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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第三章 戦争編
63/127

62 限界突破

新年一発目です!

今年もよろしくお願いします!

「させない……! 〈地面爆弾(グランドボム)〉!」


 膝をついていたグレインと、剣を振り下ろそうとしていたエルカとの間の地面が、突然爆ぜる。

 小さな爆発ではあったが、意表を突くには十分であり、エルカは剣を振り下ろすのをやめ後ろへ飛び退った。

 

「ちぇ、決められると思ったんだけどな」

「そう簡単には行かない」


 ティアがグレインにかけよる。

 うめき声を上げる彼の傷に回復魔法をかけるべく、手を傷に押し付けた。


「ごめん、私回復魔法あんまり得意じゃないから……」

「うぅ……」


 とんでもない数の魔法を使いこなす彼女であったが、唯一苦手なことが、この回復魔法である。

 そもそも適性がなかったことが問題なのだが、それでも初級魔法ならコントロールでき、それを多量の魔力で回復量の底上げを図っているのだ。

 それでも、初級は初級。

 かなり深いグレインの傷を完治させるまでは行かず、表面を再生させ血が流れ出るのを防ぐ程度にとどまった。


「しばらく動いちゃダメだから」

「ティア……一人で三人を相手にするのは……」

「大丈夫、いざとなればアレ(・・)を使う」

「……無茶だけはしないで……」


 グレインをその場に座らせ、ティアは珍しく真剣な顔で三人の前に立つ。


「んー? 一人でやる気? 死んじゃってもしらないよ?」

「……よく喋る人」

「ちっ……ガキのくせにムカつくなぁ!」

 

 お前もだろというツッコミをグッと噛み締めたティアは、その瞳に宿した力、魔眼を発動させる。

 目に見えない魔力の流れやその形を見ることの出来るその眼は、エルカにかけられた「何か」をはっきりと捉えた。


「糸……糸が身体の中に入り込んでいる……」

「っ……魔眼持ちだったんだ……」


 エルカの肩に出来た傷から、不可視の糸がその身体の中に入り込んでいた。

 その糸は彼女の右半身を占領しており、一部が脳に到達している。

 そして、糸の先はメルアーの指先につながっていた。

 アリゼの身体にも同じく糸が入っているが、エルカと違い、全身に張り巡らされてしまっている。

 脳にもかなり糸が入り込んでいた。


「〈操縦魔法(マリオネットマジック)〉は……身体を操る魔法」

「……当たり。私のユニーク魔法は人の身体を直接操れる。傷口さえ作れば、そこに糸を侵入させるだけで神経を乗っ取り、私の意思どおりに動かせる魔法だよ」

「傷口がないとダメ?」

「分かってるくせに。そうだよ、傷口が出来て、尚且つそこから糸を入れないといけない」


 糸を入れる――――――そこからティアは考察する。

 その糸が触手のような動きが出来るとしたら、後ろで座っているグレインも操られてしまう。

 しかしその気配はない。

 そのことから糸を飛ばすことは出来ないと推測できる。

 だとすれば


(アリゼのレイピア……やっぱり糸が絡みついている)

 

 あのレイピアで身体を突かれれば、そこから糸が進入する算段だったのだろう。

 もちろんその糸も、彼女の指に繋がっていた。

 

「まーそっちもバレちゃうよね。こうやって剣に糸を絡めておけば、傷をつけた瞬間に身体に糸を入れられるでしょ? まあ傷口がもうちょっと大きければ、もっと深くまで侵入させられたんだけどね……でもコレ思いついた時は天才だって思ったよ! 」

「確かに……悪知恵の天才」

「褒めないでよー……そして、こうすればもっといい感じだね」


 メルアーがエルカの剣に触れる。

 するすると糸が剣に絡みついていき、あっという間にある意味で毒の塗られた剣が完成した。


「さて、この二人を相手にあの人を守りながら戦えるかなぁ?」


 メルアーは残虐な笑みを浮かべ、首を傾げる。

 横には掠れば終わりの剣を構える二人の仲間。

 脳に糸が入り込んでいることで意識すらないため、説得は不可能。

 後ろには手負いのグレイン。

 絶体絶命に近い状況である。

 少なくとも、ティアはこの状況の打開策がまだ思いついていない。

 策を考えるどころか、ぼーっとただ一点を見つめるだけである。


「何? 現実逃避でもしてるの? まあ安心しなって、すぐこの二人みたいにしていあげる!」


 二人が剣を振りかぶり、ティア目掛けて飛びかかる。

 ティアは動かない。

 ただ一言、言葉を零した。


「おひさ」

「――――――――ああ、久方振りだな」

「ッ!? 後ろ!?」


 メルアーが、自身の後ろからした声に振り返る。

 しかしどうしようもない。

 すでに赤いナイフが、彼女の胸の中心を貫いているのだから。


「不意打ち、さすが」

「隙だらけだったのでついな」

「がふっ……そんな……いつの間に……」


 メルアーの口から血が溢れだす。

 操られていた二人は、その場で動きを止め、崩れ落ちる。

 赤いナイフの持ち主であるブラッドは、それを彼女の身体から引き抜いた。

 傷口からも血が溢れだし、メルアーは前のめりに倒れる。


「後ろからブラッドが来てることに気づいたから……私はずっと気配を悟らせないように、微弱の魔力を放出し続けた。あなたは人形の操作に夢中だったみたいだし、見事に惑わせたよ」

