い笑顔で、母親は言った。


『けど、その中でお前は一つの約束を守らないといけない』


 そう言いながら、もう片方の手を頭に置く。

 母親はゆっくりと幼い俺の頭を撫でながら、続けた。


『お前は、「人」の命を一つ、死ぬまでに一つだけ奪って背負わないといけない。そうしないと、お前は――――――になれない』


 一瞬ノイズが走り、少し聞き取れない部分があった。

 一番重要なところじゃないのか……そこ。


『殺さないのもダメだし、殺しすぎもダメだ。殺さなきゃ、お前の魂は死とともに消滅する。逆に殺しすぎれば、お前はただの罪人に成り下がり、私が引導を渡してやらないといけなくなる。そんなの嫌だろ?』

 

 幼い俺には何のことか分からない。

 当たり前だ、今の俺にも分からないんだから。


「ま、お前は約束を破って二人殺しちゃったんだがなー」

「ッ!?」


 気づくと、俺の意識は幼い俺の中に入り込んでいた。

 女のしゃべり方も、過去のものではなくなる。

 こいつは、今の俺と話している。

 幼い俺ではなく、今、「人」を二人殺してしまった俺と……。


「二人の命を奪ってしまったお前は、私の手で死に導かないといけない。なぜそうしなければいけないのか……分かんねぇだろ?」

「……当たり前だ」

「分かんなくていい、どうせお前はここでお陀仏だ」


 女の細い腕が、俺の喉元に伸びてくる。

 少し冷たいくらいの手だった。

 この幼い身体では、その手を払いのける力がない。

 だとしても、俺はもがかないし、逃げない。

 こいつ……この人が終わりと言ったのなら、俺はもう終わりなのだ。


「……あんま痛くしねぇでくれ、お袋。こんな歳でも、痛みは嫌いだ」

「ふん……思い出してもねぇくせに……よく母親なんて呼べるな」

「記憶にはなくても、あんたが母親だってことはすぐ分かるさ。記憶にはなくても、あんたの腹から生まれたことも、あんたのくれた言葉も、あんたの教えも、全部俺の魂に刻まれている。あんたが刻んだんだろ?」


 魂なんて、正直あるかどうかなんて曖昧だ。

 それでも、俺は前世の記憶を失ったのにもかかわらず、覚えている。

 この人を、母親だと覚えている。

 心よりも、記憶よりも更に深いところで。


「何で忘れてたんだろうな……俺が人を殺さないのは、お袋が原因だったのか」

「……お前にこの話をしたのは、この身体のときだったからな。記憶で覚えていないのも無理はない。それでも魂が覚えてるはずだがな」

 

 俺の胸に触れているお袋の手を見る。

 そうか……こうして刻み込んでくれてたんだな。


「……俺は……あんたの言いつけを破っちまったんだな。じゃあやっぱり……消されちまっても仕方ねぇか……」


 正直、ことの大きさはまだ理解できていない。

 なぜ俺だけ二人殺してはいけなかったのか、肝心な部分が聞き取れなかったせいで、納得ができていなかった。

 でも、逆らう気になれない。 

 多分、逆らったところで、お袋には勝てない。

 この人は、俺たちと同じ所に立っていない。


「やるなら一思いに頼む……できるだろ?」

「……っはは! やっぱりお前、私の息子だ」


 お袋は俺から手を離し、あぐらをかいて膝を叩いて笑う。

 ものすごく男勝りで、それでいて親らしい。


「お前を消すなんていつだってできらぁ。ちょっと昔話しようぜ。お前が失った記憶を取り戻させることはできないが、私……いや、家族とどんな生活をしてたかを話してやる」

「……ああ、頼む」


 どうせここで終わりなら、最後に自分のことを聞きたい。

 俺が「人」だったときの話を。

 

 ああ……もうどうでもいい。

 後のことも、あいつらのことも……全部――――――――――――


 ――――――――――――――どうでもいい。



「〈飛槍〉!」


 サイガの突き出した槍から、魔力の刺突が飛び出す。

 シロネコは身を捻ってそれをかわすと、その懐に入り込んだ。

 

(なっ……やっぱ速ぇ)


 がら空きの胴に向かって振られる爪を、サイガは無理やり引き戻した槍で防ぐ。

 甲高い音とともに両者弾かれ、お互いに距離を取った。


「ふしゅー………」


 ゆっくりと止めていた息を吐いたシロネコは、ゆっくりと神経を研ぎ澄ましていく。

 わずかにシロネコの方が強いことをサイガも理解しているため、迂闊には跳びかかってこない。

 それは彼女にとってありがたいことであり、少しずつだが、ミネコの方に意識を向けることができていた。


(まあ心配する必要もないです……)


 彼女の視界の隅で、ミネコがクロイヌの腹を蹴り飛ばしている姿が写った。




「がはっ……」

「はぁ!」


 強力な飛び蹴りを腹に受け、クロイヌが怯んだところを、追撃の上段蹴りがとらえる。

 ミネコの驚くべきところは、飛び蹴りをしたせいで浮いているにも関わらず、身体の捻りと筋力だけで追撃を叩き込めるところだ。

 そして無様に地を転がったクロイヌと違い、ミネコはしっかりと着地する。


「調子に乗るな……猫風情が! 〈炎術・砲弾〉!」

「そういうあなたは犬じゃないですか……」


 クロイヌは身体を起こし、巨大な炎弾を撃ちだす。

 真っ直ぐと自分に飛んで来るそれを、ミネコは冷静に眺め、直ぐ様見極めた。


「〈重脚〉!」


 魔力のこもった回し蹴りが、炎弾をとらえる。

 真横からの衝撃を受け、炎弾は彼女に当たらず横に逸れて飛んで行った。


「……砕けないですか……私ももっと修行が必要だなぁ……」

「くっ……」


 クロイヌは内心焦っていた。

 奥の手はあるとは言え、この状況でかなり押されてしまっているため、このまま押し切られてしまう可能性があるからだ。

 だからと言って奥の手を使ってしまい、仮にも仕留めきれなかったら、彼女は確実に負ける。

 少なくとも、ミネコの動きを止めなければ話にならない。


(癪ですが……サイガに協力を要請して――――――――――)

「うおぉぉぉ!?」

「……何してるんですか?」


 突然、彼女の横にサイガが落ちてきた。

 息を切らしており、全身に細かい傷を負っていることから、相当攻められていたことが分かる。


「ッチ……全身引っかき傷だらけだちくしょう……」

「情けないですね」

「お前こそ、ずいぶんと焦ってるじゃねぇか?」

「ッ! ……うるさいですよ」


 サイガが落ちてきた後、少し遅れてシロネコがミネコの横に着地する。

 当然だが、彼とは違い無傷である。


「何で飛んで来るんですか、姉さん……」

「空中戦です。それより、あのサイガとか言う男、なかなかやるです」

「……みたいですね」


 姉と戦い軽傷で済んでいる時点で、サイガの実力は認められている。 

 そしてもちろんシロネコも、ミネコと戦ってまだ倒れていないクロイヌの強さは認めていた。


「……長期戦はまずいかもです」

「え?」

「やつら、絶対何か隠してるです。せめて……クロイヌだけでも仕留めたいです」

「……分かりました」


 二人は眼光鋭くクロイヌを睨む。

 

「あれ、やるです」

「はい」


 静かに構える二人の猫少女の殺気は、常人であれば気絶してしまうほどの迫力があった。

 クロイヌとサイガも思わず一歩下がってしまうほどに……。


「作戦名、にゃんにゃんかくれんぼ――――――――です」



 

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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