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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第一章 魔族大陸にて
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4  かつての友とお誘い

今日は二作投稿しております、先にそちらをご覧下さい

エルカに再開したその翌日、俺はその日の訓練をサボり、夕陽たちのいる別の訓練場へと足を運んでいた。

近くにあった建物の壁から様子を覗き見ると、そこでは俺のいた訓練場とはレベルの違う訓練が行われていた。


飛び交う魔法、風を斬る斬撃、音を置き去りにする拳


その場にいた四人は様々な方法で攻撃を繰り出している。

その相手は――――――


「ほらほら! もっと攻撃の間隔を狭く! これは四人のパーティ戦だよ! 息を合わせなきゃ僕に一撃すら入らないままだ!」


城の鎧を身につけた金髪の優男。10人が10人認めるほどのイケメンで、光真といい勝負。


「へぇ、五年で身のこなしが上がっているな、グレイン」


 勇者四人を相手取るのはかつてのお供、グレイン・アルモニー。

〈剣豪グレイン〉の異名を持つ実力のある剣士だ。五年前はまだあどけなさがある少年に近い風貌だったが、今は立派な青年だ。エルカに聞いたところファンクラブまであるらしい。イケメン氏ね


 グレインは勇者四人の攻撃を完璧に捌ききっている。最高級の魔力を持つ化物たち相手にこれは素直に感心した。

ワイルドイケメンの次郎は拳に魔力をまとわせ、体術で近接戦

ツインテールの美月は短剣を持ち、素早い身のこなしで次郎と同じく接近戦

クラスのヒーロー光真は金色に輝く剣を持ち、中距離から攻撃魔法や斬撃を飛ばす


聖剣持ちか、やっぱり勇者だな


 聖剣は勇者の称号を持つものならば誰でも使えるスキルのようなもので、その剣の強さは勇者次第。

光真の剣は勇者業界(?)で最も一般的な〈エクスカリバー型〉。効果は退魔、光の斬撃、身体強化、魔力強化という万能タイプ。いかにも勇者って感じだ。


……俺も勇者の称号は持っているから、一応聖剣が使える


――――――あれを聖剣と呼んでいいのなら……だが


遠い目をしていると、グレインの訓練場から轟音が上がる。


一瞬視界に見えたのは巨大な火の玉で、軽く二階建て一軒家ほどの大きさはあった。

それを放ったのは幼馴染の夕陽

彼女は遠距離からの完全魔術師タイプのようだ。あれだけの魔法を撃って息一つきらさないのは相当な実力のある証拠、知らぬ間にかなり成長していたんだな。


だがそれでもグレインに傷をつけることは敵わない。


 爆炎を切り裂き現れたのは、焦げ目一つないグレインの姿。

大方空間でも斬った(・・・)んだろうが、こうも簡単に防がれてしまえばさすがの四人も苦笑いを浮かべている。


「今の攻撃は悪くなかったよ、いい調子だ。今日はここまでにしてゆっくり休んでくれ」


 グレインが笑顔を浮かべて言う。

それを聞いた四人は崩れ落ちるように脱力した。

かなり集中力を使って戦っていたみたいだな、体の外傷はなさそうだが、顔が心底辛そうだ。


「だぁーグレイン先生やっぱ強いぜ……」

「短剣が掠りもしないよぅ……」


 当たり前だ、まだ力を持って一週間程度のお前らがどうにかできる相手じゃない。

……まあ一週間でこれは規格外なんだがな、それ以上にグレインが規格外ってことだ


「ユウ、大丈夫か?」

「うん、平気!光真くんは?」

「ユウが大丈夫ならいい、俺も平気だよ」


 二人して声を掛け合い、城のメイドが持ってきた水を飲んでいる。

