46 粉砕
短めなので、本日は二話分投稿します。
〈呪術感染〉の感染源になってしまった者は、術をかけた本人が解除するか、本体の生命活動を停止させるしか止める方法はない。
だがおそらく、こいつには二つの呪術がかけられているのだろう。
一つは身体能力を強化し、暴走させるもの。
これがやつの肩にあったタトゥーだろう。
もう一つがこの〈呪術感染〉。
こうなると厄介なこと極まりない。
殺すにも再生能力が高すぎて一筋縄では行かないし、半端な力じゃ逆にこっちがやられる。
俺なら一撃で――――――いや……
「チッ……! ミネコ! 俺がやつの動きを止める! だから……やつの頭を潰してくれ」
「え!? わ、分かりました!」
俺の滅茶苦茶な要求に、ミネコは驚きながらも承諾してくれる。
どんなに再生能力があっても、頭がなくなればさすがに生きていけない。
おそらくそこに、呪いの源があるんだろう。
実際、冬真が初めて暴走させた人間は、頭を粉々にすることで止まった。
それならば……ミネコで十分だろう。
「行くぞ!」
「はい!」
「ガァァァァ!!」
体を倒して、前のめりにルーガに突っ込む。
目と鼻の先まで迫ったところで、その豪腕が俺に向かって突き出された。
「しゃらくせぇ!」
近すぎて上手く扱えていない腕を、見切って肘部分から斬り上げる。
斬り飛ばされ、高く舞った腕は地面に落ちたが、その腕もすぐに再生を始めた。
だが簡単にはさせない。
「〈ツバメ返し〉――――――ッ!」
俺にしては珍しく、狙いすました純粋な剣術。
斜めから黒丸を下まで振り下ろし、ルーガの腕と太ももを斬り飛ばす。
「ッ! オラァ!」
次に、振り下ろしきった剣を今度は膝を使って跳ね上がるように斬り上げた。
V字に斬られたルーガは両腕両足を失い、支えがなくなったためうつ伏せに倒れこむ。
「やれ!」
「はいッ! 〈重脚〉!」
倒れこみ、再生が完了するまでの時間。
ミネコはそこにタイミングを合わせ、頭めがけてかかと落としを叩き込んだ。
〈重脚〉は足に魔力を込めて叩き込むだけという技。
魔力があるものなら大抵は扱える初歩技だ。
それでもミネコの力なら、ルーガの頭を潰すくらいの威力が――――――
「!? つぅ……」
「おい! どうした!?」
かかとを叩き込んだミネコの顔が苦痛に染まる。
逆にルーガは無傷で、痛みに悶える声すら出さない。
「ウガ……アァァァァ!!」
「!!」
「あぶねぇ!!」
四肢を再生させたルーガが立ち上がる。
その際に振り回された腕がミネコを捉えかけ、俺はもう一度黒丸で腕を斬り飛ばしながら、彼女を回収してその場を離れた。
「足をやったのか?」
「はい……あの体硬すぎます……」
抱えていたミネコを下ろし、その足に回復魔法をかけてやる。
痛めた足はすぐに治ったが、こいつの〈重脚〉を耐えるってどういう強度してやがるんだ……。
道中、魔物に襲われることもあり、ミネコの戦いっぷりも見た。
その際の〈重脚〉は、S級の魔物を軽く粉砕する威力はあったはずだ。
それを耐えるとは、こいつは本格的に獣王に匹敵しているのかもしれない。
「〈重脚〉以上の技はあるか?」
「はい……でもあの頭を粉砕するには少しタメが必要になります。あと動きが止まっていないと、確実にはちょっと……」
タメと束縛か――――――それなら。
「あの魔法が使えんな……あんまり使ったことねぇから不安だが」
そもそも魔法を使って戦わねぇからな、俺。
「ガァァ!!」
ルーガはかわされたことが気に入らないのか、さらに激高して太い腕をうまく使ってこっちへ駆け出す。
タイミングが合うといいが……。
「大地よ、母なる生の原点よ、我に仇なす者を捕らえたまえ――――――〈地手拘束〉!」
「ガッ!?」
慣れていない魔法なため、完全詠唱で発動させた。
タイミングは幸いなことにぴったりで、大地から生えた土の腕がやつの足に絡みつき、動きが鈍ったところをさらに伸びた腕が絡みついていく。
体の自由を奪われていくルーガはもがくが、その無駄に発達した腕のせいで、上手いこと土の腕を振りほどけない。
次第に腕にさえ絡みつき始めた土の手たちは、俺の魔力に呼応してその強度を最大にする。
「ガ……アアァ……」
体に強く食い込み、完全に身動きがとれなくなったルーガは、苦しいのか最後の抵抗を見せたあと、うめき声をあげた。
「完全に捕らえた……ッ! ミネコ!」
「はい! 〈猫脚〉……ッ!」
後ろでクラウチングスタートの構えを取っていたミネコの足が、猫の足へとその見た目を変える。
〈部分獣化〉の一種だろう。
精密な力のコントロールで、体の一部分だけを獣に変える技。
ミネコの獣化は、当然猫。
そして猫の足は――――――
「はぁ!!」
自分の身長の五倍以上跳べるほどに強靭らしい。
「ギャッ――――――」
助走をつけ、身動き取れないルーガの目の前で跳ね上がったミネコは、その膝をやつの顔面へと叩き込んだ。
すべての力を余すことなく伝えられた頭は、何かが砕ける音とともに爆散。
血肉をまき散らしながら、そこに一つの首なし像を完成させた。




