後日談 5話
「てめぇ……こんなところに幽閉されてやがったのか」
「ふんっ、そういう貴様は我と決着をつけにきたのか?」
「あ? なんでだよ。あれは俺の勝ちだろうが」
「なっ! ふざけるな! 人間上がりにこの我が敗北するわけがないだろう!」
「はぁ!? てめぇがここにいて俺が外にいるのがいい証拠――――っ」
俺の叫びをかき消すように、神殿全体が揺れる轟音が響く。
連中の攻撃がさらに激しくなってきやがったんだ。
「何が起きている? 簡潔に答えろ」
「てめぇ……偉そうに」
「何を世迷言を。我は貴様より偉いのだ」
「よくもまあいけしゃあしゃあと言えたもんだなぁ、おい。チッ……よく分からん連中が襲撃してきてんだ。この神殿によ」
「何たる不届き者どもだ……我の城へ攻め入ろうなどと」
「てめぇのじゃねぇから! それよか他のカミサマは何してんだよ」
「さあな。牢獄に捕らえられた我が知るわけなかろう」
「てか、てめぇ食堂勤務だって聞いたぞ?」
「今日は休みだ」
罪神に休日を与えてんじゃねぇよ神界様よぉ……。
「――はぁ、仕方ねぇ。この際だ、てめぇも手伝え」
「何? この我が貴様の手伝い? 何の冗談だ」
「俺だって頼みたかねぇよ。けどこの数に加え、連中は神力まで使いやがる。てめぇもここで活躍すりゃ、少しは罪が軽くなるかもしれねぇぞ」
「……やむを得まい」
クレアシルは立ち上がり、体をほぐし始める。
しばらくの食堂勤務でだいぶ丸くなったように見えるな、こいつ。
「貴様は引っ込んでいろ。我だけで十分だ」
「ふざけんな。俺はてめぇの監視役も兼ねてんだよ」
「ウザったらしいやつだ。先に消すぞ」
「こっちのセリフだボケ。――行くぞ」
俺たちは同時に牢を飛び出す。
高速で近くにいたやつに接近し、まずその胴体を斬り飛ばした。
もうクラスメイトであったかどうかは関係ない。
こいつらはもう、終わっている。
改めて見たらすぐに分かった。
こいつらが人に戻る……理性を取り戻すことはこの先ありえないと。
「だったら楽にしてやらねぇとな……ッ!」
知り合い以上の情はある。
だからこそ一撃で葬るんだ。
これ以上、誰からも利用されないように。
「クレアシル!」
「指図するな」
いくつかの光弾を跳ね返し、クレアシルに場所を譲る。
クレアシルは手を止まっている何体かのクラスメイトへかざした。
寒気がするほどの神力……正直二度とこいつとはやりたくねぇな。
「そこを動くなよ、不敬者ども」
そうクレアシルが言うと、手をかざされていた連中の頭が突然爆ぜる。
本来頭があるはずの場所からは、ゴロリと大きな石が転がり落ちた。
座標指定からの【創造】の力。
あいつとやり合うときは、少なくとも動き回ってねぇとだめだ。
「何をボサッとしている。動かぬなら貴様も消すぞ」
「おっと、そいつは不可能だぜ」
俺は空間を蹴り、さらなる速度でやつらの首を刎ねる。
とっくに神様へと造り替えられたこの体の使い方は熟知した。
この体に本来培った戦闘スタイルが合わされば、よっぽど相手が高位の神でない限り負ける気はしない。
「ちゃんと見えてたかよ」
「ほざけ」
俺が首を傾けると、一瞬前まで頭があった位置に石が出現する。
「殺す気かよ」
「この程度で死ぬようならば、我に並ぶことは許されん」
「ほんっとてめぇは偉そうだなァ!」
俺たちは同時に身を翻す。
「「消失!」」
それぞれの背後に迫っていた敵に対し、俺たちは消失を放つ。
対象をこの世から抹消する神技。
クレアシルと戦った時にはまだ練度は低かったが、今ではこの通りだ。
「真似をするな」
「こっちのセリフだ」
消失の光を浴びた者はその姿を消す。
この数秒で半分は倒せたが、おそらくは量産型を倒したに過ぎないようだ。
特に気配がでかいやつが、まだ奥に数体いる。
そのうちの一体が、ゆっくりと俺たちの前へ移動してきた。
「お前たちは下がれ。俺がやる」
「っ……久しぶりじゃねぇか、遠藤」
「ああ。久しぶりだな、須崎」
そこにいたのは、かつて俺を苛め抜いていた遠藤だった。
なぜこいつには理性があるのか分からない。
しかし、やつの手のひらから湧き上がるマグマを見てしまえば、そんなことを考えている場合ではないことが分かった。
「再会早々悪いが……死ね」
俺の視界一杯に、赤く煮えたぎるマグマが広がる――――。




