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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第五章 七聖剣編
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115 息災でなにより

「どうしても……手を下すか」


「当たり前だ。人間は生態系を一つ壊滅させた。これ以上野放しにして、世界の形を変えられてはかなわん」


 我は立ちはだかるデストロイアを押しのけた。

 人間を絶滅させなければならない。

 我が創りだした動物を絶滅させた人間を、何としても。


「……ならば仕方ないのう」


「分かったか? ならば手伝え。一匹残らず駆除するんだ」


 ようやくデストロイアも理解してくれたようだ。

 人間に絆されたこやつも、神の自覚が戻ったのだろう。

 そう思っていた。


「もうお前さんとは決別する他ない」


「何?」


「儂は人間を守らねばならん」


 気づくと、我は吹き飛ばされていた。

 何が起きたのだ。

 分かってくれたのではないのか。

 我は――――。


「お前を封印させてもらうぞ! クレアシル!」


「デストロイアァァ!」


 生まれて初めて、怒りという感情を知った。


◆◆◆

「終わったか……」


「ああ」


 門が消えていく。

 デストロイアはセツの横に寄り添い、それを眺めていた。

 

「……クレアシルは、儂ら神の中でも生粋の堅物じゃった」


 規則を重んじ、神である自覚を常に持ち続けた。

 命令を守り、その通りに動くことを第一に考える。

 それが、クレアシルという創造神だった。


「だから、人間というイレギュラーを許せないと、すべてを否定していた。本来正しいのは……あやつじゃった」


「……人間だって、意図しない不法侵入で殺されたくねぇよ。正しいのはお前だ。お前がいなければ、俺たちは死んでいた」


「守れたなら……よかったのう」


 デストロイアは笑った。

 彼女の心も、少しは救われたようだ。


「そう言えば、夕陽たちは?」


「ああ、避難させておいたぞ。もうじきこの島を出るはずじゃ」


「助かる」


「ずいぶん慕われてた――――の……う」


「? どうした?」


 デストロイアの顔が蒼白なる。

 恐る恐る、デストロイアが見ている方にセツも顔を向けた。


「……おいおい」


 そこには、地獄門がそびえ立っていた。

 正真正銘、先ほどセツが開いたものと同じものである。

 鐘の音は鳴らず、扉が独りでに開き始めた。


「――――し……ねん」


「どうなってんだこりゃ」


 門を、無理やり開こうとしている人影があった。

 クレアシル、彼女が内側から門を開こうとしている。


「閉じきってなかったんじゃな……」


 デストロイアがつぶやく。

 セツは自分の失態を悔やんだ。

 急いで閉じるよう、門に命令を出す。

 しかし――――。


「閉じない……」


「何!?」


 門が、命令を受け付けない。

 

