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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第二章 獣人大陸にて
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47 再会、そして期待

本日二話投稿しております。先に46話をお読みください。

「ふぅ……終わったか」

「みたい……ですね」

 

 頭を失ったルーガは動かない。

 〈呪術感染〉の元を潰せたため、これ以上は被害が広がることはないだろう。

 直に全員動けるようになるはずだ。

 念のため、光魔法で浄化した方がいいが、それはあとでレグルスに言っておこう。


「まさかルーガさんがこんな風になってしまうなんて……何があったんですか?」

「こいつは……利用されたんだ。極悪非道のあの野郎に――――――」

『おっと、極悪非道はちょっと酷いんじゃないかな?』

「!?」


 思わず。

 そう、反射的に。

 俺はミネコを背後に回し、かばっていた。

 こいつを近づけてはいけない。

 この声の主に近づけてはいけない。


『そんなにその子が大切? ねぇ――――――セツ』

「……久しぶりだな、クソ野郎」


 いつの間にか立っていた。

 ルーガの屍の上に立っていた。

 灰色の髪に赤い目、気味が悪いほどに白い肌。

 魔族の肌色とは違い、その肌からは違和感しか感じない。

 黒ローブどもと同じ服を羽織っているが、フードは脱いでおり、その顔が鮮明に分かる。

 五年前と変わらない――――――少女と言われれば信じてしまいそうな顔。

 それは紛れもなくこいつが本人だということを確定付けるものであり、どうしようもなく覆すことのできない現実だった。


「どうしてここにいやがる……ッ! 冬真ァ!!」

『やだなぁ、そんなに怒鳴らないで? 数年ぶりの再会じゃないか』


 その男、神代 冬真は、五年前と変わらない姿で、今、ここに立っていた。


『――――――とは言っても、実際僕の体はここにはないんだ。今すぐにでも僕を抱きしめたいって気持ちは、すごいセツから伝わって来るよ……でもごめんね? ほんとの再会はもう少し先なんだ。それまで頑張って我慢してて?』

「ふざけんなど畜生が!」


 思わず黒丸をひと振り。

 確実に真っ二つに出来るはずなのに、その刀身はなんの手応えもなくやつの体をすり抜けた。


『だから実体じゃないんだって。この死体を座標にして、僕の思念体を送ってるだけ』

「チッ……人をおちょくりやがって」

『僕なりの君への愛情表現の一つさ』


 相変わらず身の毛のよだつことを言いやがる。 

 こいつはいつも掴みどころのない笑みを浮かべながら、俺に淀み一つ無い、純粋に熱のこもった視線を投げかけてきていた。

 それは五年経った今も変わらない。

 

「この声……! 私に呪いをかけた人と同じ……!」

『やあやあ久しぶりだね、ミネコ。よくもまあ姉妹共々裏切ってくれたよ。せっかく獣人なのに仲間に入れてやろうって思ってたのにさ』

「嘘……ッ! 私と姉さんをあれだけ苦しめて!」

『君たちがなかなか反抗的な目を直さないんだから仕方ないじゃないか。僕だってあんまり手荒なことはしたくなかったんだよ? それに僕に協力し続けてくれれば、開放してあげるって言ったじゃん』


 嘘だ。

 俺は冬真が一瞬斜め上を見たのを確認した。

 これはこいつが嘘をつくときの癖。

 死闘を繰り広げた俺だからこそ知ってる……こいつの唯一と言っていい分かりやすい部分だ。


『ま、いいよ。セツ側につくって言うなら始末するだけだし。セツの近くにいていいのは僕だけなんだ。ごめんねセツ……すぐにそんなメス猫を消して僕がとなりにいてあげるから』

「ッ!?」

「やかましい、誰がやらせるかよ」


 後ろにいるミネコを、抱え込むように抱きしめる。 

 こいつも、シロネコも、ロアも、他の誰であっても消させるわけにはいかない。

 すでに立派な俺の大切なものだ。 


「せ、セツさん……」

『………………羨ましいなぁ……羨ましい、うん、羨ましいよミネコ。ねぇどうしてだい? セツ。なんで僕は抱きしめてくれない? もっと大切に扱ってくれてもいいんじゃないかな? 僕はそんな女より君に尽くせるよ? 君が望めば身の回りの世話は全部やってあげる。君が望めば夜の世話だって喜んでやるよ! それでもダメ? やっぱりこの体がダメなの? 性別なんて関係ないよ!! そこに愛があればなんだっていいじゃないか! ほら、ねぇセツ。僕のもとへ来てよ。僕が君を幸せにしてあげる。君をたぶらかす魔族も、獣人も全部滅ぼしてあげるから……僕と二人で、二人っきりで暮らそ? 誰も来ない静かなところで――――――』