光真の視線は水を飲む夕陽に釘付けだ。なるほど、夕陽さんモテますなぁ


おっと人の恋路より自分の用を優先しなければ


俺は四人からグレインが距離を置いたところを見計らって――――――全力ダッシュ



「何っ!? ぐおぉ!?」





「あれ?グレイン先生は?」

「トイレでも行ったんじゃん?」





 俺は一瞬にしてグレインを攫い、離れた位置にあるおそらく倉庫であろう建物の裏へと担いで連れて行った。


「君は能力なしの子じゃないか!! どこにこんな力が……どういうつもりだ!!」


俺が倉庫の裏へと降ろしてやると、グレインはすぐさま剣を抜き警戒心を露にする。


ふむ、面白い


俺は手でちょいちょいと手招きしてやる。


「――――――来いよ」

「ぐっ……うおぉぉぉ!!」


 少し殺気をとばしてやると、冷や汗を浮かべたグレインが剣を振りかぶり突撃してきた。

こうして少し殺気を当ててやると、殺らなきゃ殺られるという状況を作り出してやれる。それに乗せられれば、今のグレインのように思考をさせずに戦闘に持ち込める。

これは一時期世間体に気をつけろと注意された俺が、俺側から強制的に正当防衛の状況を作り出すために編み出した技術だ。


鋭い剣線を躱し、俺は冷静に観察する。


やっぱり相当腕を上げている。気を抜けば叩き切られそうだ。


まあそうはならないが


俺はタイミングを見計らってグレインの剣を素手で受け止める。もちろん魔力強化は施してある


「なっ!?」


驚愕するグレインをよそに、俺は足を振りかぶった。


「そろそろ思い出させてやろう……俺の恐怖を……」


俺は傍から見ても邪悪と言われそうな笑みを浮かべ、


――――――思いっきりグレインの股間を蹴り上げた


「っ~~~~~~~~~~~~!!!!」


あそこを押さえつけ倒れこむイケメン、ふむ、いいものを見た。いい気味だ


「こ……この技は……お、〈男殺し〉……これを使うのは……」

「お! 思いだしたか?俺の蹴りを」

「ま、まさか……セツさ……ん」


がくっ


「オオォォォい!? 気絶すんじゃねぇ!?」


俺は痛みのあまり気を失ったグレインを揺すり、起こそうとする。そんなに効いたか俺の蹴り……








「玉は?」

「無事です」

「悪かったな、試すような真似して」

「いえ、おかげであなたがセツさんだとすぐに受け入れられましたから」


こいつが気絶して数分後、ようやく目を覚まし、俺たちは建物の壁に寄りかかり話をしていた。


「まさかあなたが勇者召喚で現れてくれるとは……」

「俺もびっくりだ。向こうで帰還方法を探してはいたんだがな…自力じゃ見つからなかった。今回召喚されたのはほんと偶然だぜ」

「ならば偶然に感謝しましょう……僕たちもセツさんを再召喚するため城で方法を調べてはいましたが……」

「ああ、エルカから聞いたぜ」

「おお! すでにエルカに会っているのですね」


こいつらも結構必死に俺を連れ戻そうとしていてくれたみたいだな。その気持ちは素直に嬉しい。


「ティアにはもうお会いに?」

「いや、まだだ」

「ならば今日にでも会いに行ってあげてください。彼女は今もあなたを再召喚するための研究を続けています」

「そうか……じゃあちゃんと帰ってきたことを伝えてやんないとな」

「ええ、喜びますよ! きっと!」


 そうか、そこまで言われたら今日中に顔を出しに行こう。ほんとは明日にしようと思ってたんだがな


「じゃあそろそろ行くか――――――あ、そうだ。俺多分近いうちにここ出るから」

「そうですか」

「? 驚かないな」

「まあセツさんのことですから、そう言うんだろうなーと」


なんだ俺はそんなにわかりやすいか?


