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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第三章 戦争編
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56 俺と遊べよ

「そんで夕陽、状況説明しろ」


 そろそろ本題に入るべく、夕陽に命令を出す。

 何だかんだ命令を出すのが楽しくなってきた俺がいる。

 

「はい! えっとね――――――」


 ふむふむ、要するに、夕陽が俺と敵対しないために魔族側につこうとしたら、こいつらクラスメイトたちが追ってきたと。


「あ! そういえばエルカさんたちも来てるよ」

「ああ、やっぱり来てくれてたか」


 さすがあの三人だ、俺の望んでいることをしてくれる。


「今はあっちで戦ってるみたい。でもさっき変な魔力を持った敵が先生たちの所へ――――――」

「あいつらなら大丈夫だ。絶対に負けねぇよ」


 魔王デザストルとも獣王レグルスとも対等に戦える三人組だ、どんなやつが相手でも負けやしない。

 何より、俺とずっと一緒に戦ってたんだ、勝つに決まってる。


「――――――そっか……うん、ユキくんが信じてるなら、私も信じる」

「そんで俺は――――――あいつらをぶっ飛ばせばいいんだな?」

「……おいおいネクラユキよぉ」


 いまだ放心状態の光真や次郎、ついでに美月を押しのけ、青筋を浮かべて出てきたのは遠藤だった。

 相変わらず俺のことが気に食わないらしい。


「久々だな、遠藤。元気そうで何よりだ」

「うるせぇネクラ野郎……! テメェ夕陽さんから離れやがれ!」

「別に……俺からくっつきに行ってるわけでもねぇけど……」


 夕陽が俺の腕にしがみついてんだろ、どう見ても。

 って匂い嗅ぐのやめろ。


「……っ! うるせぇ! テメェが夕陽さんを操ってんだろ!? あんだけ優しかった夕陽さんが俺たちを裏切るわけがねぇ! そうだ光真! あいつが全部わりぃんだよ! そうに決まってる!」

「……須崎が?」


 光真が遠藤の言葉に耳を傾ける。

 俺からすれば見当違いもいいとこだが、こいつらからすれば、城を追い出されてこうして戻ってきたと思えば、突然敵対状態で登場した俺が怪しく見えるのも当然か。

 遠藤の意見は完全に私情が挟まってるが。


「でもお前、俺が夕陽にデートに誘われてるところ見てるじゃん」

「え? ……嘘……」

「あ、あれだってなぁ! テメェが彼女を操ってそうさせたんだろ! 俺が見てることをいいことによ! そうに違いねぇ!」

 

 聞く耳持たず……まあ分かってたが。

 まあ聞いてもらったところでどうしようもない、最初から分かってたことだ。

 それと夕陽、顔を赤くしてる場合じゃねぇぞ。


「確かに……日本にいた時……ユウは須崎くんと仲良くしてたし、おかしいと思ってた」

「須崎みたいな不気味なやつと一緒にいたのは、さすがの俺でもどうかと思ったぜ」

「……俺の誘いは断って須崎とは出かけたのも、操られてたからか……」


 と、美月、次郎、光真の発言。

 てか日本にいた時の話まで持ち出されるか、すごい言われようだな俺。

 否定ができないのもどうかと思うが。


「だろ!? 全部あいつが操ってたんだよ! そうとしか思えねぇ!」


 遠藤が喚くと、他のクラスメイトが徐々に、俺に警戒心を見せ始める。

 とんでもない嫌われようだ、悪いことは何一つしてねぇってのに……もう少しファッションに気を使うべきだっただろうか? 

 それならネクラとは言われなかっただろう。

 後の祭りとはこのことだな。


「ネクラユキ! さっさと夕陽さんを開放しやがれ!」

「……だ、そうだが?」

「――――――みんな」


 夕陽が俺を庇うように前に出る。

 うっへぇ……怒ってるよ。


「ちょっと黙ってよ」

『っ!?』


 突如、夕陽の体から再びオレンジ色の炎が吹き出す。

 瞬く間に大きく膨れ上がった炎は、まるで津波のように光真たちに襲いかかった。

 炎の厚さは大したことないが、その範囲、即効性から、やつらは不意を突かれている。

 このままでは確実に全員くらうが、そこは腐っても聖剣持ち、光真が前に飛び出し、指示を出す。

 

「全員俺の後ろで一箇所に固まれ!」


 その指示に反応できた連中が、反応できなかった連中を担ぎ、すばやく光真の後ろに固まる。

 中々統率も取れてるし、思ったより成長してんな。


「斬り開け――――――〈聖なる剣(エクスカリバー)〉!」


 光真が聖剣を振るうと、光の粒子を振りまきながら斬撃が飛び出し、炎の波を切り裂いた。

 そうすることで、やつらは真っ二つになった炎の間に入り込み、回避に成功する。

 あの一撃、エフェクトは派手だが、要は一種の〈飛剣〉だ。

 まだ未熟で鋭さがなく、叩き切るような一撃……これじゃグレインの見惚れるような一閃の足元にも及ばない。

 

