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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第二章 獣人大陸にて
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44 決着?

 

 獣人の国であるレグダムの街。

 その中心地にあるのは、戦いを好むこいつらが、定期的に力を試す場として用意された施設。

 俺の中にある知識で言えば、それはコロッセオと呼ばれるものと似ている。


『やれー! ルーガ!』

『人間なんて八つ裂きにしてやれ!』


 そんなコロッセオのど真ん中に立つ俺には、数々の罵倒が投げかけられていた。


「おいおい……あの獅子野郎……めちゃくちゃ大事になってんじゃねぇか」


 大勢の獣人が観客席を埋め尽くし、俺とこのルーガの戦いが始まるのを今か今かと待っている。

 初めは非公開でひっそりと終わらせるつもりだったのに、レグルスが、


『ついでだから観客として国民を招いて楽しませよう!』


 とかほざきやがった。

 何というか……かなりやりにくい。


「ふん、怖気づいたか人間。所詮は下等生物だな」

「あーうん……そうだな」

「……っち」


 そうやって煽られたところで、今までひたすらスルースキルを磨いた俺はビクともしない。

 というか、かなり萎えてるせいでめんどくさくなってきた。

 初めは本気で潰してやろうなんて考えてたが、ここまでアウェーな状況になると、もう一撃で終わらせた方がいいんじゃないだろうか。

 それくらいやれば、観客も静かになるはず。


「もういいや……さっさとやろう」

「吠え面かかせてやる……っ!」


 何か意気込んでいるが無視だ、無視無視。 

 俺たちはコロッセオの中心で向かい合い、お互いに構える。

 まあ俺は素手で両腕ダラーン状態だが……


「貴様……舐めているのか?」

「おう」

「……殺す」


 おっと、余計な怒りを買ってしまった。

 

(ま、口だけじゃなきゃいいんだが……)

「両者とも準備はいいね!!」


 コロッセオ中に、全ての元凶の声が響き渡る。

 その声に、一度観客席は静寂に包まれ、ルーガの顔が怒りの表情から鋭い戦士の顔に早変わりした。

 

「それじゃ、そろそろ我が愛娘のロア・ゴールドをかけた、男と男の大喧嘩を始めようか!」


 その言葉とともに響き渡る歓声。

 ううむ……うるさい。

 だがこいつらを黙らせるってのも、また一興か。


「両者よろしいかな? では――――――始め!」

「シッ!」

「!」


 おそらく審判の役割をしているであろう男が、俺たちの間で開始の合図を出す。

 それとほぼ同時に、ルーガの持つ鋭い腕の爪が、俺に迫っていた。


「おっと……まあまあ速いな」

「な……に……?」


 それでも大した速度ではない。

 その腕を掴み止めるくらい容易く出来た。


「こんなもんか?」

「くっ……そんなわけがないだろう……!」


 腕を引く気配がしたから手を離してやると、ルーガは地を蹴って俺から距離を取った。

 思ったよりは速いし、少しは楽しめるかもしれない。


「予定変更だ、ちょっとだけ遊んでやる」

「き……貴様ァァァァ!!」


 自分がすごく悪役っぽいことには気づいていたが、やってることは大してそれと変わりないし、思う存分悪役気分を味わう俺であった。



 ◇ ◇ ◇



「――――――思ったのとは違う形だけど、これはこれでいいや」


 コロッセオの中心で戦いを繰り広げる二人を見下ろしながら、ロアは横に座るシロネコとミネコに話しかけた。


「思ったのとは違うってどういうことですか……?」

「最初は……あたしをかけの対象とすることで、セツを煽ろうと思ったんだ。あいつが何だかんだあたしのことを大切に思ってくれているのは知ってたから、それで少しは本気出してくれるかなって。父ちゃんがこんな大事にしちゃったせいで萎えられちゃったけどね……でも思ったよりルーガが強くて、あいつも少しは戦う――――――と言うより遊ぶ気になったみたい」

「策士です」

「たはは……結果オーライなだけだって」


 見当違いに褒められ、ロアは苦笑いを浮かべる。

 彼女からすれば、自分の思惑通りに行くのが、当然のごとく一番理想だったのだ。


「それにしても……その……」

「かわいそうです」

「ね、姉さんはっきり言い過ぎ……」

「まあ……そりゃね」

 