「そういうところがダメなんだよヤンデレ野郎」


 冬真の言葉を遮り、片手で黒丸を突きつける。

 それ以上聞くことを、体が拒否していた。


「お前がこれ以上俺の仲間に手を出すようなら、俺はお前をこの手で殺す。一度殺したんだ、二度殺したところで大して変わんねぇだろ」


 どうやって生き返ったのかは知らないが、俺が殺し損ねていたならもう一度しっかりと殺さないといけない。

 一度神代 冬真という人物の命を背負うことになったんだ。

 最後まで背負い切るのが俺の役目だろう。

 

「今まで、てめぇの命を背負うだけで精一杯だったが、生きてるってんなら話は別だ。もう一度……もう一度てめぇの命を背負い直してやる」

『……やっぱり一筋縄では分かってくれないんだね。いいよ、君が望むなら……やろうか。僕は今魔族大陸にいる。君も知っての通り、絶賛戦争中だ。来るなら早く来た方がいいよ? 直に僕の部下たちも加わるからね』

 

 部下とはおそらく黒ローブどものことだろう。

 やつらの実力はよく知っている。

 だからこそ、こいつに構ってないで、さっさと行きたいところだ。

 

「知ってるっつうの。ちゃっちゃと行くから大人しく待っとけ」

『ふふふ……うん、待ってるよ。今回こそは……君を手に入れてみせる』


 そう言い残し、冬真の姿が薄れ始める。

 完全に姿を消すまで、やつは不敵な笑みを浮かべ続けていた。

 相変わらず余裕ヅラしやがって……ムカつく野郎だ。


「せ、セツさん……そのぉ……」

「ん? あ、わりぃ」

「い、いえ……」


 そういえばミネコを抱きしめていたのを忘れていた。

 離してやると、顔を赤くしてパタパタと手で扇ぎ始める。

 その姿が少し微笑ましくて、何となく怒りが収まり、冷静になれた気がした。


「ありがとな、ミネコ。お前のおかげで少しは冷静でいられた」

「こ、こちらこそ……ちょっと嬉しかった……です」


 ううむ……赤い顔のまま俯く姿がかなりそそる。

 やっぱり冬真に消させるわけにはいかないな。

 こいつも、誰であっても、あいつにくれてやることはできない。


「二人共大丈夫か!?」

「大丈夫です?」

「ロアにシロネコ……お前らこそ大丈夫かよ」


 観客席から下りてきた二人は、少し顔色が悪いものの、すでに普通に動けるようになったようだ。


「もうだいぶいいよ。それにしてもさっきの……」

「ああ、冬真の野郎だ」

「やっぱり……」


 ロアの顔が憎々しげな表情に変わる。

 こいつもあいつの恐怖を知っているやつだ。

 少し体が震えているのは、仕方がないことだろう。


「あれは……私に命令してた人間と同じ声です」

「うん……そうみたいだよ、姉さん」


 この二人にも思うところはあるだろう。

 今まで散々脅され、利用されていたみたいだからな。


「――――――これはかなり大変なことになったね」

「レグルス……お前も平気か?」

「結構前には動けるようになってたから大丈夫。あいつの話も全部聞いたよ」


 余裕そうに歩いているし、その辺りはさすがと言ったところか。

 念のため全員に光魔法をかけてやり、完全にその呪いを浄化してやる。

 

「ルーガはなんというか……俺がこんな戦いを提案しなければ……」

「いや――――――どっちみちだろう」


 呪いを植えつけられた以上、冬真から逃れることは容易ではない。

 いずれ何の前触れもなく暴走させられ、こうして姿を変えられて利用されていたはずだ。

 ロアを愛してしまった時点で、あいつからすれば絶好の駒だったんだろう。

 愛をも利用する、それがあいつの残酷なところだ。


「彼の埋葬は俺がやろう。それでお前たちは……」

「魔族大陸に行く。今すぐにでも」


 行ってやつを止める。

 そんでもって、さっさとこの戦争も終わらせてやるんだ。

 

「分かった。それなら転移魔法陣の準備をしよう。そう時間はかからないはずだけど、しばらく待っていてほしい」

「分かった」


 転移できれば、海を渡るよりはよっぽど速い。

 これなら黒ローブどもが暴れだす前に行ける気がする。

 それにしても心配事が多い。

 戦争に参加させられているはずの夕陽、一足速く戦地に向かったリヴァイア、第一に狙われるはずのデザストル。

 頼むから無事であってほしい。


(あいつらは……もう行ってたりするんだろうな)


 その心配を少しは緩和してくれるやつらがいる。

 俺の予想が――――――希望が正しければ、あいつらはすでに魔族大陸に向かってくれているはずだ。


「頼むぜ……三人とも」 



 

 

次回は第二章最終話です。

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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