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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第一章 魔族大陸にて
28/127

27 黒幕は誰だ

今回場面がコロコロ変わってわかりづらい……かも?

そして結局出発しきれないという。

「ほんとに……もう行ってしまうんですか?」

「私まだ村にいてほしいんだけど……」

「わりぃな、俺たちの旅にも目的があってよ」


 あれからしばらくして、俺とリヴァイアは壊れた村の門まで来ていた。この村を出発するためだ。なんでこんなに急に出発することにしたかと聞かれれば……早く獣人大陸のやつらに会いたくなったってところかな。

 それを伝えると、村人たちは俺たちに感謝をささげ、大量のハチミツ酒が入った樽をいくつも渡してくれた。それらは全部魔法袋の中に入っている。

 見送りはアリゼとアーメルだけだ。ラーメルはまだ意識を取り戻さないし、村人たちは壊れた家屋などの修復で忙しい。


「そうなんだ……

 私、セツさんたちに出会えてよかったよ。他の冒険者はみんな話を聞いた瞬間離れていっちゃったから……セツさんたちがもしあのギルドに来なかったら、この村は終わってたよ。だから、会えてよかった」

「――――――そっか」


 何百体ものリザードマンを相手に出来る冒険者なんてそうは出会えねぇからな……俺とアーメルが出会えたのは奇跡だ。あまりにも出来過ぎな話だが、ファンタジーなこの世界なら十分にかんがえられてしまう。まあ多少の出来すぎ感は否めないが……


「師匠……ラーメルのこと、本当にありがとうございました」

「あー……んなもん気にすんなって。それに弟子の恋人なんだ、助けて当然だろ?」

「こ、恋人!? いえ……そんなまだ……」

「ほう……まだ(・・)、ねぇ?」

「あ……」


 自分から墓穴を掘ったことに気づくと、アリゼは顔を真っ赤にして俯いてしまった。それを見た俺たちは笑う。今までの緊張感の反動なのか、特にアーメルは声を上げて笑っていた。


「さすがセツの弟子……面白いわ……ふふっ」

「ははっ!! ……っておい、それどういう意味だリヴァイア」

「はははっ……ちょっとツボに入って……」

「わ、笑いすぎだアーメル!!」

 

 今度は笑われ者になっている羞恥から、アリゼの顔はさらに赤みを帯びてしまう。

てかさらっと失礼なこと言われたよな、俺。


「わりぃわりぃ、ちょっとからかいすぎたな」

「本当ですよ……もう」

「ま、それはそうとして……ちゃんと気持ちくらい伝えておけよ? 今回はよかったが……次はわかんねぇぞ?」

「……はい」


 俺の問い掛けは、アリゼにラーメルが倒れている時の光景を思い出させているだろう。大切なやつが倒れるってのは……心にくるからな。それに多くの悔いが残っちまう。そうならないために、できることなら、今回の出来事を糧にアリゼにはもっと強くなってもらいたい。


「私……S級試験を受け直そうと思います。もっと精進して……この村を今度こそ守れるように」

「……そっか」


 アリゼの過去にあったことは聞いている。S級試験にトラウマがあることも。

だがコイツの目は強い光を持っている。これなら少しは安心だ。


「ははは……だめっ! 私お腹痛い……っ!」

「お前はほんとにいつまで笑ってるんだっ!」


 その横にいるアーメルはというと、さっきからずっと笑い続けていた。ここまで笑ってんと明日腹筋が筋肉痛だぞ? 大丈夫か?


「ツボが浅いやつだなぁ……んじゃ、そろそろ行くかね」

「そうね」


 アーメルとアリゼのやり取りを華麗にスルーし、俺たちは村の外へと歩き出す。見るも無残に抉れた地面に責任を感じ、軽い土魔法でとりあえず平坦にしながら壊れた門をくぐった。