「俺の出現させた門じゃないからか?」


 この門は、クレアシルが内側からこじ開けようとした門である。

 その際に強制的に出現させられた扉のため、セツの意思とは関係ないのだ。

 つまり、この門にセツの指示は届かない。


「この世界を……理想の……世界に……!」


「……」


「おい、ストロー」


 デストロイアは、扉に向かって歩き出す。

 セツの声にも返事せず、クレアシルの前で止まった。


「凄まじい精神力じゃのう。クレアシル」


「デス……トロイア……!」


「死後の世界からも這い上がってくるとは、どれだけの執念なんじゃ? 正直感服じゃよ」


 デストロイアは、クレアシルに笑いかけた。

 クレアシルは、憎々しげにそれを睨む。


「ストロー、そこは危険だ」


「セツ……儂は、もとよりクレアシルを殺したあとは儂も死ぬ気じゃった」


「……」


 セツは息を飲んだ。

 クレアシルも呆けた顔を浮かべている。


「極秘事項じゃったが、もうよかろう。人間が生まれたわけを、お前たちに伝える」


 少し溜めて、デストロイアは口を開いた。


「人間は、偶然生まれたわけではない。――――神が、生み出したのじゃ」


◆◆◆

 とある神は、好奇心に溢れていた。

 様々な生物、概念を生み出し、放って経過を見る。

 それが、その神の生き甲斐であった。


 ある日、長年開発されていた生物が、この神のもとでようやく誕生した。


 名前を、『人間』と言う。


 この神は、最高傑作である『人間』を様々な世界に送り込み、成長を見守ることを画策していた。

 目をつけられた世界の一つが、この〈エクレール〉と呼ばれる、創造神と破壊神によって出来た世界だ。


 まず相談を持ちかけられたのは、破壊神だった。

 破壊神は最初、拒否をした。

『人間』は、どう成長するかが分からず、イレギュラーを起こすと聞いたからだ。


 彼女とともに世界を築いた創造神は、何よりもそれを嫌う。

 

 おそらく受け入れられないだろうと、拒否したのだ。


 ここで起こってしまった最悪の偶然は、『人間』を創ったこの神が、神の住まう〈天界〉の中での、最高神だったことだ。


 最高神に命令されてしまった破壊神は、渋々了承するはめになった。

 しかし、創造神に提案でもしようものなら、即座に妨害しようとするだろう。

 例え相手が最高神でも、創造神は食って掛かるはずだ。


 最高神の前では、破壊神も創造神も赤子のようなもの。

 みすみす消されてしまう創造神を、破壊神は見たくなかった。


 そのため、人間を世界に放つと言う行為は、創造神に知らせないと言う方向で決まった。

 偶然の産物、ということにしたのだ。


 結果、偶然の産物でも、創造神は許さなかった。

 

 創造神は最高神の実験体である『人間』を駆逐しようとした。

 このまま駆逐してしまえば、創造神が最高神の怒りを買ってしまう。

 だからと言って本当のことを伝えても、創造神が最高神に食って掛かるだけだ。

 どの道、破壊神は大切な友人を失ってしまう。


 そして、何より、破壊神は人間が気に入ってしまった。

 

 悩んだ末、破壊神は、創造神を封印することに決めた。


◆◆◆

「これが、事の顛末じゃよ」


「それが……お前の死ぬ理由と何の関係があるんだよ」


「ここまで争ったんじゃ。最高神様も、この世界の事情に気づいていらっしゃる。おそらく、クレアシルは近いうちに処分されるじゃろう」


 辺りを沈黙が包む。

 

「……ここまでことが大きくなったのも、儂のわがままのせいだったりもするしの。どうせなら、クレアシルとともに責任を取ろうと思ったのじゃ」


「――――ふざけるな! そんなことで貴様が我と死ぬなどと……」


「儂らは友人じゃ。理由などそれで十分」


 デストロイアは、クレアシルの肩に手を置く。

 

「やめ――――っ」


 何とか門を閉じようと指示を出そうとすると、セツの身体が突然崩れ落ちる。


(10分……! 時間切れか!)


 セツの眼にハイライトが戻る。

 同時に神格を失い、人間に近い身体に戻ってしまった。

 これでは門を操れない。


「ストロー! やめろ!」


「さて、行くぞ、クレアシル」


「デストロイア!」


 デストロイアは、クレアシルの肩を優しく押す。

 二人の身体は門の中に少しずつ入っていった。


「ありがとう、セツ。お前さんとの日々は……まあ、悪くなかった!」


「ストロォォ!」


 二人の身体が、完全に門の向こうへ入った。

 あるべきものが中に戻り、さらにおまけまで入ってきたことに満足したかのように、門は閉じていく。

 

 そして、完全に門が閉じ――――。


「――――どっせい!」


「へ?」


 突如、門が轟音とともに開ききる。

 それと同時に、クレアシルとデストロイアが外に放り出された。

 セツがその光景に呆けていると、開いた門の中から、人影は現れる。


「死に急ぐなよ、バカども。この門は懺悔のためには出来てないぜ?」


 セツは、その人影に見覚えがあった。

 と言うか、間違えようがない。


「――――お袋……」


「よお、バカ息子。息災でなによりだ」


 セツの母親、死神デスその人である。


 



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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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