「ユウ! 何するんだ!」

「それ以上、ユキくんを悪く言わないで――――――次は本気で殺す」

「うっ……」


 光真が息を詰まらせる。 

 夕陽の放つ殺気がそうさせた。

 おどろいた、俺が出発する前は俺の殺気にビビっていたこいつが、今は自分で殺気を放っている。

 とんでもない迫力、とんでもない成長だ。

 やっぱり後でエルカを褒めてやろう、めちゃくちゃ優しくしてやるお仕置き(・・・・)は控えて、思いっきり尻を叩いてやることにする。 

 だがその前に。


「夕陽、ちょっと交代」

「え!?」


 俺は夕陽を退かす。

 こいつらへ俺が思うことはあんまりない。

 何をされたところで痛くも痒くもないからだ。

 でも、今は少しだけイラついている。

 初めてだ、こいつらに怒りを覚えるなんて。

 こいつらは夕陽のことを見ちゃいない。

 本当に夕陽の友達なら、こいつが操られていないことくらい分かっていいはずだ。

 夕陽と友達であることを、仲間であることを、一種のステータスとしか見ていない。

 どうしようもなくイライラする。

 何より――――――光真が夕陽をデートに誘ったというのが気に食わない。


「お前ら、ちょっと俺と遊んでけ」


 一発は殴る。

 ついでに遠藤たちに、今までやられてきた分を返してやるよ。


「てめぇ……! そんなでけぇ剣があるからって俺たちに勝てるってか?」

「お前ら相手じゃ負ける方が難しいな」

「なっ!? ……何調子乗ってやがんだ! あぁ!?」


 安い挑発に乗る遠藤。

 相変わらずこいつは小者だが、対して光真は冷静だ、面白くない。


「……須崎、今ユウを開放して謝れば許してやれる」

「ほざけ、エセ勇者が。ごめんってあやまんのはテメェのほうだ」

「命知らずの狂人になったか……っ!」


 各々がついに武器を手にとった。

 30人の敵意が俺にぶつかる。

 納得してないのは夕陽(こいつ)だけ。


「な、何で私にやらせてくれないの!?」

「俺がやりてぇからだよ」

「でもブラッドは私に任せたって!」

「あいつのお願いなんて無しだ。俺の命令には逆らわねぇんだろ?」

「うっ……」


 痛いところを突かれ、夕陽は黙る。

 だが俺は見逃さない。

 その表情に、少しだけ安堵が混じっていたことを。


「……お前はあいつらと戦わなくていいんだよ」

「で、でも」

「でもじゃねぇ。俺は……お前のその情を忘れて欲しくないんだ」

「え……?」


 キョトンとする夕陽の頭を撫でる。

 少しでも、俺の言葉が伝わりやすいように。


「情け容赦なく戦う夕陽なんて、俺は見たかねぇよ。お前はいつも近くで元気に笑ってくれてりゃ、それでいい。辛いことは全部俺に押し付けちまえ。俺ならどんなことでも大丈夫だ」

「あ……」


 頭から手を離し、光真たちに黒丸を突きつける、

 一緒に笑いあった仲間を攻撃することが、辛くないわけがない。

 毎日のように遊んでいた仲間を、ましてや殺すなんて、まともな心で出来るはずがない。

 それが出来るのは、修羅となった者だけ。

 人の死に何も感じなくなった者だけだ。

 夕陽をそんなやつにしたくはない。

 ならば俺が戦おう。

 どんなやつが相手でも、殺さずに戦えるこの俺が――――――

 命を奪わないこと(・・・・・・)に全力を注げる、この俺が――――――


「そ、それでも――――――」

「それでも納得出来ねぇってなら……」


 まだ何か言いたげの夕陽に、新しい選択肢を提示してやる。

 今してやれることはこれくらいだ。


「アレとちょっと遊んでてくれ」

「アレ……?」


 俺たちのちょうど後方に、黒ローブを着た人影がひとつ。

 ただならぬ魔力を滲ませており、夕陽もすぐに敵だと気づいた。


「あなたがセツね、ようやく見つけたわ」

 

 近づいてきた黒ローブがフードを脱ぐと、下から整った女の顔が現れた。

 人間の女だ、身長は高めで、長い紫色の髪を腰近くまで垂らしている。


「あんたみてぇな美人さんが何の用だ? 遊びの誘いか?」

「もちろん、冬真様に仇なすあなたを殺すためよ」

「そうかい……」


 皮肉を真面目に返されてしまった……もっと大げさの方がよかっただろうか。

 

「私の名前はルーナ。別に覚える必要はないわ、どうせここで死ぬのだから」


 ルーナとやらが手を掲げる。

 おかしな魔力の流れだ、これは予想もしなかったものが来る――――――

 ――――――と、身構える前に。


「ちょっと場所変えよう」

「っ!?」


 夕陽がルーナの眼前へと迫っていた。

 次の瞬間、彼女の炎が爆ぜる。

 風魔法での高速移動からの、風と炎を混ぜた爆発攻撃か、あいつもほんとに強くなったな。

 それにしても、えらく素直に従ったな……もう少しゴネるかと思ったが。

 

「何よあんた……!」

「ユキくんの恋び――――――お、幼馴染だよ!」

「はぁ!?」


 ルーナが夕陽の爆発に押され、この場から離れていく。

 こんだけ爆発を起こす夕陽もすごいが、ギリギリでかわすルーナもいい身のこなしだ。

 さすがは黒ローブ、一筋縄ではいかないだろう。

 ……あえて夕陽の発言には触れない。


「さて……俺たちも始めるとするか」





  

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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