 三人の意見は合致していた。

 全てはコロッセオの中心、そこで行われている到底戦いとは言えないものに対してである。


 すでに歓声は止み、観客は静かにそれを見ていた。



 ◇ ◇ ◇



「――――――もう終わりか?」

「はぁ……はぁ……」


 あれから三分も経っていないだろう。

 現在、ルーガは地に膝をついていた。


「ば、馬鹿な……こんなことありえない……」

「いい加減現実見ろって」


 確かにこいつは思ったより速かった。

 パワーもあったし、レグルスの右腕って言われているのも、少しは理解できる。

 だがあいつ、レグルスには指一本として届いていない。

 具体的に言えば、瞬殺されるほどの差があるはずだ。


 ……だからこそ解せないことがある。


「なあロア! お前ほんとにこんなやつに負けたのか!!」


 観客席にいたロアに問いかける。

 突然声をかけられたあいつは驚き、バツが悪そうに顔を逸らした。


「その……あの時は……メスの日だったんだよ……私のはちょっと重いから――――ってあんまり言わせんな!!」


 メスの日?

 メスってのは女ってことだよな――――――あぁ、なるほど。

 男には分からないあれだな。


「お前……体調不良の女に勝って喜んでたのかよ……」

「うるさい……っ!! 黙れ!!」

「おっと」


 こりゃ聞く耳持たずってか……

 立ち上がると同時にがむしゃらに振られた爪は、一つも俺に当たらず、虚空を切り裂いた。

 顔には青筋が浮かんでおり、相当我を失っていることが分かる。


「冒険者の心得、常に冷静であれ……ってお前は冒険者じゃないし意味ないか」

「うおぉぉぉぉぉ!! 〈飛爪(ひそう)〉!!」


 ルーガが腕を振り上げる。

 そこから放たれたのは四本の線。

 〈飛剣〉と同系統の技であり、ひと振りの数が多い分かわしずらい。


「その点威力は低いがな」

「なっ……」


 四本まとめて片腕でなぎ払ってやると、ルーガは怒りの表情を失い、代わりに驚愕の表情をはりつけた。

 一点集中で攻めてくるならともかく、当てること優先で威力を蔑ろにしたら、そもそも俺の体には傷一つつかない。

 だからってまともに受けてやんねぇけどな。


「そろそろ〈獣化〉でもしたらどうだ? お前らの本領はそっからだろ?」

「っ! ……後悔しても知らぬぞ!」


 そう言うキャラってすぐやられるのが定番なんだが……。

 四つん這いになったルーガは光に包まれ、その骨格を変形させていく。

 

(……予想通り……だな)

「グルルルル……」


 案の定と言うか何と言うか……ルーガの〈獣化〉は狼だ。

 その体格はシロネコの〈獣化〉よりも一回り小さい。

 確か〈獣化〉は力があればあるだけ、その体格にも差が出るって話だ。

 ということは単純に考えて、こいつはシロネコより弱いってことなんだが……。


「……死ね」


 さっきより数段速い速度で飛びかかる黒い狼。

 一回り小さいとは言っても、その大きさは俺の体を片足だけで押し倒せそうなほどだ。

 

「ずいぶんと物騒なこと言いやがる」

 

 眼前へ迫るルーガを潜るようにしてかわし、腹の下に入り込む。

 そしてそのまま持ち上げてやった。


「何!?」

「軽いっつうの……よい……しょぉぉぉぉ!!」


 担いだ状態から投げ捨ててやると、ルーガは何度か地面に背中を打ちつけ、コロッセオの壁に叩きつけられて止まる。


「がっ……はっ……そんな……一撃で……」

「どうだ? そろそろ負けを認めるか?」

「くっ……」


 こいつもすでに理解しているだろう、俺には勝てないってことが。

 この悔しそうな表情を見ていれば分かる。

 自分は本気を出していたのに、相手は武器すら取り出さない。

 それがどれだけプライドを折られかけただろう。

 まあ狙ってやったんだがな。


「終わりにしようぜ、降参しろ」

「……」


 ルーガは目を伏せ、うなだれた。

 これでようやく勝負は決したな――――――




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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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