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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第一章 魔族大陸にて
18/127

17 ルリの希望するお店

ホモかよぉ!! という感想が10割でした。BLタグを本気でどうするか考えております。男の娘ならばセーフか? と思う自分もいまして……

 ルリに店が欲しいと言われたデザスは、少し考えたあとにあっさり許可を出した。


「――――――なるほど、店か。それくらいならば用意できるだろう、だが妾の権力が効くのはこのイビルバロウ内だけだ。人間大陸などもちろん不可能だし、この城、城下街外も不可能だが、それでもよいか?」

「文句ありません。その条件でお願いします」

「わかった、後は大きさだが……」

「それなら……屋台が欲しいです」

「え……?」


 デザスがそれを聞いてポカンと口を開ける。俺も驚いた、てっきり大きな店舗が欲しいものだとばかり思っていたためだ。

 大きい店舗でないとしても、屋台はこの世界では最小の店舗だ。使われるところと言ったら、飲食店が自分の店の料理を宣伝するために、試食用のものを並べるといった程度だ。


「本当は大きなお店が欲しいのですが……私はまだ経験不足ですし、セツさんに言われた通り成人もしていません。なのでそういうお店を貰っても、持て余してしまうと思うんです」


 それを聞いて、俺もデザスもなるほどといった顔になる。確かに店が大きければ大きいだけ管理も大変だしな。その点屋台ならルリでも十分扱えるはずだ。


「屋台の件は了承したが、一体何を売るんだ? ろくなものが売れないと思うんだが……」

「それなんですが……少しセツさんにお願いがありまして……」


 そう言いながら俺の方へ顔を向けてくるルナ。俺に頼る商品を売るのだろうか? 特に思いつかないが……


「実は……セツさんの作る揚げ物料理を売ってみたいのです」









――――――と、言うわけで


「――――――こう芋とひき肉を混ぜたものにパン粉をつけて、油へどーん!! わかったか?」

「は、はい!! なんとなく分かってきました!」


 現在俺はルリと共に魔王城の厨房にいる。揚げ物を商品にしたいというルリの案はなかなかに素晴らしいと思う。それなら屋台で売れるし、放課後の学生がよくやるような買い食いにも適している。がっつり儲けることはできなそうだが、安定して稼ぐことはできそうだ。まあ俺は商売初心者だからよくわからんが……商人の娘なだけあって、売れる売れないの見分けが出来るルリが言うのだから、間違いないのだろう。


「んで、こんな感じの色になってきたら、パッと取って油を払う。よっし、これでいい。おいできたぞ!! 持ってけ!」

「は、はい!」


 俺は揚がったコロッケを皿に盛り付け、それを指示を待っていた給仕の男に渡す。


「それにしてもすごい手際ですね……あっという間に数十人分を……」

「まだまだだっつーの!! ほらルリも手伝え!! まだまだ作んぞ!!」

「あ、はい!」


 俺は別の鍋で揚げていた鶏肉を取り出す。いわゆるチキンカツというやつだ。

今この魔王城は軽い宴状態で、その料理係は再び俺に任されている。どうせ作ってくれと頼まれんだろうなーなんて思ってたら、まさか魔王城にいる奴ら全員分を作る羽目になるとは……まあ同時にルリに揚げ物の指導ができるからな、コイツのためになるなら悪くねぇ仕事だ。


「こうしてセツさんに常に作ってもらえるならいいのに……」

「そいつは当分無理だな」


 俺も獣人大陸回らねぇといけないし、最後は人間大陸で夕陽を拾ってくるつもりだしな。


「まあ全部終わったあとならしばらく付き合ってやってもいいが……」

「ほ、本当ですか!?」  


 そう言うと思った以上にルリが食いついてくる。油跳ねんぞ、気をつけろ


「それまでに繁盛させとけよ? そうじゃないと手伝い甲斐がねぇからな」

「は、はい! もちろんです! セツさんと一緒にお店を……ふふっ」

 