「そうか……まあそんなわけで大陸渡ってあいつらに顔出しに行ってくる」

「おお! それはみなさん喜ぶでしょう! そして戦争を止めさせるとでも言うのでしょう?」

「そこまでバレてるか……」


わかりやすいですから――――――そうグレインに言われてしまった。


「ま、いいや。んじゃ行くわ、会えてよかったぜグレイン」

「こちらこそ……よくお戻りになってくれました。素直にうれしいですよ、セツさん」

「おう、じゃあな。あ、後夕陽をよろしく頼む」

「? 夕陽さんをですか?」

「ああ。俺の向こうでの幼馴染なんだ。立場を利用するようだがあいつには目をかけてやってくれ、あいつに何かあったらお前また〈男殺し〉の刑だからな?」

「っ! ……肝に銘じておきます」


 俺は再び念を押して、グレインと別れる。

やっぱり久々の再会はいいものだ。今まで抑えていた気持ちとか性格が開放できる。


俺は最後の一人、ティアに会いにいくため、城へと戻ることにした。








 僕、グレイン・アルモニーは五年ぶりの再会を果たし、心が躍っていた。彼について行くと決めた身、セツさんがいなくなり心にポッカリと穴が空いていたのは確かだった。


その穴が埋まり、僕は久々の上機嫌で寝床のある宿舎へ戻る。


その途中、自分が訓練を任された勇者たち、次郎くん、美月さん、光真くんの三人が向こうから駆け寄ってきた。


「先生どこに言ってたんだよ!」

「探しちゃったじゃん!」


そう言うのは次郎くんと美月ちゃん。

僕は突然いなくなったことを思い出し、ちゃんと謝る


「ごめんね、突然友達が訪ねてきましてその相手をしていたんだ」


友人というのは何か違和感がありましたが、考えてみればそういう関係なんだと思います。


「それで何用かな?」

「俺たちもう少し訓練したいんです、少し付き合ってもらえませんか?」


 そう言った光真くんの眼は真剣だった。

今日は基礎を詰め込んだ末の実戦だったから午後を休みにしたんですが、この様子なら物足りなかったというところでしょう


「構わないよ――――――4あれ?夕陽さんは?」


僕は了承したところで、先ほどセツさんに目をかけろと言われた夕陽さんがいないことに気づく


「ああ、ユウなら用があるとかで城の方へ行ったぜ?」


次郎くんの言葉を聞く限りちゃんと断りを入れてから向かったようなので、僕は安心した。


「そうですか――――――それじゃあ、訓練の続きを始めましょうか」


僕は彼らの要望を叶えるために、訓練場へと再び足を運んだ。



――――――股間がまだちょっと痛い











「おいネクラユキ、てめぇ今日どこ行ってやがった」


城 へ戻ると、厄介なアホどもに捕まった。

これはマジでついてない


必死にため息を堪えると、遠藤は相変わらずの馴れ馴れしさで肩を組んでくる。


「今日はいつもみたいに甘いと思うなよ?舐めたような態度が二度とできないように、厳しくいくかんな?」


ニヤニヤしている遠藤……とその取り巻き


はいはいおつかれおつかれ――――――と必死にため息をこらえていると、


「ちょっと待って遠藤くん!!」


俺たちを静止させる声が響いた


 顔を声のした方に向けると、そこにいたのは花柱 夕陽。彼女はやっと会えたと呟きつつ、俺たちの方へ歩み寄ってくる。


「は、花柱さん!? お、俺になんの用かな?」


遠藤は夕陽の美貌にうろたえつつも、顔をだらしなく垂らし、気持ちわるい声で応答する。


「あ、ううん。私が用があるのはユキくん。だからちょっとユキくん貸して?」

「あ……うん」


バッサリと行かれた遠藤……さすがに哀れだった


「ありがと! じゃあユキくんちょっとお話いい?」

「ああ……」


遠 藤たちから俺を奪い取った夕陽は、俺の手を引いて彼らの元から離れる。後ろに視線をやると、遠藤たちの目が憎悪に染まっていた。すごいなー人間ってあんな目ができるんだー



彼らから十分距離を取ったあと、夕陽は俺から手を離し、急に胸に飛び込んできた


「やっほう! 久々のユキくんだ!」

「お、おい」


夕陽にぎゅーっと抱きしめられる。彼女の大きめの胸が俺の胸に当たり、形を変えている。うわっこれヤバス

さすがに問題を感じたため引き離そうとするが


「ちょっ少し離れて……」

「はぁ~久々のユキくんだぁ~」


そのまま脱力して体重を全部乗っけてきやがった! む、胸がァ!!


「私心配してたんだよ? ユキくん魔力ないって言ってたし……どうしてるかなって」

「まあ……なんとかやってるよ」

「……そうみたいだね、元気そうでよかったぁ……」


…すごい心配してくれてたみたいだな。ちょっと申し訳ない


「そうだユキくん! 今度お休みもらったら一緒に街に行かない?」

「街?」


 街といえばディスティニアの城下街のことだろう。かなり広いし、退屈しないくらい面白いものがある。

夕陽はこのお誘いをするために今日俺を訪ねてきたらしい。


「どうかな?」

「ああ、いいぜそれくらいなら」


 せっかくわざわざ誘いにきてくれたんだ、夕陽のために休日を使うくらいなら安いものだ。


「ほんと!? 絶対だよ!!」

「わかったわかった」

「やったー!」


 夕陽は俺から離れて万歳をする。温もりがなくなってちょっと残念とか微塵も思ってないぞ?ホントだぞ?


 そのあとは適当に世間話をして、近状報告をしあった。

話を聞く限り夕陽たちの訓練はやっぱり相当ハードなものらしい、グレインの訓練は効率がいいがかなりキツイからなぁ……


その後頃合を見計らって別れることにした。俺はこのあと用があるしな


「今日は会いにきてよかったよ! ユキくんエナジーも補給できたしね!」


なんだユキくんエナジーって


「困ったことがあったら絶対頼ってね!! お出かけの約束破らないでよ!!」

「オーケーオーケーわかったわかった」


じゃあねー! と走っていく彼女を見送る。


……さて、夕陽と街を回るまではこの国から出て行くわけにいかなくなってしまった……


こりゃ困ったぞ?




「……」


この時俺は気づいていた、

物陰に隠れ、俺に恨みの目を向ける遠藤に




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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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