「ごぷっ……そ、そんな……」

 

 ブラッドはナイフについた血を払い、しまう。

 それを見たティアは疑問を抱いた。


「? 止めは刺さないの?」

「いや……もうこの女は助からん。魔臓も壊した。あとは死を待つばかりだ」


 魔臓――――――魔力を練るための重要な身体機能である。

 人間は胸元に一個、魔族は全身の至る所に、獣人は心臓と同化していると言われており、魔族が魔法を得意とするのは、その魔臓が多いからと言われている。

 人によって差はあるようだが、メルアーの魔臓は一般的な胸元にあったようだ。

 そこを壊されてしまうと、魔力を上手く練れなくなり、誰かに治療してもららわない限りは魔法が使えない。

 この状況で魔臓を壊されてしまったメルアーは、もはや死んだと言っても過言ではないのだ。


「俺が止めを刺す必要もない。何か恨みでもあるならばお前が刺したらどうだ?」

「……別にいい。それより二人の身体を治さないと」


 ティアはエルカとアリゼに近寄り、その様態を確かめる。

 ブラッドもメルアーを一瞥したあと、二人の近くへと寄った。


「がぁ……ごほっ……死ねるか……」


 だが、苦しげな声で思わず足を止めた。

 ティアも反応し、メルアーを見る。

 血だまりの中で横たわっている彼女は、息も絶え絶えになりつつ、立ち上がろうとしていた。

 力を込めるたびに胸元から血が溢れだし、身体を死へ近づけていく。

 

 彼女には負けられない事情があった。

 主である、冬真のために。

 彼の手駒として、最後まで側にいるために。

 冬真の命令なら何でもした。

 洗脳した村に潜り込み、したくもない愛想笑いをし続けた。

 村のためと、冒険者の真似事もした。

 殺したくてたまらないあの男、セツに、頭を下げたりもした。

 彼がそうしろと言ったから、全ては主の命令だったから。

 今だってそうだ。

 殺せと彼が言ったから、メルアーは負けられない。

 刺し違えてでも、全員の命を持っていかなければならないのだ。


「っはは……全員……殺してやる……ッ! がはっ……り、リミット……〈限界突破(リミットブレイク)〉!」


 狂気に満ちた声が、辺りに響いた。




「おいおいその程度かよ! カゲロウさんよぉ!」

「くっ……」


 こうなることは分かっていただろう。

 気づけばすでに俺は攻勢に出ており、カゲロウを追い詰めていた。

 こいつもよくもまあこの程度の実力で挑んてきもんだ。

 黒丸を叩きつけるたびに吹き飛ぶやつを見て思う。

 

「なぁ……そろそろ諦めたらどうだ? 帰って冬真呼んで来いよ、これ以上お前とやり合うのはめんどくせぇだけだ」

「ふっ……ははは! そうだな、諦めるぞ。このままお前ほどの強敵と戦うのは愚の骨頂だった! お前には俺の全力を相手にしてもらうとしよう!」


 なんだ? 

 急に笑い出しやがって……何を企んでやがる?

 黒い剣を構えたカゲロウは、目を閉じ、魔力を練り始めた。

 一体何をする気だってんだ……ちょっと見てみたい気も――――――――――――


「お前にも、闇をくれてやる――――――――――〈限界突破(リミットブレイク)〉!」

「……はぁ!?」


 待て待て待て待て!?

 〈限界突破(リミットブレイク)〉なんざ使えんのか!?

 想定外だ……! 

 俺はしっかり黒丸を構え、警戒の姿勢を取る。

 〈限界突破(リミットブレイク)〉――――――――人間にのみ許された、己の限界をぶち壊す最終兵器。

 自身の魔臓から全身に伸びる魔力回路を、通常の何倍にも大きく開くことで、多くの魔力を一気に扱えるようになる。

 するといつもなら使えないようなとんでもない魔法が、一時的ではあるものの使えるようになるのだ。

 もちろん、無理やり魔力回路を開くせいで身体への負担も尋常じゃないが、その分得られる力は絶大……本来血もにじむような努力を何年と続け、ようやく手に入る技のはずだが――――――――こいつは本当に何者なんだ?

 

「この姿になったのは今日二回目だ……本来こんなに見せる姿ではないが、お前と戦うには命を削ることすら辞さん!」

 

 カゲロウの身体から魔力が吹き出し、やつを覆っていく。

 次第に黒く形を持ち始めた魔力は、漆黒の鎧となり、完成した。


「〈影騎士団の鎧(スキア・アルミュール)〉――――――――二回戦と行こうか、化物」

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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