 ルリはコロッケを揚げながら、嬉しそうに頬を染めている。

 そんな嬉しがられるような人間じゃねぇんだけどな……俺 


「っと……これも揚がったな、わりぃがルリ、これ持ってってくれ」

「あ、はい! 分かりました!」


 俺は適当に皿に盛ったチキンカツたちをルリへと渡す。厨房から出て行ったルリの代わりに、コロッケを揚げている鍋の前へ移動した。

 揚げ物の練習を邪魔しちまうのは心苦しいが、盛り上がっているあいつらに、冷めた料理をあんま食わせたくねぇ。まあこの時点で揚げ物に上手いも下手もねぇがな。


 コロッケが揚げ終わるのを待っていると、厨房にデザスが入ってきたのに気づいた。こんな所に魔王が来るのはおかしいようで、俺の手伝いを任せているコックたちが目を見開いている。


「すまんなセツ、料理を任せてしまって……本来ならゆっくりしていて欲しいのだが……」

「別にいいって、まあめんどくせぇけどな。それでもお前たちが美味いって食べてくれんのは……素直に嬉しいからな」

「そうか……私も久々だったから、セツのころっけをすでにひと皿食べてしまった」

「太るぞ」

「う……運動するから平気だ」


 ストレートに注意してやったら、俯きながらお腹をさすり始める。恐ろしく引き締まったクビレだ。もう少し肉をつけてもいいんじゃないかと思うが、それが嫌な理由は女子にしかわからないんじゃないだろうか?


「そんでどうした? つまみ食いしに来たんなら許さねぇぞ?」

「そんな訳なかろう!! ……少し話したいことがあってな」


 おっと、真面目な話だったようだ。俺はからかうのをやめて、コンロの役目をしている火の魔石に魔力を送るのをやめる。火が止まったのを確認したら、しばらくの間料理を任せるとコックたちに伝えておく。


「どんな話だ?」

「……セツが帰ってきたことで、私たちは人間国へ報復する理由もなくなった。それで直に人間国を攻めている連中を呼び戻すことにしたのだが……」

「――――――人間国にそこを狙われるんじゃないかってか?」

「ああ、よくわかったな」


 人間国がこの戦争を利用し、再び魔族・獣人大陸に攻め入ろうと考えていることは、エルカから聞いている。それならば確かに撤退時を狙われてもおかしくない。なんたって自分たちの領土に近いところで戦えるのだし、敵は背を向けているわけだからな。


「奴ら、この機会で妾たちの領土を再び奪いに来ると見た。そう見ると現在の防戦一方な部分も納得できる」

「へぇ……敵は攻撃してこないのか?」

「ああ、常に守りっぱなしだ。おかげでこちらには被害が出ていないが、向こうにもほとんど被害を与えられていない。かなりの期間攻め続けているが、ゲートがいまだに開けていないのが証拠だな。向こうの動きがなさすぎるから迂闊に援軍も出せない。定期的に兵を載せた船を送り、食料品などが切れた船と交代させるくらいだな、その他にやっていることと言ったら」


 動きがないのは不気味だな。聞く限り兵を引かせるのも一苦労そうだ。


「撤退させるなら、援軍を出して守りながら引くしかないんじゃないか?」

「妾もその方法しかないと思っている……まあどのみち獣人大陸にもセツの帰還を知らさねばいけないな、妾の軍だけ引かせても獣人の軍は残ってしまう」

「あー……じゃあとっとと獣人大陸まで行っちまうかな」

「妾としてはもっとゆっくりしていって欲しいのだが……」


 そう言って寂しそうな表情をするデザス。こうなると、とてもじゃないが魔王なんて威厳は見られなくなる。こういう時はとりあえず頭を撫でてやるのが一番だ。


「あ……お主、妾をルリと同じ扱いしていないか?」

「今のお前はあいつと同じくらいだぜ? まあ待ってろよ、他のやつにも顔を見せなきゃいけねぇけど、戦争が終わったらうんざりするほどゆっくりしてやるから」


 子供扱いされたことが不満そうだったデザスだったが、後半の言葉を聞いてとりあえず機嫌を戻してくれた。


「……そうだ、お主と共に召喚されたという勇者たちの情報が入ってきたぞ」

「お?」

  

