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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第一章 魔族大陸にて
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19 ギルド

感想が返せず申し訳ありません、時間が取れ次第返しますので、それまでどうかお待ちを……

 イビルバロウを出発して早三日、所々で迷いつつも、ようやく魔族大陸の港町へたどり着けた。


「うーん……久々の潮の香りね、落ち着くわ」


 海神なだけあって、リヴァイアは港町に近づくにつれてテンションが上がり始めた。今では絶好調で俺の前を歩いている。


「そうか……そりゃよかったな……」

 

 ……俺はその逆、昨日からテンションは底辺だ。全くもって上がる気配がない。


「……いい加減機嫌直しなさいよ、もうどうしようもないんでしょう?」

「だからテンション上がらないんじゃねぇか……」


 事は昨日、野営をしていてふと魔法袋を漁っていた時のこと――――――









「――――――あなたの魔法袋ってほんとなんでも入ってるわね」

「ん、まあな」


 俺は焚き火の横で、魔法袋に入っていたよく分からない道具たちを広げていた。自分でもいつ手に入れたかわからないようなものばっかりが転がっているが、たまに思い出が詰まったものが出てきて、懐かしい気持ちになったりもする。

 こんな犬の骨みたいなのなんで持ってんだろ俺……


「ん? 何これ?」

「お?」


 リヴァイアが拾ったのは、免許書ほどの大きさのカード。俺は懐かしさを感じながらそれを受け取る。


「これは俺が冒険者だった時のギルドカードだな、冒険者ギルドに登録するともらえるやつだ」

「へぇ……でも何も書いてないじゃない」


 こいつの言う通り、俺の持つギルドカードは白紙で、一つの記号すら書かれていなかった。


「防犯用に魔力を通さないと表示されないようになってんだよ。盗まれたら悪用されちまうから、持ち主の魔力が流れない限りは何の情報も得られないぜ」


 冒険者ギルドは街の雑用から災害規模の魔物の討伐までを受け持つ、冒険者のための組織だ。主に登録した冒険者をランク付けし、その位にあった仕事を提供する。受けられる仕事は、自身のランクと、それより一つ上か、二つ下までだ。C級ならB級とD・E級を受けられるってことだな。

 そして冒険者ギルドはランクによってサービスの質が変わる。ギルドと繋がりのある武器屋の値段が下がったり、住居を与えられたりといった美味しいことが盛り沢山だ。


「―――――つまり自分よりも高いランクの冒険者からギルドカードを盗み、それを利用して上のランクのサービスを悪用させないための仕掛けってことね」

「そういうわけだ。だからこうして――――――あれ?」

「どうしたの?」


 カードの内容を見せるために魔力を込めてみたのだが、カードはうんともすんとも言わない。前までならすぐに文字が浮かんできたはずなのに……


「それ本当はギルドカードじゃないんじゃないの? 別のカードとか……」

「いや、俺が持っているカードアイテムはそれしか…………まさか」


 俺はカードに組み込まれている魔法陣を見るため、目を凝らす。基本的に魔法アイテムと呼ばれるものは、その効果を与えるための魔法陣を作り、それを組み込むことで完成する。このギルドカードもそういう魔法陣が組み込まれている……はずなのだが


「やっぱり――――――ない」


 魔法陣が消えている。それはつまり、これは他になんの効果もないただのカードということだ。

 それがわかると、俺の中でやってしまったという念が膨れ上がる。


「……期限切れだ……」

「え?」


 日本の免許証のようなもので、このギルドカードは、4年ごと(・・・・)にギルドで更新しなければ、その時点でデータがすべて破棄されてしまう。それは大金を得て隠居してしまったS級冒険者などを引っ張り出すためのシステムで、更新のために出てきた冒険者に仕事を押し付けるという目的の元に作られたものだ。


 俺が更新しなかった期間は五年間、当然のごとく時間切れ、全消去というわけだ。


「お、俺の……SSS級が……」


 体が脱力し、四つん這い状態になる。襲い来る猛烈な喪失感に、体が押しつぶされそうだ。SSS級までにかけた時間と労力が、たった一年届かなかっただけで全部無駄に――――――それは現状この世界に戻ってきて、一番ショックを受けたものとなった。


「ま、また下から上がっていけばいいじゃない!」 


 リヴァイアの励ましの言葉も、今の俺には届かない。こんな俺を見たことがなかったであろう彼女は、四つん這いのまま動けない俺をどうしていいかわからず、俺自身どう頑張っても立ち直ることができずに、そのままその夜は更けていった――――――









 港町に足を踏み入れたあとも、俺のテンションは上がることはなかった。大声で魚を売りつける商店のオヤジの声は入ってこず、男女で歩く俺たちを冷やかすようなおばちゃんの声は右から左へ抜けていった。


「とりあえずはギルドに寄るんでしょ?」

「ああ……」


 何がともあれギルドカードは欲しい。ここで諦めたら、それは敗北だ。決してギルドのシステムなんかに負けてはいけない。例えE級からの再スタートだとしても、俺は再びSSS級へ上り詰めてみせる――――――はぁ……