「あ! 師匠たちが行ってしまったではないか!!」

「また来てね二人共!! あ……だめ、まだ笑い止まんない……んふっ、ふふふふ」

「いい加減に収まれ!! すみません師匠方!! またいつでもお越し下さい!」

「お……おう。またな」


 手を振って別れの言葉を言う。てかいつまで笑ってんだアーメルのやつ……


 しかし、今回は結構疑問が残っちまったな……あの謎の魔力溜りは結局なんだったんだか。それにドラゴンが突然現れたってのもぶっちゃけた話「出来すぎている」……


「浮かない顔ね? せっかくお目当てのお酒を貰えたってのに……」

「んー……まあな。ちょっと考えることがあってよ」

「?」

「いや、ちょっと今回の話が出来すぎのような気がしてよ……」


 特にあの竜が現れた辺りだ。今思い出すと、やつは本当に突然現れた。飛行速度に優れていたと言われればそれまでだが、いくらなんでも俺が巣に飛び込むまでに感知できなかったことはおかしい(・・・・)――――――


――――――あの竜の登場は、まるで召喚でもされたかのようだった。


「……召喚?」


 俺の中に一つの疑念が浮かび上がる。


「なあリヴァイア」

「なによ?」

「竜が現れた時、アーメルの顔色悪かったよな?」

「ええ。それが?」

「それ、いつからだ(・・・・・)?」


 俺がそう聞くと、リヴァイアは訝しげな視線を俺に向けてくる。コイツ何言ってんだみたいな顔しやがって……


「わかる範囲でいいから、いつからだ?」

「……ずっと見てたわけじゃないから曖昧だけど……山の向こうから竜の姿が現れた瞬間にはすごい顔色だったわ。それを見て私も竜に気づいたの」


 待て、山の向こうだと? あの時周りにあった山々はそれほど大きくなかった。つまり俺と大した距離があったわけじゃない。そして俺の感知が効かなくなったのは、あの魔力溜りを壊して外に出るまでの時間だけ。つまりその僅かな時間で、竜は俺たちの頭上を通り、村へと向かったわけだ。


 ……不可能だ。俺は気配察知にもかなり自信がある。いくらなんでも、竜の上位種が接近してくれば嫌でも気づく。だとすれば、


(竜が召喚されたものと考えてみるか……)


 あの竜が召喚されたとして……俺が気配を感知できない時にそれが行われたとしたら、召喚者は俺の存在を知り、尚且つ俺の感知が効かないタイミングを分かっていたってことになる。つまりは……あの魔力溜りとも繋がっている……少なくとも壊されたことがわかる程度には


 アーメルの顔色が悪かったのは竜の姿が見えた瞬間より前、そしてリヴァイアの方がそれより遅れて気づく……アーメルのランクはリヴァイアに遠く及ばない。例え気配察知に優れていたにしても……おかしな点だらけだ。さらに言えば……あれほどの竜を召喚するのにはかなりの魔力が必要になる。一気に大量の魔力を失って体力が落ちたのだとすれば、アーメルの顔色が悪くなったタイミングにも納得がいく。


 あいつが全ての元凶だったとしたら、大部分の辻褄が合ってしまう。


「……リヴァイア、ちょっと村に戻るぞ」

「え?」


 俺は踵を返して村へとUターンする。嫌な予感しかしない。呆気にとられていたリヴァイアも慌てて俺を追いかけてきたが、俺に追いつく寸前でその足が止まる。俺の足も……止まった。


「――――――なんだ、これは」




 ◇ ◇ ◇





「――――――あははは、だめ! まだ笑いが……」

「おいそろそろほんといい加減に――――――」


 アーメルとアリゼの二人は、村の家屋の修理を手伝うためにその場へ向かっていた。だが先程からずっとアーメルの笑いが止まらない。どことなくあざ笑うような笑いが、アリゼに怒りを覚えさせる。


「ごめんごめんって! だってしょうがないじゃん!――――――


――――――もうお兄ちゃんと恋人になんてなれないのに期待しちゃってさ」

「……は?」



「――――――〈範囲召喚(エリアサモン)〉、発動」



 突如、アリゼの視界が白に染まった。




 ◇ ◇ ◇




「これは……召喚魔法か?」


 俺は村を包み込む光のドーム(・・・・・)を見ながらそう呟いた。

村を囲うように存在する幾何学的な文字で書かれた魔法陣になんとなく見覚えがあり、俺は記憶の中でこの魔法の名称を紡ぎ出す。


「〈範囲魔法(エリアサモン)〉……魔法陣で囲んだ範囲にいる生物を別の場所へと移す魔法だったか?」

「私もそれは聞いたことがあるわ……でも……村まるごとなんて……」


 確かに範囲召喚は、魔法陣で囲った範囲内ならばいくらでも生物を転送できる。(ちなみに送ることと呼び出すことの魔法原理はほぼ同じで、そのため召喚魔法は転送を含んでいる。)