 あまり興味はなかったが、どの程度の驚異になっているのだろうか? 才能だけはとんでもなかったからな、あいつら。

 

「なんでも今回の勇者たちは、聖剣持ちでない者の実力がずば抜けているらしい」

「聖剣持ちじゃない?」


 となると光真以上の人材? 確かに奴のエクスカリバー型は、今まで確認された聖剣の中ではあまり強くない。だが聖剣持ちはそれだけでとんでもないステータスを得るから、そう簡単にはそれを上回る人材にはなれないはずなんだが……


「ディスティニアにいるとある筋から仕入れた情報だが、オレンジ色の炎魔法を使う少女と聞いたぞ。確か付いたあだ名が〈夕日の魔女〉だったか?」


 夕日――――――オレンジ?


「あぁ……あいつか」

「知っている者か? それにしても、聖剣持ちを凌ぐ強さと聞くと侮れないな。十分に警戒を――――――」

「いや、そいつは大丈夫だ、今エルカに指導を受けてるはずだから」

「ほう、あの氷女にか。つまりお主の仲間というわけだな?」

「ああ、そういうことだ」


 それにしても夕陽……まだお前と離ればなれになって数日だぞ……この短期間でどれだけ腕を上げたと言うんだ我が幼馴染


「だが俺と共に召喚された奴らはまあまあ戦力になるから気をつけろよ? 下手したら戦況をひっくり返されるぜ」

「忠告、胸に刻んでおこう。しかし――――――()ほどではないんだろう?」

「……あいつは別格だ」  


 思い浮かべるはあの性別詐欺クソ勇者の笑顔。もうこの世にいないと分かっていても、常に見られている気がする。それだけ奴の存在は、俺の中にトラウマとして染み付いている。


 いや……友達になったんだが……その、色々ヤバイ(・・・)奴だったわけで――――――


「……心中お察しする」

「やめろデザス、女のお前にはわからないはずだ」

「妾も同性に……その……」

「ありがとうデザス、お前は俺の理解者だ」


 そうか、デザスも美人だもんな。お姉さまとか言われて迫られたことがあるんだろう。手のひらを返して悪かった。俺はこいつを一生大切にしていこう。そして大切にしてもらおう。俺たちなら支え合える


 だがなぜだろう? この手で始末したはずのあいつが、まだこの世で俺を狙っている気がしてくるのは……奴の恐怖はまだ終わっていない気がするのは……


「おいセツ? 目がうつろだぞ……?」

「大丈夫だ……大丈夫なはずだ」


 せめて女性であったなら……こんなに恐怖することはなかったんじゃないだろうか。


「あーー!! もう!! この話はやめだ!! とりあえず俺は明後日この城を出る! 決定!」

「ま、待て! 突然過ぎるぞ!?」

「うるせぇ今決めた!!」


 今はとにかくあの笑みを忘れたい。別のことを考えねば。


「妾としてはもう数日いて欲しかったんだが……」

「……ま、それはそれでずるずる引きずりそうだからな」


 居心地がよすぎて離れたくなくなったら末期だ。それに早く獣人大陸の奴らの顔も見たい。

デザスはしばらく不満そうな顔のままだったが、最後には納得してくれた。


「――――――それもそうだな、できるだけ……早く帰ってきてくれ。さ……寂しいではないか……」

「おう……」


 恥ずかしげにもじもじしながら寂しいなんて言われると、こう来るものがある。なにこの可愛い生物、魔王なのに。


 こうして俺の出発の日程は決まった。

 

 だがこの時の俺はまだ知らない……あれほどトラウマになったあいつに――――――


――――――再び会う事になるなんて




次回、セツくん出発


早いかもしれませんが、魔族大陸は一旦お預けです。次に来た時はかなり重要な話の時なので、一度目はこれくらいにしておきます。


あと決してセツは身の危険を感じたから冬真くんを殺したんではありません。ちゃんとシリアスな理由でございます。念のため。

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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