「あ、ここじゃない?」

「ん?」  


 リヴァイアの声で伏せていた顔を上げると、そこには木造二階建てで少々改修の跡が見られるが、所々無骨で、いかにも物語に登場するギルドといった建物があった。基本的に冒険者ギルドはどこにでもあるが、この町のギルドは初めて訪れたとあって、新たな出発にはちょうどいい――――――はぁ……


 中に入ると、広間からギルド酒場で酒を飲む冒険者たちの視線が突き刺さる。なんだあいつといった視線が多い中、いくつかの視線はすでにリヴァイアを捉えていた。こいつの容姿は10人中10人が振り返るレベルだからな、仕方ない。それほどの女を連れて歩く俺へは嫉妬の視線が刺さっているがな。


 とりあえずそんな視線をすべて無視し、受付カウンターへと向かう。


「ようこそ冒険者ギルドへ! 今日はどういったご要件でしょう?」


 受付にいたのは、赤と白のチェックのエプロンをつけたポニーテールの女性。このエプロンは、ギルドの一般的な受付嬢の仕事着だ。少し地味に見える程度がいいらしい。


「ギルドカードを発行してもらいたい……」

「は、はいかしこまりました!」


 俺の尋常じゃない負のオーラに、一瞬受付嬢がたじろぐ。横から脇腹をリヴァイアにつつかれ、渋々俺はオーラを引っ込めた。


「はぁ……あと一年来るのが早けりゃなぁ……」

「? 失礼ですが更新期限を過ぎてしまった方ですか?」


 ポツリとこぼした俺のつぶやきを、受付嬢が拾う。俺は項垂れながらも肯定すると、受付嬢がとんでもないことを言い始めた。


「期限切れカードは金貨一枚で再発行できますよ? 期限切れカードをお持ちならばですけど……」

「なに!?」


 俺は素早くそれに飛びつく。

金貨一枚っていうと10000ゴールド、日本円ではそのまま一万円ほどの価値ということだ。再発行に一万円となると、相当でかいんだろうが、俺からすれば大した金額ではない。


「つい三年前に確率された技術ですけど……消えてしまった情報を復元する魔法です、再発行しますか?」

「今すぐ頼む!!」

「か、かしこまりました」


 俺は魔法袋から白紙カードを取り出して、叩きつけるように渡す。努力の結晶が戻ってくるのに一万円なんて安すぎる!! 金貨一枚も当然一緒に渡した。誰だか知らんが、それを確立させたやつグッジョブ。


「よ、よかったじゃない……」

「ああ!」


 あまりの形相だったのか、若干二人に引かれてしまったがそれは仕方ないし。必要な犠牲とはこのことだ。


「では再発行を――――――――――――――――え!? SSS級!?」


 情報が蘇り、表示されたランクに受付嬢が度肝を抜く。SSS級なんてこの世で両手の指で数えられるほどの人数しかいないからな、この反応も当然なんだろう。

 受付嬢の声が大きかったのか、周りでざわざわと冒険者が騒ぎ出す。こりゃめんどくさそうだな。


「再発行は済んだか?」

「は、はい!! どうぞ」

「サンキュ」


 返されたギルドカードに魔力を流すと、前と同じように情報が表示された。


―――――――――――――――――――――


名前・セツ

年齢・23

種族・人族


冒険者ランク……SSS


受注中依頼……「なし」


―――――――――――――――――――――


 年齢がおかしなことになってんな……多分前の体の情報のままなんだろう。日本に還された時確か18歳だから、それから5年で23歳。なるほど、合っている。


「よし、用は済んだ。行くぞ!」

「はいはい……テンション上がりすぎよまったく……」


 リヴァイアに呆れられつつ、ギルドを後にする。依頼を見てこうかとも思ったが、面白そうな依頼を見つけて時間を取られるのもまずいため、そのままギルドの扉から外へ出た。











 セツとリヴァイアが出て行ったあとのギルドは、彼のランクのこともあり騒然としていた。


「おいおいあのガキがSSSだぁ~? なんかの間違いじゃね?」

「だがよ、ギルドカードの偽装なんて出来ねぇし、わざわざSSS級なんかに化けるかよ」

「まあそうだな……」

「そんなことより横の女だろ!! なんだよあの顔とスタイル!」

「あの男彼氏か? くそっ!!」


 酒臭い荒くれ者たちから、きちんと整えられた装備を身につけた者たちまでが、セツへの恨み言をもらす。

 そんな中、一人の少女が隅っこでその話を聞いていた。一般的な冒険者の格好をし、肌は魔族特有の色白で、黒い髪の毛は短く切りそろえてあった。恐らく年齢はルリほどだろうか、まだ幼さの残る可愛らしい顔をしている。


「SSS級……そんなにすごい人なら……きっと」


 少女は立ち上がり、セツとリヴァイアの後を追って駆け出す。

それを気に留める者は、このギルドには一人もいなかった。

  

 

次回、謎の少女との接触

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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