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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第二章 獣人大陸にて
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48 戦地の脅威

グレインの口調を変更しました

 獣人大陸にて、セツと狼刃ルーガの戦いが始まる、数刻前のこと。

 人間大陸のディスティニア王国、その城の中にある、魔導博士ことティア・アムレートの研究所。

 そこには三人の人影があった。

 一つはこの部屋の主、ティア・アムレート。

 もう一つはエルカ・ヴェルソー。

 そしてグレイン・アルモニー。 

 三人は大きな魔法陣――――――正確に言えば、転移魔法陣の上に立っていた。


「ようやくこの堅苦しい城から出られますね……」

「冬真の魔力が完全に感知できた。これでこの城は用済み」

「二人共厳しいね。僕は結構愛着湧いてたりするんだけどな」


 そう、いよいよ冬真という存在が表舞台へ出てきたことで、彼らの目的である、冬真の生存確認は済んでしまったのだ。

 そうなった以上、この城を拠点として情報を集める必要はなくなった。

 つまり――――――彼らは自由に動けるようになるということ。


「私はセツ様がいればどこでも愛着が湧きますよ?」

「つまりここにはいないから愛着はないと……」

「そうなります」


 キリッとした顔で言い放ったエルカだったが、言葉の内容が内容なため、グレインは呆れてため息を吐いた。


「セツがいればどこでも楽しい。だから速くセツのところへ行こう」

「ティアも大概だね……でもその点は僕も同感かな」


 転移魔法陣が輝き始める。

 それは発動待機状態であり、今すぐにでもとべる(・・・)という合図でもあった。


「とりあえずは戦争に参加、殲滅対象を人間兵に定め、隙を見つけて夕陽さんの回収。忘れないでね?」

「分かってます。セツ様いるといいなぁ……」

「問題ない。セツがまだ来てなくても、来る前に終わらせるくらいの気でやる」


 グレインは女性陣の頼もしさに、思わず苦笑いを浮かべる。

 なぜ自分は男だというのに、こうも威厳がないのだろうかと考えてしまうのも、こうも女性が強いと仕方ないことだろう。


「じゃ……セツさんも僕たちを頼ってくれるだろうし……行きますか」


 今、三人の強者が戦地へと向かった。

 セツと彼らはテレパシーが使えるわけではない。

 それでも、長く連れ添った仲として、お互い何を望んでいるかが分かるくらいは、彼らは強く繋がっている。

 魔族大陸に、世界を揺るがすほどの戦力が揃いつつあった。



◇ ◇ ◇



「ふぅ……セツはやっぱり変わらないなぁ」

「顔見せは終わったか、主よ」

「うん、待たせたね、カゲロウ。みんな」


 大粒の雨が降る巨大な崖の上、そこには黒ローブを着た七人の男女が並んでいた。

 中心にいるのは冬真。

 さきほどセツが見た思念体と、同じ姿をしている。


「やっぱりあの獣人は役に立たなかったのね……冬真様に恥をかかせて……」

「まあ落ち着いてルーナ。僕は大して気にしてないから」

「でも!」

「君たちは僕の役に立ってくれるんでしょ?」


 そう問いかけると、黒ローブは全員深く頷く。

 中には、頼られたことで笑みをこぼす者もいる。

 彼らはそれほど強く、それこそ死ねと言われれば死ぬほど、冬真のことを愛し、忠誠を誓っているのだ。


「さて……それじゃ行こうか……世界から拒絶された者たちよ」


 冬真の号令に従い、今、六人の死神が崖下の戦地に解き放たれた。

 人間の兵士と魔族の兵士が拮抗した戦いを見せる中、魔族の兵士たちの断末魔が響き始める。

 まさにこの時、長く均衡を保っていた戦場が、ようやく傾きを見せ始めた。


「さあ! 蹂躙してくれ! 僕の可愛いおもちゃたち!」


 狂った勇者の笑い声が、戦場に響き渡る。

 

 この日は雨が降っていた――――――


 ◇ ◇ ◇

 

「つ、強い!! だれか止めろ! こいつを止めろ!!」

「ダメです! 前衛崩壊!!」

「クソがぁぁ! 命に代えてもここで殺せぇ!!」


 私は――――――なぜここにいる?


「貴様! その肌と角は魔族だろ! なぜ我々を攻撃する!?」

「この同族殺しがギャッ――――――」


 私は――――――なぜ同族を刺した?


「止むを得ん! 取り囲み仕留め――――――」

「兵長!!」


 やかましい男に脳天にレイピアを突き入れる。

 その周囲にいた魔族の兵士を魔法で焼き払い、レイピアを連続で繰り出し息の根を止めていく。


「あ、赤髪の女だ! レイピアを持った赤髪の女!! 肩に傷がある!! 最優先で仕留めろ! 魔王様の下へ行かせるな!!」

「と、止まりません! ギャァ!!」


 私は――――――一体何をしているんだ?


 意識がぼやける。  

 さっきから何を考えてもまとまらない。

 ここはどこなんだ。

 誰と何のために戦っている。

 なぜ私の腕はレイピアを突き出し続ける。

 また一人死んだ。

 やめろ。

 助けてくれ。

 やめろ。


 ヤメロ、ヤメロ、ヤメロ、ヤメロ。


 ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ――――――ッ!


 誰か私を――――――


「――――――トメテクレ」


 


 突如戦地を荒らし始めた、赤い髪の魔族の女。

 同族の血にまみれ、全身を真っ赤に染め上げた女は、一人で戦地に佇む。

 彼女の周りにあるのは屍、屍、屍――――――

 

 表情はなく、虚ろな表情で佇む彼女は、赤い涙を流す。

 雨で体の血は流れ落ち、その涙もすぐに消える。

 あるいは――――――その目から流れたのは涙ではなかったのかもしれない。

 彼女は、もうそんな感情を抱くことができないよう、作り替えられたのだから。

 それでも彼女は泣き叫ぶ。

 心の――――――どこか深く、暗く、狭いところで。


「いた!! あの女だ!」

「同族殺しめ!! ここで死ねぇ!!」

「あの横のやつはなんだ!?」


 再び獲物がやってきた。

 彼女の体は自然と動く。

 それを、それらを殺すために。


 彼女の横には、いつの間にか兵士たちが並んでいた。

 その身は彼女の倍、無骨な装甲を身に付け、いくつもの魔法陣が組み込まれた兵士。

 〈魔導兵〉――――――後に世界に伝わる、戦争兵器の名前である。


「――――――イコウ、ラーメル」


 女は呟いた。

 それに呼応するように、魔導兵は動き出す。

 

 黒いローブの死神が戦場に現れた頃、戦地の片隅で、別の脅威が動き始めた――――――


 

 

ひとまず第二章獣人大陸編は終了です。

駆け足で進みましたがいかがでしたでしょうか?

序盤はかなり迷走しているので、しばらくしたら修正するつもりです。

次章は戦争編ですね。

セツと冬真の決着は、果たしてつくのでしょうか――――――

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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