 しかし問題なのはその範囲だ。それが広ければ広いほど、術者の魔力を持っていく。半端な召喚魔法使いなら、せいぜい二畳くらいの範囲しか囲えない。


 それがどうだろう? この術者は村一つを包み込むほどの魔力量を持っている。しかも技量も相当だ。


「……光が収まったら、村を調べるぞ」

「ええ……そうね」


 ――――――どうせ誰もいないだろうが……


 そんなことを言いそうになり、俺は寸前でそれを止めた。




 ◇ ◇ ◇




 村を上から見下ろすことのできる切り立った崖の上、そこに村の少女であったはずのアーメルは立っていた。しかしその見た目は魔族ではなく、人間の姿である。

 彼女は愉快そうに誰もいない村を眺め、さきほどアリゼへ向けていた笑みと似た笑みを浮かべていた。


 その隣にすーっと、少々小柄な人影が現れた。


「――――――ご苦労だったね、メルアー(・・・・)

「あ! 冬真様!! ……って思念体かぁ」

 

 かつて異世界に召喚された勇者、冬真がそこにいた。しかしこれは映像のようなもので、その思念だけがこの場に存在しているということになる。


「ごめんね、直接褒めにいけなくて。でもほんと素晴らしい働きをしてくれたね」

「そんな……冬真様のためなら当然だよ」


 アーメル改め、メルアーは満面の笑みで彼と会話する。さながら恋する乙女のように……


「でもよく竜を召喚した後に範囲召喚ができたね? 魔力はすっからかんになっているはずじゃない?」

「えへへ……思いがけないプレゼントがあったからね」


 そう言って彼女は懐から試験管のようなものを取り出す。中身は空だ。


「なるほどね……最高級ポーション、効果は体力と魔力の大幅回復。セツが君にあげたものだったね」

「まさか敵から塩を送られるとは思わなかったよ。おかげで早く計画を実行できたからいいけどね。普通に進めたら実行は明日以降だったもん」

「そうだね。村人たちはしっかりと王城の地下に送られているかい?」

「うん! 私の召喚魔法は天才的だよ!」


 メルアーは自慢げに自分の魔法の話をする。セツが気づいたことは正しく、竜を召喚したのも彼女であったし、あの魔力溜りも彼女のオリジナル魔法、〈設置召喚(ポイントサモン)〉であった。


「わかっているよ、君の魔法は素晴らしい!」

「えへへ……」

「それで……使えそうな人材はいたかい?」

「んっとね、アリゼさんは使えるよ。冒険者として最近は活動してなかったみたいで鈍ってるけど、鍛え直せばS級以上の実力はあると思う。お兄ちゃ……ラーメルさんもまあまあ強いよ? あとはボチボチかな。〈魔導兵(・・・)〉送りがいいと思う」

「うん、十分だよ。特にS級がいるのは大きいね、戦争のいい戦力になりそうだ」


 かなり物騒な発言をした冬真は、この崖から下に広がる静寂に支配された村を眺める。正確には……その村を探索する一人の男の姿を一心に見つめていただけだが。


「……セツ、すぐに君を連れ戻してあげるね。僕から君を奪った魔族も獣人も皆殺しにして……君を取り戻す。だからもうしばらく待っててね? 絶対に、迎えに行くから……!」


 決意にも似た言葉を言ったと思うと、冬真の思念体はすでに消えていた。そしてその横にいたメルアーの姿もすでにない。


 ここに誰かがいたということに気づいた者はいない――――――


 



次回、獣人大陸へ


今回で一区切りですね。これから敵の戦力がちょいちょい明らかになってきます。


今週はあと金曜日と日曜日に投稿します。これからは活動報告にてこのように伝えていこうと思っているので、度々ご確認ください。

週三回以上の投稿はお約束します。

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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